1979年の職業上の安全及び衛生(港湾労働)に関する勧告(第160号)
1979年06月25日
港湾労働における職業上の安全及び衛生に関する勧告(第160号)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十九年六月六日にその第六十五回会期として会合し、
その会期の議事日程の第四議題である千九百三十二年の災害からの保護(港湾労働者)に関する条約(改正)(第三十二号)の改正に関する提案の採択を決定し、
その提案が千九百七十九年の職業上の安全及び衛生(港湾労働)に関する条約を補足する勧告の形式をとるべきであると決定して、
次の勧告(引用に際しては、千九百七十九年の職業上の安全及び衛生(港湾労働)に関する勧告と称することができる。)を千九百七十九年六月二十五日に採択する。
Ⅰ 適用範囲及び定義
1 この勧告の適用上、「港湾労働」とは、船舶の荷積み又は荷卸しの作業の全部又は一部及びそれらに付随する作業をいう。そのような作業の定義は、国内法令又は国内慣行によつて定められるべきである。この定義の設定及び改訂については、関係のある使用者団体及び労働者団体は、協議を受けるべきであり又はその他の方法でこれらに参加すべきである。
2 この勧告の適用上、
(a) 「労働者」とは、港湾労働に従事する者をいう。
(b) 「資格を有する者」とは、一又は二以上の特定の職務の遂行上要求される知識及び経験を有する者であつて、権限のある機関がこのような知識及び経験を有する者として受け入れることができるものをいう。
(c) 「責任を負う者」とは、一又は二以上の特定の職務の遂行について責任を負う者として、場合に応じ、使用者、船長又は用具の所有者によつて指名される者であつて、十分な知識及び経験並びにその職務の適正な遂行のために必要な権限を有するものをいう。
(d) 「権限を与えられた者」とは、使用者、船長又は責任を負う者によつて一又は二以上の特定の任務を担当する権限を与えられた者であつて、必要な技術的知識及び経験を有するものをいう。
(e) 「荷揚用機械」とは、荷をつり、揚げ若しくは卸すために又は荷をつり若しくは支えながらある場所から他の場所へ動かすために、陸上又は船上で使用されるすべての固定式又は移動式の荷役用機械(陸上にある動力式ランプを含む。)をいう。
(f) 「玉掛用具」とは、荷をそれによつて荷揚用機械に取り付け得る用具であつて、機械又は荷の一部を成さないものをいう。
(g) 「通行」には、退出を含む。
(h) 「船舶」とは、軍艦を除くすべての種類の船舶、はしけ又はホーバークラフトをいう。
Ⅱ 一般規定
3 各加盟国は、千九百七十九年の職業上の安全及び衛生(港湾労働)に関する条約を実施するに当たり、次の事項を考慮すべきである。
(a) 政府間海事協議機関の主催の下で採択された関係のある条約、規則及び勧告の規定並びに、特に、千九百七十二年の安全なコンテナーに関する国際条約の規定(随時行われる改正を考慮する。)
(b) 標準化の問題を取り扱う承認された国際機関によつて採択された関係基準
(c) 国際機関の主催の下で採択された内海航行に関する条約、規則及び勧告の関係規定
4 千九百七十九年の職業上の安全及び衛生(港湾労働)に関する条約第四条1の規定に基づく措置を開発するに当たり、各加盟国は、国内事情に照らして適当でありかつ関係があると思われる場合には、国際労働事務局によつて刊行される港湾労働における安全及び衛生に関する実施基準の最新版における技術的提言を考慮すべきである。
5 千九百七十九年の職業上の安全及び衛生(港湾労働)に関する条約第四条1に規定する措置をとるに当たり、各加盟国は、同条約第三部の規定を補足するこの勧告Ⅲの規定を考慮すべきである。
6 職業上の事故及び疾病を防止するため、労働者は、安全な作業手順、職業上の衛生及び、必要な場合には、応急手当の方法及び荷役用機械の安全な操作に関し、十分な指示又は訓練を与えられるべきである。
Ⅲ 技術的措置
7(1) すべての通路は、
(a) 明確に表示されるべきである。
(b) 合理的でありかつ実行可能である限り、進行中の作業に関係のない障害がないように保たれるべきである。
(2) 車両のために使用される通路は、合理的でありかつ実行可能である限り、作業中は一方通行であるべきである。
8(1) 合理的でありかつ実行可能である場合には、通行の手段は、つり下げられる荷がその上を通過しないように設けられるべきである。
(2) 必要な場合には、船舶への通行の手段には、舷(げん)側と至近の埠(ふ)頭との間の水中への労働者の墜落を防止するように適切に固定された安全ネットが取り付けられるべきである。
9 ロールオン・ロールオフ船のランプに使用される結合板は、安全であるように設計されかつ使用されるべきである。
10(1) 適当な高さ及び強度を有する縁材で保護されていないばくろ甲板上のすべてのハッチは、有効に防護され又は覆われるべきである。
(2) すべての甲板間の場所のハッチは、それが開いているときは、適切な高さまで有効に防護されるべきである。
(3) 防護装置は、荷積み又は荷卸しのために必要な場合には、一時的にハッチのいずれの側でも取りはずすことができる。
(4) 技術的理由により、(1)及び(2)の規定を実施することができない場合には、権限を与えられた者が労働者の安全を確保すべきである。
(5) そのための適切な強度を有していないハッチカバーの上には甲板の荷を置くべきではなく、また、そのようなハッチカバーの上を車両が通行すべきではない。
11 船倉の大きさにより必要な場合には、二以上の避難手段が設けられるべきである。
12 荷揚用機械の運転者は、作業を始める前に安全装置の作動を点検すべきである。
13(1) ガソリン駆動の車両又は荷揚用機械は、船倉内で燃料を補給されるべきではなく、また、その他の燃料で駆動する車両又は荷揚用機械は、合理的でありかつ実行可能である限り、労働者の安全を確保するという条件の下でのみ、船倉内で燃料を補給されるべきである。
(2) 合理的でありかつ実行可能である場合には、船倉内においては、空気を汚染しないエンジンが優先的に使用されるべきである。
14 合理的でありかつ実行可能である限り、労働者は、荷繰り機又はグラブが運転されている船倉の部分で労働することを要求されるべきではない。
15 荷揚用機械の新たな部品又は玉掛用具は、錬鉄で製造されるべきではない。
16 熱処理は、資格を有する者の監督の下で、かつ、その指示に従つて実施される場合を除き、玉掛用具について適用すべきではない。
17 あらかじめスリングが取り付けられた荷のスリングを保護するために必要な場合には、適当かつ十分な荷敷が使用されるべきである。
18 許可又は点検がなされていないスリングは、いかなる場合にも、荷にあらかじめ取り付けられるために使用されるべきではない。
19 荷揚用機械の一部を成さないすべての荷揚用ビーム、荷揚用フレーム、真空荷揚装置又は磁気荷揚装置及び百キログラムを超える重量を有する他のすべての玉掛用具は、その自重に関して明確に表示されるべきである。
20 使い捨てのパレット及び類似の使い捨ての装置は、
(a) それが使い捨てであることを示すため、明確に印又はラベルによつて表示されるべきである。
(b) その安全な使用に影響を及ぼすおそれのある欠陥がないものでなければ、使用すべきではない。
(c) 再使用すべきではない。
21 梱(こん)包ワイヤ又は帯によつて緊結されている荷は、当該ワイヤ又は当該帯が十分な強度を有していない限り、それらに挿入されているフック又はその他の装置によつて揚げられ又は卸されるべきではない。
22 貨物コンテナーの上で作業が行われなければならない場合には、事故の危険を最小にするため、あらゆる合理的な措置がとられるべきである。
23(1) 危険な物質は、責任を負う者の監督の下でのみ、取り扱われ、貯蔵され又は積み込まれるべきである。
(2) 危険な物質が取り扱われ、貯蔵され又は積み込まれる場合には、関係のある労働者は、遵守すべき特別な予防措置(密封物からの漏えい又は偶発的な流出の場合にとるべき措置を含む。)に関する適当な情報を与えられるべきである。
24 救急職員は、適切な蘇(そ)生技術及び救出方法に熟達しているべきである。
25 荷揚用機械には、必要であり、合理的でありかつ実行可能である場合には,運転室からの緊急退避の手段を備え付けられるべきである。負傷している又は病気の運転者を更に危険にさらすことなく移動させるための措置がとられるべきである。
26(1) 千九百七十九年の職業上の安全及び衛生(港湾労働)に関する条約第三十六条に規定する健康診断及び調査の結果は、関係のある労働者に通知されるべきである。
(2) 使用者は、同条約第三十九条の規定を留保して情報の機密性が尊重されるという条件の下に、労働者がその遂行する作業に適しているかどうか及び他の者に対して危険となり得るかどうかについて知らされるべきである。
27 千九百七十九年の職業上の安全及び衛生(港湾労働)に関する条約第四十条の規定に従つて提供される施設には、合理的でありかつ実行可能である限り、更衣室を含むべきである。