オンライン統計データベースKILM2015年版

ますます高くなる労働者の教育水準、必ずしも適切な就職には結びつかず

2015年11月16日

高学歴労働者と失業リスク時系列グラフ(英語)へのリンク

 ILOは労働力/非労働力/就業/失業者数・率、パートタイム労働者、労働時間、賃金、労働生産性、貧困など、労働市場の状況を示すカギとなる17の指標について「Key Indicators of the Labour Market(主要労働市場指標、略称KILM)」として1999年から随時、改訂・発表していますが、このたび、その第9版をILO統計データベースILOSTATの一部としてオンライン・データベースの形式で発表しました。

 幅広い国の1980年以降得られる最新年までのデータを収録した第9版では、特に教育と労働市場の関係を分析し、労働力に占める初等教育以下の学歴しか持たない人の割合は低下しているのに対し、カナダ、ルクセンブルク、ロシアを筆頭に、データが得られる64カ国中2カ国を除くすべての国で過去15年間に労働力に占める高等教育修了者の割合が増加しているものの、それが必ずしもグローバルなレベルでの失業水準の低下に結びついていないことを示しています。高学歴者の失業の可能性はほとんどの高所得国では低下するものの、低所得国や下位中所得国では逆により低学歴の人々よりも高く、論文をまとめたILO統計局のロシナ・ガンマラノはこれを「高技能者と、得られる仕事でこういった人々の資格や期待にあったものの数とのミスマッチ」を反映するものとし、この問題は対処されないと「経済成長や開発を制限するように作用する」危険性を指摘しています。一方、ILO統計局のスティーブン・カプソス・データ生成・解析ユニット長は、高学歴者はより高い収入、より良い労働条件を享受する傾向があるだけでなく、労働力の教育水準と一国の労働生産性水準の間には強い相関関係があるため、教育水準の向上は「労働者個々人のみならず、国家や全地球レベルでも好ましい展開」と述べています。

教育水準の向上と生産性向上の関連を示す時系列グラフ(英語)へのリンク

 KILMは教育と労働市場の関係を分析するために、教育到達度別の労働力、失業者数・率に加えて、就学も就労も訓練受講もしていない人を意味するニートのデータも用いています。近年ニートの数が増えた国は、キプロス、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインといったように、すべてが世界金融危機の影響が大きい高所得国であることが示されています。一方でブルガリアなど上位中所得国やカンボジアなどの低所得国ではニート比率が最も大きく低下しています。また、例えば若い男性のニート比率が17.3%であるのに対し、若い女性の場合は40%を超えているエジプトのように、得られるデータからは依然として大半の途上国で男女格差が存在することが見て取れます。

 今年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の掲げる17の目標の一つである「持続的かつ包摂的で持続可能な経済成長、生産的な完全雇用、すべての人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進」の目標(目標8)の到達状況を測定するターゲットの一つとして、ニートの若者の割合を大幅に減らすことが提案されていますが、ILO統計局のラファエル・ディエス・デ・メディナ局長は、KILMの指標の多くが持続可能な開発目標の測定に用いられる可能性があることを指摘しています。

 KILMが見出した主な事項にはこの他に以下のようなものがあります。

  • 比較可能な失業率データが得られる112カ国の失業率中央値は2007年の6.4%から2014年には7.2%に上昇。
  • 高所得国の平均的労働者の年間生産高は現在、低所得国の62倍、中所得国の10倍。ただし、過去15年間に生産性の伸びが最も大きかったのは中所得国。
  • 製造業就業者数は高所得国で2000年より520万人減、中所得国では逆に1億9,500万人増。
  • 2015年現在、世界の労働者の72%が中所得国、20%が高所得国、8%が低所得国で就労。
  • KILM第9版は、今回初めて所得階層(高・上位中・下位中・低所得)別労働力規模の推計を出していますが、働いていても1日1人当たり2ドル未満で暮らしている「働く貧困層」は2000~15年の間に4億7,900万人減。このほぼすべてが中所得国における減少。

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 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。