シリア難民危機対応

アラブ地域初の雇い主・職種不特定の就労許可をヨルダンがシリア難民に発行

2017年08月09日

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、ヨルダンには現在、65万7,000人のシリアからの難民が登録されており、その大半が都市部で暮らしていますが、実際の数字は130万人近くに達するとヨルダン政府は見ています。

 ヨルダン政府は2016年にロンドンで開かれたシリア・ドナー会合に、自国の欧州市場への参入改善、長期低利貸付、外国からの投資の増大の約束を受けた見返りとして、難民の合法的な就労の障害を減らし、特定職業へのシリア難民の就労を許すことに同意する盟約を提出しました。政府はこれに従って就労手続きを簡略化し、一定期間、シリア難民に就労許可を無料で発行することに同意しました。政府発表によれば、この結果、就労許可を取得したシリア難民の数は2015年12月に4,000人であったものが、翌年同月には約4万人に増大したとされます。

 このように他のアラブ諸国に先駆けて2016年からシリア難民への就労許可の発行を円滑化しているヨルダンですが、今年6月、同国労働省は期間1年(更新可能)の就労許可を毎年1万件発行することを許す協定をヨルダン労働組合総同盟(GFJTU)と締結しました。通常の就労許可は特定の雇い主と結びつけられており、雇い主が特定の職種について労働者に代わって申請することになっていますが、協定に従ってGFJTUがこのたび発行を開始した一時的な就労許可は、ヨルダンの労働法上、外国人の就労が許されている産業部門の一つである建設業を対象とし、アラブ地域では2011年のシリア危機勃発以来初めてのこととして、雇い主や職種を特定しないものとなっています。また、就労許可申請者は通常、社会保障への加入が求められていますが、この一時的な就労許可の申請者に購入が必要な保険証券は、それより安価な50ヨルダン・ディナール(約8,000円)となっています。

 この合意は英国外務・英連邦省の任意資金協力を受けてILOが実施している2016年ロンドン・シリア会合戦略目標支援プロジェクトを通じてアンマンにあるILO事務所の支援と調整の下で達成されました。ヨルダンに駐在するILOのマハ・カッター・シリア難民危機対応調整官は、難民に発行される就労許可数の増加と申請手続きの緩和が、シリア人労働力の公式(フォーマル)化とより良い労働条件の確保を手助けすることへの期待を示しています。ヨルダンのシリア労働力公式化は難民危機勃発以来のILOとヨルダン政府双方の悲願ですが、政府と社会的パートナーである労使、そしてILOとの数カ月にわたる努力が実を結んだこの新しい許可制度は、アラブ地域では画期的な展開です。ILOに付託された任務は、多数の難民が就労する建設部門を中心に、就労許可取得時に難民が直面する課題を特定するだけでなく、ヨルダン政府が政府、使用者、そしてシリア人労働者の利益にかなう解決策を見つけるのを支援することでした。GFJTUのマゼン・アルマーイタハ会長も、この展開について、「シリアの外国人労働に関する完全なデータベースの提供に加えた労働市場の組織化及び公式化、そしてヨルダン国民の就労機会を脅かすことなく難民の労働市場への参加を規制するために重要な新たな一歩」と評価しています。

 この展開は使用者にも利益をもたらすことになります。新たな就労許可の申請者は認証・品質保証センターを通じて取得できる事前学習認定証書を保有している必要がありますが、この証書は職務要件に合った、適正な技能を有する労働者を見つける助けになります。労働者はまた、社会保障制度への加入によって業務関連負傷に対する補償を受けられるようになります。

 GFJTUとILOは、新たな措置の実施を確保する適切な仕組みを構築においても協力し合うことになりますが、その重要な側面の一つが国内全土にGFJTUセンターを設置することです。センターの職員は許可の申請状況をフォローアップし、労働者が必要書類を取得するのを支援し、地元の役所に申請書を提出し、事前学習認定証書の申請者を登録します。加えて、使用者とシリア人労働者の情報交流を確保するため、知識共有キャンペーンが開始されます。

 2013年にシリア難民とヨルダン、レバノン、トルコ、エジプトの難民受入地域社会を支援する戦略を定めたILOは、ヨルダンでは様々な産業における数多くの雇用創出事業を通じて難民と受入社会の双方の雇用機会と生計手段を広げる活動を実施してきました。ILOはまた、労働規制に沿って特定産業部門における就労許可を発行することによってシリア難民の就労機会及び生計を得る機会の円滑化を図るようヨルダン政府に働きかけてきました。ヨルダンにおけるILOのシリア難民危機対応は、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の不足を減らし、社会・経済政策の主流にディーセント・ワークを据えるための同国の能力強化を目指す、この国におけるILOのディーセント・ワーク国別計画の一環として実施されています。

 最近発表されたILOの報告書『Work permits and employment of Syrian refugees in Jordan: Towards formalising the work of Syrian refugees(ヨルダンにおけるシリア難民の就労許可と雇用:シリア難民の就労公式化に向けて・英語)』は、就労許可がヨルダンで暮らす大多数のシリア難民労働者に安定と安心感を与えることを明らかにしましたが、全体的な労働条件改善のためにはさらなる努力が必要と説いています。

 以上はILOアラブ総局によるアンマン発英文記者発表の抄訳です。