1995年の鉱山における安全及び健康条約(第176号)
1995年06月22日
鉱山における安全及び健康に関する条約 (第176号)
(日本は未批准、仮訳)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百九十五年六月六日にその第八十二回会期として会合し、
関係のある国際労働条約及び国際労働勧告、特に、千九百五十七年の強制労働廃止条約、千九百六十年の放射線からの保護に関する条約及び千九百六十年の放射線からの保護に関する勧告、千九百六十三年の機械防護条約及び千九百六十三年の機械防護勧告、千九百六十四年の業務災害給付条約及び千九百六十四年の業務災害給付勧告、千九百六十五年の最低年齢(坑内労働)条約及び千九百六十五年の最低年齢(坑内労働)勧告、千九百六十五年の年少者健康診断(坑内労働)条約、千九百七十七年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)条約及び千九百七十七年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)勧告、千九百八十一年の職業上の安全及び健康に関する条約及び千九百八十一年の職業上の安全及び健康に関する勧告、千九百八十五年の職業衛生機関条約及び千九百八十五年の職業衛生機関勧告、千九百八十六年の石綿条約及び千九百八十六年の石綿勧告、千九百八十八年の建設業における安全健康条約及び千九百八十八年の建設業における安全健康勧告、千九百九十年の化学物質条約及び千九百九十年の化学物質勧告並びに千九百九十三年の大規模産業災害防止条約及び千九百九十三年の大規模産業災害防止勧告に留意し、
労働者が情報の提供、訓練並びに鉱業において自己が直面する危険及び危険性に関する安全及び健康に係る措置の作成及び実施に当たって、十分に協議しかつこれらに参加する必要性及び権利を有することを考慮し、
労働者又は公衆に影響を及ぼす死亡事故、傷害又は健康障害若しくは鉱業作業により生ずる環境への悪影響を防止することが望ましいことを認識し、
国際労働機関、世界保健機関、国際原子力機関その他の関係機関と協力することの必要性を考慮し、また、これらの機関が公表した関係のある文書、実施基準、規則及び指針に留意し、
前記の会期の議事日程の第四議題である鉱山における安全及び健康に関する提案の採択を決定し、
その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
次の条約(引用に際しては、千九百九十五年の鉱山における安全及び健康条約と称することができる。)を千九百九十五年六月二十二日に採択する。
第 一 部 定義
第 一 条
1 この条約の適用上、「鉱山」とは、次のものをいう。
(a) 特に次の活動が行われる坑外又は坑内
(i) 地面の物理的攪拌(かくはん)を伴う鉱物(石油及びガスを除く。)の探査
(ii) 鉱物(石油及びガスを除く。)の採掘
(iii) 採掘された物質の処理(破砕、粉砕、濃縮、洗浄等)
(b) (a)の活動において使用されるすべての機械、設備、装置、プラント、建物及び土木構築物
2 この条約の適用上、「使用者」とは、鉱山において一人又は二人以上の労働者を雇用する自然人又は法人をいい、状況により、経営者、主要な請負業者、請負業者又は下請業者をいう。
第 二 部 適用範囲及び適用上の措置
第 二 条
1 この条約は、すべての鉱山について適用する。
2 この条約を批准する加盟国の権限のある機関は、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体との協議の上、
(a) 国内法及び国内慣行に基づいて確保される保護の全体がこの条約の規定の十分な適用による保護に劣らない場合には、一定の種類の鉱山をこの条約又はこの条約の一部の規定の適用から除外することができる。
(b) (a)の規定に従って一定の種類の鉱山について適用を除外する場合には、すべての鉱山について漸進的に適用するための計画を策定する。
3 この条約を批准しかつ2(a)に規定する可能性を援用する加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従って提出するこの条約の適用に関する報告において、その適用を除外する特定の種類の鉱山及びその適用を除外する理由を記載する。
第 三 条
加盟国は、国内事情及び国内慣行に照らして並びに関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体との協議の上、特にこの条約の規定を実施するための措置について、鉱山における安全及び健康に関する一貫した政策を策定し、実施し、及び定期的に検討する。
第 四 条
1 この条約の適用を確保するための措置は、国内法令によって定められる。
2 適当な場合には、1の国内法令は、権限のある機関によって示される次のものによって補足される。
(a) 技術的基準、指針又は実施基準
(b) 国内慣行に適合するその他の適用上の措置
第 五 条
1 前条1に基づく国内法令は、鉱山における安全及び健康に関する種々の側面を監視しかつ規制する権限のある機関を指定する。
2 1の国内法令は、次のことを定める。
(a) 鉱山における安全及び健康の監督
(b) 権限のある機関によって任命された検査官による鉱山の検査
(c) 致命的かつ重大な災害、危険な事故及び鉱山災害について報告し及び調査する手続で国内法令に定めるもの
(d) 災害、職業病及び危険な事故に関する統計の作成及び公表で国内法令に定めるもの
(e) 鉱業活動の停止又は制限の原因となった状態が是正されるまでの間安全及び健康上の理由から鉱業活動を停止し又は制限する権限であって権限のある機関が有するもの
(f) 作業場における安全及び健康に関する事項について協議を受けかつ当該事項に関する措置に参加する労働者及びその代表者の権利の行使を確保するための効果的な手続の設定
3 1の国内法令は、鉱山における爆発物及び発火装置の製造、貯蔵、運送及び使用が権限を有する者の直接的な監督により又はその監督の下で実施されることを定める。
4 1の国内法令は、次のものを定める。
(a) 鉱山における救助、応急医療及び適当な医療施設に関する要件
(b) 石炭鉱山の坑内及び必要がある場合にはその他の鉱山の坑内において、労働者のための適当な自己救命用の呼吸装置を提供しかつ維持する義務
(c) 安全及び健康に対する危険性を除去し又は最小限にするための廃鉱の作業場の安全を確保する保護措置
(d) 採鉱工程において用いられる有害物質及び鉱山で生ずる廃棄物の安全な貯蔵、運送及び処理の要件
(e) 適当な場合には、洗浄、着替え及び食事のための十分に衛生的な便宜及び設備を提供し、かつ、これらを衛生的な状態に維持する義務
5 1の国内法令は、鉱山を管理する使用者が作業の開始前に適切な作業計画が作成され並びに、当該計画に重大な修正がある場合には、これが定期的に最新のものとされ及びその鉱山において利用されることができるよう確保することを定める。
第 三 部 鉱山における予防及び保護のための措置
A 使用者の責任
第 六 条
使用者は、この部に規定する予防及び保護のための措置をとるに当たり、合理的かつ実行可能であるもの並びに良好な慣行及び十分な注意を払うことを考慮して、その危険性を評価し、次の優先順位により処理する。
(a) 危険性を除去すること。
(b) 危険性をその発生源において管理すること。
(c) 安全な作業体制の作成等の方法により危険性を最小限にすること。
(d) 更に危険性がある限りにおいては保護具の使用を定めること。
第 七 条
使用者は、自己の管理の下にある鉱山における安全及び健康に対する危険性を除去し又は最小限にするために必要なすべての措置をとる。特に、使用者は、次の措置をとる。
(a) 安全な作業のための条件及び健全な労働環境が提供されるように、鉱山が設計され及び建設され並びに鉱山に電気、機械及びその他の設備(通信装置を含む。)が備えられることを確保すること。
(b) 労働者が自己又は他の者の安全及び健康が害されることなく自己に与えられた作業を行うことができるように、鉱山が操業され、運営され、維持され及びその操業が停止されることを確保すること。
(c) 人が作業のために出入りする場所の地盤の安定性を維持するための措置をとること。
(d) 実行可能な場合には、坑内の作業場ごとに地表への別個の脱出手段につながる二の出口を設けること。
(e) 労働者がさらされる可能性のある種々の危険を明確にしかつその危険にさらされる程度を評価するための労働環境の監視、評価及び定期的検査を確保すること。
(f) 出入りが認められているすべての坑内の作業場の適切な換気を確保すること。
(g) 特定の危険の影響を受けやすい区域について、安全な作業体制及び労働者の保護を確保するための作業計画及び作業手続を策定し、実施すること。
(h) 火災及び爆発の発生及び拡大を防止し、これらを探知し並びにこれらに対処するために、鉱山作業の性質に適した措置及び予防措置をとること。
(i) 労働者の安全及び健康に対して重大な危険がある場合には、作業が停止され、労働者が安全な場所に退避することを確保すること。
第 八 条
使用者は、合理的に予見することができる産業及び自然の災害に対するそれぞれの鉱山に適した緊急事態対応計画を作成する。
第 九 条
使用者は、労働者が物理的、化学的又は生物学的危険にさらされる場合には、次のことを行う。
(a) 作業に伴う危険及び健康上の危険性並びにこれらを予防し及び保護するための措置について、理解しやすい方法で労働者に通知すること。
(b) これらの危険にさらされることによって生ずる危険性を除去し又は最小限にするために適切な措置をとること。
(c) 災害又は健康障害の危険性(不利な条件にさらされることを含む。)からの適切な保護をその他の手段によって確保することができない場合には、労働者の費用負担なしに適当な保護具、必要な場合における保護衣その他国内法令によって定められる施設を提供しかつ維持すること。
(d) 作業場で傷害又は疾病を被った労働者に応急医療、作業場からの適切な移送手段及び適当な医療施設の利用を提供すること。
第 十 条
使用者は、次のことを確保する。
(a) 安全及び健康に関する事項並びに与えた作業に関して、労働者の費用負担なしに、適切な訓練及び再訓練に関する計画並びに理解しやすい教育を労働者に与えること。
(b) 国内法令に従い、鉱山における安全な作業を確保するために各交代要員に対して適切な監督及び管理を行うこと。
(c) 坑内にいるすべての者の氏名及びこれらの者がいることが予想される場所をいつでも正確に把握することができるような体制を確立すること。
(d) 国内法令によって定められるすべての災害及び危険な事故を調査し及びこれらについて適切な是正措置をとること。
(e) 災害及び危険な事故について、国内法令によって定められる報告を権限のある機関に行うこと。
第 十 一 条
使用者は、職業上の健康に関する一般原則に基づき、かつ、国内法令に従い、鉱業に特有の職業上の健康に対する危険にさらされる労働者の健康に関する定期的な監督が行われることを確保する。
第 十 二 条
鉱山を管理する使用者は、二以上の使用者が同一の鉱山において活動を行う場合には、労働者の安全及び健康に関するすべての措置の実施について協力し、並びに作業上の安全について主たる責任を有する。それぞれの使用者は、このことにより、労働者の安全及び健康に関するすべての措置の実施に対する責任を免除されるものではない。
B 労働者及びその代表者の権利及び義務
第 十 三 条
1 労働者は、第四条の国内法令に基づいて次の権利を有する。
(a) 災害、危険な事故及び危険について、使用者及び権限のある機関に対して報告を行うこと。
(b) 安全及び健康上の理由から懸念がある場合には、検査及び調査が使用者及び権限のある機関により実施されることを要請し及び確保すること。
(c) 安全又は健康に対して影響を及ぼす可能性のある作業場での危険について知り及び告げられること。
(d) 使用者又は権限のある機関が有する労働者の安全又は健康に関する情報を入手すること。
(e) 労働者の安全又は健康に対し合理的に正当化することができる重大な危険があるような事態が生ずる場合には、鉱山のいかなる場所からも移動すること。
(f) 安全及び健康に関する代表者を共同して選出すること。
2 1 (f)に規定する安全及び健康に関する代表者は、国内法令により次の権利を有する。
(a) 作業場における安全及び健康に関するあらゆる側面(必要な場合には、1に規定する権利の行使を含む。)において労働者を代表すること。
(b)(i) 作業場において使用者及び権限のある機関が行う検査及び調査に参加すること。
(ii) 安全及び健康に関する事項を監視し及び調査すること。
(c) 助言者及び独立した専門家に相談すること。
(d) 安全及び健康に関する事項(政策及び手続を含む。)について、適時に使用者と協議すること。
(e) 権限のある機関と協議すること。
(f) 選出された分野に関し災害及び危険な事故に係る通報を受けること。
3 1及び2に規定する権利の行使のための手続は、次のものによって定められる。
(a) 国内法令
(b) 使用者と労働者及びその代表者との間の協議
4 国内法令は、1及び2に規定する権利が差別又は報復なしに行使されることができることを確保する。
第 十 四 条
労働者は、国内法令に従い訓練に応じて次の義務を有する。
(a) 安全及び健康に関する所定の措置を遵守すること。
(b) 自己の安全及び健康並びに作業中の作為又は不作為によって影響を受ける他の者の安全及び健康に対して妥当な注意を払うこと(このために利用に供される保護衣、保護施設及び保護具の適切な手入れ及び使用を含む。)
(c) 自己又は他の者の安全及び健康に対して危険があると確信する状況並びに自ら適切に処理することができない状況について、直ちに直属の監督者に報告すること。
(d) この条約によって課される使用者の義務及び責任が履行されることができるように使用者と協力すること。
C 協力
第 十 五 条
国内法令に従い、使用者と労働者及びその代表者との間の鉱山における安全及び健康を促進するための協力を奨励するための措置をとる。
第 四 部 実施
第 十 六 条
加盟国は、
(a) この条約の効果的な実施を確保するために必要なすべての措置(相当な刑罰及び是正措置の規定を含む。)をとる。
(b) この条約に従ってとる措置の適用を監督するために適当な監督機関を設置し、及び当該監督機関に対してその任務の遂行に必要な資源を提供する。
第 五 部 最終規定
第 十 七 条
この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。
第 十 八 条
1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
第 十 九 条
1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、その後更に十年間拘束を受けるものとし、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。
第 二 十 条
1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。
第 二 十 一 条
国際労働事務局は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。
第 二 十 二 条
国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。
第 二 十 三 条
1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
(a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第十九条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
(b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。
第 二 十 四 条
この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。