1974年の職業がん勧告(第147号)
1974年06月24日
がん原性物質及び因子による職業性障害の防止及び管理に関する勧告(第147号)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十四年六月五日にその第五十九回会期として会合し、
千九百六十年の放射線からの保護に関する条約及び勧告並びに千九百七十一年のベンゼン条約及び勧告の規定に留意し、
がん原性物質又は因子からの保護に関する国際的な基準を確立することが望ましいことを考慮し、
他の国際機関、特に、国際労働機関が協力している世界保健機関及び国際がん研究機関の関連のある事業を考慮に入れ、
前記の会期の議事日程の第五議題であるがん原性物質及び因子による職業性障害の管理及び防止に関する提案の採択を決定し、
その提案が勧告の形式をとるべきであると決定して、
次の勧告(引用に際しては、千九百七十四年の職業がん勧告と称することができる。)を千九百七十四年六月二十四日に採択する。
Ⅰ 一般規定
1 労働者が就業中にさらされるがん原性物質及び因子が非がん原性物質若しくは因子又は有害性の比較的少ない物質若しくは因子で代替されるようにあらゆる努力が払われるべきであり、代替の物質又は因子の選定に当たつては、これらの発がん性、毒性その他の特性に考慮が払われるべきである。
2 がん原性物質又は因子にさらされる労働者の数並びにさらされる期間及び程度は、安全と両立する限りにおいて最小限に減少させるべきである。
3(1) 権限のある機関は、がん原性物質又は因子にさらされる危険から労働者を保護するためにとるべき措置を定めるべきである。
(2) 権限のある機関は、国際労働事務局によつて設定される実施基準又は指針、国際労働事務局が招集する専門家会議の結論及び他の権威のある機関の情報を考慮に入れて、定める措置を最新のものとしておくべきである。
4(1) 使用者は、生産物、中間生産物、副産物、廃棄物その他の形態でのがん原性物質又は因子の生成、特にこれらの作業環境への拡散の原因とならない作業工程を用いるようにあらゆる努力を払うべきである。
(2) 使用者は、がん原性物質又は因子を完全に排除することができない場合には、労働者及びその団体と協議して及び権威のある筋(労働衛生機関を含む。)からの助言に照らして、がん原性物質若しくは因子にさらされないようにするため又はそれらにさらされる者の数並びにさらされる期間及び程度を最小限に減少させるためにあらゆる適当な手段をとるべきである。
(3) 使用者は、権限のある機関が定める場合については、作業環境においてがん原性物質又は因子にさらされる期間及び程度を組織的に監視するための措置をとるべきである。
(4) がん原性物質又は因子を運搬又は貯蔵する場合には、漏えい又は汚染を防止するためにあらゆる適当な措置がとられるべきである。
5 がん原性物質又は因子にさらされるおそれのある職場に居合わせる労働者及び他の者は、定められた安全手順に従うべきであり、それらの者又はそれらの者以外の者を保護するために提供されたすべての用具を適切に使用すべきである。
Ⅱ 予防措置
6 権限のある機関は、がん原性物質及び因子であつて、職業上それらにさらされることが禁止され又は許可若しくは管理の対象とされるもの及びこの勧告の他の規定の適用を受けるものを定期的に決定すべきである。
7 権限のある機関は、6にいう決定を行うに当たり、国際労働事務局によつて設定される実施基準又は指針及び国際労働事務局が招集する専門家会議の結論に含まれている最新の情報並びに他の権威のある機関の情報を考慮すべきである。
8 権限のある機関は、次の事項を個別に明記する証明書を発行することにより禁止の適用除外を認めることができる。
(a) 適用すべき技術的措置、衛生上の措置及び個人保護措置
(b) 行うべき医学的管理その他の検査又は調査
(c) 維持すべき記録
(d) 当該物質又は因子にさらされることを管理する任務を有する者について必要とされる専門的資格
9(1) 権限のある機関は、許可又は管理の対象となる物質及び因子につき、
(a) 特に代替生産物又は代替方法の有無並びに適用すべき技術的措置、衛生上の措置及び個人保護措置並びに当該物質又は因子にさらされる業務への就業前、就業の期間中及び就業の期間の経過後に行うべき医学的管理その他の検査又は調査に関し、必要な助言を得るべきである。
(b) 適当な措置をとることを求めるべきである。
(2) 権限のある機関は、更に、当該物質又は因子にさらされる程度を決定するための基準を確立すべきであり、適当な場合には、必要とされる技術的予防措置に関連して作業環境の監視のための指標としての水準を規定すべきである。
10 権限のある機関は、この部の規定に従つて行われるがん原性物質及び因子に関する決定を最新のものとしておくべきである。
Ⅲ 労働者の健康管理
11 法令又は国内慣行及び国内事情に適合するその他の方法により、特定のがん原性物質又は因子にさらされる業務に従事しているすべての労働者が適当な場合には次のものを受けるための措置がとられるべきである。
(a) 就業前の健康診断
(b) 適当な間隔での定期健康診断
(c) 職業性障害に関しそれらの労働者ががん原性物質又は因子にさらされた程度を評価し、かつ、それらの労働者の健康状態を監視するために必要な生物学的その他の検査及び調査
12 権限のある機関は、労働者が11にいう業務から離れた後も引き続き適切な健康診断又は生物学的その他の検査若しくは調査を受けられるように措置がとられることを確保すべきである。
13 11及び12に規定する健康診断、検査及び調査は、できる限り労働時間中に行われるべきであり、かつ、労働者に対し費用を負担させるべきではない。
14 この勧告に従つてとられた措置の結果として労働者をその通常の業務中に引き続きがん原性物質又は因子にさらすことが適当でない場合には、当該労働者に対し他の適当な職業を提供するためにあらゆる合理的な努力が払われるべきである。
15(1) 権限のある機関は、実行可能な場合には、できる限り速やかに、個々の使用者及び労働者の代表者の協力を得て、次のものを含む職業がんの予防及び管理のための制度を創設しかつ維持すべきである。
(a) 記録の創設、維持、保存及び譲渡
(b) 情報交換
(2) (1)の記録及び情報交換の制度を創設するに当たつては、国際的及び国内的な団体(使用者団体及び労働者団体を含む。)並びに個々の使用者によつて提供される援助に対し考慮が払われるべきである。
(3) 企業の閉鎖の場合には、この15の規定に従つて保有している記録及び情報は、権限のある機関の指示に従つて取り扱われるべきである。
(4) 権限のある機関が(1)の記録及び情報に関する制度を創設していない国においては、使用者は、労働者の代表者と協議して、この15の規定の目標を達成するためにあらゆる努力を払うべきである。
Ⅳ 情報及び教育
16(1) 権限のある機関は、適当な場合には国際的及び国内的な団体(使用者団体及び労働者団体を含む。)の援助を得て疫学的その他の研究を促進し、かつ、職業がんの危険に関する情報を収集し普及すべきである。
(2) 権限のある機関は、物質及び因子の発がん性を判定するための基準の確立に努めるべきである。
17 権限のある機関は、職業がんを引き起こすおそれのある物質及び因子に関する使用者及び労働者の双方のための適当な教育用の手引きを作成すべきである。
18 使用者は、企業内に取り入れられた物質若しくは因子又は取り入れられることとなる物質若しくは因子に関して生じ得るがんによる障害に関する情報を特に権限のある機関から求めるべきである。発がんの可能性があると考えられるときは、使用者は、権限のある機関と協議して、実施すべき追加の研究を決定すべきである。
19 使用者は、物質又は因子が発がん性のものである場合には、さらされるおそれのあるすべての労働者に対する生じ得る危険についての適当な掲示を職場に設けることを確保すべきである。
20 使用者は、その労働者に対し、就業前に及びその後定期的に並びに新しいがん原性物質又は因子を取り入れる際に、がん原性物質及び因子にさらされる危険並びにとるべき措置について指示すべきである。
21 使用者団体及び労働者団体は、職業がんによる障害に関する情報及び教育についての計画を実施するために積極的な措置をとるべきであり、かつ、その構成員に対し防止及び管理についての計画に全面的に参加するよう奨励すべきである。
Ⅴ 適用措置
22 各加盟国は、
(a) 法令又は国内慣行及び国内事情に適合したその他の方法により、この勧告の規定を実施するために必要な措置(相当な刑罰に関する規定を含む。)をとるべきである。
(b) 国内慣行に従つて、この勧告に規定する事項を遵守する義務を負う機関又は者を指定すべきである。
(c) この勧告の規定の適用について監督するため適当な監督機関を設け、又は適切な監督の実施を確保すべきである。
23 権限のある機関は、この勧告の規定の適用に当たつては、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議すべきである。