1921年の失業(年少者)勧告(第45号)
1935年06月25日
年少者の失業に関する勧告(第45号)
| 国際労働機関の総会は、国際労働事務局の理事会によりジュネーヴに招集されて、二千二年六月三日にその第九十回会期として会合し、本会期の議事日程の第七議題である二十の国際労働勧告の撤回に関する提案を検討し、二千二年六月十八日に、千九百三十五年の失業(年少者)勧告(第四十五号)の撤回を決定する。国際労働事務局長は、この本文書撤回の決定を、国際労働機関の加盟国及び国際連合事務総長に通知する。この決定の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。 |
国際労働機関の総会は、
国際労働事務局の理事会に依りジユネーヴに招集せられ、千九百三十五年六月四日其の第十九回会議として会合し、
右会議の会議事項の第三項目たる年少者の失業に関する提案の採択を決議し、且
該提案は勧告の形式に依るべきものなることを決定し、
千九百三十五年の失業(年少者)勧告と称せらるべき左の勧告を千九百三十五年六月二十五日採択す。
総会は、
多数の労働者を失業せしむるの結果と為りたる一般的不況の匡救済として採らるべき経済的措置に付しばしば(注:原文は旧字体)各国政府の注意を喚起したることを想起し、此の失業が継続し、多数の年少者に影響を及ぼし、其の結果已むを得ず懶惰と為り、為に其の品性低下し、又職業上の技能減損し、延いて国民の将来の発展が脅かさるるに鑑み、
総会が其の第十八回会議に於て年少者に対しても適用ある失業保険及失業者の為の各種の扶助に関する条約及勧告を採択したるに鑑み、
正に世論を喚起したる重大なる事態を匡救する為多くの国が他の措置を採用したるに鑑み、
此の方面に於て既に得られたる経験に徴し各締盟国が左記の原則を適用し且其の原則を適用したる程度及方法を記載する報告書を国際労働事務局に提出すべきことを勧告す。
義務教育終了年令、就業年令、一般教育及職業教育
1 義務教育終了最低年令及就業最低年令は、事情の許す限り速に十五歳を下らざる年令に定むべし。
2(1) 義務教育終了年令を超えたる少年にして適当なる業務を見出し得ざるものは、学校の組織の許すときは、適当なる業務を見出し得る迄全科出席を継続することを要求せらるべきものとす。
(2) 本項に於て「適当なる」とは、主として当該業務の持続性あること及其の将来見込あるものなることを謂ふ。
(3) 本項の適用に関しては、教育機関、職業紹介機関及失業保険機関の間に緊密なる協力を保つべし。
3 本勧告に於て「少年」とは、十八歳未満の者を謂ふ。
4 義務教育未だ存せざる国に在りては、1及2に従ひ能ふ限り速に之を採用すべし。
5 権限ある公の権力は、必要あるときは、1及2に依り延長せられたる教育期間中両親に生計手当を与ふべし。
6 右に勧告せる諸措置の適用に依り学校出席期間が延長せらるる少年の為の教科目は、特に其の一般教育の向上を目的とすべきも職業的活動の為の一般的訓練をも図るべし。
7(1) 必要なる適性を具へたる少年に対しては、義務教育終了最低年令を超えて中等学校又は技術学校に入学する為の措置を執るべし。
(2) 授業料の免除又は減額は、本原則を適用するに付適当なる方法なるべし。
8 全科出席期間を終了せる少年は、十八歳に達する迄は、一般教育及職業教育を併せ行ふ補習科に出席することを要求せらるべきものとす。
9(1) 右の出席が一切の少年に付強制的ならざる場合に於ては、右の出席は、少くとも少年失業者に付ては強制的とせらるべく、右少年失業者は、毎日所定数の時間出席することを要し、其の不可能なるときは、毎週所定数の時間出席することを要するものとす。
(2) 少年失業者の相当多数存する地方に在りては、特別の科を組織すべし。
(3) 前二項に従ひ組織せる科に出席せる少年をして業務を見出したる後に於ても成るべく同様の教育を継続することを得しむる為の措置を執るべし。
10 9の適用に依り出席を要する科に出席することを拒絶せしことに付正当なる理由を示すこと能はざる少年失業者は、各場合に応じ失業給付及手当の受領に付一時的に全部又は一部之を失格とすることを得。
11(1) 十八歳より二十五歳迄の失業者の為、一般教育の科目を有する職業訓練所を設置すべし。右訓練所が寄宿制たるや非寄宿制たるやは、事情に依り決定せらるべきものとす。
(2) 右訓練所は、使用者団体及労働者団体と協力して之を組織すべし。
12(1) 右訓練所の課程は、実際的科目の外に職業及教養に関する一般科目を包含すべし。
(2) 右訓練所に於て講義を担任する者は、適当なる報酬を受くべく、且能ふ限り有資格者たる年少失業者中より特別の注意を以て選任せらるべきものとす。
13 9又は11の適用に依り設置せらるる科又は訓練所に出席する者は、旅費其の他の必要なる費用を償ふ為の補足給付を与へらるべし。
14 中等教育、技術教育又は高等教育を終了したるとき就職し得ざる者に付ては、左記の措置を執るべし。
(a) 右の者をして工業、商業其の他の企業及行政機関に於て実際的経験を得ることに依り其の理論的訓練を補足することを得しむる為の措置。但し右の者が一般労働者を排除することを防止する為有らゆる注意を払ふべきものとす。
(b) 聴講料免除及奨学給費の如き方法に依り右の者が其の技術教育若は高等教育を終了せし学校又は一般教育若は職業教育の他の学校に引続き出席することを容易ならしむる為の措置
(c) 右の者に人員過剰なる職業に関する情報を与へ且職業上の転向に障礙となる偏見を改めしむる為の措置
15 年少失業者の為の教育機関、娯楽機関、社会施設及作業場の有資格職員を養成する為特別の措置を執るべし。右養成は、必要なる資格を有する年少失業者の入所を許さるる特別の機関に於て之を施すこと適当なるべし。
年少失業者の為の娯楽及社会施設
16(1) 年少失業者の一般教育及び職業教育を向上せしむる為の措置に併せて、娯楽機関、体育機関、読書室等の設置の如き年少失業者をして閑暇を有用且快適に利用し得しむる為の措置を執るべし。
(2) 右機関は、失業者の専用とせず、就職者及失業者間の組織的分離を避くる為年少就職者にも之を開放すべし。
(3) 右機関は、有資格者の監督を受くべきも、其の活動は能ふ限り年少者との協力に依り且年少者の間に於て之を処理すべし。
17 相当多数の年少失業者の存する地方に在りては、廉価に食事及宿泊を為し得る社会施設及宿泊所を設置する為の措置を執るべし。
職業団体及私の団体に依る措置
18 公の権力は、職業団体及他の団体に依り設置せらるる年少失業者の為の教育施設を援助すべし。
特別作業場
19 職業的訓練を施すに非ずして普通の雇用条件とは異る条件の下に業務に従事せしむることを主要目的とする作業場を十八歳乃至二十四歳の年少失業者の為設置すること望ましと認めらるる場合に於ては、此等の異常なる条件が弊害を齎すことを防ぐ為充分なる保障を設くべし。
20 作業場の入所は、厳に任意とす。
21 公のものたると私のものたるとを問はず、作業場が軍事教練の為の施設と為るを防止する為有らゆる注意を払ふべし。私設の作業場は、公の非軍事的機関の監督を受くべし。
22 医学的診断を受け且割当てらるる労働に肉体上適することを認められたる者に非ざれば、作業場に入ることを得ず。
23 一切の作業場に於ては厳重に衛生的なる状態を保持すべし。
24 居住状態及紀律に特別の注意を払ふべし。作業場の組織は、能ふ限り年少失業者の自治に依らしむべく、特に紀律に関し然りとす。
25 年少者をして其の家庭と常に接触を保たしむる為、作業場は、事情の許す限り其の家庭に近く之を設くべし。
26(1) 作業場の作業計画は、該作業場が一般労働者と競争することを避くるが如きものたるべし。
(2) 作業は、能ふ限り関係者の年令、性、体力及職業に適応するものたるべし。
27 作業場に於て使用せらるる年少者の報酬は、食事並に作業服及宿泊が供せらるるときは、右作業服及宿泊の外に現金給与を包含すべきものとす。
28 作業場に使用せらるる者は、社会保険制度に加入するを得べく、且右の者に関し支払ふべき醵出金は、作業場に依り支払はるべし。
29 一般強制災害補償保険制度の存せざる場合に於ては、作業場は、保険に依り補償義務を履行すべし。但し自家保険者たる公の権力が右作業場を設置する場合は此の限に在らず。
30(1) 作業場の作業計画中に一般教育、職業的訓練、競技、運動及自由時間を充分に加ふる為生産的作業に費さる時間は、一週四十時間を遙に下るべし。
(2) 作業場には図書室を備ふべし。
31(1) 作業場の職員の養成及選任に付ては、詳細なる規則を設くべく、且作業場職員は、社会問題一般就中年少者問題に関し充分なる知識を有すべし。
(2) 年少婦人の為に特別に設置せらるる作業場の職員は、主として婦人を以て之に充つべし。
(3) 助手の地位は、能ふ限り作業場入所者にして適当なる資格を具備すると認められたるものを以て之に充つべし。
(4) 右作業場は、有資格者の監督の下に置かるべきも、其の活動は、能ふ限り年少者との協力に依り且年少者の間に於て之を規律すべし。
32(1) 作業場制度の一般的監督の為、中央監督会議を設置すべし。
(2) 中央監督会議は、労働者及使用者の最代表的なる団体の代表者並に職業紹介、土木事業、農業、保健衛生、安全、教育及其の他年少者の福利方面の所轄官公署の代表者を網羅すべし。
(3) 右代表者中には一定数の婦人を加ふべし。
33 中央監督会議又は他の適当なる機関は、作業場入所者を普通の業務に就かしむる目的を以て、公の職業紹介所と緊密なる協力を為すべし。
34 作業場入所者間に団体精神を涵養し、且国内移住計画、土木事業、手工業等に従事する協同労働団を組織することを奨励する為の措置を執るべし。
年少失業者の為の特別土木事業
35(1) 年少失業者救済の為特別土木事業を起すべく、右事業は、能ふ限り右の者の年令及職業に適合するものたるべし。
(2) 中等教育、技術教育又は高等教育を終了したる年少失業者に付ては、右事業は、能ふ限り右の者の訓練に適合するものたるべし。
(3) 適当且可能なる限り、特別作業場の為に勧告せらるる保障は、年少失業者救済の為に起す土木事業にも之を適用すべし。
職業紹介及び普通の業務の就職口の開拓
36 国内の公営職業紹介組織は、少年の職業紹介の為特別の地方的及中央的施設を包含すべし。
37 少年職業紹介所は、
(a) 2(2)に定めらるる適当なる職業に少年を就かしむることに努むべし。
(b) 職業指導部を設け又は独立の職業指導機関と協力すべし。
38 使用者は、地方少年職業紹介所に対し、少年の欠員及右紹介所を経ずして為したる少年の雇入を通告することを要求せらるべきものとす。
39 少年職業紹介所は、左記を為すことを要す。
(a) 少年の職業の将来を一層有望ならしむべき情報を得る為、職業指導機関、徒弟養成委員会及其の他類似の機関との協力に依り職業紹介の結果を監視すること。
(b) 年少者に関係ある他の一切の公私の機関特に教育機関と緊密なる関係を維持すること。
40 十八歳以上の年少者の職業上の転向を容易ならしむる為、職業紹介機関と能ふ限り連絡を保つべし。
41 主要産業が恒久的に衰頽状態に在りと認めらるる地方に在る年少失業者を現在発展しつつある職業に就かしめ及其の職業の存する地方に赴かしむる為の措置を執るべし。
42 政府は、見習即ち他国の慣習を知ることに依り自己の職業的資格を改善せんと欲する年少者の国際的交換を容易ならしむる目的を以て協定を締結すべし。
43 普通の労働時間を短縮することに依り復職を促進せんとするの企図は、年少者が従事する業務に関しては特に力を注ぎて之を遂行すべし。
統計
44(1) 失業保険機関、公営職業紹介所及失業統計を編纂する他の機関は、二十五歳未満の者の失業状態を示す数字を其の統計中に包含せしむべし。
(2) 右数字は、失業の分布を示す為左記に従い分類せらるべし。
(a) 性
(b) 年令(少年及他の年少者を各別に分類すること。)
(c) 職業(有給業務に就きたることなき者を別にし、其の訓練を受けたる又は求職したる職業に従い分類すること。)
45 右の統計を補足する為、及右の統計の存せざる場合には、之が代用として、前記の資料並に関係者を失業期間及職業上の経歴の如き事項に関する補充的資料を得る目的を以て時時特別の調査を行ふべし。
46 一般人口調査報告が失業に関する資料を包含する場合に於ては、能ふ限り44に掲げらるる資料を得る目的を以て該報告を分析すべし。
47 本勧告1が各国に於て完全に適用せらるるに至る迄は、義務教育終了年令未満の児童にして当該年度中授業時間外に業務に従事せるものの数を示す年次報告を作製すべし。右報告は、性、年令集団及職業に依り分類せらるべく、且右業務が行はれたる曜日及季並に労働時節間の数及び労働の時刻に付て其の詳細を示すべし。