1991年の労働条件(旅館及び飲食店)条約(第172号)

1991年06月25日

旅館、飲食店及び類似の事業場における労働条件に関する条約(第172号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百九十一年六月五日にその第七十八回会期として会合し、
 一般的に適用される労働条件に関する基準を定めている国際労働条約及び国際労働勧告が、旅館、飲食店及び類似の事業場における労働者に適用されることを想起し、
 旅館、飲食店及び類似の事業場における労働を特徴づける特有の条件のため、これらの事業場における当該条約及び勧告の適用を改善すること、並びに労働条件、訓練及び職業における向上の見込みを改善することにより、関係労働者が急速に拡大しているこれらの事業場における自己の役割に対応した地位を享受することができるような、かつ、これらの事業場に新たな労働者を引きつけるような特別な基準によって当該条約及び勧告を補足することが望ましいことに留意し、
 団体交渉がこの部門における労働条件を決定するための効果的な手段であることに留意し、
 条約の採択及び団体交渉が、労働者の利益のため、労働条件、職業における向上の見込み及び職業の安定を向上させることを考慮し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である旅館、飲食店及び類似の事業場における労働条件に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百九十一年の労働条件(旅館及び飲食店)条約と称することができる。)を千九百九十一年六月二十五日に採択する。

第 一 条

1 この条約は、次条1の規定に従うことを条件として、次の事業場において雇用される労働者について適用する。
 (a) 宿泊設備を提供する旅館及び類似の事業場
 (b) 食物、飲料又はその双方を提供する飲食店及び類似の事業場
2 1の(a)及び(b)に定める事業場の定義は、加盟国が国内事情に照らし、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、決定する。この条約を批准する加盟国は、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、前段の定義の範囲内にある事業場のうち特定の種類のものを、重要性を有する特別の問題が生ずる場合には、この条約の適用から除外することができる。
3(a) この条約を批准する加盟国は、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、その批准に際して付する宣言において明示する観光の事業を行う他の関連の事業場に、この条約の適用を拡大することができる。
 (b) この条約を批准した加盟国は、その後において、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、国際労働事務局長に対し、観光の事業を行う関連の事業場にこの条約の適用を更に拡大することを宣言により通告することができる。
4 この条約を批准する加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従って提出するこの条約の適用に関する第一回の報告において、2の規定に基づいてこの条約の適用から除外する事業場の種類をその除外の理由並びにその除外について関係のある使用者団体及び労働者団体のそれぞれの見解を付して列記するものとし、その後の報告において、当該事業場に関する自国の法律及び慣行の現況並びにこの条約が当該事業場につきどの程度に実施されているか又は実施されようとしているかを記述する。

第 二 条

1 この条約の適用上、「関係労働者」とは、雇用関係の性質及び期間のいかんを問わず、前条の規定に基づいてこの条約が適用される事業場に雇用される労働者をいう。ただし、加盟国は、国内法、国内事情及び国内慣行に照らし、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上、特定の種類の労働者をこの条約の全部又は一部の規定の適用から除外することができる。
2 この条約を批准する加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従って提出するこの条約の適用に関する第一回の報告において、1の規定に基づいてこの条約の適用から除外する労働者の種類をその除外の理由を付して列記するものとし、その後の報告において、この条約の適用範囲を拡張するために得られた進歩を記載する。

第 三 条

1 加盟国は、関係のある使用者団体及び労働者団体の自主性を十分に尊重し、国内法、国内事情及び国内慣行に適する方法によって、関係労働者の労働条件を改善するための政策を採用し及び適用する。
2 1の政策は、労働者全般について国内で採用されている最低基準(社会保障を受ける権利に関するものを含む。)の適用範囲から関係労働者が除外されないことを確保することを一般的な目的とする。

第 四 条

1 国内法又は国内慣行によって別段の定めがある場合を除くほか、「労働時間」とは、使用者が労働者を使用することができる時間をいう。
2 関係労働者は、国内法及び国内慣行に従って、合理的な通常の労働時間及び超過勤務時間に関する規定の適用を受ける権利を有する。
3 関係労働者は、国内法及び国内慣行に従って、一日当たり及び一週間当たりの合理的な最小限の休息の期間を与えられる。
4 関係労働者は、可能な場合には、個人の生活及び家庭生活を計画的に送ることができるように、勤務計画について十分な事前の通知を受ける。

第 五 条

1 労働者は、公の休日に労働することを要求される場合には、団体交渉により又は国内法若しくは国内慣行に従って決定されたところによって、時間又は報酬の形態による適切な補償を受ける。
2 関係労働者は、団体交渉により又は国内法若しくは国内慣行に従って決定された長さの年次有給休暇を得る権利を有する。
3 関係労働者は、雇用契約が終了する場合又は継続的な勤務期間が完全な年次有給休暇を得るために十分な期間でない場合には、団体交渉により又は国内法若しくは国内慣行に従って決定されたところによって、勤務期間に比例した有給休暇又はそれに代わる賃金の支払を受ける権利を有する。

第 六 条

1 「チップ」とは、顧客が、自己の受けたサービスに対し支払わなければならない金額のほかに、自発的に労働者に与える金額をいう。
2 関係労働者は、チップのいかんを問わず、定期的に支払われる基本的な報酬を受ける。

第 七 条

 職業の売買の慣行が存在する場合には、第一条に定める事業場における当該売買は禁止する。

第 八 条

1 この条約の規定は、国内法令、労働協約、仲裁裁定若しくは司法上の決定により又は国内慣行に適合する他の適当な方法により適用することができる。
2 この条約の規定は、当該規定が、通常、使用者若しくは使用者団体と労働者団体との間の協約において定める事項となっている加盟国又は通常、法以外の方法で実施されている加盟国については、当該協約又は他の方法によって大多数の関係労働者に適用されている場合には、その履行が有効なものとして取り扱われる。

第 九 条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 十 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 一 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、その後更に十年間拘束を受けるものとし、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第 十 ニ 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 三 条

 国際労働事務局は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 十 四 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 十 五 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第十一条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 十 六 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。