南アジアの煉瓦産業

これまで目につかなかった南アジアの煉瓦工場の問題に力を合わせて取り組むILOと英国の2慈善団体

2017年01月26日

 ネパール政府が受入国となって2017年1月26~27日に同国ポカラで開かれた「児童に対する暴力の終結南アジア・イニシアチブ(SAIEVAC)」のハイレベル地域政策イベントで発表された新刊書は、人間の労働と使役動物の福祉と環境を初めて一緒に取り上げ、南アジアの煉瓦製造産業の課題に光を当てています。

 伝統的な煉瓦製造産業は南アジア全域にわたり都市開発の中心的な柱として、440万~520万人の就業者を擁し、50万頭以上のロバ、ラバ、馬といった家畜を使役していますが、仕事は極めて危険で、汚染物質も大量に排出しています。伝統的な煉瓦工場は、人間や動物の健康だけでなく、環境にも悪影響を及ぼしています。

 さらにまた、南アジアの煉瓦工場で働く労働者の最大68%が債務奴隷または強制労働に陥っていると見られ、5、6歳の幼い子どもが時には家族の付き添いもなく働いている姿を見るのも珍しいことではありません。煉瓦製造には女性も多く従事していますが、とりわけ妊娠時には深刻な健康上のリスクにさらされています。労働者の過酷な労働条件と違法な慣行の横行に輪をかけるものとして、労働者の権利についての知識の欠如、極度の貧困、法・政策環境の弱さが見られます。

 工場内、そして建設現場までの煉瓦の運搬にはロバやラバ、馬が用いられており、その所有者や調教者に収入を提供しています。こういった家畜は煉瓦製造バリューチェーン(価値連鎖)の重要な鎖の一つの輪であるにもかかわらず、これまでのイニシアチブや政策で取り上げられることはほとんどありませんでした。煉瓦工場で働く家畜には栄養価の高いえさやきれいな水が与えられることはなく、過度の荷や働き過ぎ、殴打や不適切な馬具による怪我を負い、一般的に十分な世話は受けていません。

 このような状況の改善を図るため、ILOは英国の二つの慈善団体(ブルック-使役される馬とロバのための行動ドンキー・サンクチュアリ)と協力して、地域の煉瓦工場の可視性を高め、毎日数百万の人々と数十万頭の家畜の労働条件に影響を与えているしばしば違法で有害な慣行に取り組む活動を開始することとしました。三者の協力の成果物である新刊書『Brick by brick: Unveiling the full picture of South Asia's brick kiln industry and building the blocks for change(煉瓦を一つずつ積み上げる:南アジアの煉瓦製造産業の全貌解明と変化のための要素の構築・英語)』は、煉瓦製造産業へのさらなる注目と産業横断的な行動を呼びかけています。

 報告書の共著者の1人であるブルックのデルフィーヌ・バレット広報・提言部長は、南アジアの煉瓦製造産業の複雑さを強調し、人間と動物、そして環境の三つの部門の決定的に重要なつながりを検討するこの報告書が、行動を起こす力のある人々の協同行動を奨励し、煉瓦製造産業の様相一変につながるような重要な会話を始動するきっかけとなることへの期待を示しています。

 1969年から活動を開始し、世界35カ国でロバの苦難を軽減する事業を支援し、既に1万8,800頭以上のロバやラバの世話をしてきたドンキー・サンクチュアリのマイク・ベイカー最高執行責任者(CEO)は、今回のイニシアチブについて、「ロバを含む使役動物の福祉を人道主義及び環境の大義と直接結びつけることのできる信じられないほど貴重で重要な突破口」と評価しています。そして、この報告書から得られた証拠と経験が煉瓦製造産業の将来に影響を与え、現在、この困難な状況下で毎日働いている者たちに持続可能で肯定的な違いをもたらす助けになること、そしてこの問題に対する認識を国際的に高める上での自分たちの活動の重要なツールとなることへの期待を述べています。

 ILOネパール国別事務所のリチャード・ハワード所長は、報告書がとりわけ強制労働と児童労働に関して、煉瓦製造産業で働く全ての労働者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の確保を阻む様々な課題に光を当てていることを紹介し、こういった課題にもかかわらず、「産業の定例的な監視・監督の向上を図り、労働条件の改善及び児童労働・強制労働の撤廃に向けて労働者が団結し交渉するのを支援できる機会」が存在するとして、SAIEVACの会議がこの方向に向けた重要な一歩となることを要望しています。

 南アジア地域協力連合(SAARC)を傘下に置く政府間機関として、南アジアのすべての子どもがあらゆる形態の暴力、虐待、搾取、放置、差別から自由な環境で、自らの権利を享受できる世界の構築を目指して活動を展開しているSAIEVACの今回の会議には、政府、労働組合、国際非政府組織、民間セクターの代表が出席し、国内、地域、そして国際的な意思決定に携わる人々の行動の公約を確保することを目指して様々な問題を検討しました。会議に出席したSAIEVAC参加国政府代表と家畜や環境事項を担当する省庁はまた、煉瓦産業を優先事項とするために講じる活動についての趣意声明を発表しました。

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 以上はILOネパール国別事務所によるカトマンズ発英文記者発表の抄訳です。