2014年国際移民デー(12月18日)
グローバル移住グループが移住と若者の課題と機会に関する先駆的な新刊を発表
2014年12月17日
現在、世界全体で2億3,200万人が自分の生まれた国の外で暮らしていますが、この約8分の1に当たる2,820万人が15~24歳の青少年です。しかし、今日の移住政策は青少年特有のニーズ、権利、課題を取り上げていません。そこで、12月18日の国際移民デーに際し、ILOを含む17の国連機関及び国際移住機関(IOM)で構成されるグローバル移住グループ(GMG)は、『Migration and youth: Challenges and opportunities(移住と若者:課題と機会・英語)』と題する新刊書を発表し、この問題を初めて包括的に取り上げ、政府や社会が直面している一連の課題に対する政策対応及び実務的な対応策を網羅的に示しました。完成まで2年を要し、国連機関その他国際機関、学識者、市民団体、若者リーダーなどから得られた最新の知識、学んだ教訓、好事例、革新的な政策提案を示すこの報告書が提示する革新的なメッセージは、「正しい政策によって若者の移住は課題から機会へと変わり、若者移民自身、送出国、受入国の三方に利益をもたらすことができる」というものです。
潘基文国連事務総長は、若者の移住を課題から機会に変える方法に実際的な焦点を当てた点で報告書を評価し、「我々は協力し合えば、今日の若者がより平和で公平、そして包摂的で持続可能な世界で、自らの人間としての潜在力を十二分に発揮できるよう力を付けさせることができる」と説いています。
国外に出る若者・青少年は機知に富み、変化に強く、新しい環境への適応力があり、多くが新技術を使うことのできる技能と資格を備えています。移住は若者自身及びその家族が持続可能な暮らしを達成するための重要な一歩を表し、受入国社会で機会と待遇の平等が確保されたならば移民は地域社会の生産的な構成員として貢献することができるでしょう。その年齢やライフステージを理由として、若者移民は他の年齢集団より弱く、孤立や排除、差別、不安定性を経験し、しばしば社会的ネットワークを失い、親の指導や世話を受けられずに育つに至ります。若者は外国人排斥運動や差別の被害を特に受けやすく、非正規移民はとりわけ、搾取や人身取引、排斥、身柄拘束、強制送還の危険にさらされています。少女は児童婚姻、性的搾取、暴力、ただ働きなどといった深刻な人権侵害に弱い立場にあります。移住は発展のための万能薬でもなく、移住の促進が開発や移住の管理に関する適切な公共政策に代わるものとなるわけでもありません。移住体験が若者・青少年に有益となるのは、移住政策が若い移民の人権と労働者としての権利を保護する制度につなぎ止められている場合に限ります。
17章構成の本書は、若者の移住の様々な側面を包括的に概説し、若者の流出が多い背景となっている農村の辺境化や環境劣化の状況から受入国におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)や社会的保護の機会といった権利の実現において直面している課題まで、人権、雇用、ジェンダー、保健、教育、参画など幅広いテーマを取り上げ、人の移動を巡る国際的な政策討議及び国連の2015年以降の開発課題に関する議論に行動指向型の論理を提供するものとなっています。多くの国で見られる人口動態や構造的な変化が人口の高齢化や労働力の減少を招いている現在、報告書の行った分析は決定的に重要で時宜を得たものであると言えます。
報告書は第1章「若者の移住:事実と数値」で、若者の移住に関するデータを包括的にまとめ、性・年齢別データの収集、公表、分析に投資することによる効果的な政策のための根拠の強化、政府の能力強化、定性・定量調査研究の実施を提案しています。
第2章「移住の文脈における若者・青少年の人権」は、人権保護に向けた国際的な法の枠組みが存在するにもかかわらず、若者・青少年移民は数多くの人権侵害にさらされていることを示し、入国に関連した身柄拘束や教育機会の制限がその権利、厚生、発達に与える悪影響について論じています。第3章「社会的保護の役割と妥当性」は、若者・青少年移民の社会的保護に係わるニーズと権利に光を当て、必要不可欠なサービスや保健医療の機会、最低限の生活水準を確保するために送出国及び受入国で提供されるべき措置を特定し、移民の若者を国の社会保障制度に組み込むことを推奨しています。第4章「若い女性及び少女の移民」は、若い女性や少女の移住の理由と形態、法及び政策のギャップ、移住が教育、保健、就労における若い女性やジェンダーの役割に与える影響を理解することの重要性を記し、ジェンダーの視点に導かれた措置、法、実際行動によって女性・少女を守ることを提案しています。
第5章「庇護・保護を求め、利用する若者・青少年の権利」は、流動性が増す一方で人の移動に対する管理が強化される中で、難民保護を求める若者や青少年が直面するリスクを記し、保護に配慮した入国制度、児童保護制度、児童及び青少年の身柄拘束に代わる措置、同伴者のいない児童または離散家族児童の家族の追跡と再統合、滞在資格の正規化といった五つの主な対応策を示しています。
ILOが協力してまとめられた第6章「若者・移住・就労:世界中で見られる統治、開発、社会の団結のための火急の問題」は、労働市場の趨勢及び人口動勢によって世界中多くの国で移民の技能と労働に対する需要が相当に促されていることを示し、移住の重要事項は就労とディーセント・ワークであるものの、青少年・若者移住者の多くが不安定労働、搾取、許容できない労働条件にさらされていることを明らかにし、ディーセント・ワークの確保は若者の社会的保護のみならず、移住による経済発展・社会開発の利益も実現すると結論づけています。
第7章「西アフリカからの展望」は、アフリカの地域経済共同体の中では若者の地域移動が最も一般的であることに光を当て、若者を自国に留まらせ、移動する者にとっては移住を安全なものとし、仕事を探す場合の潜在力を最大化するためには、教育、ディーセント・ワーク、安全な移動性、労働集約的投資、保健サービス、権利保護の六つの重要な分野における政策が必要であると説いています。第8章「労働、農村部の若者と移住」は、人の流出が多い農村部の状況を検討し、ディーセント・ワーク、経済成長、持続可能な開発は若者の機会と社会的流動性を高めると説き、移住に代わるものとして、若者に雇用、融資、市場機会を提供する政策措置、若者の才能と資本が出身地に留められるようその帰国を奨励する政策措置を提案しています。第9章「送金、開発、若者」は、移民の家族への送金は多くの途上国の経済においてますます大きな意味を持ち、貧困削減において重要な役割を演じていることを示し、若者移民の送金を円滑化し、送金コストを引き下げる措置、金融サービス利用機会を増進する措置の必要性に光を当てています。第10章「経済協力開発機構(OECD)の教育制度及び労働市場における入国移民の子孫」は、多くのOECD諸国で移民の子供は若者の相当割合を占めてますます増えてきているものの、その教育達成度と雇用機会はしばしば受入国国民に比して劣っていることを示し、対象を定めた就学前教育機会の拡大や職業訓練・見習い研修機会の増大、親を労働市場に組み込む追加的な措置を提案しています。第11章「移住と第三段階教育」は、留学する若者が急増し、高等教育・修了認定枠組みの品質管理を監督する規制協定及び国際協力の必要性が生まれてきているとし、他国で取得した教育資格認定のための国家間協力や対話、第三段階・職業教育の国境横断的な資格の調和化と品質改善の必要性を強調しています。第12章「保健、若者の移住、開発」は、制約的な移住・雇用政策及び広く見られる反移民的態度に加えて、権利の保護・促進が行われなかった場合、保健医療や保健サービスの利用機会における不平等が生じて若い移民の健康リスクが高まることを示し、すべてに優先される提案事項として、若者・青少年移民に十分な保健サービスが得られ、利用機会が確保されることを求めています。
第13章「国家開発戦略における若者移住の主流化」は、若者の移住は効果的な開発活動を達成する上で重要であるにもかかわらず、ほとんどの国が若者の移住を開発政策及び開発計画の立案に十分に組み込んでいないことを示しています。第14章「地方自治体、移住、若者」は、移住及び移民が地域の経済、雇用、サービス、社会生活に与える影響とその結果に取り組む上で地方自治体には決定的に重要な役割があることを強調しています。第15章「若者移民の参画強化」は、自分たちの暮らすコミュニティーの生活及び意思決定、自分たちに影響する政策への若者移民の参画の現状を概説し、市民団体、労働組合、コミュニティー・グループに参加することを若者移民に呼びかけています。
第16章「若者、環境変動、移住」及び第17章「気候変動、国際的な人の移動、若者」は、環境変動は直接・間接的に移住性向に影響を与えること、この変動とその結果として移動を余儀なくされることが近い将来増し、これはとりわけ若者に影響があるものの、現在ある法、政策、制度的な取り決めは、このますます大きくなる地球規模の課題に対応する用意ができていないことを示しています。
グローバル移住グループとは、人の移動に関連するあらゆる国際・地域文書及び規範の幅広い適用を促進し、国際的な人の移動の問題に対してより良く調整を図り、より整合的かつ包括的な取り組み方の採用を奨励するために結成された機関間グループです。ILOは現在、この議長を務めています。
2014年の国際移民デーに際し、ガイ・ライダーILO事務局長とゼイド・ラアド・アル・フセイン国連人権高等弁務官は、国際的な人の移動が人類史上最大規模に達している現在でもなお、依然として多くの移民が移住過程における搾取、差別、暴力に直面しているという悲しい現実に注意を喚起し、2015年以降の国連の開発課題がより公平で持続可能な開発を達成する機会となることへの期待を示した上で、とりわけ移民が被害を受けている不平等を減らす強力な手段として、人権と労働者の権利の保護を挙げ、均等待遇に向けた世界の闘いの中心にある二つの重要な文書であるところの「すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する国際条約」とILOの「移民労働者(補足規定)条約(第143号)」その他の人権と労働者の権利に関する中核的な国際基準を活用して、持続可能な開発を実現し、移民を含むすべての人々の尊厳を確保することを各国に呼びかける共同声明を発表しました。
また、ILOアラブ総局の「中東における労働力移動の統治の改善と人身取引撲滅(MAGNET)プロジェクト」は、国際移民デーに際し、2人の女性カメラマンの助けを借りて、中東以外の国からやって来てレバノンとヨルダンで働く出稼ぎ労働者の暮らしを撮影したフォトルポルタージュを作成しました。時には週休の権利など基本的な権利も享受できないでいる移民労働者ですが、お互いに学び、競い合い、助け合って、暮らしの向上に向けた運動、権利の主張を続けています。他の地域では家事労働者を孤立から救う上で協同組合が一役買っていますが、多くの家事労働者が働く中東にそのような組織は見られません。12月14~15日にはヨルダンの首都アンマンにおいて域内外の政府、労働者団体、協同組合その他のネットワークの代表者、専門家らが出席して、レバノン、ヨルダン、クウェートにおける移民家事労働者の協同組合設立の可能性を検討するILOの包括的な調査研究を元に意見交換が行われました。
国際移民デーに先立つ17日にミシェル・レイトンILO労働力移動部長はアルジャジーラのインタビューを受け、送出国におけるディーセント・ワーク機会の創出、正規の移住経路の確保、労働市場を吟味し、労使との対話を通じて問題の解決策を模索することなどを提案しました。
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以上は次の二つの英文記者発表の抄訳に国際移民デー関連ニュースを盛り込んだものとなっています。
- 2014年12月16日付ジュネーブ/ニューヨーク/パリ発共同記者発表-お知らせ:移住と若者の課題と機会に関する先駆的な新刊を発表
- 2014年12月17日付ジュネーブ/ニューヨーク/パリ発共同記者発表-グローバル移住グループが若者と移住に関する新刊を発表