児童労働反対世界デー

やむなく働いた子ども時代 夢は「児童労働なくすこと」

2023年06月12日

私が7歳、兄が8歳のときに働き始めました。タバコの葉の収穫でした。ほかに選択肢はありませんでした。父もタバコ農園で働いていましたが、うちには文房具や衣料品を買う余裕はありませんでした。私たちが働くほかなかったのです。

アルゼンチンで12月から3月はちょうど夏に当たります。その時期が収穫期です。畑に出たり、乾燥機に葉タバコの束を積んだりと何でも手伝いました。よその子どもたちが楽しく遊ぶ中、私と兄は働き通しでした。

家族が食べていくため、そして自分たちが学校に通うためには仕方ないと思っていました。大人になっても同じように畑仕事をするんだということも分かっていました。学校に通うため、金を稼ぐために働きました。

稼いだ金で1年分の学用品と服を買いました。働くことは義務のようなものでした。そうしないと学校に通うのに必要なものは買えなかったでしょうから。

この経験は私の人生に影を落としました。ただ、両親を恨んだり腹を立てたりすることはありませんでした。でも、他の子どもたちと遊んだり、同じ時間を過ごしたりすることはできませんでした。普通だったら送れるはずの少年時代がなかったのです。

私たち兄弟は22歳と23歳になるまで、タバコ農家で働きました。のちに農場を引き継ぎ、自分たちでタバコを生産するようになりました。

タバコ農園を経て労働局へ

子ども時代にタバコ畑で働いていたので、児童労働を余儀なくされる子どもたちの気持ちがよく分かります。同時に、家族が子どもを働かせようとする理由も知っています。

2008年にサルタ州労働局で働き始めました。当時の局長は、労働局のチームに、同州最大のタバコ産地であるレルマ渓谷を調査させようとしていました。未申告労働に加え、児童労働を調べるためでした。

私は今、そのチームのリーダーを務めています。児童労働、タバコ農園の従業員、そして経営者。私はどれも経験しています。子どもたちがどんな場所でどんな仕事をしているのか、実際によく知っています。適任だと思います。

私たちの活動の大部分は、児童労働に関する意識を高め続けること、そして「子どもは働くべきではない」「子どもの健やかな成長を害するようなことはしてはいけない」と地域にメッセージを送ることです。

私たちが直面している問題は、社会全体が、子どもたちが働くことが「普通」だとか「正しい」と考えていることです。決定権のある人々の意識を変えていく必要があります。児童労働が子どもたちにとって決して良いことではないと理解してもらう必要があります。

児童労働防ぐ仕組みづくり

例えば、タバコの収穫期に運営する「子どもセンター」を通じて、児童労働を防ぐようにしました。このセンターは「タバコ産業会議所」がサルタ州政府や他機関と設置したものです。子どもを預けられるので親は預け先を心配せずに働けます。児童労働を防ぐ、優れた成功例の一つだと思います。

また、機械の最新式化に伴って、さまざまなタイプの葉タバコ乾燥機が使われるようになりました。そのような乾燥機は子どもたちが簡単に扱えるものではありません。このような変化もまた、働く子どもの数を減らすことにつながります。

「ILOオフサイド」のプロジェクトを知り、児童労働防止の研修に招かれました。

研修では児童労働が起きている他の産業について学びました。サルタ州の他の地域では、子どもたちは木材産業で働いています。私の地域では葉タバコの栽培ですし、野菜栽培や商業も例外ではありません。児童労働はあらゆるところで起きています。

ILOの研修は仕事にも役立っています。今まで知らなかったことやはっきりと分かっていなかったなことをたくさん学べました。児童労働を見つける・減らす、働いている子どもを保護する。そんな方法や政策について知識を身に付けることができました。

私の住むタバコ栽培地域では、多くの子どもたちが必要な保護も受けられずに働いています。私の夢は児童労働をなくすことです。働く子どもたちがいなくなるだけでなく、子どもやその家族が国や支援機関からのサポートを受ければ、働かなくてすむようになる。それが多くの人の夢だと思います。児童労働が起きるのはそう「せざるを得ない」からです。

手にできなかった「子ども時代」を

取り組みは前進しました。とてもうれしいことですが、まだまだ続けていく必要があります。この問題が議論されるたび、私はいつもそう言います。例えば、ILOの研修で、タバコの収穫期に、子どもセンターを含め、スポーツ施設を充実させるアイデアを出しました。そうすればより多くの子どもたちが集まり、仕事に行かなくなると思ったからです。

私には今2人の子どもがいます。親というのは、自分が手にできなかったものを子どもに与えたいと思うののではないでしょうか。

幼い頃、私は友達と一緒にサッカーボールで遊べませんでした。ほかにも経験できなかったことがたくさんあります。子どもたちにはできる限り子ども時代を楽しんでほしいし、夢をかなえてほしいのです。

子どもであれば誰でも、教育を受けたり、スポーツや芸術、音楽に親しんだりする機会を十分に与えられるべきです。なぜならそれは、子どもたち一人一人の可能性を引き出し、大人へと成長するために必要なものなのですから。


※以上はILOウェブサイトで連載中のVOICESから I was a child labourer, now I work to prevent itを抄訳したものです。