1977年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)勧告(第156号)

1977年06月20日

空気汚染、騒音及び振動に起因する作業環境における職業性の危害からの労働者の保護に関する勧告(第156号)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十七年六月一日にその第六十三回会期として会合し、
 現存の関係のある国際労働条約及び国際労働勧告、特に千九百五十三年の労働者健康保護勧告、千九百五十九年の職業衛生機関勧告、千九百六十年の放射線からの保護に関する条約及び千九百六十年の放射線からの保護に関する勧告、千九百六十三年の機械防護条約及び千九百六十三年の機械防護勧告、千九百六十四年の業務災害給付条約、千九百六十四年の衛生(商業及び事務所)条約及び千九百六十四年の衛生(商業及び事務所)勧告、千九百七十一年のベンゼン条約及び千九百七十一年のベンゼン勧告並びに千九百七十四年の職業がん条約及び千九百七十四年の職業がん勧告の規定に留意し、
 前記の会期の議事日程の第四議題である作業環境(空気汚染、騒音及び振動)に関する提案の採択を決定し、
 その提案が千九百七十七年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)条約を補足する勧告の形式をとるべきであると決定して、
 次の勧告(引用に際しては、千九百七十七年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)勧告と称することができる。)を千九百七十七年六月二十日に採択する。

Ⅰ 適用範囲


 1(1) 千九百七十七年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)条約及びこの勧告は、最大限可能な範囲内で、経済活動のすべての部門について適用すべきである。
  (2) 自営業者に対し、千九百七十七年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)条約及びこの勧告に規定する作業環境における保護と類似の保護を与えるための措置がとられるべきである。

Ⅱ 防止措置及び保護措置


 2(1) 権限のある機関は、使用者の責任で実施される作業環境における空気汚染、騒音及び振動に関する測定の種類、頻度その他の条件を定めるべきである。
  (2) 機械若しくは設備が初めて使用され若しくは重要な変更を受ける場合又は新しい工程が採用される場合には、千九百七十七年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)条約第八条に規定するさらされる限度に関する特別の測定が作業環境において行われるべきである。
 3 使用者は、作業環境における空気汚染、騒音及び振動を測定するために使用される装置を定期的に検査し、保全しかつ校正するための措置をとる義務を負うべきである。
 4 労働者及び(又は)その代表者並びに監督機関は、作業環境の測定の記録並びにそのために使用される器具及び装置の検査、保全及び校正に関する記録を利用し得る機会が与えられるべきである。
 5 健康に有害であり又はその他の点で危険であつて作業環境において空気中に浮遊しやすい物質は、有害性の一層低い物質又は無害な物質でできる限り代替させるべきである。
 6 千九百七十七年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)条約第三条に定義する作業環境における空気汚染、騒音又は振動を伴う工程は、空気汚染、騒音又は振動が一層少ない工程又はこれらを伴わない工程でできる限り代替させるべきである。
 7 権限のある機関は、作業環境における製造、供給若しくは使用が禁止されるべき物質又は特別の防止措置若しくは保護措置の履行を要件とする特別の許可の対象とされるべき物質を決定すべきである。
 8(1) 適当な場合には、権限のある機関は、空気汚染、騒音及び振動に関し、機械及び設備に係る発散水準に関する基準を認可すべきである。
  (2)  (1)の基準は、適当な場合には、次のいずれかの措置によつて達成されるべきである。
    (a) 設計
    (b) 組み込まれた装置
    (c) 設置の際の技術的措置
  (3)  (1)の基準の遵守を確保する義務は、機械又は設備の製造者又は供給者に対して課されるべきである。
 9 最新の技術的知識に照らし8の規定の要件を満たすことができない機械及び設備の製造、供給又は使用は、必要な場合には、他の適当な技術的な又は管理上の保護措置の履行を要件とする権限のある機関による許可の対象とされるべきである。
 10 千九百七十七年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)条約第六条の規定に基づく使用者の義務は、8及び9の規定によつて軽減されるべきではない。
 11 使用者は、有害な物質、粉じん、騒音及び振動の発散に関し、機械及び設備の定期的な検査及び保全を確保すべきである。
 12 権限のある機関は、労働者の健康を保護するために必要な場合には、個人用保護具の認可に関する手続を定めるべきである。
 13 千九百七十七年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)条約第九条(b)の規定を適用するに当たつては、権限のある機関は、適当な場合には、使用者団体及び労働者団体との協議の上、作業組織の適当な制度又は計画(賃金の喪失を伴わない労働時間の短縮を含む。)によつてさらされる程度を減少させることを規定し又は促進すべきである。
 14 作業環境における空気汚染、騒音及び振動の防止及び抑制のための措置を規定するに当たつては、権限のある機関は、国際労働事務局によつて設定される最新の実施基準又は指針、国際労働事務局によつて招集される専門家会議の結論及び他の権威のある機関の情報を考慮すべきである。
 15 作業環境における空気汚染、騒音及び振動の防止及び抑制のための措置を規定するに当たつては、権限のある機関は、作業環境の保護と一般的環境の保護との関係を考慮すべきである。

Ⅲ 労働者の健康管理


 16(1) 千九百七十七年の作業環境(空気汚染、騒音及び振動)条約第十一条に規定する労働者の健康管理には、権限のある機関が決定するところにより、次のものを含むべきである。
    (a) 就業前の健康診断
    (b) 適当な間隔を置いた定期健康診断
    (c) 関係労働者のさらされる程度を検査し及び健康状態を監視するために必要な生物学的検査その他の検査又は調査
    (d) 業務から離れた後の健康診断、生物学的検査その他の検査又は調査。これらは、医学的見地から必要な場合には、定期的にかつ長期にわたり権利として利用することができるべきである。
   (2) 権限のある機関は、労働者が(1)の診断又は検査の結果を利用することができるようにすること及び当該労働者の要求によりその主治医が利用することができるようにすることを要求すべきである。
 17 16に規定する健康管理は、通常、労働時間内に行われるべきであり、また、労働者にとつて無償とされるべきである。
 18(1) 権限のある機関は、16の規定に基づいて得られる医学的情報の記録の制度を開発すべきであり、また、それを運用する方法を決定すべきである。個人に関する身元確認は権限のある機関のみに許されるという条件で、疫学的その他の調査のために利用し得ることを確保するため、そのような記録の適当な期間にわたる保存のための措置がとられるべきである。
   (2)  (1)の記録には、権限のある機関が決定する範囲で、作業環境における空気汚染、騒音及び振動に職業上さらされることに関する情報を含むべきである。
 19 空気汚染、騒音又は振動にさらされる業務への継続的就業が医学的に不適当とされる場合には、関係労働者に対して他の適当な職を与え及び社会保障措置その他の方法によつてその従前の所得を維持するため、国内慣行及び国内事情に適合するあらゆる努力が払われるべきである。
 20 この勧告の実施は、社会保障又は社会保険に関する法令に基づく労働者の権利に不利な影響を及ぼすべきではない。

Ⅳ 訓練、情報及び調査


 21(1) 権限のある機関は、空気汚染、騒音及び振動に起因する作業環境における潜在的な及び現存する職業性の危害の防止及び抑制並びにそのような危害からの保護に関し、すべての関係者の訓練及びそれらの者に対する情報の提供を促進するための措置をとるべきである。
   (2) 作業環境における空気汚染、騒音及び振動に関し、労働者の健康に有害な結果をもたらすおそれのある計画、措置及び決定については、使用者は、事前に、企業における労働者代表に知らせるべきであり、かつ、当該代表と協議すべきである。
   (3) 労働者は、空気汚染、騒音又は振動による危害にさらされるおそれのある業務に就く前に、当該危害、安全措置及び衛生措置並びに医療機関の利用の可能性について、使用者によつて知らされるべきである。
 22(1) 権限のある機関は、使用者団体及び労働者団体との密接な協力の下に、空気汚染、騒音及び振動に起因する作業環境における危害の防止及び抑制の分野における調査を、適当な場合には国際機関及び国内機関の援助を受けて、促進し、援助し及び奨励すべきである。
   (2)すべての関係者は、(1)の調査の目的及び結果について知らされるべきである。
 23 使用者団体及び労働者団体は、空気汚染、騒音及び振動に起因する作業環境における潜在的な及び現存する職業性の危害の防止及び抑制並びにそのような危害からの保護に関する訓練計画及び情報提供計画を実施するための積極的な措置をとるべきである。
 24 企業における労働者代表は、空気汚染、騒音及び振動に起因する作業環境における職業性の危害の防止及び抑制並びにそのような危害からの保護に関し、積極的な役割を果たすための便宜及び必要な時間を、賃金の喪失を伴うことなしに、有すべきである。この目的のため、企業における労働者代表は、自ら選ぶ認められた専門家の援助を求める権利を有すべきである。
 25 健康に有害であり又はその他の点で危険であるおそれのある物質の作業場における利用に関連して、次の事項に関する適当な情報を利用することができることを確保するために必要な措置がとられるべきである。
   (a) 当該物質に直接関係のある検査の結果
   (b) 当該物質が適正に利用される場合に労働者の健康に危険を及ぼさないようにするために必要とされる条件

Ⅴ 適用措置


 26 各加盟国は、
   (a) 法令又は国内慣行及び国内事情に適合するその他の方法により、この勧告を実施するために必要な措置(相当な刑罰の設定を含む。)をとるべきである。
   (b) この勧告の適用について監督するため適当な監督機関を設け又は適切な監督の実施を確保すべきである。
   (c) 国内事情が許す限り速やかに前記のことを行うように努力すべきである。
 27 この勧告を実施するに当たつては、権限のある機関は、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体並びに、適当な場合には、製造者、供給者及び輸入者の団体との協議の上、措置をとるべきである。
 28(1) 認可された基準に従つた機械及び設備の設計、製造及び供給に関するこの勧告の規定は、新たに製造される機械及び設備については直ちに適用されるべきである。
   (2) 現存の機械及び設備の変更については、権限のある機関は、当該機械及び設備の性質を考慮した適当な期限をできる限り速やかに明示すべきである。