1985年の労働統計条約(第160号)
1985年06月25日
労働統計に関する条約(第160号)
(日本は未批准、仮訳)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百八十五年六月七日にその第七十一回会期として会合し、
その会期の議事日程の第五議題である千九百三十八年の賃金労働時間統計条約(第六十三号)の改正に関する提案の採択を決定し、
その提案が国際条約の形式をとるべきであることを考慮して、
次の条約(引用に際しては、千九百八十五年の労働統計条約と称することができる。)を千九百八十五年六月二十五日に採択する。
第 一 部 一般規定
第 一 条
この条約を批准する加盟国は、基本的な労働統計を定期的に収集し、作成し及び公表することを約束する。この統計は、加盟国の資源に従い、次の事項を含むよう漸進的に拡張される。
(a) 経済活動人口、就業、適切な場合には失業及び、可能な場合には顕在的な不完全就業
(b) 詳細な分析のため及び基準値として使用するための経済活動人口の構造及び分布
(c) 平均賃金及び平均労働時間(実労働時間又は支払労働時間)並びに、適当な場合には、時間賃金率及び所定労働時間
(d) 賃金構造及び賃金分布
(e) 労働費用
(f) 消費者物価指数
(g) 世帯支出又は、適当な場合には、家族支出及び、可能な場合には、世帯収入又は、適当な場合には、家族収入
(h) 職業災害及び、可能な場合に限り、職業病
(i) 労働争議
第 二 条
加盟国は、この条約により要求される統計の収集、作成及び公表に使用する概念、定義及び方法を設定又は改正する場合には、国際労働機関の下で設定された最新の基準及び指針を考慮する。
第 三 条
この条約により要求される統計の収集、作成及び公表に使用する概念、定義及び方法を設定又は改正する場合において、代表的な使用者団体及び労働者団体が存在するときは、これらの団体の要求を考慮し、かつ、その協力を確保するため、これらの団体と協議する。
第 四 条
この条約のいかなる規定も、個々の統計上の単位(例えば、個人、世帯、事業所又は企業)に関する情報を何らかの形で開示することとなる資料を公表し又は公開する義務を課するものではない。
第 五 条
この条約を批准する加盟国は、この条約の規定により作成して公表した統計及びその公表に関する情報、特に次のものをできる限り速やかに、国際労働事務局に提供することを約束する。
(a) 使用した公表方法に利用した参考情報(印刷した出版物の場合には、表題及び参照番号並びに、他の様式で公表された資料の場合には、これらと同等の説明)
(b) 種々の統計が利用可能となるような最新の時点又は期間及びこの統計の公表又は発表の日
第 六 条
この条約の規定により統計を収集し及び作成する場合に使用する資料の出所、概念、定義及び方法の詳細な説明については、
(a) 重大な変更を反映するよう作成し及び最新のものにする。
(b) できる限り速やかに国際労働事務局に提供する。
(c) 権限のある国内の機関が公表する。
第 二 部 基本的な労働統計
第 七 条
経済活動人口、就業、適切な場合には失業及び、可能な場合には顕在的な不完全就業に関する現状の統計は、国全体を表すような方法で作成する。
第 八 条
経済活動人口の構造及び分布に関する統計は、詳細な分析のため及び基準値として使用するため、国全体を表すような方法で作成する。
第 九 条
1 平均賃金及び平均労働時間(実労働時間又は支払労働時間)に関する現状の統計は、すべての主要な雇用者の種類及びすべての主要な経済活動部門を対象とし、かつ、国全体を表すような方法で作成する。
2 適当な場合には、時間賃金率及び所定労働時間に関する統計は、主要な経済活動部門における主要な職種又は職種群を対象とし、かつ、国全体を表すような方法で作成する。
第 十 条
賃金構造及び賃金分布に関する統計は、主要な経済活動部門における雇用者を対象として作成する。
第 十 一 条
労働費用に関する統計は、主要な経済活動部門を対象として作成する。可能な場合には、この統計は、同一の範囲の就業及び労働時間(実労働時間又は支払労働時間)に関する数値との整合性を有する。
第 十 二 条
消費者物価指数は、主要な人口集団又は人口全体の消費形態を表す品目の価格における時系列的変化を測定するために算出する。
第 十 三 条
世帯支出又は、適当な場合には、家族支出及び、可能な場合には、世帯収入又は、適当な場合には、家族収入に関する統計は、世帯又は家族のすべての種類及び規模を対象とし、かつ国全体を表すような方法で作成する。
第 十 四 条
1 職業災害に関する統計は、国全体を表すような方法で、かつ、可能な場合には、すべての経済活動部門を対象として作成する。
2 職業病に関する統計は、できる限り、すべての経済活動部門を対象とし、かつ、国全体を表すような方法で作成する。
第 十 五 条
労働争議に関する統計は、国全体を表すような方法で、かつ、可能な場合には、すべての経済活動部門を対象として作成する。
第 三 部 義務の受諾
第 十 六 条
1 この条約を批准する加盟国は、第一部の一般的義務に基づき、第二部の一又は二以上の条項につきこの条約の義務を受諾する。
2 加盟国は、その批准に際し、第二部の条のうちこの条約の義務を受諾するものを指定する。
3 この条約を批准した加盟国は、その後において、国際労働事務局長に対し、第二部の条項のうちその批准に際して指定しなかつた一又は二以上のものにつきこの条約の義務を受諾することを通告することができる。その通告は、通知の日に批准されたものとみなす。
4 この条約を批准した加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従つて提出するこの条約の適用に関する報告において、第二部の条のうち当該加盟国が条約の義務を受諾していないものに定める事項に関する自国の法律及び慣行の現況を並びにこの条約の規定が当該事項についてどの程度に実施されているか又は実施されようとしているかを記載する。
第 十 七 条
1 加盟国は、第二部の条項のうちこの条約の義務を受諾したものに定める統計の範囲を、最初は特定の種類の労働者、経済部門、経済活動部門又は地理的区域に限定することができる。
2 1の規定に従つて統計の範囲を限定する加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従つて提出するこの条約の適用に関する第一回の報告において、その限定が適用される第二部の条を明示してその限定の性質及び理由を記載し並びにその後の報告において、どの程度まで範囲を1にいう特定の種類の労働者、経済部門、経済活動部門又は地理的区域以外の種類の労働者、経済部門、経済活動部門又は地理的区域に拡張することができ又は拡張されようとしているかを記載する。
3 加盟国は、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体との協議の上、この条約が効力を生じた日から一年を経過するごとに、これに続く一箇月の間に国際労働事務局長に通知する宣言によつて、第二部の条項のうちこの条約の義務を受諾したものに定める統計の技術的な範囲に関するその後の限定を採用することができる。この宣言は、登録された日の後一年で効力を生ずる。この限定を採用する加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に従つて提出するこの条約の適用に関する報告において、2に規定する明細を提供する。
第 十 八 条
この条約は、千九百三十八年の賃金労働時間統計条約を改正するものである。
第 四 部 最終条項
第 十 九 条
この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。
第 二 十 条
1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
第 二 十 一 条
1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、その後更に十年間拘束を受けるものとし、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。
3 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から五年を経過した後は、関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体との協議の後、国際労働事務局長に送付する宣言によつて、第二部の一又は二以上の条項についてのこの条約の義務の受諾を撤回することができる。ただし、これらの条の少なくとも一についての義務の受諾の維持を条件とする。その撤回は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
4 この条約を批准した加盟国であつて、3の五年の期間が満了した後一年以内に3に定める撤回の権利を行使しないものは、第二部の条のうち当該加盟国が条約の義務を受諾したものについてその後更に五年間拘束を受けるものとし、五年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの義務の受諾を撤回することができる。
第 二 十 二 条
1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。
第 二 十 三 条
国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。
第 二 十 四 条
国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。
第 二 十 五 条
1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
(a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第二十一条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
(b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。
第 二 十 六 条
この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。