1971年のベンゼン条約(第136号)

1971年06月23日

ベンゼンから生ずる中毒の危害に対する保護に関する条約(第136号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十一年六月二日にその第五十六回会期として会合し、
 その会期の議事日程の第六議題であるベンゼンから生ずる危害に対する保護に関する提案の採択を決定し、
 その提案が国際条約の形式をとるべきであると決定して、
 次の条約(引用に際しては、千九百七十一年のベンゼン条約と称することができる。)を千九百七十一年六月二十三日に採択する。

第 一 条

 この条約は、労働者を次のものにさらすすべての業務について適用する。
 (a) 芳香族炭化水素ベンゼン(C6H6)(以下「ベンゼン」という。)
 (b) ベンゼン含有量が容積で一パーセントをこえる製品(以下「ベンゼンを含有する製品」という。)

第 二 条

1 無害な又は有害度の一層少ない代替製品を利用することができる場合には、ベンゼン又はベンゼンを含有する製品の代りにそれらの代替製品を使用する。
2 1の規定は、次のものについては適用しない。
 (a) ベンゼンの生産
 (b) 化学的合成におけるベンゼンの使用
 (c) 原動機用燃料におけるベンゼンの使用
 (d) 研究所で行なわれる分析又は研究の作業

第 三 条

1 各国の権限のある機関は、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体が存在するときはそれらの団体と協議のうえ決定される条件で、かつ、そのように決定される期間に限り、第一条(b)に定める百分率及び前条1の規定に対する一時的例外を認めることができる。
2 1の場合には、当該加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に基づいて提出するこの条約の適用に関する報告において、1に規定する一時的例外に関する国内の法律及び慣行の現状並びにこの条約を完全に適用するために行なわれた進歩を記載する。
3 理事会は、この条約が初めて効力を生じた日から三年を経過した後、1及び2の規定の適用に関する特別報告であつて理事会がこの問題に関する追加的措置として適当であると考える提案を含むものを総会に提出する。

第 四 条

1 ベンゼン及びベンゼンを含有する製品の使用は、国内法令で定める一定の作業工程においては禁止する。
2 1の禁止は、工程が密閉方式で実施される場合又は同等に安全なその他の作業方法がある場合を除くほか、少なくとも、溶剤又は希釈剤としてのベンゼン及びベンゼンを含有する製品についても適用する。

第 五 条

 ベンゼン又はベンゼンを含有する製品にさらされる労働者の効果的な保護を確保するため、労働衛生措置及び技術的措置をとる。

第 六 条

1 ベンゼン又はベンゼンを含有する製品を製造し、取り扱い又は使用する場所では、ベンゼンの蒸気が就業場所の空気中に発散することを防止するためにあらゆる必要な措置をとる。
2 労働者がベンゼン又はベンゼンを含有する製品にさらされる場合には、使用者は、就業場所の空気中のベンゼンの濃度が、最大値において百万分の二十五(一立方メートル当たり八十ミリグラム)をこえない水準に権限のある機関が定める最大限度をこえないことを確保する。
3 権限のある機関は、就業場所の空気中のベンゼンの濃度の測定方法に関する指示を行なう。

第 七 条

1 ベンゼン又はベンゼンを含有する製品の使用を伴う作業工程は、実行可能な限り密閉方式で行なう。
2 作業工程を密閉方式で行なうことが実行可能でない場合には、ベンゼン又はベンゼンを含有する製品を使用する作業場所に、ベンゼンの蒸気を労働者の健康の保護に必要な程度まで除去するための有効な施設を設ける。

第 八 条

1 液体ベンゼン又はベンゼンを含有する液体製品が皮膚に付着するおそれのある労働者に対しては、皮膚を通してベンゼンを吸収する危険に対する適当な個人用保護具を支給する。
2 特別の理由により、就業場所の空気中のベンゼンの濃度が第六条2に定める最大限度をこえる場合にそれにさらされる労働者に対しては、ベンゼンの蒸気を吸入する危険に対する適当な個人用保護具を支給する。ベンゼンにさらされる期間は、できる限り制限する。

第 九 条

1 ベンゼン又はベンゼンを含有する製品にさらされる作業工程に就業する労働者は、次の健康診断を受ける。
 (a) 就業の適格性に関する完全な就業前健康診断(血液検査を含む。)
 (b) 国内法令で定める間隔で行なわれる定期健康診断。その健康診断には、生物学的検査(血液検査を含む。)が含まれる。
2 各国の権限のある機関は、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体が存在するときはそれらの団体と協議のうえ、特定の種類の労働者について1の義務に対する例外を認めることができる。

第 十 条

1 前条1の健康診断は、
 (a) 権限のある機関によつて承認された資格のある医師の責任の下に、必要に応じて能力のある研究機関の援助を得て行なう。
 (b) 適当な方法で証明する。
2 1にいう健康診断は、労働者に費用を負担させてはならない。

第 十 一 条

1 妊娠していることが医学的に証明された女子及び哺育(ほいく)期間中の母親は、ベンゼン又はベンゼンを含有する製品にさらされる作業工程に就業させてはならない。
2 十八歳未満の年少者は、ベンゼン又はベンゼンを含有する製品にさらされる作業工程に就業させてはならない。ただし、この禁止は、適当な技術的及び医学的監督の下で教育又は訓練を受けている年少者については適用する必要がない。

第 十 二 条

 ベンゼン又はベンゼンを含有する製品を入れるいかなる容器にも、明りように、「ベンゼン」という語を記載し、かつ、危険を表わす必要な表示を付する。

第 十 三 条

 各加盟国は、ベンゼン又はベンゼンを含有する製品にさらされるすべての労働者が、健康を保護し及び事故を防止するための措置並びに中毒の証拠が現われた場合の適当な措置について適切な指導を受けるように、適当な措置をとる。

第 十 四 条

 この条約を批准する各加盟国は、次のことを行なう。
 (a) 法令により又は国内慣行及び国内事情に適したその他の方法により、この条約を実施するために必要な措置をとること。
 (b) 国内慣行に従い、この条約を遵守する義務を有する者を指定すること。
 (c) この条約の適用を監督するために適当な監督機関を設け、又は適当な監督が実施されていることを確認すること。

第 十 五 条

 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第 十 六 条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第 十 七 条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。

第 十 八 条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第 十 九 条

 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第 二 十 条

 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第 二 十 一 条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第十七条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第 二 十 二 条

 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。