ILO新刊:若者の就労

より良い仕事により多くの若者を就かせる方法

2017年08月10日

 労働市場に加わる若者が今日直面する厄介な課題として、まず働きがいのある人間らしい仕事を見つけ、次にそれを維持するというものがあります。失業率に加えて、非公式(インフォーマル)な臨時雇いの仕事をはじめとした非標準的な雇用形態が再び増えてきており、実際、世界の若者の5人に2人は仕事がないか、働いていても貧しい暮らしを送っています。

 8月12日は国際青少年デーですが、これに先立つ8月10日に発表されたILOの新刊書『Rising to the youth employment challenge: New evidence on key policy issues(若者の就労を巡る課題に立ち向かう:重要な政策事項に関する新たな証拠・英語)』は、増加傾向を示す零細事業の立ち上げからマクロ経済政策の成功に至る若者の就労促進策に関する新たな証拠を分析しています。ILOが近年出している若者の雇用情勢と就労政策に関する一連の刊行物の最新のものに当たるこの報告書は、政府がマクロ経済レベルの活動を通じて、若者の就労を後押しし、失業を減らす効果的な介入を行い得ることを示しています。例えば、大規模な補助金付雇用・訓練計画の導入を通じた公的支出の拡大は、景気低迷期において有用な若者雇用促進政策手段となります。しかし、これが効果的であるためには、国の財政が比較的健全な状態を保ち、景気下降自体が政府の財政均衡を大きく悪化させる前に、景気後退が始まったらただちに財政拡大を実施できる必要があります。

 このような手法の一例として、就労も就学もしていない若者に対する良質の教育、訓練または仕事の提供を目指して2014年に欧州連合(EU)で導入された若者保証計画があります。この計画はその性格上、景気対策であり、若者の無業率が上昇する傾向がある景気低迷期に拡大されます。

 若者を採用する企業に対する補助金を含むこのような計画は、効果的な若者雇用刺激策となる可能性があります。しかしながら、鍵を握るのは設計であり、報告書に含まれる証拠から明確に示されているのは、賃金補助計画が長期的に有効であるためには、若者参加者による公式または非公式な雇用関連技能・職能の習得を促進する要素を組み込むことの重要性です。参加する若者が職務関連能力を育み、特定の作業環境における自らの価値を立証できるまで、事業計画が長く続く必要があります。補助金が企業の目に魅力的に映るよう、十分に寛大な額である必要もあります。効率的であるためには、例えば、長期失業者となる危険性がある若者など、特定の集団に対象を絞る必要もあります。さらに重要なこととして、補助金の対象となる若者や新規採用が現在の労働者を置き換える形で行われることを防止する必要もあります。このような賃金補助金は労働需要が不活発な景気後退期に特に有効です。

 最低賃金が若者の雇用を大幅に減らす可能性が指摘されていますが、一言で言うとそのようなことはなく、証拠を詳しく見ると、圧倒的多数の場合、最低賃金は若者の雇用に全くまたはほとんど否定的な影響を与えません。さらに、雇用保護法制を強化することによって、マイナス効果の可能性を減じることもできます。ここで関連する問題は、規制の多少ではなく、労働市場の様々な機構をいかに効果的に組み合わせるかという点になります。

 証拠分析から得られたもう一つの重要なメッセージは、質の高い自営及び起業家精神の促進に焦点を当てる必要性です。自営業に向かうのは、他の機会がない個人や家族の対応策である場合が多いものの、これは決して一律にマイナスの選択肢ではありません。また、起業家精神計画だけでは若者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進するという課題を満足できないのは明白であるものの、賃金補助や訓練などの他の積極的労働市場計画を補完する有用な策になり得ます。

 高所得国では若者の就労に至る道に、しばしば無償の場合が多いインターンシップや臨時雇いの仕事が介在します。低・中所得国では若者の4人に3人が就く非公式雇用は、公式雇用の労働者には当然の雇用関連の保護や給付、失業給付や年金、健康保険などが適用されません。臨時雇いの仕事や非公式な仕事は、高学歴の若者にとってはより質の高い仕事に至る踏み台となる場合がありますが、とりわけ低学歴の者にとっては、これはしばしば抜け出せない落とし穴となります。報告書は、より賢い労働政策がそのような状況を回避する助けになり得ることを示しています。例えば、積極的労働市場計画は雇用公式化の鍵を握る役割を演じることができ、法に基づく登録を条件とした賃金労働や自営業に対する公的財政支援は、若者と企業の双方にとって公式の仕事を魅力的な選択肢とする可能性があります。

 以上は報告書の著者であるILO若者就労計画のナイル・オヒギンズ上級研究専門官が報告書の内容を紹介する英文論説の抄訳です。