1964年の雇用政策勧告(第122号)

2014年03月21日

雇用政策に関する勧告(第122号)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百六十四年六月十七日にその第四十八回会期として会合し、
 フィラデルフィア宣言が完全雇用及び生活水準の向上を達成するための計画を世界の諸国間において促進する国際労働機関の厳粛な義務を承認し、また、国際労働機関憲章の前文が失業の防止及び妥当な生活賃金の支給を規定していることを考慮し、
 さらに、フィラデルフィア宣言の下で、「すべての人間は、人種、信条又は性にかかわりなく、自由及び尊厳並びに経済的保障及び機会均等の条件において、物質的福祉及び精神的発展を追求する権利をもつ。」という基本的目的に照らして、経済政策及び財政政策が雇用政策に及ぼす影響を検討しかつ考慮することが、国際労働機関の責任であることを考慮し、
 世界人権宣言が、「すべて人は、勤労し、職業を自由に選択し、公正かつ有利な勤労条件を確保し、及び失業に対する保護を受ける権利を有する。」と規定していることを考慮し、
 雇用政策に直接関係のある現存の国際労働条約及び勧告、特に、千九百四十八年の職業安定組織条約及び勧告、千九百四十九年の職業指導勧告、千九百六十二年の職業訓練勧告並びに千九百五十八年の差別待遇(雇用及び職業)条約及び勧告の条項に留意し、
 これらの文書が、自由に選択された生産的な完全雇用を基礎とした経済拡大のためのより広範な国際的計画の中に置かれるべきであることを考慮し、
 この会期の議事日程の第八議題に含まれる雇用政策に関する提案の採択を決定し、
 この提案が勧告の形式をとるべきであることを決定して、
 次の勧告(引用に際しては、千九百六十四年の雇用政策勧告と称することができる。)を千九百六十四年七月九日に採択する。

Ⅰ 雇用政策の目的

1(1) 各加盟国は、経済の成長及び発展を刺激し、生活水準を向上し、労働力需要を満たし、かつ、失業及び不完全就業を克服するため、自由に選択された生産的な完全雇用を促進する積極的な政策を主要目的として宣言し、かつ、追求すべきである。
 (2) 前記の政策は、次のことを確保することを目的とすべきである。
  (a) 仕事につくことができ、かつ、仕事を求めているすべての者に仕事を与えること。
  (b) その仕事は、できる限り生産的であること。
  (c) 人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身又は社会的出身のいかんを問わず、自己に適した仕事につくために必要な資格を取得し、かつ、自己の熟練及び才能をその仕事で活用するため、各労働者に対し雇用の選択の自由及び可能な限り十分な機会を与えること。
 (3) 前記の政策は、経済発展の段階及び水準並びに雇用上の目的と他の経済的及び社会的目的との間の相互関係に妥当な考慮を払い、かつ、国内の条件及び慣行に適する方法によつて追求されるべきである。

Ⅱ 雇用政策の一般原則

2 雇用政策の目的は、経済成長及び雇用に関して可能な限り数字を示して、明りようにかつ公的に定めるべきである。
3 使用者及び労働者並びにそれらの団体の代表者は、人間の能力の開発及び活用のための政策を立案するに当たつて協議を受け、また、この政策の実施について千九百六十年の協議(産業的及び全国的規模)勧告の精神に従つて協力を求められるべきである。
4(1) 雇用政策は、労働力、雇用、失業及び不完全就業の現在及び将来の規模及び配分の分析的研究を基礎とすべきである。
 (2) 統計資料の収集、分析的研究の準備及びそれらの成果の配布に対し、十分な資金を提供すべきである。
5(1) 各加盟国は、教育、職業指導、職業訓練、保健施設、住宅等を通じての生産手段の強化及び人間の能力の十分な開発の重要性を認識し、これらの異なる目的に支出される費用の間に適当な均衡を求め、かつ、維持すべきである。
 (2) 各加盟国は、青少年労働者その他の新規就労者をも含む労働者が適当なかつ生産的な雇用を見出し、及び経済の変化する要求に適応することを援助するため、必要な措置を執るべきである。
 (3) この項の適用に当たつては、千九百四十九年の職業指導勧告、千九百六十二年の職業訓練勧告並びに千九百四十八年の職業安定組織条約及び勧告に特別の注意を払うべきである。
6(1) 雇用政策は、全般的な経済社会政策(経済計画が政策の手段として用いられている国においてはこれを含む。)と調整し、かつ、そのわく内において実施すべきである。
 (2) 各加盟国は、労働者及び使用者並びにそれらの団体と協議の上、かつ、関係分野におけるこれらのものの自主性及び責任を考慮して、雇用政策の措置と経済社会政策の分野における主要措置とが相互に強化するようにそれらの措置の間の関係を検討すべきである。
7(1) 仕事につくことができ、かつ、仕事を求めている者で、合理的な短期間のうちに仕事を得ることを望めないものがある場合には、政府は、この要求を満たす方法を検討し、及びその方法について公の声明において説明すべきである。
 (2) 各加盟国は、失業者及び不完全就業者が、失業の全期間中、自己及びその扶養家族の基本的要求を満たし、及び他の有利な雇用の機会に適応することを援助する措置を、社会保障の分野における国際基準及びこの勧告5の規定を考慮して、その国の利用可能な資源及び経済発展の水準が許す最大限度まで、採用すべきである。

Ⅲ 雇用政策の一般的及び選択的措置

一般的考慮

8 経済活動の変動、構造的変化及び、特に、経済活動の不十分な水準に基因する雇用問題は、次の方法により処理すべきである。
  (a) 経済政策の一般的措置
  (b) 個個の労働者又は一定の種類に属する労働者の雇用に直接関係のある選択的措置
9 適切な措置の選択及びその実施時期の決定は、異なる失業の形態を分類することを目的とした失業の原因の注意深い研究に基づいて行なうべきである。

長期の一般的措置

10 一般的な経済的措置は、相当な程度の安定性を有し、かつ、雇用政策の選択的措置の成功に最善の環境を提供している経済で、現在も引き続き拡大しているものを助長するよう計画されるべきである。

短期の一般的措置

11(1) 短期的性格の措置は、経済活動の不十分な水準に関連する一般的な失業又は不完全就業の発生を防止し、及び雇用市場における均衡の欠如に関連するインフレーションの圧力を減殺するよう計画され、かつ、実施されるべきである。これらの状態が発生し又は発生するおそれのあるときは、民間の消費又は投資及び政府の経常支出又は投資支出を増加し又は、適当な場合には、減少するために措置を執るべきである。
 (2) 不況、インフレーションその他の不均衡のいずれを問わず、これらに対処する措置を執る時期の重要性に照らして、政府は、このような措置を緊急に採用し又は変更することができる権限を自国の憲法に従つて与えられるべきである。

選択的措置

12 雇用の季節的変動を平均化する措置を計画し、かつ、実施すべきである。特に、季節的職業に従事する労働者の生産物及び役務に対する需要を一年を通じてより一層平均化し、又はこれらの者のために補足的な仕事を創出する措置を執るべきである。
13(1) 構造的変化から生ずる失業又は不完全就業の発生及び増加を防止し、かつ、この変化に対する生産及び雇用の適合を促進し及び容易にする措置を執るべきである。
 (2) この勧告の適用上、「構造的変化」とは、需要の変化、国の内外の新たな供給源(生産原価の低い国からの物品の供給を含む。)若しくは生産技術の現出、又は労働力の規模の変化の形態をとる長期でかつ実質的な変化をいう。
 (3) 構造的変化に適合するために執られる措置は、次の二つのことを目的とすべきである。
  (a) 経済的及び技術的進歩から最大の利益を獲得すること。
  (b) 構造的変化により雇用について影響を受ける集団及び個人を財政上その他の困難から保護すること。
14(1) 加盟国は、前記の目的のため、及び欠員の補充が遅れることによつて生ずる生産の損失を回避するため、労働者が新たな仕事を見出し、かつ、それに適応することを援助する計画を作成し、かつ、これに十分な資金を提供すべきである。
 (2) 前記の計画は、次のものを含むべきである。
  (a) 千九百四十八年の職業安定組織条約及び勧告の規定を考慮して、効果的な職業安定組織を運営すること。
  (b) 千九百六十二年の職業訓練勧告の規定を考慮して、労働者が発展する職業において雇用を継続するために必要な資格を取得することができるように計画された訓練及び再訓練の施設を提供し又は奨励すること。
  (c) 求人のある場所における十分な住宅及び共同施設の提供並びに労働者及びその被扶養家族に対する使用者又は公の基金からの移転手当の支給により、雇用政策と住宅政策とを調整すること。
15 青少年の深刻な失業問題(ある国においては、重大化しつつある問題)を解決する措置に対して、特別の優先権を与えるべきである。千九百四十八年の職業安定組織条約及び勧告、千九百四十九年の職業指導勧告並びに千九百六十二年の職業訓練勧告で定める青少年に関する規定の実施に当たつては、経済の変化する要求に応じて青少年の能力の開発及び活用を確保するように、構造的変化の傾向を十分に考慮すべきである。
16 構造的変化及び他の理由のため特別の困難に遭遇する一定の種類に属する者(たとえば、自己の居住地又は職業を変更することが著しく困難な老齢労働者、身体障害者その他の労働者)の特別の要求を満たすため、努力すべきである。
17 国内に経済活動のよりよく均衡のとれた配分を行ない、これによつてすべての資源の生産的な利用を確保するため、後進地域及び構造的変化が多数の労働者に影響を及ぼす地域の雇用上及び所得上の要求に特別の注意を払うべきである。
18(1) 例外的な大きさの構造的変化が生じた場合には、この勧告が13から17までに規定する措置は、突然生ずる大規模の混乱を避け、かつ、合理的な期間にこれによる衝撃を分散させる措置を伴うことを必要とする。
 (2) そのような場合には、政府は、すべての関係者と協議の上、影響を受けた産業を構造的変化に適合させることを容易にするための一時的及び例外的な性質の最善の方法をすみやかに検討すべきであり、かつ、これに従つて措置を執るべきである。
19 構造的変化に対する生産及び雇用の適合を促進し及び容易にするため、適当な機関を設置し、かつ、この勧告13から18までに取り扱われている事項に関するこの機関の責任を明示すべきである。
20(1) 雇用政策は、技術的進歩及び生産性向上の結果として、余暇の増大及び教育活動の強化の可能性が通常生ずるという事実を考慮すべきである。
 (2) 国内の条件及び慣行並びに各産業の条件に適した方法によつて、それらの可能性を利用するために努力すべきである。その方法は、次のものを含むことができる。
  (a) 千九百六十二年の労働時間短縮勧告に従つた賃金の減少を伴わない労働時間の短縮
  (b) 有給休暇の延長
  (c) 教育及び訓練の高度化に伴う就労年齢の引上げ

Ⅳ 経済的未開発に関連する雇用問題

投資及び所得政策

21 開発途上にある国においては、雇用政策は、国民所得の成長及び公正な分配を促進する政策の基本的要素であるべきである。
22 生産、投資及び雇用の急速な拡大を達成することを目的として、加盟国は、その経済開発政策及び各種の分野の社会政策を立案しかつ適用するに際し、千九百六十年の協議(産業的及び全国的規模)勧告に従つて、労働者及び使用者並びにそれらの団体の意見及び積極的参加を求めるべきである。
23(1) 雇用機会の欠如が資本の不足と関連している国においては、国内貯蓄を増大し、かつ、受益国の主権又は経済的独立を害することなく、生産的投資を増加することを目的として、諸外国及び国際機関からの資金の流入を奨励するため、あらゆる適当な措置を執るべきである。
 (2) 前記の国の調達することができる資金を合理的に利用し、かつ、できる限り雇用を増大するため、自国による投資その他の開発のための努力と他の諸国(特に、同一の地域の他の諸国)による投資その他の開発のための努力とを調整することが望ましい。

工業的雇用の促進

24(1) 加盟国は、長期にわたつて新たな雇用機会を創出するため、利用可能な原材料及び動力を利用し、国内及び国外の市場における需要の変化に即応し、並びに近代的技術及び適当な研究調査を利用する公私の産業を設けることが最も必要であることを考慮すべきである。
 (2) 加盟国は、現地の労働力を使用して均衡経済のわく内で完成品の最大の経済的な生産を確保する産業開発の段階に到達するため、できる限り努力すべきである。
 (3) 効果的な低コストの生産、経済の多角化、及び均衡のとれた地域経済開発を促進する措置に特別の注意を払うべきである。
25 近代的な産業開発を促進する措置に加えて、加盟国は、技術的要求を条件として、雇用を拡大することの可能性を次のことによつて探究すべきである。
  (a) 多くの労働力を必要とする物品及び役務を生産し、又はその生産を促進すること。
  (b) 労働集約的技術が利用可能な資源のより効果的な活用に役だつ場合には、この技術を一層促進すること。
26 次のことを行なうため、措置を執るべきである。
  (a) 国内市場及び輸出市場の要求と両立しうる限り、現存産業能力のより十分な活用を、たとえば、夜勤労働者に対する便宜の供与及び多交替制の効果的な運用を可能にする十分な数の基幹要員の訓練の必要性に妥当な考慮を払つた多交替制のより広範囲な導入によつて、促進すること。
  (b) 経済成長を妨げるような保護措置又は特権に依存することなく雇用を増大することができるように手工業及び小規模工業を設けること及びこれらの工業の技術進歩及び市場条件の変化への適応を援助すること。この目的のため、協同組合の発展を奨励し、また、小規模工業と大規模工業との間に相互補完的な関係を設け、かつ、工業製品の新たな販路を開拓するため努力すべきである。

農村雇用の促進

27(1) 全体としての国の政策のわく内において、多くの農村不完全就業が存在する国は、できる限り関係者の努力に依存するとともに制度的措置と技術的措置とを結合することによつて農村部門における生産的雇用を促進するための広範な計画を樹立することに特別の重点を置くべきである。このような計画は、農村不完全就業の性格、程度及び地域的分布の十分な研究に基づいて作成されるべきである。
 (2) 農村開発における現地の労働力のより十分な活用に有利な刺激及び社会的条件を設定し、かつ、生産性及び生産の質を向上することを主要目的とすべきである。可能な場合には、十分な調査及び多目的の試験的計画の推進によつて、現地の条件に適した手段が決定されるべきである。
 (3) 農業及び畜産業における生産的雇用の機会を促進する必要性に特別の注意を払うべきである。
 (4) 農業部門における生産的雇用を促進するための制度的措置は、国の必要に応じた農地改革(土地改革及び土地保有制度の改善、土地課税方式の改革、信用制度の拡張、市場取引の便益の改善並びに生産及び販売における協同組合組織の発展を含む。)を含むべきである。

人口の増加

28 人口が急速に増加しつつある国、特に、人口が経済にすでに著しい圧力を加えている国は、雇用機会の増加と労働力の増加との間によりよい均衡を保つために役だつ経済社会政策を採用することを目的として、人口の増加に影響を及ぼす経済的、社会的及び人口統計的な要素を研究すべきである。

Ⅴ 使用者及び労働者並びにそれらの団体による措置

29(1) 公私の部門における使用者及び労働者並びにそれらの団体は、自由に選択された生産的な完全雇用の達成及び維持の促進のため、実行可能なすべての措置を執るべきである。
 (2) 特に、前記の者及び団体は、次のことを行なうべきである。
  (a) 雇用事情の変化に対して相互に満足する調整を行なうことを目的として、できる限りすみやかに、相互に、また、適当な場合には権限のある公の機関、職業安定機関又は類似の機関とあらかじめ協議すること。
  (b) 経済雇用事情及び技術進歩の傾向を研究し、かつ、労働者の雇用の安定及び雇用機会を公共の利益のわく内において保護するような政府及び公私の企業による措置を適当な場合及び適切な時期に提案すること。
  (c) 経済的背景と特定の職業、産業又は地域における雇用機会の変化の理由と労働力の職業的及び地理的移動の必要性とがより広く理解されることを促進すること。
  (d) 国家の主権、経済の独立又は結社の自由を害することなしに、国内及び国外からの投資の増加を奨励して国の経済成長に積極的な効果をもたらす環境をつくるよう努力すること。
  (e) 訓練及び再訓練の施設並びにこれに関連する財政的給付を供与し、又は供与させること。
  (f) 完全雇用、経済成長、改善された生活水準及び通貨の安定の目的に調和した賃金、社会的給付及び物価政策を、使用者及び労働者並びにそれらの団体が求める正当な目的をそこなうことなしに、促進すること。
  (g) 千九百五十八年の差別待遇(雇用及び職業)条約及び勧告の規定を考慮して、雇用及び職業における機会及び待遇の均等の原則を尊重すること。
 (3) 企業の段階において労働者団体又は労働者の代表者と協議し及び適当な場合には協力し、また、国の経済的及び社会的条件を考慮して、企業は、失業を克服し、労働者が新たな仕事を見出すことを援助し、仕事の数を増加し、及び失業の影響を最小限にするための措置を執るべきである。このような措置は、次のことを含むことができる。
  (a) 企業内で他の仕事につくための再訓練をすること。
  (b) 企業内で配置転換をすること。
  (c) 交替制労働の増加に対する障害を注意深く検討し及びこれを克服するための措置を執ること。
  (d) 千九百六十三年の雇用終了勧告の規定を考慮して、雇用が終了する労働者に対するできる限り早期の予告、公の機関に対する適当な通告及び雇用が終了した労働者に対するなんらかの形式による収入の保護を行なうこと。

Ⅵ 雇用目的を促進するための国際的措置

30 加盟国は、適当な場合には政府間機関その他の国際的機関の援助を得て、雇用目的を促進するための国際的な措置に協力すべきであり、また、その国内の経済政策において、開発途上にある国を含み他の国の雇用事情及び一般的経済安定に不利な影響を及ぼす措置を回避するよう努力すべきである。
31 加盟国は、経済成長及び雇用機会の拡大を促進する一手段として、国際貿易を拡大するすべての努力に協力すべきである。特に、加盟国は、国際的な貿易条件の変動並びに収支の均衡及び流通に関する問題が雇用水準にもたらす好ましくない影響を弱めるため、できる限りすべての措置を執るべきである。
32(1) 工業化された国は、経済協力及び需要拡大に関する政策を含む経済政策において、他の国、特に、開発途上にある国における雇用機会を増加する必要性を考慮すべきである。
 (2) 前記の国は、事情の許す限りすみやかに、開発途上にある国において経済的に生産しうる製品、加工品、半加工品及び一次産品の輸入を増加する措置を執るべきであり、このようにして相互貿易及び輸出品の生産における雇用の増加を促進すべきである。
33 開発途上にある国から工業化された国への移住を含む雇用労働者の国際的移住で、送出国と受入国の経済上の必要と合致するものは、千九百四十九年の雇用移民条約及び勧告(改正)並びに千九百六十二年の均等待遇(社会保障)条約の規定を考慮して、容易にされるべきである。
34(1) 多数国間及び二国間の経路を通じた国際的技術協力においては、積極的な雇用政策を発展させる必要性に特別の注意を払うべきである。
 (2) この目的のため、前記の協力は、次のものを含むべきである。
  (a) 一般的な開発計画の分野において不可欠の要素である雇用政策及び雇用市場組織に関する助言
  (b) 資格を有する現地の要員(技術者及び管理職員を含む。)の訓練についての協力
 (3) 訓練に関する技術協力計画は、開発途上にある国に対して国内又は地域内に適当な訓練施設を提供することを目的とすべきである。この計画は、また、備品の供給に関する十分な規定を含むべきである。補足的措置として、開発途上にある国の国民を工業化された国において訓練するための便宜が提供されるべきである。
 (4) 加盟国は、開発途上にある国に雇用政策の各種の分野についての高度の専門家を適当な期間、政府及び民間から派遣することを容易にするためできる限り努力すべきである。この努力は、関係専門家にとつてその派遣を魅力のあるものにする措置を含むべきである。
 (5) 技術協力計画の作成及び実施においては、関係国の使用者団体及び労働者団体の積極的な参加を求めるべきである。
35 加盟国は、生産性を向上させ及び雇用を増大するため、許可その他の形式の産業上の協力によつて、技術的工程の国際的交換を奨励すべきである。
36 外国人所有の企業は、現地の職員(管理職員及び監督職員を含む。)を雇用しかつ訓練することにより、その職員に対する需要を満たすべきである。
37 国際労働事務局から適宜援助を得て、雇用政策、特に、開発途上にある国の雇用政策に関する定期的な討議及び経験の交換のため、適当な場合には地域的規模で、取極を行うべきである。

Ⅶ 適用方法に関する提案

38 この勧告の規定を適用するに当たり、国際労働機関の各加盟国並びに関係のある使用者団体及び労働者団体は、可能なかつ望ましい限度において、附属書に掲げる適用方法に関する提案を指針とすべきである。

附属書

適用方法に関する提案

Ⅰ 雇用政策の一般的及び選択的措置

1(1) 各加盟国は、次のことを行なうべきである。
  (a) 労働力の規模及び分布、失業及び不完全就業の性質及び程度並びにそれらの傾向の継続的研究を行なうこと。可能な場合には、次の分析を含む。
   (i)  年齢、性、職業群、資格、地域及び経済部門別の労働力の分布、これらの各種別の将来の傾向並びに特に急激に人口が増加している開発途上にある国における人口統計的な要素及び技術変化がこの傾向に及ぼす影響
   (ii) 各種の経済部門、地域及び職業群において現在利用することができ及び将来の異なる時点で利用することができると予想される生産的雇用の量。ただし、需要及び生産性において予想される変化を考慮すること。
  (b) このような研究に必要な統計資料を改善するため、特に全数調査及び標本調査を通じて、活発に努力すること。
  (c) 特に、短期の変動を長期的構造的変化から区別するため、経済活動の最新の指数の収集及び分析並びに国内及び国外の各種の産業部門における新技術、特にオートメーションに関する発展の傾向の研究を行ない、かつ、促進すること。
  (d) 失業又は労働力の不足を防止し又は救済するための迅速な措置を執ることができるように、雇用、不完全就業及び失業の短期的予測を十分早期にかつ詳細に行なうこと。
  (e) 他の国において雇用政策について執られる方法及び得られる結果の研究を行ない、かつ、促進すること。
 (2) 加盟国は、国際労働事務局その他において行なわれる雇用事情の研究(オートメーションによる影響の研究を含む。)の結果に関する情報を団体交渉の責任者に提供するよう努力すべきである。
2 雇用政策の社会的目的の達成は、雇用政策と経済社会政策の他の措置、特に、次のものに関する措置との調整を必要とする。
  (a) 投資、生産及び経済成長
  (b) 所得の増加及び分配
  (c) 社会保障
  (d) 財政金融政策(インフレーション対策及び外国為替政策を含む。)
  (e) 諸国間の物品、資本及び労働のより自由な移動の促進
3 生産及び雇用の安定を促進することを目的として、自動的安定効果を及ぼし、かつ、消費者の所得及び投資の満足すべき水準を維持するために計画された財政的又は準財政的措置を一層利用することの可能性を考慮すべきである。
4 雇用を安定するために計画された措置は、さらに、次のものを含むことができる。
  (a) 税率及び投資支出に関する財政的措置
  (b) 金融政策の適当な措置による経済活動の刺激又は抑制
  (c) 公共事業又は基本的性格を有するその他の公共投資(たとえば、道路、鉄道、港、学校、訓練センター及び病院)に対する支出の増加又は削減。加盟国は、不況時に実施することのできる相当数の有用でかつ延期しうる公共事業計画を雇用率の高い時期に準備すべきである。
  (d) 不況が活動水準の一時的低下をひきおこすおそれのある特定の産業部門に対して政府の発注を増加するような特別の性格を有する措置
5 雇用の季節的変動を平均化する措置は、次のものを含むことができる。
  (a) 新技術を適用することなしには作業を実施することができない条件の下でその作業の遂行を可能にする当該新技術の適用
  (b) 季節的職業に従事する労働者の補足的職業のための訓練
  (c) 季節的失業及び不完全就業に対処する計画。雇用に関する労働者の要求を満たすため活動の継続を確保するように、建築及び建設作業に関係する各種の公的機関と民間企業との活動を調整することに特別の注意を払うべきである。
6(1) 権限のある機関は、構造的変化の結果としてこの勧告16に掲げる種類に属する者が遭遇するおそれのある特別の困難の性質を決定し、かつ、適当な措置を勧告すべきである。
 (2) これらの種類に属する者に適した仕事を提供し、かつ、困難を軽減するため、特別の措置を執るべきである。
 (3) 老齢労働者及び身体障害労働者が構造的変化に適応するに当たつて大きな困難に直面する場合には、このような労働者に対して社会保障制度のわく内で十分な給付(適当な場合には、通常定める年齢より低い年齢で支給される退職給付を含む。)が支給されるべきである。
7(1) 構造的変化が特定地域に集中した多数の労働者に影響を及ぼすとき、特に、その地域の全体の競争力がそこなわれるときは、加盟国は、包括的な地域開発政策に基づいて、その地域において追加的雇用を提供すべきであり、また、効果的な刺激の供与並びに使用者及び労働者の代表との協議によつて、個個の企業が当該地域において追加的雇用を提供することを奨励すべきである。
 (2) この目的のために執られる措置は、次のものを含むことができる。
  (a) 現存企業の多角化又は新産業の振興
  (b) 公共事業その他の公共投資(公的企業の拡張又は設置を含む。)
  (c) 新産業に対する設置条件に関する情報及び助言
  (d) たとえば、下部構造の再開発若しくは改善を通じて、又は特別貸付、一時的補助金、一時的な税制上の特権若しくは工業用地のような物質的便益の提供を通じて、当該地域を新産業にとつて一層魅力のあるものとするための措置
  (e) 政府の発注の割当てにおける優先的考慮
  (f) 過度の産業集中を阻止するための適切な努力
 (3) 前記の措置は、資源上の理由、市場との距離その他の経済的要因により、各地域が最もよく提供することができる雇用の形式に注意すべきである。
 (4) 特別の待遇が与えられる地域の境界は、その他の地域、特に、隣接地域に与えるおそれのある影響について注意深い研究を行なつた後に定められるべきである。

Ⅱ 経済的未開発に関連する雇用問題

8 生産的投資を増加することを目的として、国内貯蓄を増大し、かつ、諸外国からの資金の流入を奨励する措置は、次のものを含むことができる。
  (a) 資本の形成を速めるために乏しい資源を最少限度に使用して利用可能な労働力を活用する措置。この措置は、千九百三十年の強制労働条約及び千九百五十七年の強制労働廃止条約の規定に合致し、かつ、適正な最低労働基準の体系のわく内において、使用者及び労働者並びにそれらの団体と協議して執られるものとする。
  (b) 貯蓄及び投資を、非生産的使用から経済開発及び雇用を促進するよう計画された使用に導く措置
  (c) 次の手段により貯蓄を増大する措置
   (i)  十分な刺激を維持する必要性に妥当な考慮を払つた非必需消費の削減
   (ii) 拠出制社会保障制度及び少額貯蓄制度を含む貯蓄制度
  (d) 貯蓄の生産的投資への転換を容易にするため地方資本市場を開発する措置
  (e) 国内資本を生産的投資に充てるため、国内資本の流出部分を回復しかつ国内資本の流出を防止する措置とともに、外国からの投資の利益の合理的な一部を国内で再投資するよう奨励する措置
9(1) 労働集約的な産品及び技術の奨励によつて雇用を拡大する措置は、次のものを含むことができる。
  (a) 次の手段による労働集約的生産方法の促進
   (i)  近代的な労働集約的作業の能率を増進するための作業研究
   (ii) 特に、公共事業及び建設業における労働集約的技術に関する調査及び情報の配布
  (b) 関係のある企業に対する輸入割当て又はその他の割当てに関する税制上の特権及び優遇
  (c) 多目的峡谷開発並びに鉄道及び公道の建設のような労働集約的建設工事の技術上、経済上及び組織上の可能性の完全な調査
 (2) 特定の産品又は技術が労働集約的であるかどうかを決定するに際して、原料、動力その他の要素の段階を含めて、単に最終工程においてのみならずあらゆる生産段階において用いられる資本と労働との割合に注意を払うべきである。また、ある産品の供給の増加が労働及び資本のそれぞれに対する需要の増加をもたらす割合に注意を払うべきである。
10 農村部門における生産的雇用を促進するための制度的措置は、この勧告27に規定する措置に加えて、地方の経済的及び社会的開発事業の計画及び実施に関係者、特に、使用者及び労働者並びにそれらの団体を積極的に参加させ、かつ、その他の場合には使用されないか又は非生産的に使用される現地の労働力、原料及び資金を同事業で使用することを奨励するための協同社会開発計画であつて、千九百三十年の強制労働条約及び千九百五十七年の強制労働廃止条約の規定と両立するものの促進を含むことができる。
11 農村開発における現地の労働力をより十分に活用するための地方条件に適した手段は、次のものを含むことができる。
  (a) 地方的設備投資事業、特に、中小灌漑(かんがい)排水工事、倉庫及び枝道の建設並びに地方運送の開発のような農業生産の急速な増加に役だつ事業
  (b) 土地の開発及び入植
  (c) より労働集約的な耕作方法、畜産業の拡大及び農業生産の多角化
  (d) 林業及び漁業のような他の生産的活動の開発
  (e) 教育、住宅及び保健施設のような農村における社会的役務の促進
  (f) 農産物の現地加工及び農村で必要とされる簡単な消費生産物資の製造のような農村において存続しうる小規模工業及び手工業の開発
12(1) この勧告5に従い、また、千九百六十二年の職業訓練勧告の規定を考慮して、開発途上にある国は、文盲を一掃するため、及びあらゆる部門の労働者のための職業訓練並びに科学的、技術的及び管理的職員に対する適当な専門訓練を促進するため努力すべきである。
 (2) 農業の改善及び近代化を行なうため指導員及び労働者を訓練する必要性に考慮を払うべきである。