1990年の夜業勧告(第178号)

1990年06月26日

夜業に関する勧告(第178号)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百九十年六月六日にその第七十七回会期として会合し、
 その会期の議事日程の第四議題である夜業に関する提案の採択を決定し、
 その提案が千九百九十年の夜業条約を補足する勧告の形式をとるべきであることを決定して、
 次の勧告(引用に際しては、千九百九十年の夜業勧告と称することができる。)を千九百九十年六月二十六日に採択する。

I 一般規定

1 この勧告の適用上、
(a) 「夜業」とは、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上、権限のある機関によって又は労働協約によって決定される七時間以上の継続する間(午前零時から午前五時までの間を含む。)に行われるすべての労働をいう。
(b) 「夜業労働者」とは、自己の職務のために、一定の限度を超える相当多くの時間の夜業に従事しなければならない被用者をいう。この限度は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上、権限のある機関によって又は労働協約によって定められる。
2 この勧告は、農業、牧畜業、漁業、海上運送業及び内水航行の事業のために雇用される者を除くすべての被用者に適用する。
3(1) この勧告の規定は、法令、労働協約、仲裁裁定、判決若しくはこれらの手段の組合せによって又は国内事情及び国内慣行に適する他の方法によって実施することができる。他の手段により実施しない場合には、この勧告の規定は法令によって実施すべきである。
(2) この勧告の規定を法令によって実施する場合には、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と事前に協議すべきである。

II 労働時間及び休息の期間

4(1) 夜業労働者の通常の労働時間は、夜業に従事するいかなる二十四時間においても八時間を超えるべきではない。(ただし、その勤務に単なる出勤若しくは待機の時間が相当多く含まれる場合、代替の勤務計画により異なる時間帯と少なくとも同等の保護が労働者に与えられている場合又は労働協約によって若しくは労働協約がない場合には権限のある機関によって認められている例外的な場合は、この限りでない。)
(2) 夜業労働者の通常の労働時間は、一般的に、関係のある活動又は企業の部門において昼間に同一の条件で行われる同一の労働に従事する労働者の労働時間よりも平均して少ないものであるべきであり、かつ、いかなる場合にも平均してそれらの労働者の労働時間を超えるべきでない。
(3) 夜業労働者は、通常の一週間の労働時間を短縮し及び有給休暇の日数を増加するための一般的な措置について他の労働者と少なくとも同じ程度の利益を受けるべきである。
5(1) 作業は、夜業を含む一日の勤務の前後には夜業労働者による超過勤務をできる限り回避するような方法で編成されるべきである。
(2) 特別の危険又は肉体的若しくは精神的な強い緊張を伴う職業においては、不可抗力又は現実の若しくは急迫した事故の場合を除き、夜業を含む一日の勤務の前後には夜業労働者の超過勤務は行われるべきでない。
6 夜業を伴う交替勤務の場合においては、
(a) 不可抗力又は現実の若しくは急迫した事故の場合を除き、二連続の勤務は行われるべきでない。
(b) 二の勤務の間に少なくとも十一時間の休息の期間ができる限り保障されるべきである。
7 夜業を含む一日の勤務には、労働者が休息し及び食事をすることができるように一又は二以上の休憩を含むべきである。この休憩の計画及びその合計の長さは、夜業の性質により労働者に求められる要求を考慮すべきである。

III 金銭的補償

8(1) 夜業は、一般的に、適切な金銭的補償を伴うべきである。この補償は、昼間に同一の条件で行われる同一の労働に支払われる報酬に対して追加的なものであるべきであり、更に、
(a) 同一の労働又は同一価値の労働について男女同一賃金の原則を尊重すべきである。
(b) 合意により短縮された労働時間に代えることができる。
(2) (1)の補償を決定する場合には、労働時間の短縮の程度を考慮することができる。
9 夜業の金銭的補償が夜業労働者の賃金の通常の要素である場合には、それを年次有給休暇、有給の公の休日及び普通に給与が支払われる休業の報酬の計算並びに社会保障の拠出金及び給付の算定において含むべきである。

IV 安全及び健康

10 使用者及び関係のある労働者の代表者は、職業衛生機関が存在する場合であって、特に夜業が交替制の職員により行われるときは、各種の夜業の編成の形態がもたらす結果について、当該機関と協議することが可能であるべきである。
11 夜業労働者の任務の内容を決定する場合には、夜業の性質並びに環境上の要因及び勤務の編成の形態がもたらす影響を考慮すべきである。有害物質、騒音、振動及び照明水準の要因並びに肉体的又は精神的に強い緊張を伴う勤務の編成の形態に特別の注意を払うべきである。これらの要因及び勤務の編成の形態がもたらす累積する影響は、回避され又は減少させられるべきである。
12 使用者は、夜業についても昼間と同様に職業上の危険に対する同じ水準の保護を維持するために必要な措置をとるべきであり、特に、労働者の孤立をできる限り回避すべきである。

V 社会的な便益

13 夜業労働者が住居と職場との間の移動に費やす時間を制限し又は短縮するための措置、夜業労働者のために追加的な移動の費用を回避し又は減少させるための措置及び夜間に移動する場合の安全を改善するための措置はとられるべきである。これらの措置は、次のことを含むことができる。
(a) 夜業を含む一日の勤務時間の始業時刻及び終業時刻並びにその地方の公共の交通機関の運行時刻を調整すること。
(b) 公共の交通機関が利用可能でない場合には、使用者が夜業労働者のために集団的な交通手段を提供すること。
(c) 適切な交通手段を得られるよう夜業労働者を援助すること。
(d) 追加的な移動の費用に対して適切な補償を支払うこと。
(e) 職場から適当な範囲内において住宅団地を建設すること。
14 夜業労働者の休息の質を改善するための措置をとるべきである。これらの措置は、次のことを含むことができる。
(a) 住居の防音のために夜業労働者に対して助言すること及び適当な場合には援助すること。
(b) 騒音の水準を下げる必要を考慮した住宅団地を建設し及び供給すること。
15 企業内の適当な場所に、適切に設置された休息のための施設を夜業労働者が利用できるようにすべきである。
16 使用者は、夜業に従事する労働者が食物及び飲物を得ることができるように必要な措置をとるべきである。これらの措置は、夜業労働者の必要を満たすような方法で工夫されたものであり、次のことを含むことができる。
(a) 企業内の適当な場所で、夜間の飲食に適した食物及び飲物を入手できるようにすること。
(b) 夜間に、労働者が持参した食物を準備し、調理し及び飲食することができる施設を利用できるようにすること。
17 幼児を保育するための託児所又は他の機関の設置を決定し、その場所を選定し、開設時間を決定するときは、その地方で夜業が行われる程度を考慮すべき要因の一つにすべきである。
18 公の機関、他の機関及び使用者は、労働者の訓練及び再訓練並びに文化的活動、スポーツ活動又はレクリエーション活動を奨励する措置の枠組みの中において、夜業労働者に関する特別の制約を十分に考慮すべきである。

VI その他の措置

19 妊娠中のいずれの時点においても、妊娠が判明した女子の夜業労働者が請求する場合には、実行可能な限り、その労働者を昼間の労働に配置転換すべきである。
20 交替勤務において、夜間の勤務に就く者の構成について決定を行うときには、家族的責任を有する労働者、訓練を受けている労働者及び高齢労働者の特別の事情を考慮すべきである。
21 不可抗力又は現実の若しくは急迫した事故の場合を除き、労働者は夜業を行う必要について合理的な説明を受けるべきである。
22 適当な場合には、夜業労働者が他の労働者と同様に、有給教育休暇を含む訓練機会から利益を受けることができるための措置をとるべきである。
23(1) 夜業に就いて所定の年数を経過した労働者に対して、当該労働者が必要資格を有している昼間の勤務の空席について特別の考慮を払うべきである。
(2) 通常昼間に従事する任務に必要である場合、夜業労働者の訓練を促進することにより、このような配置転換のための準備を行うべきである。
24 夜業労働者としてかなりの年数を経過した労働者に対して自発的な早期の退職又は段階的な退職のための機会が存在する場合には、当該退職の機会について特別の考慮を払うべきである。
25 労働組合又は労働者を代表する任務を有する夜業労働者は、このような任務を有する他の労働者と同様に、適当な条件で当該任務を果たすことができるべきである。夜業に労働者の代表者を配置することに関して決定が行われるときは、労働者を代表する任務を行う必要を考慮すべきである。
26 夜業に関する統計を改善すべきであり、異なった夜業の勤務の編成の形態、特に交替勤務の枠内で行われる場合の形態の影響に関する研究を強化すべきである。
27 可能な場合には、夜業への依存を制限するために科学的及び技術的進展並びに勤務の編成に関する革新を利用すべきである。