1925年の労働者補償(裁判)勧告(第23号)

1925年06月10日

労働者補償に付ての争議の裁判に関する勧告(第23号)

 国際労働機関の総会は、
 国際労働事務局の理事会に依りジユネーヴに招集せられ、千九百二十五年五月十九日を以て其の第七回会議を開催し、
 右会議の会議事項の第一項目の一部たる労働者補償に付ての争議の裁判に関する提案の採択を決議し、且
 該提案は勧告の形式に依るべきものなることを決定し、
 国際労働機関の締盟国をして立法其の他の方法に依り之が実現を為さしむる目的を以て考慮せしむる為、国際労働機関憲章の規定に従ひ、千九百二十五年六月十日、千九百二十五年の労働者補償(裁判)勧告と称せらるべき左の勧告を採択す。
 労働者補償に関する争議は、啻に法令又は規則の解釈の如何に依るのみならず、労働状態に関する充分なる智識を必要とする職業的性質の諸問題、例えば企業の性質、企業に固有なる危険の種類、労働者の作業と災害との関係、労働所得算出の方法、労働不能の程度、労働者が他の職業に適応するの能否等に関する諸問題の如何に依るものなるに因り、
 労働者及使用者は、此等の諸問題に関し必要なる智識と経験とを有し且両者が補償事件に関する争議を決定すべき裁判所の構成員となり又は之と協力するときは、該争議は一層衡平に解決せらるべきに因り、
 且現在の司法制度より根本的に離るることなくして、使用者及労働者と右裁判所との協力を(構成員として又は其の他の方法に依り)確保することは多数の国に於て可能なるに因り、
 総会は、国際労働機関の各締盟国が左の原則及規準を考慮すべきことを勧告す。

 労働者補償に関する凡ての争議は、審判者として使用者団体及び労働者団体の各自に依り任命せられ若は右両団体の指名に基き任命せられたる使用者及び労働者の各同数の代表者を(正規の裁判官を加え若は加へずして)包含する特別裁判所若は仲裁委員会、又は他の社会機関より選抜せられ若は使用者及労働者各自の選挙団体に依り選挙せられたる使用者及労働者の各代表者を包含する特別裁判所若は仲裁委員会に依り処理せらるるを可とすべきこと。

 労働者補償に関する争議が普通の司法裁判所に依り処理せらるるときは該裁判所は、争議が職業的性質の問題就中労働不能の程度の問題を包含する一切の場合に於ては、関係当事者の一方の要求あるときは、専門家として使用者及労働者の各代表者の意見を徴するを要すること。