1975年の農業従事者団体勧告(第149号)
1975年06月23日
農業従事者団体並びに経済的及び社会的開発におけるその役割に関する勧告(第149号)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十五年六月四日にその第六十回会期として会合し、
世界における農業従事者の重要性により、それらの者の労働条件及び生活状態を永続的かつ効果的に改善するためには、それらの者を経済的及び社会的開発活動に参加させることが緊急であることを認識し、
世界の多くの国、特に開発途上にある国において土地及び労働力の大量が不完全な利用状態にあることに留意し、並びにこのことが、農業従事者に対し、構成員の利益を保護し及び増進することができ、かつ、構成員の経済的及び社会的開発への効果的な寄与を確保することができる自由なかつ自立し得る団体を発展させるためのあらゆる奨励を与えることを緊急のこととしていることに留意し、
そのような団体が世界の各地域における持続する食糧不足の緩和に寄与することができること及び寄与すべきであることを考慮し、
多くの開発途上にある国においては土地改革が農業従事者の労働条件及び生活状態の改善にとつて不可欠の要素であり、したがつて、農業従事者団体がそのような改革の実施に積極的に協力し及び参加すべきであることを認識し、
すべての労働者(農業従事者を含む。)の自由なかつ独立した団体を設立する権利を確認している現存の国際労働条約及び勧告――特に千九百二十一年の結社権(農業)条約、千九百四十八年の結社の自由及び団結権保護条約並びに千九百四十九年の団結権及び団体交渉権条約――の規定並びに農業従事者について適用され、かつ、実施に当たり特に労働者団体の参加を要求している多くの国際労働条約及び勧告の規定を想起し、
土地改革及び農村開発が国際連合及びその専門機関、特に、国際労働機関及び国際連合食糧農業機関の共通の関心事であることに留意し、
次の基準が国際連合食糧農業機関との協力によつて作成されたこと並びに、重複を避けることを目的として、この基準の適用を促進しかつ確保するための同機関及び国際連合との協力が継続されることに留意し、
前記の会期の議事日程の第四議題である農業従事者団体並びに経済的及び社会的開発におけるその役割に関する提案の採択を決定し、
その提案が勧告の形式をとるべきであると決定して、
次の勧告(引用に際しては、千九百七十五年の農業従事者団体勧告と称することができる。)を千九百七十五年六月二十三日に採択する。
Ⅰ 一般規定
1(1) この勧告は、すべての種類の農業従事者団体(農業従事者に限定されない団体であつて農業従事者を代表するものを含む。)について適用する。
(2) 千九百六十六年の協同組合(発展途上にある国)勧告は、その適用範囲内の農業従事者団体について適用する。
2(1) この勧告の適用上、「農業従事者」とは、賃金労働者であるか、(2)の規定に従うことを条件として、小作農、分益農又は小規模自作農等の自営業者であるかを問わず、農村地域において農業、手工業又は関連のある職業に従事するすべての者をいう。
(2) この勧告は、主要な所得を農業から得ており、かつ、家族のみの助力又は臨時的に第三者の助力を得て自ら土地を耕作する小作農、分益農又は小規模自作農であつて、次のいずれにも該当しないものについてのみ適用する。
(a) 労働者を常時使用する者
(b) かなりの数の季節的労働者を使用する者
(c) 分益農又は小作農に土地を耕作させる者
3 すべての種類の農業従事者(賃金労働者であるか自営業者であるかを問わない。)は、事前の認可を受けることなしに、自ら選択する団体を設立し、及びその団体の規約に従うことのみを条件としてこれに加入する権利を有すべきである。
Ⅱ 農業従事者団体の役割
4 千九百五十八年の差別待遇(雇用及び職業)条約において定義されている差別待遇を受けることなく、経済的及び社会的開発並びにそれから生ずる利益に農業従事者が参加することを確保する効果的な手段として、強力なかつ独立した農業従事者団体の自発的な設立及び発展を促進することを、国の農村開発政策の一の目的とすべきである。
5 4の団体は、適当な場合には、次のことを行うことができなければならない。
(a) 例えば、集団としての農業従事者のためにすべての水準における交渉及び協議を行うことにより、それらの者の利益を代表し、増進しかつ擁護すること。
(b) 農村開発計画の策定、実施及び評価に関し並びに国内計画のすべての段階及び水準において、農業従事者を代表すること。
(c) 各種の農業従事者を、それぞれの利益に従い、次の計画の実施の最初の段階から積極的に参加させること。
(i) 農業開発計画(生産、貯蔵、加工、輸送及び販売の技術の改善を含む。)
(ii) 農地改革、入植及び農地開発の計画
(iii) 公共事業、農村工業及び農村手工業の計画
(iv) 農村開発計画(国際連合並びに国際労働機関及び他の専門機関の協力を得て実施される計画を含む。)
(v) 15に規定する情報計画及び教育計画並びに他の活動
(d) 農業従事者が信用、補給、販売及び輸送のサービス並びに技術サービスを利用することを促進し及び確保すること。
(e) 農村地域における一般教育、職業教育、一般訓練及び職業訓練の改善並びに地域開発のための訓練、農業従事者団体の協同組合活動その他の活動のための訓練及び農業従事者団体の管理のための訓練において、積極的な役割を果たすこと。
(f) 農業従事者の労働条件及び生活状態(労働安全及び労働衛生を含む。)の改善に寄与すること。
(g) 社会保障の拡充及び住居、保健、レクリエーション等の分野における基礎的社会サービスの拡充を促進すること。
Ⅲ 農業従事者団体の発展を助長する方法
6 加盟国は、農業従事者団体が経済的及び社会的開発における役割を果たすことができるようにするため、特に次のことを目的として、農業従事者団体を積極的に助長する政策を採用し及び実施すべきである。
(a) 農業従事者団体の設立、発展及び合法的な活動の遂行に対する障害並びに農業従事者団体及びその構成員に対して存在する法令上及び行政上の差別待遇を除去すること。
(b) 農業従事者団体及びその構成員がその他の労働者団体及びその構成員に提供されている職業教育及び職業訓練のための施設と同様の施設を利用し得るようにすること。
(c) 農業従事者団体が、工業労働者又は、適当な場合には、非工業的な他の職業に従事する労働者が受けることができる社会的及び経済的な保護及び給付に相当する保護及び給付を自己の構成員に対しても確保するための政策を遂行することができるようにすること。
7(1) 結社の自由の原則は、十分に尊重されるべきである。農業従事者団体は、独立した、かつ、自発的な性質のものであるべきであり、また、いかなる干渉、強制又は抑圧をも受けるべきではない。
(2) 農業従事者団体による法人格の取得については、3及び(1)の規定の適用を制限するような性質の条件を付すべきではない。
(3) 3及びこの7の規定に従つて享有する権利を行使するに当たつては、農業従事者及びそのそれぞれの団体は、他の個人又は組織化された集団と同様に国内法令を尊重すべきである。
(4) 国内法令は、3及びこの7に規定する保障を阻害するようなものであるべきではなく、また、これを阻害するように適用すべきではない。
A 立法措置及び行政措置
8(1) 加盟国は、農村部門の特殊な事情を考慮し、国内法令が農業従事者団体の設立及び発展を妨げないことを確保すべきである。
(2) 特に、
(a) 特に千九百二十一年の結社権(農業)条約、千九百四十八年の結社の自由及び団結権保護条約並びに千九百四十九年の団結権及び団体交渉権条約に適合した結社権及び団体交渉権の原則は、すべての種類の農業従事者の必要を十分に考慮し、この主題に関する一般法令を農村部門について適用することにより又は特別法令を採用することによつて完全に実施されるべきである。
(b) 関係法令は、農村地域の特別の必要に十分に適合すべきである。例えば、
(1) 構成員数、教育水準及び財源に関する最低基準が人口の稀薄な、教育の不十分な、かつ、貧困な農村地域における団体の発展を妨げることを避けるべきである。
(2) 農業従事者団体のその構成員との接触に関して生ずる問題は、すべての関係者の権利を尊重する方法により、千九百四十八年の結社の自由及び団結権保護条約並びに千九百七十一年の労働者代表条約の規定に従つて処理すべきである。
(3) 関係農業従事者は、農業従事者団体の指導者又は構成員としての地位又は活動に基づく解雇及び追放から効果的に保護されるべきである。
9 農業従事者団体及びその構成員に関する法令の効果的な実施を確保するため、適当な制度(労働監督の形式をとるか特別サービスの形式をとるかその他の形式をとるかを問わない。)が設けられるべきである。
10(1) 農業従事者が自らの団体を設立し及び運営するに当たつて自発性を発揮することが現在の条件の下で困難な場合には、現存の団体は、農業従事者の要請により、その利益に合致する適当な指導及び援助をそれらの者に与えることを奨励されるべきである。
(2) (1)の援助は、必要な場合には、要請により、法律上及び技術上の助言を与える資格及び教育講座を運営する資格を有する者による助言サービスによつて補足することができる。
11 農村地域における労働条件及び生活状態に関するすべての事項について農業従事者団体との効果的な協議及び対話が行われるようにするため、適当な措置がとられるべきである。
12(1) 農業従事者団体は、経済社会計画及び農村地域の経済的、社会的又は文化的開発に関するその他の一般的措置の策定及び、適当な場合には、実施に関連し、企画の手続及び法定の委員会、開発機関、経済社会審議会等の機関に参与すべきである。
(2) 特に、農業従事者団体が農地改革計画の策定、実施及び評価に効果的に参加し得るようにするため、適当な措置がとられるべきである。
13 加盟国は、農業従事者団体、使用者、使用者団体及び権限のある機関の間の接触を促進する手続の採用及び機関の設置を奨励すべきである。
B 広報
14 特に権限のある機関は、次の事項を促進するための措置をとるべきである。
(a) 農業従事者団体が国民所得の増加及びその分配の改善、農村部門における生産的なかつ有償の雇用機会の増加、各種の農業従事者の教育及び訓練の一般的な水準の向上並びに農村地域における一般的な労働条件及び生活状態の改善に対してなし得る寄与に関する中央及び地方の機関その他の機関、農業使用者、地主等の直接の関係者の理解
(b) 農村及び都市の開発につき適当な均衡を維持することが重要であること並びに、そのような均衡の確保に寄与するものとして、農業従事者団体の発展を促進することが望ましいことに関する一般大衆(特に経済の非農業部門を含む。)の理解
15 14の措置は、次の事項を含むことができる。
(a) 必要に応じて行使することができるように権利に関する十分かつ実用的な情報を特に農業従事者に与えるための大衆広報及び教育運動
(b) ラジオ、テレビ及び映画の番組並びに地方紙及び全国紙の定期的な記事であつて、農村地域における生活状態及び労働条件を描写し並びに農業従事者団体の目的及び活動の成果を説明するもの
(c) 各種の農業従事者、使用者、地主、他の部門の住民及び地方の機関の代表者が参加するセミナー及び会合の地方における組織化
(d) ジャーナリスト、工業又は商業における使用者及び労働者の代表者、教師が同伴する大学生その他の学生並びに各種の部門の住民の他の代表者による農村地域の見学の組織化
(e) 農業生産の問題及び農業従事者の生活を適切に反映した各種類及び各水準の学校のための適当な教科課程の作成
C 教育及び訓練
16 農業従事者団体の健全な発展並びに経済的及び社会的開発におけるその十分な役割を速やかに果たすことを確保するため、特に権限のある機関は、次の措置をとるべきである。
(a) 農業従事者団体の指導者及び構成員に対し、次の事項に関する知識を与えること。
(i) 農業従事者団体の活動に直接に関係がある問題、特に結社権に関する国内法令及び国際基準
(ii) 農業従事者団体の設立及び運営の基本原則
(iii) 国の経済的及び社会的開発の一部としての農村開発に関する問題(農業生産、手工業生産、貯蔵、加工、輸送、販売及び取引を含む。)
(iv) 各種の水準における国内計画の原則及び技術
(v) 国際連合、国際労働機関又は他の専門機関によつて出版され又は確立された農業従事者の教育及び訓練を目的とする訓練手引書及び訓練計画
(b) 農業従事者がその団体を発展させ及び自己の権利を理解すること並びに農村開発に積極的に参加することが一層よくできるようにするため、一般的、技術的、経済的及び社会的分野に関する農業従事者の教育を改善し及び促進すること。文盲の労働者又は文盲に近い労働者の訓練であつて、それらの者の活動の実際的な拡大と結びついた識字計画によるものに対して特別の注意が払われるべきである。
(c) 農村社会において女子が果たし得る役割又は果たすべき役割に関する計画を女子及び男子が均等な利用の機会を有する一般的な教育及び訓練の計画に統合して推進すること。
(d) 例えば、農業従事者団体が、経済的自立を通じてその独立性を強化するとともに、その構成員の必要を直接満たすことを可能にする協同組合事業及び適当な他の形態の事業の発展を農業従事者の教育家が援助することができるようにするため、特に農業従事者の教育家に対する訓練を提供すること。
(e) 一般的に農村の青少年の向上を目的とする計画を支持すること。
17(1) 16に規定する訓練及び教育を提供する効果的な手段として、国内事情及び地方の事情並びに各種の農業従事者の社会的、経済的及び文化的必要(女子及び青少年の特別の必要を含む。)に特に適合した労働者教育計画又は成人教育計画を策定し及び適用すべきである。
(2) (1)の計画については、それらの分野における特別の知識及び経験にかんがみ、労働組合運動及び農業従事者を代表する現存の団体をそれらの計画の策定及び実施に密接に参画させることができる。
D 財政援助及び物的援助
18(1) 特に発展の初期の段階において、例えば、教育計画及び訓練計画の実施を助けるため、財政援助又は物的援助を必要とすると考える場合並びにそのような援助を求めかつ取得する場合には、農業従事者団体は、当該団体及びその構成員の独立及び利益を十分に尊重してそのような援助を受けるべきである。そのような援助は、農業従事者団体の財源を確保するに当たり、農業従事者の自発性及び努力を補足するものであるべきである。
(2) (1)の原則は、財政援助及び物的援助のすべての場合(そのような援助を自ら与えることが加盟国の政策である場合を含む。)について適用する。