1970年の船員厚生勧告(第138号)

1970年10月29日

海上及び港における船員の厚生に関する勧告(第138号)


 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十年十月十四日にその第五十五回会期として会合し、
 千九百三十六年の港内海員厚生勧告の規定に留意し、
 港及び船内における厚生施設の供給の基本的な必要性を認識し、また、海運業の性格の変化に照らして、特に港における厚生施設の供給の継続的発展の必要性及び船内における厚生施設の供給の増大しつつある重要性を認識し、
 この分野における公の厚生機関及び任意団体の役割りを承認すること並びにそれらの機関及び団体の専門的援助を求めることの重要性を考慮し、
 前記の会期の議事日程の第七議題である海上及び港における船員の厚生に関する提案の採択を決定し、
 その提案が勧告の形式をとるべきであることを決定して、
 次の勧告(引用に際しては、「千九百七十年の船員厚生勧告」と称することができる。)を千九百七十年十月二十九日に採択する。

Ⅰ 厚生活動の組織及び財政


1 厚生計画は、体系的に組織すべきであり、その財政は、適当なかつ正規の基盤に基づくべきである。
2 厚生サービスは、海運業における技術面、運航面その他の面における発展から生ずる船員の必要の変化に即応するようにするためしばしば検討すべきである。
3 国、地方又は港単位の厚生委員会を設置すべきであり、その委員会には、代表的な船舶所有者団体及び船員団体、権限のある機関並びに望ましくかつ適当な場合には関係のある任意団体及び社会団体が代表されるべきである。
4 3の委員会の職務には、その委員会の担当地域内の厚生施設の必要性の調査並びにそれらの厚生施設に関する援助及び調整を含めるべきである。
5 領事及び外国の厚生機関の地方代表者は、適宜地方及び港の厚生委員会の活動に協力すべきである。
6 船員厚生施設の運営において、必要な場合には、奉仕職員のほかに、技術的能力のある者が常時雇用されるようにするため措置をとるべきである。
7 異なる国の多数の船員が特定の港においてホテル、クラブ、運動施設等の施設を必要とする場合には、それらの船員の故国及び船舶の登録国の権限のある機関又は団体は、資金のプール及び不必要な重複の回避のため、相互の間で及びその港のある国の権限のある機関又は団体との間で協議し及び協力すべきである。
8 厚生活動及び余暇活動をよりよく組織し、かつ、船内の厚生資材の使用を一層促進するため、職員及び部員の訓練課程には、船内の厚生活動組織に関する教育を含めるべきである。特にそのような活動の組織について訓練を受けた職員を商船に定期的に配乗することを考慮すべきである。

Ⅱ 港における宿泊施設

9 船員用のホテル又はホステルを、それらを必要とする国際海運に関係のあるすべての港に確保すべきである。それらのホテル又はホステルは、高級ホテルと同様の設備を備えるべきであり、また、できる限り、ドックの近辺から離れた良好な環境の場所に設置されるべきである。
10 9の宿泊施設は、国籍、皮膚の色、人種及び信条に関係なく、すべての船員に開放されるべきである。この原則に反しない限り、ある港においては、基準においては同等であるが、異なる船員集団の習慣及び必要に適合した各種の施設を提供する必要性が認められる。
11 船員用のホテル及びホステルには、必要かつ可能な場合には、船員の家族を収容する設備を設けるべきである。
12 船員用のホテル及びホステルにおける食事及び宿泊の料金は、適正な水準に維持すべきである。
13 船員用のホテル及びホステルは、他の同等の施設と同様の基準の下に適切に監督すべきである。

Ⅲ 港及び船内における一般的厚生措置


14 政府は、船内で又は陸上の厚生センターで船員の利用に供されるフィルム、書籍、新聞、運動用具等の厚生資材の船舶、中央供給機関及び厚生施設の間における自由な流通に対する障害を除去しかつその流通を促進するための措置をとるべきである。
15 船員の郵便物の送付ができる限り確実かつ迅速に行なわれるようにあらゆる努力をすべきである。また、船員にとつてやむを得ない事情により郵便物が転送されなければならない場合に船員が追加の郵便料金の支払を要求されることを防止するため努力すべきである。
16 船員が港地区から市街地に出ることができるようにするため、妥当な時間にいつでも利用しうる手ごろな料金の適当な輸送手段を提供すべきである。
17 職員及び部員に対し船舶の入港後できる限りすみやかに上陸許可を与えることを容易にするため、責任のある機関は、あらゆる努力を払うべきである。
18 船員がその雇用の特殊な事情の下で家族のきずなを維持することを確保するため、船員に対し適当な間隔で家庭における休暇を認めることを奨励すべきである。
19 国内法令又は国際法に従い、職員及び部員に対し、可能かつ合理的なときはいつでも、停泊中の船舶内で妻、親類及び友人の訪問を受けることについての許可をすみやかに与えるようにするため、措置をとるべきである。
20 実行可能かつ合理的な場合には、船員が妻を航海に同伴することを認める可能性について考慮すべきである。船員と同行する妻に対しては、疾病及び災害に備えて適切な保険の手当がなされるべきである。船舶所有者は、船員に対し、そのような保険への加入につきあらゆる援助を与えるべきである。
21 国民的、宗教的又は社会的慣習に反しない限り、可能かつ適当な場合には、職員及び部員のための酒保の船内における設置について考慮すべきである。
22 可能な場合には、フィルム映写、テレビジョン聴視、工作及び読書のための設備の船内における設置について考慮すべきである。

Ⅳ 港及び船内の娯楽施設

23 あらゆる国籍の船員のための会合用及びレクリエーション用の部屋を備えるセンターを、それを必要とする国際海運に関係のあるすべての港に設置し又は発展させるべきである。
24 陸上及び船内における体操、競技、スポーツ等の健康的なレクリエーション並びに名所旧跡への遠足が、港の厚生機関の適切な援助を得て、船員により及び船員のために奨励されかつ組織されるべきである。可能な場合には、水泳のための施設を船内に備えるべきである。
25 実行可能かつ合理的な場合には、港を訪れるすべての船員に対し、スポーツ及び屋外レクリエーションに参加する機会を与えるべきである。この目的のため、たとえば、船員専用の運動場を設けること又は船員が既存の運動場を利用しうるように取り計らうことにより、適切な便益を供与すべきである。
26 救命艇レース、陸上競技、サッカー試合等の船員の国際的なスポーツ競技の実施につき、各国の権限のある機関、船舶所有者団体、船員団体、厚生機関及び船長の間で協力すべきである。

Ⅴ 港及び船内における情報及び教育の施設

27 船員のための適正な職業訓練計画には、船員の厚生に関係のある事項(一般的な健康上の危険を含む。)についての教育の実施及び情報の提供を含めるべきである。
28 寄港地において一般に開放されている施設、特に、輸送、厚生及び教育の施設、礼拝所並びに船員専用の施設に関する情報は、船員に周知させるべきである。そのような情報は、数箇国語で印刷された小冊子の形をとるべきであり、また、市街地及び港の地図をも含むべきである。
29 船内における興味のあるかつ教養上有益な余暇活動を、適当な出版物の配布並びに趣味活動及び素人(しろうと)演芸の援助によつて奨励すべきである。
30 船員にとつて興味のある各種の事項についての通信課程を利用しうるようにすべきである。適当な場合には、映写機、フィルム・ライブラリー、テープレコーダー等の他の教材を各船舶に備えるべきである。