1996年の労働監督(船員)勧告(第185号)
1996年10月22日
船員の労働条件及び生活条件の監督に関する勧告(第185号)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百九十六年十月八日にその第八十四回会期として会合し、
前記の会期の議事日程の第一議題である千九百二十六年の労働監督(海員)勧告の改正に関する提案の採択を決定し、
その提案が千九百九十六年の労働監督(船員)条約を補足する勧告の形式をとるべきであることを決定して、
次の勧告(引用に際しては、千九百九十六年の労働監督(船員)勧告と称することができる。)を千九百九十六年十月二十二日に採択する。
Ⅰ 協力及び調整
1 中央調整機関は、船員の労働条件及び生活条件に関係のある公的機関及び他の団体との間における効果的な協力を促進するため適当な措置をとるべきである。
2 監督官、船舶所有者、船員及びそれらの者の団体の間における協力を確保し並びに船員の労働条件及び生活条件を維持し又は改善するため、中央調整機関は、これらの目的を達成するための最善の方法についてこれらの団体の代表と定期的に協議すべきである。このような協議の方法については、中央調整機関が船舶所有者団体及び船員団体と協議を行った後決定すべきである。
Ⅱ 監督の組織
3 中央調整機関並びに船員の労働条件及び生活条件の監督に全部又は一部関係するその他の機関は、それらの機関の任務を遂行するために必要な手段を有すべきである。
4 監督官の数は、その任務の実効的な遂行を確保するために十分なものでなければならず、また、次の事項に十分な考慮を払って決定されるべきである。
(a) 監督官が遂行すべき任務の重要性、特に監督を受けるべき船舶の隻数、船種及び大きさ並びに実施を確保すべき法規の数及び複雑性
(b) 監督官の使用に供される物的手段
(c) 監督が実効的に行われるために必要な実際上の条件
5 船員の労働条件及び生活条件の監督の制度は、監督官が次のことを行うことを認めるべきである。
(a) 現行の法規の規定の及ばない欠陥又は酷使について中央調整機関に対して注意を喚起すること及び法令の改善のための提案を中央調整機関に提出すること。
(b) 昼夜いつでも、自由にかつ予告なしに船舶に乗船し及び関係する事業所に立ち入ること。
6 中央調整機関は、次のことを行うべきである。
(a) 当該機関が船員から直接又はその代表を通じて提示される法規の違反の可能性のある事項に関する情報を秘密のものとして受領することができるようにするための簡易な手続を定めること及び監督官がそのような事項を迅速に調査することができるようにすること。
(b) 船長、乗組員又は船員の代表が必要と認めるときに監督を要請することができるようにすること。
(c) 法規を遵守し並びに船員の労働条件及び生活条件を改善するための最も実効的な方法について、船舶所有者、船員及び関係のある団体に対し専門的な情報及び助言を与えること。
Ⅲ 監督官の地位、任務及び権限
7(1) 監督官は、国内法令により定められた公的機関への募集に関する条件に従い、その任務を遂行するために必要な資格を有しかつ十分な訓練を受けるべきであり、可能な場合には、海事に係る教育を受け又は船員としての経験を有するべきである。監督官は、船員の労働条件及び生活条件並びに英語に関する十分な知識を有するべきである。
(2) このような資格を認定する方法は、中央調整機関が決定すべきである。
8 監督官の雇用期間中、当該監督官に更に適当な訓練が与えられるよう措置がとられるべきである。
9 加盟国は、監督官の作業を補助するため、必要に応じ、正当な資格を有する技術者及び専門家を要請することができるよう必要な措置をとるべきである。
10 監督官は、その人数又は性質のゆえに、実効的な監督を妨げ又は船舶所有者、船員その他の利害関係を有する者との関係において当該監督官の権威若しくは公平を少しでも害するような任務を与えられるべきではない。
11 すべての監督官は、その任務の実効的な遂行に適した便利な場所にある事務所、設備及び交通手段を与えられるべきである。
12(1) 正当な証明書を所持する監督官は、次のことを行う権限を与えられるべきである。
(a) 船長、船員又は他のいずれの者(船舶所有者若しくは船舶所有者の代表を含む。)に対しても、法規の適用に関する事項について、当該者が要求した証人の立合いの下に質問を行うこと。
(b) 法規に従っていることを確認するため、監督を受ける事項に直接関係する帳簿、航海日誌、台帳、証明書その他の書類又は情報の提出を求めること。
(c) 法規により求められる掲示を行わせること。
(d) 使用され又は取り扱われる物品、貨物、飲料水、食糧並びに原料及び材料の見本を分析のため収去すること。
(2) 船舶所有者又は船舶所有者の代表及び適当な場合には船員は、(1) (d)の規定に従い収去される見本について通報を受けるか又は見本が収去される時立ち会うべきである。その見本の量は、監督官により適正に記録されるべきである。
13 監督官は、船舶の監督を開始する際に、船長又は責任者及び、適当な場合には、船員又はその代表に対し、船舶への立入りについて通報すべきである。
14 中央調整機関は、国内法令で定められた場合及び方法により船員に係るいかなる職業上の傷害又は疾病についても通報を受けるべきである。
15 監督官は、
(a) 監督することが求められている運航に対し直接又は間接の利害関係を有することを禁じられるべきである。
(b) 適当な罰則又は懲戒処分に従い、職務上知り得た商業上の秘密、秘密の作業の過程又は個人的な情報をその職を退いた後も漏らすべきではない。
(c) 船員の労働条件及び生活条件に関する危険若しくは欠陥又は法規の違反に関する苦情の出所を秘密のものとして取り扱うべきであり、また、監督がそのような苦情の結果として行われたことを船舶所有者、船舶所有者の代表又は船舶運航者に示唆するべきではない。
(d) 監督を行った後、その裁量により、船舶に乗り組む者の健康及び安全に影響を与え得る欠陥について、船舶所有者、船舶運航者又は船長の注意を直ちに喚起すべきである。
Ⅳ 報告
16 条約第八条2の規定に従って中央調整機関が公表する年次報告は、次の事項を含むべきである。
(a) 船員の労働条件及び生活条件に関連する現行法令の一覧表並びにその報告が関係する年度中に有効となった改正
(b) 条約第二条に規定する監督の制度の組織の詳細
(c) 監督を受けるべき船舶又は事業所並びに実際に監督が行われた船舶及び事業所に関する統計
(d) (a)に規定する法令の対象となる船員に関する統計
(e) 法令に対する違反、科された罰及び船舶の抑留の事例に関する統計及び情報
(f) 船員に係る職業上の傷害及び疾病に関する統計
17 条約第九条に規定する報告は、中央調整機関により定められた方法により作成し及び当該機関により定められた事項を取り扱うべきである。