1944年の所得保障勧告(第67号)
1944年05月12日
所得保障に関する勧告(第67号)
国際労働機関の総会は、
国際労働事務局の理事会によつてフイラデルフイアに招集され、且つ千九百四十四年四月二十日を以てその第二十六回会議を開催し、
この会議の会議事項の第四項目に含まれている所得保障に関する提案の採択を決議し、且つ、
この提案は勧告の形式によるべきものなることを決定したので、
千九百四十四年の所得保障勧告として引用することができる次の勧告を千九百四十四年五月十二日に採択する。
大西洋憲章は「より良い労働条件、経済的進歩及び社会保障をすべての者に確保する目的を以て経済的分野においてすべての国民の間に最も充分な協力」を企図しているのに鑑み、且つ
国際労働機関の総会が千九百四十一年十一月五日に採択した決議により、この大西洋憲章の原則を確認し且つその具体化において国際労働機関の充分な協力を誓約しているのに鑑み、且つ
所得保障が社会保障の重要な要素であるのに鑑み、且つ
国際労働機関が次のものにより所得保障の発達を促進したのに鑑み、
国際労働総会において労働者災害及び職業病補償、疾病保険、母性給付、老令、廃疾及び寡婦孤児の年金並びに失業給付に関する条約及び勧告を採択すること、
第一回及び第二回アメリカ諸国労働会議においてアメリカ諸国間社会保険法典を制定する決議を採択すること、チリ・サンチヤゴ宣言を採択した第一回アメリカ諸国社会保障会議に理事会の一代表者を参加させること、及び理事会が社会保障官庁と国際労働事務局と提携して活動する諸機関との間の恒久的協力機関として設置されたアメリカ諸国社会保障会議の規則を承認すること、且つ
国際労働事務局が多数の国における社会保険制度の設定に顧問の資格で参加すること、及びその他の措置により、且つ
若干の加盟国が、より良い労働条件、経済的進歩及び社会保障に対する欲求が最も大きいのにも拘わらず、その国民の福利及び発展を促進するための権限内に在る措置をまだ講じないのに鑑み、
かかる加盟国が国際的最低基準に到達し且つこの基準を向上させるため、できるだけ速かにすべての必要な措置を講ずることが目下高度に望ましいのに鑑み、
社会保険制度の統一又は調整により、農村住民及び自立労働者を含むすべての労働者及びその家族へのかかる制度の拡張により、並びに不公平な異常状態の排除により、所得保障の達成に向つて更に措置を講ずること目下望ましいのに鑑み、
国際労働機関の加盟国が現存の諸条約及び諸勧告の規定を統合し且つ拡大するまでは、右の諸条約及び諸勧告の基礎の上に自国の所得保障制度を発達させることにおいて遵守しなければならない原則の設定がこの目的に寄与するであろうのに鑑み、
総会は、
(a) 国際労働機関の加盟国が大西洋憲章の第五原則の具体化の目的を以て自国の所得保障制度を発達させることにおいて、国内事情が許す限り速かに次の一般指導原則を漸次適用すること、及びかかる指導原則を実施するために講じた措置に関し理事会が要求するとき随時国際労働事務局に報告することを勧告する。
(b) 総会に提出され且つこの勧告の附録に含まれるこれらの一般指導原則の適用のための提案に国際労働機関の加盟国の注意を喚起する。
指導原則
一般
1 所得保障制度は、労働することの不能(老令を含む。)若しくは有償的雇用を得ることの不能により又は所得者の死亡により喪失した所得を合理的の水準まで恢復することにより窮乏を救済し、且つ貧窮を防止しなければならない。
2 所得保障は、できる限り強制社会保険の基礎の上にこれを組織し、これにより所定の資格条件を具備する被保障者が保険機関に支払つた醵出金を考慮し、法律により定められる率及び事故において支払われる給付を受ける権利を有するようにしなければならない。
3 強制保険制度の適用されない窮乏に対しては社会救済によりこれを充足しなければならない。或る種の者特に被扶養者たる子女及び貧困な廃疾者、老令者及び寡婦は、所定の表に従い合理的の率において手当を受ける権利を有しなければならない。
4 各場合の必要に適合する社会救済は、窮乏になやむその他の者にこれを講じなければならない。
社会保険
5 強制社会保険により包含される事故の範囲は、被保険者が労働することの不能若しくは有償的雇用を得ることの不能によりその生活費を取得することを阻害され、又は扶養家族を遺して死亡するすべての事故を包含し、且つ限られた所得では非常に負担となる一般的に惹起する或る併合的な事故(尤もこの事故が他の方法で包括される時はこの限りではない。)を包含しなければならない。
6 労働不能及び業務上の死亡の場合について補償を設けなければならない。
7 社会保険により設けられる給付を各種の要求に密接に適合させるため、保険事故は、次の如くこれを分類しなければならない。
(a) 疾病
(b) 母性
(c) 廃疾
(d) 老令
(e) 所得者の死亡
(f) 失業
(g) 緊急費
(h) 業務傷害
尤も給付は、次の事故の一つよりも多くのものに対し同時にこれを支払うことはできない。即ち廃疾、老令及び失業。
8 所得喪失のために支払われるすべての給付には、最初の二人の子女の各々に対する補充的給付を附加しなければならない。尤もそれ以上の子女に対する措置は、公共基金から又は醵出制度の下に支払われる家族手当の方法でこれを講ずることができる。
9 疾病給付が支払われるべき事故は、疾病又は傷害のために治療又は医的保護を必要とする急性症状に基く医学的理由により必要とされる欠勤に帰因する所得の喪失である。
10 母性給付を支払われるべき事故は、産前産後の所定期間中の欠勤に帰因する所得の喪失である。
11 廃疾給付が支払われるべき事故は、疾病又は傷害に帰因する慢性症状のため、又は身体の一器官若しくは機能の喪失のため相当の報酬を得る労働に従事することが不可能な場合である。
12 老令給付を支払われるべき事故は、人々が普通に有効な労働をすることが不可能となり、疾病又は廃疾の影響が烈しくなり、且つ失業すればそれが永久的となる傾向がある所定年令に到達する場合である。
13 遺族給付を支払われるべき事故は、家長の死亡の結果として被扶養者が蒙るとみとめられる生活手段の喪失である。
14 失業給付が支払われるべき事故は、平常は雇用され、或る職業における正規の労務を為す能力があり、且つ適当の雇用を探す被保険者の失業に帰因し又は一部的失業に帰因する所得の喪失である。
15 疾病、母性、廃疾及び死亡の場合に生ずる非常経費(他に別段包含されない場合)に関し給付を設けなければならない。
16 業務傷害補償が支払われるべき事故は、業務に基く外傷性傷害又は疾病であつて、故意に惹起されたものでなく又一時的若しくは永久的労務不能又は死亡を伴う被害者の重大にして故意の非行により惹起されたものでないものである。
17 社会保険は、すべての被用者及び自立労働者並びにその被扶養者であつて次のことが可能である者に関し、かれらが曝される事故の場合にこれに保護を与えなければならない。
(a) 不均衡な管理費を伴わないで醵出金を徴収すること。
(b) 医的施設及び職業紹介施設と必要な協力をし且つ濫発に対し充分な注意を払つて、給付を支払うこと。
18 使用者は、その使用するすべての者に関し醵出金を徴収する責を負い、且つ報酬を支払うとき被用者の納入すべき金額をその報酬中から控除する権利をもたなければならない。
19 給付の有効な管理を容易にするため、醵出金簿の保存、給付を発生させる事故の存在を確認する容易な手段、並びに予防及び治療の機能をもつ医的施設及び職業紹介施設の併行的組織のため措置を講じなければならない。
20 報酬のために使用される者は、その者に関する醵出金の徴収を組織化することができ且つ給付の管理のため必要な措置を講ずることができるときは、速かに社会保険により包含される事故の全体に対しこれを保険にかけなければならない。
21 自立労働者は、その醵出金の徴収を組織化することができるときは速かに被用者と同一の条件の下に、廃疾、老令及び死亡の事故に対しこれを保険にかけなければならない。入院を要する疾病及び母性、数箇月間継続する疾病並びに疾病、母性、廃疾及び死亡の場合に要する非常経費に対しても亦自立労働者を保険にかけることの可能性を考慮に入れなければならない。
22 給付は、再び労働することが可能な場合に再び労働する意思を阻害することなく且つ生産及び雇用が制限されるほど重い負担を生産群に負わせることなくして実行し得る高い水準まで家族責任を適当に考慮して、損失所得を償うものでなければならない。
23 給付は、被保険者がそれに基いて醵出金を支払つたその者の従前の所得に比例しなければならない。尤も熟練労働者の普通の所得を超える超過部分は、被保険者の醵出金以外の財源から経理される給付率又はその一部を決定する目的のためにこれを無視することができる。
24 画一率の給付は、国民が任意保険により充分且つ経済的な方法を以て附加的給付を受けられる国に対してはこれを適当とみとめることができる。かかる給付は、これを不熟練労働者の所得と比例させなければならない。
25 業務災害に対する補償以外の給付を受ける権利は、請求者の普通の身分が被用者又は自営業者であることを確認し、且つ醵出金の支払において充分な定期性を維持することを目的とする醵出条件に従わなければならない。ただし、ある者の使用者がその者に関して支払うべき醵出金を正当に徴収しなかつたことを理由として、その者は、給付を受ける資格を奪われない。
26 給付の費用(管理費を含む。)は、被保険者に公平であり且つ小額収入の被保険者の貧窮又は生産の攪乱を避けるように、被保険者、使用者及び納税者の間にこれを配分しなければならない。
27 社会保険の管理は、社会保障施設の一般制度内においてこれを統一し又は調整し、且つ醵出金醵出者は、その団体を通じ、管理方策に関し決定をし又は助言をし、且つ法律案を提出し又は規則を制定する機関において代表されなければならない。
社会救済
28 社会は、被扶養者たる子女の福利を確保することを目的とする一般救済措置を通じて適度に両親と協力しなければならない。
29 廃疾者、老令者及び寡婦であつて自身又はその夫が強制的に保険にかけられない故に社会保険給付を受けない者で且つその所得が所定水準を超えない者は、所定率の特別生活手当を受ける権利をもたなければならない。
30 窮乏しており且つ匡正的保護のための収容を必要としないすべての者に対し、現金による又は一部現金で一部現物による充分な手当を設定しなければならない。
〔附 録〕
[太字の項は、一般指導原則であり、普通活字体の項は、適用のための提案である。但し表題はすべて太字としている。]
適用のための提案を伴う指導原則
一般
1 所得保障制度は、労働することの不能(老令を含む。)若しくは有償的雇用を得ることの不能により、又は所得者の死亡により喪失した所得を合理的の水準まで恢復することにより窮乏を救済し且貧窮を防止しなければならない。
2 所得保障は、できる限り強制社会保険の基礎の上にこれを組織し、これにより所定の資格条件を具備する被保険者が、保険機関に支払つた醵出金を考慮し、法律により定められる率及び事故において支払われる給付を受ける権利を有するようにしなければならない。
3 強制保険制度の適用されない窮乏に対しては、社会救済によりこれを充足しなければならない。或る種の者特に被扶養者たる子女及び貧困な廃疾者、老令者及び寡婦は、所定の表に従い合理的の率において手当を受ける権利を有しなければならない。
4 各場合の必要に適合する社会救済は、窮乏になやむその他の者にこれを講じなければならない。
Ⅰ 社会保険
A 事故
保険事故の範囲
5 強制社会保険により包含される事故は、被保険者が労働することの不能若しくは有償的雇用を得ることの不能によりその生活費を取得することを阻害され、又は扶養家族を遺して死亡するすべての事故を包含し、且つ限られた所得では非常に負担となる一般的に惹起する或る併合的な事故(尤もこの事故が他の方法で包含されるときはこの限りではない。)を包含しなければならない。
6 労働不能及び業務上の死亡の場合について補償を設けなければならない。
7 社会保険により設けられる給付を各種の要求に密接に適合させるため、保険事故は、次の如くこれを分類しなければならない。
(a) 疾病
(b) 母性
(c) 廃疾
(d) 老令
(e) 所得者の死亡
(f) 失業
(g) 緊急費
(h) 業務傷害
尤も給付は、次の事故の一つよりも多くのものに対し同時にこれを支払うことはできない。廃疾、老令及び失業
8 所得喪失のために支払われるすべての給付には、最初の二人の子女の各々に対する補充的給付を附加しなければならない。尤もそれ以上の子女に対する措置は、公共基金から又は醵出制度の下に支払われる家族手当の方法でこれを講ずることができる。
疾病
9 疾病給付が支払われるべき事故は、疾病又は傷害のために治療又は医的保護を必要とする急性症状に基く医学的理由により必要とされる欠勤に帰因する所得の喪失である。
(1) 欠勤の必要性は、原則として被保険者が従来遂行してきた職業であつて、且つ再び始めるものとみとめることができるものに関係して、これを判断しなければならない。
(2) 給付は、疾病期間の最初の数日間に対しこれを支払う必要がない。尤も疾病が数箇月内に再発するときは、更に待期を負わせてはならない。
(3) 給付は、受益者が労働に帰るに適し、死亡し、又は廃疾となるまでこれを継続することが好ましい。尤も給付の期間を制限することが必要であるときは、最長限度の期間は、一件につき二十六週間を下つてはならないし、且つ特別の疾病例えば結核の如くたとえ癒るがしばしば長き期間にわたる疾病については給付の期間を延長するため措置を講じなければならない。但し保険制度実施の始めにおいては二十六週間より一層短い期間を定める必要がありうる。
母性
10 母性給付を支払われるべき事故は、産前産後の所定期間中の欠勤に帰因する所得の喪失である。
(1) 婦人は、その分娩が六週間以内に始まるであろうことを記載した医師の証明書を提出するときは、その労働を休む権利を有しなければならないし、且ついかなる婦人もその分娩後六週間は労働することを許されない。
(2) 右の期間中母性給付を支払わなければならない。
(3) 受益者の身体上の状態とその労働の緊要性を考慮して、医学的理由により一層長い期間又はその他の時機における欠勤が望ましいことがありうる。かかる期間中疾病給付を支払わなければならない。
(4) 母性給付の支払は、母及びその子女のために設けられる保健施設の受益者による利用を条件とすることができる。
廃疾
11 廃疾給付が支払われるべき事故は、疾病又は傷害に帰因する慢性症状のため、又は身体の一器官若しくは機能の喪失のため相当の報酬を得る労働に従事することが不可能な場合である。
(1) 身体障害者は、その残りの体力及び能力、その従来の経験並びにその利用しうる訓練施設を考慮して、その者に合理的に指定される職業に従事することをこれに期待しなければならない。
(2) かかる職業が指定され得る者であつて未だこれに従事していない者並びに訓練課程に従う者は、一時的の廃疾給付、訓練給付又は失業給付(他に要求される条件を具備するときは)を受けなければならない。
(3) かかる職業が指定され得ない者は、廃疾給付を受けなければならない。
(4) 有償的職業に規則正しく従事することの永久的不能が確認された受益者は、臨時的の小額所得によりその廃疾給付を補充することを許されなければならない。
(5) 廃疾給付の率が被保険者の従前の所得の率に比例する場合においては、身体障害者がその従来の職業において同一の訓練を経た身体上健全な者の通常の所得の三分の一を普通の努力により獲得することができないときは、給付請求権をみとめられなければならない。
(6) 廃疾給付は、疾病給付の終る日から廃疾の全期間に対し、これを支払わなければならない。但し受益者が老令給付を請求することができる年令に達するときは、廃疾給付に代えるに老令給付を以てすることができる。
老令
12 老令給付を支払われるべき事故は、人々が普通に有効な労働をすることが不可能となり、疾病又は廃疾の影響が烈しくなり、且つ失業すればそれが永久的となる傾向がある所定年令に到達する場合である。
(1) 老令給付を請求することができる最低年令は、男子に付ては六十五歳、婦人に付ては六十歳以下と定めなければならない。但し困難又は不健康な職業において多年労働した者に付ては一層低い年令を定めることができる。
(2) 老令給付の支払は、基本的給付が生活を確保するに充分であるとみとめることができるときは、有償的職業における通常の労働から引退することを条件としなければならない。かかる引退が要求されるときは、比較的小額の臨時的所得の享受は、老令給付を受ける権利を喪失させるものであつてはならない。
所得者の死亡
13 遺族給付を支払われるべき事故は、家長の死亡の結果として被扶養者が蒙るとみられる生活手段の喪失である。
(1) 遺族給付は、次の者にこれを支払わなければならない。(a)被保険者の寡婦、(b)子女、継子、養子及び男子被保険者の庶子又は婦人被保険者の私生子であつて右被保険者により扶養されていた者(被扶養者として予め登録したことを条件とする。)、(c)国内法により定められる条件の下に死亡者が同棲していた未婚婦人
(2) 寡婦給付は、寡婦であつて子女給付が支払われるべき子女を保育する者、又はその夫の死亡当時若しくはその後廃疾となり又は老令給付を請求することができる最低年令に達した者にこれを支払わなければならない。これらの条件の一つを具備しない寡婦は、数箇月の最低期間及びその後この寡婦が失業したときは必要の場合に訓練を受けた後これに適当な雇用を提供することができるまで、寡婦給付を支払われなければならない。
(3) 子女給付は、子女であつて学校卒業年令未満の者又は一八歳未満でその一般若しくは職業教育を続行している者にこれを支払わなければならない。
失業
14 失業給付が支払われるべき事故は、平常は雇用され、或る職業における正規の労務を為す能力があり且つ適当の雇用を探す被保険者の失業に帰因し、又は一部的失業に帰因する所得の喪失である。
(1) 給付は、請求が登録された日から計算して失業の最初の数日間これを支払う必要がない。尤も失業が数箇月以内に再発するときは、更に待期を設けてはならない。
(2) 給付は、適当な雇用が被保険者に提供されるまでこれを続行しなければならない。
(3) 事情に応じ合理的な初期的期間中は、次の雇用のみを適当のものとみとめなければならない。
(a) 住居の変更を伴わない場所における且つ労働協約が適用される場合その協約により定められる現行賃金率を支払われる被保険者の適当の職業における雇用、又は
(b) 被保険者に受諾されるその他の雇用
(4) 初期的期間の満了後は、
(a) 提供される雇用が被保険者の体力、能力、従前の経験及び利用しうる訓練施設を考慮して、被保険者に合理的に提供されるものであるときは、職業の変更を伴う雇用は、これを適当のものとみとめることができる。
(b) 新らしい居住場所において適当の宿泊設備を利用しうるときは、住居の変更を伴う雇用は、これを適当のものとみとめることができる。
(c) 申込まれる条件が雇用の提供される職業及び地方において一般に遵守される標準に適合するときは、被保険者がその適当の職業及び住居地において通常得られるものに劣らない有利な条件の下に在る雇用は、これを適当のものとみとめることができる。
緊急費
15 疾病、母性、廃疾及び死亡の場合に生ずる非常経費(他に別段包含されない限り)を設けなければならない。
(1) 被扶養者たる子女の母親が婦人被保険者であり又は被保険者の妻であり且つ所得に代わる給付を受けないときは、その入院中必要な家事手伝を提供され、又はこれを雇うための給付を支払わなければならない。
(2) 婦人被保険者及び被保険者の妻の出産の場合において産衣費及び類似の費用のため一時金を支払わなければならない。
(3) 廃疾又は老令給付の受益者であつて絶えざる看護を要する者には特別補足金を支払わなければならない。
(4) 被保険者又はその妻、夫若しくは被扶養者たる子女の死亡の場合には埋葬費のため一時金を支払わなければならない。
業務傷害
16 業務傷害補償が支払われるべき事故は、業務に基く外傷性傷害又は疾病であり、且つ故意に惹起されたものでなく、又一時的若しくは永久的労働不能又は死亡を伴う被害者の重大にして故意の非行により惹起されたものでないものである。
(1) 業務に基因する傷害は、労務場所への往復において起る傷害を包含しなければならない。
(2) 業務傷害補償が支払われる場合においては、前記諸規定は、以下の諸項に示される適当の変更を条件としなければならない。
(3) 或る種の職業に使用される者にのみしばしば起り、又は或る職業に使用される物質に帰因する中毒である疾病は、かかる疾病に罹る者がかかる職業に従事するときは、職業的原因に基くものであると推定され且つ補償を生ぜしめなければならない。
(4) 職業的原因に基くものと推定される疾病の表は、これを確定し且つ簡単な手続により随時これを改正しなければならない。
(5) 職業的原因に基くものとの推定を立証するに必要な最少限度の業務期間及び職業的病源の推定が業務を去つた後引続き有効である最長期間を定めるに当つては、疾病に罹り且つこれが表われるのに必要な長さの期間を考慮に入れなければならない。
(6) 一時的労働不能補償は、疾病給付の支払に適用されると同様の条件においてこれを支払わなければならない。
(7) 労働不能が待期よりも長く続くときは、一時的労働不能の第一日目から補償を支払う可能性に考慮を払わなければならない。
(8) 永久的労働不能補償は、身体の一器官若しくは機能の喪失による、又は傷害若しくは疾病に帰因する慢性症状による所得能力の喪失若しくは減退に関し、これを支払わなければならない。
(9) 永久的に労働不能となつた者は、その残りの体力と能力、その従来の経験及びその利用しうる訓練施設を考慮して、その者に合理的に指定される職業における雇用に再び就くことをこれに期待しなければならない。
(10) かかる雇用が提供されないときは、その者は、確定的又は一時的基礎において全部的労働不能補償を受けなければならない。
(11) かかる雇用が提供され、しかもその者が雇用において普通の努力により取得することができる金額がその傷害又は疾病に罹らなかつたなら恐らく取得すべかりしものより著しく少ないときは、その者は、所得能力の差異に比例する一部的労働不能補償を受けなければならない。
(12) 労働能力の減退が立証されないときでも身体の一器官若しくは機能の喪失又は外形が醜悪になつたすべての場合において適当の補償を支払う可能性を考慮に入れなければならない。
(13) 漸次進行する職業病の危険に曝される者は、定期的に身体検査を受け、且つ職業の変更が必要とされる者は、補償を受ける権利を有しなければならない。
(14) 全部的又は一部的の永久的労働不能に対する補償は、一時的労働不能補償が終るときから永久的労働不能の全期間に対しこれを支払わなければならない。
(15) 永久的の一部的労働不能に対する補償を受ける者は、身体上健全な者と同一の条件において他の給付を受ける権利を有しなければならない。尤もかかる給付の率が被保険者の従前の所得に関係している場合に限る。
(16) かかる給付の率が被保険者の従前の所得に関係しない場合においては、補償とその他の給付との合計率について最高限度を定めることができる。
(17) 遺族補償は、次の諸項の規定を条件として遺族補償を受けないならば別の遺族給付を受ける権利がある被扶養者にこれを支払わなければならない。
(18) 寡婦は、寡婦たる全期間に付補償を受けなければならない。
(19) 子女は、十八歳まで、又はその一般若しくは職業教育を続行しているときは二十一歳まで、補償を受けなければならない。
(20) 死亡者のその他の家族で死亡者により扶養されていた者に補償するため措置を講じなければならない。尤も寡婦及び子女の請求権を阻害してはならない。
(21) 三分の二以上の程度において永久的に労働不能となつた者で業務傷害の結果以外の理由で死亡するものの遺族は、基本的遺族給付を受ける権利を有しなければならない。尤も死亡者がその死亡の当時かかる給付に対する醵出金の条件を具備していたと否とを問わない。
B 被保険者
被保険者の範囲
17 社会保険は、すべての被用者及び自立労働者並びにその被扶養者であつて次のことが可能である者に関し、かれらが曝される事故の場合に保護を与えなければならない。
(a) 不均衡な管理費を伴わないで醵出金を徴収すること。
(b) 医的施設及び職業紹介施設と必要な協力をし、且つ濫発に対し充分注意を払つて給付を支払うこと。
(1) 被扶養者たる妻(すなわち使用されない又は自立労働者ではない妻)及び被扶養者たる子女(すなわち学校卒業年令を超えない者又は十八歳未満でその一般若しくは職業教育を引続いて受けている者)は、その稼得者の保険によりこれを保護しなければならない。
醵出金の徴収
18 使用者は、その使用するすべての者に関し、醵出金を徴収する責を負い、且つ報酬を支払うとき被用者の納入すべき金額をその報酬から控除する権利をもたなければならない。
(1) 或る種の自立労働者について、職業組合への加入又は免状の所有が強制的である場合においては、関係労働者から醵出金を徴収する責任を組合又は免状下付機関に課することができる。
(2) 納税の目的のために登録された自立労働者から醵出金を徴収する責任を全国的又は地方的機関に課することができる。
(3) 醵出金の納付を確保するための機関の発達するまでは、自立労働者をして個人として又は組合員として任意的に醵出金を納付することを得しめるため措置を講じなければならない。
給付の管理
19 給付の有効な管理を容易にするため、醵出金簿の保存、給付を発生させる事故の存在を確認する容易な手段並びに予防及び治療の機能をもつ医的施設及び職業紹介施設の併行的組織のため措置を講じなければならない。
被用者
20 報酬のために使用される者は、その者に関する醵出金の徴収を組織化することができ且つ給付の管理のため必要な措置を講ずることができるときは、速かに社会保険により包含される事故の全体に対しこれを保険にかけなければならない。
(1) 雇用が不規則であり又はその全体において短かいので、被用者に留保される給付権を取得することが殆んどできない者は、かかる給付について保険からこれを除外することができる。同一の使用者のため通常極めて短期間労働する者のために特別の措置を講じなければならない。
(2) 報酬を受けない徒弟は、業務傷害に対しこれを保険にかけなければならず、且つその職業について徒弟期間を完了した日より、その職業における労働者のうける現行賃金を基礎とする補償をこれに支払いうるものとしなければならない。
自立労働者
21 自立労働者は、その醵出金の徴収を組織化することができるときは速かに被用者と同一の条件の下に、廃疾、老令及び死亡の事故に対しこれを保険にかけなければならない。入院を要する疾病及び母性、数箇月間継続する疾病並びに疾病、母性及び死亡の場合に要する非常経費に対しても亦自立労働者を保険にかけることの可能性を考慮に入れなければならない。
(1) 使用者の家に同居するその家族員は、使用者の扶養する妻又は子女を除き、その実際の賃金を基礎とするか、又はこれを確認することができないときはその業務の市場価値を基礎として、右の事故に対しこれを保険にかけなければならない。使用者は、かかる者に関する使用者の醵出金納入につき責任を負わなければならない。
(2) 自立労働者であつてその所得が通常低いので単に所得の補助的若しくは臨時的源泉として考えられる者又は最少限度の醵出金の納入がかれらにとつて困難である者は、一保険からこれを除外し、且つかれらが属する職業群の福利を促進するために存在する職業紹介施設又は特別の施設の諮問にかけなければならない。
(3) 廃疾及び遺族給付を受ける資格条件として所定の醵出金期間を完了した後、被用者として又は自立労働者としての強制的被保険者たる身分を失う者は、所定の変更を条件として、自立労働者と同一の条件の下にその保険を継続するの選択権(一定期間内に行使するものとす。)を与えられなければならない。
C 給付率及び醵出条件
給付率
22 給付は、再び労働することが可能な場合に再び労働するの意志を阻害することなく且つ生産及び雇用が制限されるほど重い負担を生産群に負わせることなくして実行し得る高い水準まで家族責任を適当に考慮して、損失所得を償うものでなければならない。
23 給付は、被保険者がそれに基いて醵出金を支払つたその者の従前の所得に比例しなければならない。尤も熟練労働者の普通の所得を超える超過部分は、被保険者の醵出金以外の財源から経理される給付率又はその一部を決定する目的のためにはこれを無視することができる。
24 画一率の給付は、国民が任意保険により充分且つ経済的な方法を以て附加的給付を受けられる国民に対してはこれを適当にみとめることができる。前記の給付は、未熟練労働者の所得に比例すべきである。
(1) 疾病及び失業給付は、未熟練労働者については、被保険者に被扶養者がないときはその従前の所得の四十パーセント、又被保険者に被扶養者たる妻又はその子女のための家政婦があるときは、その六十パーセントを下つてはならない。二人を超えない被扶養者たる子女の各々については、かかる所得の十パーセントに等しい附加金(これらの子女に対する子女手当の額は差し引く。)を支払わなければならない。
(2) 多額の所得がある労働者については、従前の所得に対する前記の給付の割合は、幾分これを低減することができる。
(3) 母性給付は、すべての場合において母及びその子女の充分にして健全な生活維持に充分なものでなければならない。母性給付は、女子未熟練労働者の現在の純賃金の百パーセント、又は受益者の従来の純所得の七十五パーセントを下らないものとし、何れかのうち多額の方のものでなければならない。尤も子女について支払われる子女手当の額を差し引くことができる。
(4) 基本的廃疾及び老令給付は、受益者に被扶養者がないときはその居住する地方における男子未熟練労働者について普通みとめられる現行賃金の三十パーセント、又寡婦給付を受ける資格がある被扶養者たる妻又はその子女のための家政婦があるときはその四十五パーセントを下つてはならない。二人を超えない被扶養者たる子女の各々については、かかる賃金の十パーセントに等しい附加金(これらの子女に対する子女手当の額を差し引く。)を支払わなければならない。
(5) 基本的寡婦給付は、受益者が居住する地方における男子未熟練労働者について普通みとめられる現行最低賃金の三十パーセントを下つてはならない。三人を超えない被扶養者たる子女の各々については、かかる賃金の十パーセントの率における子女給付(これらの子女に対する子女手当の額は差し引く。)を支払わなければならない。
(6) 孤児については、基本的子女給付は、男子熟練労働者について普通みとめられる現行最低賃金の二十パーセント(孤児について支払われる子女手当の額は差し引く。)を下つてはならない。
(7) 基本的廃疾、老令及び遺族給付を受ける資格として納入されるものに附加される醵出金の部分は、(4)、(5)及び(6)に定められる給付を増額するため被保険者の勘定に入れることができる。
(8) 老令給付を請求することをうる最低年令を超えて退職が延期されるすべての場合においては、基本的老令給付は、公平にこれを増額しなければならない。
(9) 業務傷害補償は、傷害の結果として損失を来たし又は損失を来たしたと推定される賃金の三分の二を下つてはならない。
(10) かかる補償は、定期的支払の形式をとらなければならない。尤も一時金の支払が受益者にとり一層有利であると権限のある機関が確認する場合においてはこの限りではない。
(11) 永久的労働不能及び死亡に関する定期的支払は、被保険者の従来の職業における賃金水準の著しい変化に絶えず調整されなければならない。
醵出条件
25 業務傷害に対する補償以外の給付を受ける権利は、請求者の普通の身分が被用者又は自営業者であることを確認し、且つ醵出金の支払において充分な定期性を維持することを目的とする醵出条件に従わなければならない。ただし、ある者の使用者がその者に関して支払うべき拠出金を正当に徴収しなかつたことを理由として、その者は、給付を受ける資格を奪われない。
(1) 疾病、母性及び失業給付に関する醵出金の条件は、保険事故が発生する前所定期間の少くとも四分の一、例えば二箇年に関し醵出金が納入されたことを要するという要件を含むことができる。
(2) 母性給付に関する醵出金の条件は、予定の分娩日の少くとも二箇月前第一回の醵出金が納入されたことを要するという要件を含むことができる。尤も醵出金の条件が充されないときと雖も、事情を考慮した上請求者の通常の身分が被用者であるとみとめられるときは分娩後の強制的欠勤期間中最低率の母性給付を支払わなければならない。
(3) 基本的廃疾、老令及び遺族給付に関する醵出金の条件は、保険事故の発生する前所定期間の少くとも五分の二、例えば五箇年に関し醵出金が納入されたことを要するという要件を含むことができる。所定期間の四分の三例えば十年を下らない期間に関する醵出金の納入又は保険加入以来経過した一層長い期間に関する醵出金の納入は、等しく給付に対する資格としてこれをみとめなければならない。
(4) 老令給付に関する醵出金の条件は、給付に対する請求が為される少くとも五年前に第一回の醵出金が納入されたことを要するという要件を含むことができる。
(5) 給付権は、被保険者が自立的労務期間に関しその納入すべき醵出金を故意に納入しない場合又は醵出金の滞納のために科せられた罰金を故意に支払わない場合にはこれを停止することができる。
(6) 被保険者が廃疾又は老令給付を受ける資格があるようになつた日における被保険者たる保険上の身分は、かかる給付を受ける限り維持さるべく、以て廃疾の恢復の場合において廃疾の発生した当時と同様に充分に当該制度の保険を被害者に確保し、且つその遺族給付を受ける資格を与えるようにしなければならない。
D 費用の配分
26 給付の費用(管理費を含む。)は、被保険者に公平であり、且つ小額収入の被保険者の貧窮又は生産の攪乱を避けるように、被保険者、使用者及び納税者の間にこれを配分しなければならない。
(1) 被保険者の醵出金は、同一の事故に対するすべての被保険者の推定平均所得に適用することとして、給付の計算のために考慮される被保険者の所得の一部であつて、被保険者が受領資格をもつ給付(業務傷害に対する補償を除く。)の現在の見積り価値に等しい現在の見積り価値を有する醵出金収入を得られるような部分を超えてはならない。
(2) この原則に従い同一の給付に対する被用者及び自立労働者の醵出金は、原則としてその各自の所得の右と同一の部分を表わすものとみることができる。
(3) 本質的な有償労働に相当するものとしてみとめることができる最低所得率を基礎とする絶対的最低率は、全部的又は一部的に以前の所得率に応じて変更しない給付に関し、被保険者の醵出金としてこれを規定することができる。
(4) 使用者は、特に低賃金労働者の保険に補助金を出すこととして、被用者に限られた全給付費用(業務傷害に対する補償を除く。)の半額を下らない額を醵出することを要する。
(5) 業務傷害に対する補償の全費用は、使用者がこれを醵出しなければならない。
(6) 業務傷害に対する補償に関する醵出金の計算上、或る種の等級方法を適用するの可能性を考慮しなければならない。
(7) 被用者及び使用者の醵出金の率は、できるだけ安定したものとし、且つこの目的のため安定基金を設けなければならない。
(8) 醵出金により適当に支弁することができない給付の費用は、社会がこれを支弁しなければならない。
(9) 社会に課せられる費用の成分中には、次のものを挙げることができる。
(a) 既に年令の高い者を保険に入れることから生ずる醵出金の不足
(b) 基本的廃疾、老令及び遺族給付の支払並びに充分な母性給付の支払を保障することに伴う臨時的の費用
(c) 失業が過度の水準において持続するとき失業給付の継続的支払から生ずる費用
(d) 小額収入の自立労働者の保険に対する補助金
E 管理
27 社会保険の管理は、社会保障施設の一般制度内においてこれを統一し又は調整し、且つ醵出金醵出者は、その団体を通じ管理方策に関し決定をし又は助言をし、且つ法律案を提出し又は規則を制定する機関において代表されなければならない。
(1) 社会保険は、単一の機関の指揮の下に(連邦諸国においては立法権の配分を条件として)これを管理しなければならない。この機関は、共通の利害関係ある問題例えば労働不能又は職業を手に入れる不可能の確認の如き問題に関する調整機関として社会救済、医的保護施設及び職業紹介施設を管理する機関と提携しなければならない。
(2) 社会保険の統一的管理は、或る種の職業群例えば坑夫及び海員、公務員、個人的企業の職員並びに共済組合員の如き者に対する補充的給付を提供することを目的とする(社会保険に代わるものではなく)性質上強制的又は任意的の特別保険制度の運営と両立するものでなければならない。
(3) 社会保険に関する法令及び規則は、受益者及び醵出金がその権利と業務を容易に理解することができる方法を以てこれを作成しなければならない。
(4) 受益者及び醵出者が履行すべき手続を設けるに当つては、簡単を第一に考慮しなければならない。
(5) 労働組合、使用者団体、商業会議所、農業者団体、婦人団体及び児童保護協会の如き団体を代表する中央及び地方の諮問会議は、法律及び管理方法の改正のための勧告を作り且つ一般的に社会保険の管理と醵出者及び受益者の群との間の接触を維持する目的のため、設けられなければならない。
(6) 使用者及び労働者は、特に災害及び職業病の予防と傷害等級付けとに関連して、業務傷害に対する補償の管理機関と密接な関係を保たなければならない。
(7) 請求者は、給付権及び給付率の如き問題に関する管理機関との紛争の場合において、上訴権をもたなければならない。
(8) 上訴は、特に特別裁判所に付託さるべく、右裁判所は、請求者が属する群を代表する陪席員により及び被用者に関するときは又使用者の代表者により援助される社会保険法の専門家である審判官を包含しなければならない。
(9) 保険加入義務又は醵出金の率に関する紛争においては、被用者又は自立労働者は、並びに使用者の醵出金が問題であるときは、使用者は、上訴の権利を有しなければならない。
(10) 解釈の画一性は、上級上訴裁判所がこれを確保しなければならない。
Ⅱ 社会救済
A 子女の生活維持
28 社会は、被扶養者たる子女の福利を確保することを目的とする一般救済措置を通じて常に両親と協力しなければならない。
(1) 子女の健全な養育を確保し、大家族の生活維持を援助し及び社会保険を通じて子女のために設けられる措置を完全にするため、現物若しくは現金又はその両者による公の補助制度を設けなければならない。
(2) 意図する目的が子女の健全な養育を確保するにある場合においては、補助は、無料又は原価以下の子女の食料、学校給食及び数人の子女がある家族に対する普通の家賃以下の住宅の如き便益の形式をとらなければならない。
(3) 意図する目的が大家族の生活維持を援助すること又は現物補助により及び社会保険を通じて子女のために設けられる措置を完全にすることにある場合においては、補助は、子女手当の形式をとらなければならない。
(4) かかる手当は、両親の所得如何にかかわらず、子女の生活維持費に実質的に寄与すべき所定率の表に従つてこれを支払い、比較的に高い年令の子女の生活を維持する費用の増加を考慮し、且つ最低限度として社会保険制度の下にいかなる措置も設けられないすべての子女に与えられなければならない。
(5) 社会は、全体として被扶養者たる子女の生活を維持する親の責任が遂行されない限り、右の子女の生活維持の責任を負わなければならない。
B 貧困な廃疾者、老令者及び寡婦の生活維持
29 廃疾者、老令者及び寡婦であつて自身又はその夫が強制的に保険にかけられない故に社会保険給付を受けず且つその所得が所定水準を超えない者は、所定率の特別生活維持手当を受ける権利をもたなければならない。
(1) 生活維持手当を受ける資格ある者のうちには、次の者を包含しなければならない。
(a) 職業群に属する者又は社会保険が未だ適用されないか若しくは基本的廃疾、老令若しくは遺族給付に対する資格期間中社会保険が未だ適用されない地方に居住する者並びにかかる者の寡婦及び被扶養者たる子女
(b) 普通に保険に入る当時既に廃疾者である者
(2) 生活維持手当は、長期間の生活維持を充分に確保するに充分でなければならない。生活維持手当は、現在の生活費に従つて変化すべく、且つ都会と地方との間に差別を設けることができる。
(3) 生活維持手当は、他の所得が所定の水準を超えない者には充分な率で、且つその他の場合においては低減された率でこれを支払わなければならない。
(4) 廃疾、老令及び遺族給付が支払われるべき保険事故を限定するこの勧告の規定は、関係がある限り生活維持手当にこれを適用しなければならない。
C 一般救済
30 窮乏しており且つ匡正的保護のための収容を必要としないすべての者に対し、現金による又は一部現金で一部現物による充分な手当を設定しなければならない。
(1) 手当の額が全然任意的である場合の範囲は、窮乏の場合の分類の改善と短期及び長期の窮乏に対する生活維持費に相当する予算の設定との結果として漸次これを決めなければならない。
(2) 手当の支給は、救済がその最大の建設的効果をあらわすよう、医的施設又は職業紹介施設を管理する機関によつて与えられる指示を被救済者が実行することを条件とすることができる。