ILO新刊
ウズベキスタンの木綿産業における組織的な強制労働・児童労働に終止符
2021年01月28日
ILOは2013年からウズベキスタンで綿花収穫における児童労働のモニタリングを開始し、2015年からは世界銀行との合意の一環として、対象を強制労働にも広げ、毎年その結果を公表してきました。このたび発表された2020年収穫期のモニタリング結果は、依然として局地的な痕跡が幾つか見受けられるものの、かつては綿花収穫期に組織的かつ系統立てて全国的にみられた、政府による児童労働と強制労働の利用に終止符が打たれたことを示しています。
世界銀行に提出される報告書『2020 third party monitoring of child labour and forced labour during the cotton harvest in Uzbekistan(ウズベキスタンの2020年綿花収穫期における児童労働・強制労働第三者モニタリング・英語)』は、木綿畑における労働者の基本的な権利に関するウズベキスタンの大きな進展を記録するものとして、2020年の綿花収穫期には労働者の96%以上が自由意思で参加しており、学生・生徒や教員、医師、看護師の組織立った人材募集・斡旋は完全になくなったことを示しています。ウズベキスタンでは生産年齢人口の8人に1人が木綿収穫に参加するという世界最大の労働力の動員が見られます。綿花摘みに従事する労働者の65%を女性が占め、大半が非都市部の出身です。
2020年に綿花収穫に従事した労働者の中で強要を受けた人の割合は2019年より33%減っています。しかしながら、局地的には依然として、要請を断ったら特権や権利を失うとの脅迫を受けた人々の事例が存在します。
系統立った児童労働は完全に根絶され、これはもはや大きな懸念事項ではなくなっています。首都タシケント近郊のチルチク市に住むディルショダ・ショドモノワさんは、子どもの頃には残念ながら木綿収穫のために受けられなかった学校の授業が多かったことを振り返った上で、今日では改革のおかげで自分の娘が中断されずに学校に通え、教育を受けられることが、自分が労働者の権利に関する活動家としての仕事を続ける励みになっていると述べています。
ILOのモニタリングは新型コロナウイルスの世界的大流行にも特別の焦点を当てています。コロナ禍によって多くのウズベキスタン移民労働者が帰国したことから木綿収穫に従事できる労働者数が増えました。労働者の新型コロナウイルスに関する認識度合いは高いものの、感染の不安も多くから表明されていいます。労働者の3分の1がマスクや手洗い設備が得られたことを、3分の2が昼食や休憩時に社会的距離を常に確保できたことを報告しています。
労働者が木綿収穫に従事する最大の動機は収入を得る機会です。労働者の収穫参加期間は平均で21日間に及び、収入は154万スム(約1万6,000円)になりましたが、これは教員の平均給与を上回っています。木綿収穫に従事した労働者のほとんどにおいて、この収入は決定的に重要な生活の糧の一部であり、2020年には木綿収穫が唯一の現金収入源であったとの回答者も6割に達しました。
政府は2017年から賃金を大幅に引き上げ、収穫できる木綿が減って条件が悪くなる収穫末期に向けて、収穫された木綿のキロ当たり単価を高くする差別化賃金率を導入したことが強制労働の大幅な削減につながりました。
強制労働・人身取引全国委員会の長を務めるタンジラ・ナルバエワ・ウズベキスタン上院議長は、強制労働は社会的・道徳的に間違いであるだけでなく、深刻な人権侵害であり、ウズベキスタンでは犯罪に当たると説明しています。「行動様式を変えるには、人々の考え方を変える必要があります」と説くナルバエワ議長は、「立法関係者、政府職員、使用者、労働組合、市民活動家が一致団結して」、それを起こすよう努力していることを報告しています。
ウズベキスタンは公正な人材募集・斡旋慣行や適切な賃金などの必要な保護措置を導入しつつ、旧ソビエト体制の名残りである国家生産の仕組みを市場基盤型モデルに置き換えようとしています。政府はバリューチェーン(価値連鎖)を遡上し、原綿の代わりに数百万人により高給の仕事と相当の輸出収入を生み出す潜在力を秘めた繊維や衣料品の輸出国になる戦略を立てています。
ILO第三者モニタリング・プロジェクトのジョナス・アストラップ主任技術顧問は「こういった改革は引き続き、国際社会の支援が必要」と指摘し、次のように語っています。「責任ある国際企業による貿易・投資の決定は、中央計画経済の名残りのさらなる解消に寄与する可能性が高く、これはまた国際労働基準の遵守度合いにも好影響を与える可能性があります。ILOではウズベキスタンからの原綿、繊維、衣料品の責任ある調達の円滑化を図り、奨励すべきと提案しています。国際的なブランドや小売業者が情報を得た上で事業上の決定を行えるような仕組みやツールをウズベキスタンで試行する用意があります」。
2020年のモニタリングは、同国の独立した市民活動家がILOの訓練を受けた上でILOの方法論を用いて、180万人の木綿収穫労働者の代表標本として9,000人以上を予告なく単独で訪れて面談する形で進められました。政府または地元の役人による介入は報告されていません。
ILOの第三者モニタリング・プロジェクトは、欧州連合、米国、スイス、ドイツの開発機関であるドイツ国際協力公社(GIZ)を主な拠出者とする複数拠出国・機関が関与する世界銀行の信託基金を財源として実施されています。