労働安全衛生

ウクライナの鉱山で労働災害と職業病の削減に向けたILOプロジェクトを新たに開始

2017年07月13日

ウクライナの鉱山労働者 © Wiking Husberg

 鉱山や鉱業製品はほとんどの産業の根幹をなし、世界中ほぼ全ての国で何らかの形態の鉱業や採石業が営まれています。鉱業はウクライナでも主要産業であり、東はドネツク、ルハーンシク、ドニプロ、西はリビウ、ボリーニ、南はザポリージャに至る幅広い地域に200以上の鉱山が散在し、22万人の労働者が従業しています。

 しかし、鉱業は最も危険な産業の一つであり、あまりにも多くの鉱山労働者が労働災害、とりわけ重大な死亡災害の犠牲となり、職業性呼吸器疾患を発症しています。2014年にウクライナの炭田では99件の死亡災害を含む2,034件の労働災害が、金属・非金属鉱山では12件の死亡災害を含む220件の労働災害が発生しています。届け出られている職業病の8割以上が鉱業及び冶金業で発生しています。2017年3月にウクライナ西部のステポヴァ炭鉱で発生した爆発事故では8人の鉱山労働者が命を落とし、20人以上が重傷を負いました。労働災害のコストは労働者とその家族にとってのみならず、使用者や社会全体にとっても非常に高くつきます。

 ウクライナでは鉱山の3分の2が政府の管理が及ばないドネツクとルハーンシクの両地域に所在するため、2013年後半に始まった武力紛争の大きな影響を受けて活動は大幅な縮小を余儀なくされ、閉鎖されたものもあります。その上、鉱業工学や安全性に関する調査研究を行い、安全装置に関する技術的なサービスを提供する機関のほとんど全てがこれらの地域に所在するため、企業が必要なサービスを得ることが困難になっています。

 鉱物及び石炭の価格下落に伴い、利益率が低い国有鉱山を中心に鉱業企業の多くが損失を被り、その上武力紛争の継続によって状況はさらに悪化しています。2015年にこの産業の労働者8万人に賃金遅配が発生し、遅配総額は給与の1カ月分に相当する5億5,700万ウクライナグリブナ(約24億円)に上りました。多くの企業が十分な資金を欠いているために鉱山の安全性を確保するのに十分なだけの予算を配分できない状況です。

 このような事態を受けてILOはカナダ政府の任意資金協力を受けて鉱業労働における安全衛生状態の改善に向けたウクライナの努力を支援する技術援助プロジェクトを開始しました。2020年3月末まで続く予定のこのプロジェクトは、労使の能力向上によって支えられた近代的な労働安全衛生政策の体系的な策定を通じてウクライナの鉱業における労働災害と職業病の削減を目指しています。プロジェクトは今年5月から開始されましたが、5月19日に開かれたプロジェクトの当初予定について話し合う最初のワークショップでは政労使三者から「この国にとって重要で時宜を得たプロジェクト」と評価されました。

 そして6月に安全状態を評価し、優先活動分野を特定するために、ILO中・東欧ディーセント・ワーク技術支援チーム(DWT)兼国別事務所の廣瀬賢一社会的保護上級専門官とヴィキング・フースバリ労働安全衛生専門家が、プロジェクトを担当するキエフ駐在のイリナ・ペクシェヴァILOウクライナ・プロジェクト調整官及び鉱山を監督する国家労働局の職員らと共に、ドニプロ地方クルィヴィーイ・リーフ市のイングレッツ露天掘り鉱山とイェブラツ・スッカ・バルカ地下鉱山、リビウ地方グルヒウ村のステポヴァ地下炭鉱の三つの鉱山を視察し、労使代表と会合を持ちました。

 イェブラツ・スッカ・バルカ鉱山では、視察団は地下1,340メートルの地下坑に潜り、採掘現場を視察しました。労働者には保護衣や保護靴、保護眼鏡、耳栓、ヘッドライト、ヘルメット、自己救命器などの個人保護具が支給され、入山前には飲酒検査も行われていました。しかし、危険は至る所に見られ、例えば、採掘された鉱物の輸送に用いられる電動トロッコは、被覆されずに頭上に伸ばされた電線を通じて動いており、トロッコは労働者とすれすれのところを通り過ぎていくために労働者はトンネルの壁に身を押しつけてやり過ごさなくてはならず、「手を振る時に注意」の標識を付けたケーブルが手の届くところに下がっていました。穿孔や天井の支柱設置から材料の取り扱いや立坑支保工に至る多くの作業がいまだに手作業で行われ、労働者は重い機材を窮屈な姿勢で使っており、過度の騒音、粉塵、湿度、振動にさらされています。

 1週間の視察期間中に2回の死傷事故が発生しましたが、1件はクルィヴィーイ・リーフのすぐ隣の鉱山で起きました。安全面について鉱山労働者が最も頻繁に表明していた懸念の一つは個人用保護具の質の低さに関してであり、例えば、呼吸器が繰り返し再利用され、保守も不十分であるといった点でした。

 視察団は、このILOのプロジェクトが欧州連合の指令及びウクライナが2011年に批准したILOの「1995年の鉱山における安全及び健康条約(第176号)」に沿った労働安全衛生政策の策定と実施に重点を置き、職場レベルで労使が実践的な労働安全衛生措置を実施する能力を強化し、好事例の共有を通じて予防的安全文化を促進することによってウクライナの鉱業の安全衛生状態の改善に有意義な影響を与え、より効果的なリスク評価と労働安全衛生マネジメントシステムの実施を通じて労働災害防止活動を高める助けになることへの期待を示しています。

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 以上はILO中・東欧DWT兼国別事務所の廣瀬賢一社会的保護上級専門官とイリナ・ペクシェヴァILOウクライナ・プロジェクト調整官へのインタビューによってまとめられた2017年7月13日付の英文広報記事の抄訳です。

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