1970年の職業訓練(船員)勧告(第137号)
1970年10月28日
船員の職業訓練に関する勧告 (第137号)
| 国際労働機関の総会は、国際労働事務局の理事会によりジュネーヴに招集されて、二千二十一年六月十八日にその第百九回会期として会合し、八本の国際労働条約の廃止並びに十本の国際労働条約及び十一本の国際労働勧告の撤回に関する提案を検討し、二千二十一年六月十八日に、千九百七十年の職業訓練(船員)勧告(第百三十七号)の撤回を決定する。国際労働事務局長は、この本文書撤回の決定を、国際労働機関の全加盟国及び国際連合事務総長に通知する。この決定の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。 |
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十年十月十四日にその第五十五回会期として会合し、
その会期の議事日程の第六議題である船員の職業訓練に関する提案の採択を決定し、
その提案が勧告の形式をとるべきであることを決定して、
次の勧告(引用に際しては、「千九百七十年の職業訓練(船員)勧告」と称することができる。)を千九百七十年十月二十八日に採択する。
Ⅰ 適用範囲
1(1) この勧告は、営利のための貨物若しくは旅客の運送、訓練又は科学的調査に従事する公有又は私有の海洋航行船舶内で労働する者を養成するために計画されるすべての訓練について適用する。船舶が海洋航行船舶とみなされる場合は、国内事情に従い、国内法令、仲裁裁定又は労働協約で定める。
(2) この勧告は、甲板部、機関部、無線部若しくはまかない部に属する者又は船舶員の職務の遂行のための訓練について適用する。この勧告は、漁船員については適用しない。
Ⅱ 訓練の目的
2 次のことを船員の職業訓練に関する政策の基本的目的とすべきである。
(a) 船員の教育上の必要並びに国の経済的及び社会的利害を考慮に入れて、海運業の能率並びに船員の専門的能力及び素質の維持及び向上を図ること。
(b) 傷害の危険を減少させるため、海上及び港における商船内の災害防止基準の維持及び改善を図ること。
(c) 十分な数の適格者が商船船員となるように奨励すること。
(d) 新規船員に対する十分な養成訓練が、できる限り陸上で、それが不可能である場合には船内で行なわれることを確保すること。
(e) 各種の職種及び職級に関する海運業の現在及び将来の労働力需要に適合する訓練及び再訓練の施設を提供すること。
(f) 操船面、航海面及び安全面における技術的発展がその実効をあげることができるようにするため必要な訓練施設を提供すること。
(g) 相当の能力を有するすべての船員が受けることのできる船内の最高の地位までの昇級及び昇格のための訓練を行ない、それらの船員がその能率、潜在的生産力及び仕事の満足感を高めるのを助けること。
(h) 各種の職種及び職級の船員に対し適切な実地訓練を行なうこと。
(i) 教科課程を完了したすべての訓練生の就職を可能な限り確保すること。
Ⅲ 国内の計画及び管理
A 組織及び調整
3 海運業を有し又はその開発を意図する国の権限のある機関は、国内教育訓練政策の樹立にあたり、2に掲げる目的を達成することができるように、船員の訓練のための訓練施設の全般的網状組織が準備されることを確保すべきである。
4 国内事情が必要なすべての職種及び職級の船員の訓練のための施設の開発を許さない場合には、国内計画の適用を受けない船員のため合同海事訓練計画を設定することにつき、他の国及び国際機関と協力することを考慮すべきである。
5(1) 船員の訓練を行なう公私の施設の訓練計画は、各国においてその承認された国内基準を基礎として調整しかつ開発すべきである。
(2) (1)の訓練計画は、政府部局、教育施設その他船員の職業訓練に精通している団体と協力して作成すべきであり、また、船舶所有者団体及び船員団体と協議のうえ定められる海運業の経営上の要件を満たすように策定すべきである。
6 5の訓練計画を作成する機関は、特に次のことを行なうべきである。
(a) 訓練が海運業の必要に常に適合するように、訓練施設とすべての関係者との間に緊密な連絡を保つこと。
(b) 関係のある訓練学校を定期的に訪問して、実施されている計画に十分精通していること。
(c) 利用することのできる訓練の機会についての情報をすべての関係者に周知させるようにすること。
(d) 実際的な海事訓練計画の設定及び実施に協力すること。
(e) 11の一般的訓練基準の設定に参与すること。
(f) 各種の職種及び職級の船員のための適切な国内海技免状基準の設定に参与すること。
(g) 訓練施設と新規募集及び雇用について責任を有する者との間の直接の協力を促進すること。
7 権限のある機関及び団体は、船舶所有者団体及び船員団体と協力して、職業指導及び職業相談機関、公共職業安定組織並びに職業及び技術の訓練施設が公私の船員訓練計画及び海運業における就職の条件についての十分な情報を入手することができるようにすべきである。
8 権限のある機関及び団体は、次のことが行なわれるように努力すべきである。
(a) 可能かつ適当である場合には、造船所、機関工場、艤(ぎ)装品及び船舶用品の製作所等を職員及び部員の訓練に利用すること。
(b) 他の条件が同等である場合には、適切な公認の訓練を受けた者を職業紹介上優先させるような措置をとること。
9(1) 訓練計画は、海運業の増大する需要に照らして定期的に検討しかつ最新の状態に維持すべきである。
(2) 訓練計画の検討にあたつては、海上における人命の安全に直接関係のある問題を技術的に詳細に取り扱つている千九百六十八年の指導要綱(国際労働機関及び政府間海事協議機関が共同で作成し、合意した。)並びに同指導要綱に対するその後の修正及び追加を考慮すべきである。
B 財政
10(1) 船員の訓練計画は、体系的に組織すべきであり、その財政は、海運業の現在及び将来の必要及び発展を考慮に入れて、正規のかつ適当な基盤の上に置くべきである。
(2) 政府は、適当な場合には、地方政府又は民間団体によつて実施される訓練計画に対し財政的援助を行なうべきである。その援助は、一般的補助金の供与、土地、建物若しくは教材(ボート、機関、航海用具、装置等)の提供、無報酬の指導員の派遣、訓練生手当の支給又は通学生若しくは寄宿生である訓練生若しくは練習船内にある訓練生のための授業料の支給の形式をとることができる。
(3) 船員は、財源又は訓練の機会の不足を理由として船内における最高の地位に到達する可能性を否定されるべきではない。したがつて、船員が適切な訓練を受けるため十分な財源を取得し又は受領することを可能にすべきである。
(4) 船員のための公立訓練所における訓練は、可能な場合には、訓練生に授業料の負担をかけないで行なうべきである。
(5) 技術革新の導入によつて必要となる再訓練は、関係のある船員に対し無料で行なうべきである。船員は、その再訓練の期間中適当な手当を受けるべきであり、船舶所有者によりその再訓練課程への参加のために派遣される船員は、基本給の全額を受けるべきである。
C 訓練基準
11 訓練基準は、各種の海技免状を得るための国内要件に準拠して定めるべきである。特に、次のことを定めるべきである。
(a) 訓練を受ける者に必要な健康検査(胸部X線検査、糖尿病検査、聴力検査及び視力検査を含む。)の性格。その検査の基準、特に聴力検査及び視力検査の基準は、その者が進もうとする部門に従つて区別を設けることができるが、いかなる場合にも、海運業における就職に必要な健康基準よりも低いものであつてはならない。
(b) 海技免状の取得を目標とする職業訓練課程への参加に必要な一般教育の水準
(c) 訓練の教科課程に含めるべき航海術、船舶運用術、無線電信、電子工学、機械工学、まかない、人間関係等の科目
(d) 試験を受けることを条件とする訓練課程の修了時に行なわれる試験の性格
(e) 訓練施設の指導員が必要な経験及び資格(技術上及び操船上の発展についての適切な実際的及び理論的知識を含む。)を有することを確保するため権限のある機関がとる方法
Ⅳ 訓練計画
12 各種の訓練計画は、実際に、船内で遂行される職務に基礎を置くべきである。訓練計画は、定期的に検討し、かつ、技術的発展に即応するように最新の状態に維持すべきである。訓練計画は、適当な場合には、次の訓練を含むべきである。
(a) 航海術、船舶運用術、操船術、信号、荷役、保船その他商船の運航に関連する事項についての訓練
(b) 無線装置、レーダー装置、無線方位測定機、羅(ら)針盤等の電子又は機械による航行援助設備の使用についての訓練
(c) 救命用及び消防用の設備の使用、海上における生存法その他の海上における人命の安全に関する事項についての理論上及び実地の指導
(d) 主要推進機及び補助機、特に当該国の船舶に設置されている型の装置(電子装置を含む。)の操作、保守及び修理についての理論上及び実地の指導
(e) スチュワード、調理員、給仕その他の司厨(ちゅう)要員として雇い入れられる者のための適切なまかない部訓練。この訓練を行なうにあたつては、船舶の種類の相違に応じた訓練上の要件を考慮すべきである。
(f) 船内における災害防止、特に船内各部における安全作業慣行に関する訓練(専門科目の訓練の一部としての身体の安全に関する訓練を含む。)、応急手当、医療その他の関係事項に関する訓練並びに保健及び体育、特に水泳についての訓練。医療に関する訓練、特に船内で医療について責任を有する者に対する特別訓練は、権限のある機関が編集する医療便覧の内容及び医療無線サービスの十分な利用に関して行なうべきである。
(g) 特に十八歳未満の訓練生については、一般教育としての価値のある科目に関する教育
(h) 商船の運航及び海運業関係に関連を有する社会労働法規、船員に関する規則、運輸経済、海上保険、海事法等の要点についての教育
(i) 管理技術(人間関係及び作業研究のような科目を含む。)に関する教育
13 訓練計画は、訓練生に海技免状の取得の準備をさせることを主たる目標として策定されるべきであり、また、適当な場合には、国内免許基準と直接の関連性を有すべきである。訓練計画は、十分な実地訓練を含むべきであり、また、権限のある機関が各種の等級の海技免状について定めている最低年齢及び最少限の職務経験を考慮すべきである。また、国家的に承認された他の免状についても考慮を払うべきである。
14 各種の訓練計画の訓練期間は、訓練生が授業内容を修得するため十分なものとすべきであり、また、次の事項を考慮して決定すべきである。
(a) 当該課程が目標とする船内職務に必要な訓練水準
(b) 当該課程を修める訓練生に必要な一般教育水準及び年齢
(c) 訓練生の従前の実地経験
Ⅴ 船員のための一般的訓練計画
15 訓練生に船内環境及び船内における安全作業慣行を紹介することを目的とする養成訓練又は、適当かつ可能な場合には、甲板部、機関部及び司厨(ちゅう)部の部員に正規に割り当てられる職務に関して十分な訓練を行ない、品性を陶冶(や)し、並びに自律の観念及び責任感を教える海上勤務前訓練課程が、海上経験のない年少者のために利用されるようにすべきである。
16 さらに、適当な能力を有する年少者が職員及び部員の双方の職種に関し自国の商船隊において認められている法令上の免状又は資格書の取得の準備をすることができるようにするため、適当な課程又は教育を実施すべきである。
17 昇給及び昇格のための訓練は、特に、海員学校及び技能訓練施設における短期課程並びに特殊な職種の職員及び部員の必要性及びそれらの者が希望する職級に特に適合する通信課程によつて行なうべきである。
Ⅵ 上級訓練
18(1) 適当な職員及び部員が技術及び知識を増進させ、特に自動化船の開発に伴う技術変化に即応し、並びに船内における新しい操船方法の要求に応ずることができるようにするため必要な再訓練、能力再開発訓練、向上訓練及び昇級訓練の課程を設けるべきである。
(2) (1)の訓練課程は、たとえば、一般課程を補充し及び昇級への道を開く上級の専門的訓練を行なうため、並びに適当な者に対し上級の電子工学課程を実施するため利用することができる。
(3) 新しい型の船舶を安全に運航し及び操船する船長その他の職員及び部員の能力に対し特別の注意を払うべきである。
19 船舶所有者は、訓練が容易になると考える場合には、自己の船舶に雇い入れている適当な船員がその技術を改善し、新たな技術及び装置の利用について学び、並びに昇進のための資格を得ることができるようにするため、陸上の適当な学校における訓練期間中その船員を職務から解放すべきである。船内の監督的立場にある者は、その訓練を積極的に奨励すべきである。
Ⅶ 訓練の方法
20 採用される訓練方法は、訓練の性格、訓練生の経験、一般教育及び年齢並びに利用しうる教材及び財源を考慮して、可能な限り効果的なものとすべきである。
21 訓練生自身の積極的参加を必要とする実地訓練は、訓練計画中重要な部分を占めるべきである。その実地訓練は、船員を海上における訓練期間中商船に派遣し、又は機関工場、造船所若しくは海運会社の事務所に派遣することによつて行なうべきである。
22 訓練施設が利用する練習船においては、航海術、船舶運用術、機械の操作及び保守その他の航海科目の実地指導並びに包括的な船内安全教育を行なうべきである。
23 シミュレーター、機関、模型ボート、船舶用具、救命設備、航行援助設備、荷役装置等の適当な教材が訓練計画において利用されるべきである。それらの教材は、訓練生が使用することを要求される船内の機械及び装置を考慮して選定すべきである。
24 適当な場合には、フィルムその他の視聴覚教具を次のように利用すべきである。
(a) 訓練生が積極的に利用する教材の代りとしてではなくその補充として
(b) 語学教育のような特殊な分野における初歩的な訓練の補助手段として
25 訓練課程の一部として行なわれる理論上の訓練及び一般教育は、船員が必要とする理論的及び実際的な知識と関連性を有すべきである。
Ⅷ 国際協力
26 各国は、船員の職業訓練の促進に協力すべきである。ある場合には、その協力は、地域的基礎に基づいて有効に行なうことができる。
27 各国は、26の協力を行なうにあたり、国際労働機関その他の国際機関、特に政府間海事協議機関又は他の国と次の事項について協力することができる。
(a) 指導員を募集し及び訓練すること。
(b) 職員及び部員のための訓練施設を設置し及び改善すること。
(c) 必要な場合には、他の国と共同で合同訓練施設を設置すること。
(d) 自国の訓練施設を他の国の選抜訓練生又は指導員訓練生の利用に供し、及び自国の訓練生又は指導員訓練生を他の国に派遣すること。
(e) 要員、情報及び教材の国際的交流並びに国際セミナー及び作業部会を組織すること。
(f) 資格及び経験を有する自国の指導員を他の国の海事訓練学校に派遣すること。
Ⅸ 従前の勧告への影響
28 この勧告は、千九百四十六年の職業訓練(船員)勧告に代わるものである。