1978年の労働行政勧告(第158号)
1978年06月28日
労働行政(役割、機能及び組織)に関する勧告(第158号)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十八年六月七日にその第六十四回会期として会合し、
特定の労働行政活動の実施を要求している現存の国際労働条約及び国際労働勧告の規定、特に、千九百四十七年の労働監督条約、千九百六十九年の労働監督(農業)条約及び千九百四十八年の職業安定組織条約の規定を想起し、
労働行政の全般的な制度に関する指針を確立する文書を採択することが望ましいことを考慮し、
千九百六十四年の雇用政策条約及び千九百七十五年の人的資源開発条約の規定を想起し、また、適切な報酬を伴う完全雇用の創出という目標を想起し、労働行政の計画がこの目標の追求を可能にし、かつ、前記の諸条約の目的を実施するものであることの必要を肯定し、
使用者団体及び労働者団体の自治を十分に尊重することの必要を認識し、これに関連して、結社、団結及び団体交渉の権利を保障し、かつ、これらの権利を制限し又はこれらの権利の合法的な行使を妨げるような公の機関による干渉を禁止している現存の国際労働条約及び国際労働勧告、特に、千九百四十八年の結社の自由及び団結権保護条約並びに千九百四十九年の団結権及び団体交渉権条約の規定を想起し、経済的、社会的及び文化的進歩という目的の達成に当たつて使用者団体及び労働者団体が重要な役割を果たすことを考慮し、
前記の会期の議事日程の第四議題である労働行政(役割、機能及び組織)に関する提案の採択を決定し、
その提案が千九百七十八年の労働行政条約を補足する勧告の形式をとるべきであると決定して、
次の勧告(引用に際しては、千九百七十八年の労働行政勧告と称することができる。)を千九百七十八年六月二十六日に採択する。
Ⅰ 一般規定
1 この勧告の適用上、
(a) 「労働行政」とは、国内労働政策の分野における行政活動をいう。
(b) 「労働行政制度」とは、労働行政について責任を負い又は労働行政に従事するすべての行政機関(これらが各省庁であると公の機関(準国家機関及び地域的若しくは地方的機関又はその他の地方分権化された形式の行政を含む。)であるとを問わない。)、並びにそのような機関の活動を調整し、使用者、労働者及びそれぞれの団体との協議並びにこれらの者及び団体の参加を確保するための制度的わく組をいう。
2 加盟国は、国内法令又は国内慣行に従い、労働行政の一定の活動と非政府団体、特に使用者団体及び労働者団体、又は、適当な場合には、使用者及び労働者の代表者に委任し又は委託することができる。
3 加盟国は、その国内労働政策の分野における特定の活動を、国内法令又は国内慣行に従い使用者団体と労働者団体との間の直接的交渉によつて規制される事項とすることができる。
4 各加盟国は、機能及び責任が適切に調整された労働行政の制度をその領域内において組織し及び効果的に運用することを国内事情に適する方法によつて確保すべきである。
Ⅱ 国内労働行政制度の機能
労働基準
5(1) 労働行政制度内における権限のある機関は、使用者団体及び労働者団体との協議の上、国内法令又は国内慣行によつて決定される方法により及びそのような条件に従い、関係法令を含む労働基準の作成、開発、採用、適用及び再検討に積極的に参加すべきである。
(2) 労働行政制度内における権限のある機関は、団体交渉による雇用条件の規制を促進するため、国内法令又は国内慣行に照らし適当である場合には、使用者団体及び労働者団体に対し、その役務を利用し得るようにすべきである。
6 労働行政制度は、労働監督の制度を含むべきである。
労働関係
7 労働行政制度内における権限のある機関は、使用者及び労働者の結社の権利の自由な行使を確保するために必要な措置の決定及び適用に参加すべきである。
8(1) 労働条件及び労働者の生活状態の漸進的な改善を助長し、かつ、団結権及び団体交渉権を尊重する労働関係を促進し、確立し及び維持することを目的とする労働行政の計画があるべきである。
(2) 労働行政制度内における権限のある機関は、使用者団体及び労働者団体との協議に基づいて設定される計画に従い、助言サービスを要請する企業、使用者団体及び労働者団体に対し、当該サービスを提供し又は強化することにより、労働関係の改善を援助すべきである。
9 労働行政制度内における権限のある機関は、自主的交渉のための手続の十分な発達及び利用を促進すべきである。
10 労働行政制度内における権限のある機関は、労働争議の場合には、国内事情に適する調停及びあつ旋の便宜を関係のある使用者団体及び労働者団体との合意の上提供することができるべきである。
雇用
11(1) 労働行政制度内における権限のある機関は、国内雇用政策の作成、実施、調整、監督及び再検討について責任を負うべきであり又これらには参加すべきである。
(2) 国内法令又は国内慣行に従つて決定される労働行政制度の中央機関は、雇用政策の特定の側面に関係する各種の機関及び団体の活動を調整するための適当な制度上の措置に密接に関与すべきであり、又はそのような措置をとることについて責任を負うべきである。
12 労働行政制度内における権限のある機関は、職業安定業務、雇用促進計画及び雇用創出計画、職業指導計画及び職業訓練計画並びに失業給付制度を調整すべきであり又はこれらの調整に参加すべきであり、また、これらの各種の業務、計画及び制度を一般的な雇用政策上の措置の実施と調整すべきであり又はそのような調整に参加すべきである。
13 労働行政制度内における権限のある機関は、雇用政策に関する使用者団体及び労働者団体又は、適当な場合には、使用者及び労働者の代表者との協議並びに雇用政策の実施へのこれらの者又は団体の協力の促進を確保するための方法及び手続の設定又はその促進について責任を負うべきである。
14(1) 労働行政制度内における権限のある機関は、労働力計画について責任を負うべきであり又は、これが可能でない場合には、制度的参加並びに技術的情報及び助言の提供により労働力計画機関の活動に参加すべきである。
(2) 労働行政制度内における権限のある機関は、労働力計画の経済計画との調整及び統合に参加すべきである。
(3) 労働行政制度内における権限のある機関は、適当な場合には公の機関及び公共団体の援助を得て、短期的及び長期的な雇用政策に関する使用者及び労働者の共同的行動を促進すべきである。
15 労働行政制度は、無料の公共職業安定組織を含むべきであり、また、これを効果的に運営すべきである。
16 労働行政制度内における権限のある機関は、国内法令又は国内慣行が認める場合にはいつでも、不完全就業及び失業の対策、雇用の地域的配分の規制又は特定の種類の労働者の雇用の促進及び援助(ひ護雇用計画を含む。)等のために利用し得る公的資金の管理について責任を負い又は分担すべきである。
17 労働行政制度内における権限のある機関は、国内法令又は国内慣行によつて決定される方法及び条件に従い、職業指導及び職業訓練を含む人的資源開発の総合的かつ調和的な政策及び計画の開発に参加すべきである。
労働問題に関する調査
18 労働行政制度は、その社会的目的の達成のため、その重要な機能の一として調査を実施すべきであり、また、他の者による調査を奨励すべきである。
Ⅲ 国内労働行政制度の組織
調整
19 労働省又は国内法令若しくは国内慣行によつて決定される他の類似の機関は、社会政策及び経済政策に関して情報が収集され、意見が検討され、決定が準備されかつ行われ及び実施措置が考案される行政機関及び諮問機関への労働行政制度の適切な参加を確保する措置をとり又は提案すべきである。
20(1) 5から18までの事項に関する権限を有する主要な各労働行政機関は、その活動に関する定期的な情報又は報告を労働省又は19の他の類似の機関並びに使用者団体及び労働者団体に対して提供すべきである。
(2) (1)の情報又は報告は、技術的性質のものであるべきであり、適当な統計を含むべきであり、また、遭遇した問題及び、可能な場合には、達成された成果を労働行政制度の主たる関心分野における現在の傾向及び予知し得る将来の発展の評価を可能にするような方法で示すべきである。
(3) 労働行政制度は、その運営から得ることができる労働問題に関する一般的な性格の情報を評価し、公表しかつ普及すべきである。
(4) 加盟国は、(3)の情報の国際比較可能性を改善するため、国際労働事務局との協議の上、当該情報の公表のための適当な標準の設定を促進するように努めるべきである。
21 国内労働行政制度の機構は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体との協議の上絶えず再検討されるべきである。
財源及び職員
22(1) 労働行政制度に対し、その実効性を増進するために必要な財源及び十分な数の、適当な資格を有する職員を提供するため、適当な措置がとられるべきである。
(2) これに関連して、次の事項に十分な考慮が払われるべきである。
(a) 遂行される任務の重要性
(b) 職員が使用し得る物的手段
(c) 労働行政制度を実効的なものにするため各種の任務の遂行を必要とする実情
23(1) 労働行政制度の職員は、その職務に適した水準の初任訓練及び向上訓練を受けるべきである。労働行政職員がその職業生活を通じてそのような訓練を利用し得るようにするための常設の制度があるべきである。
(2) 特殊な業務に従事する職員は、適当な機関によつて決定される方法で確認される当該業務に必要な特別な資格を有すべきである。
24 経験及び情報の交換の形式並びに共通の初任訓練及び向上訓練の計画及び便宜の形式による特に地域的規模における国際協力により23に規定する訓練のための国内の計画及び便宜を補足することに対し、考慮が払われるべきである。
内部組織
25(1) 労働行政制度は、管理が国内法令により労働行政制度に委託されているそれぞれの主要な労働行政の計画を取り扱う専門的な部局を通常含むべきである。
(2) 例えば、労働条件及び雇用条件に関する基準の作成、労働監督、労働関係、雇用、労働力計画及び人的資源開発、国際労働問題並びに、適当な場合には、社会保障、最低賃金に関する法令及び特殊な種類の労働者に関する問題等の事項のための部局が存在し得る。
現場業務
26(1) 労働行政制度の現場業務の実効的な組織及び運営を確保するため、適当な措置がとられるべきである。
(2) (1)の措置は、特に、
(a) 関係のある代表的な使用者団体及び労働者団体との協議が行われた上、現場業務の場所的配置が各種の地域の必要に対応することを確保すべきである。
(b) 現場業務に対し、その任務の実効的な遂行のため、十分な職員、設備及び交通上の便益を提供すべきである。
(c) 地域により法令が異なつて解釈される可能性を排除するため、現場業務が十分かつ明確な指示を受けることを確保すべきである。