1921年の白鉛(ペーント塗)条約(第13号)
1921年11月19日
ペーント塗に於ける白鉛の使用に関する条約(第13号)
(日本は未批准、仮訳)
国際労働機関の総会は、
国際労働事務局の理事会に依りジユネーヴに招集せられ、千九百二十一年十月二十五日を以て其の第三回会議を開催し、
右会議の会議事項の第六項目たる「ペーント」塗に於ける白鉛使用の禁止に関する提案の採択を決議し、且
該提案は国際条約の形式に依るべきものなることを決定し、
国際労働機関の締盟国に依り批准せらるるが為、国際労働機関憲章の規定に従ひ、千九百二十一年の白鉛(「ペーント」塗)条約と称せらるべき左の条約を採択す。
第 一 条
1 本条約を批准する国際労働機関の各締盟国は、第二条に定むる例外を除くの外、白鉛、鉛の硫酸塩及此等の顔料を含有する一切の製品を建築物内部の「ペーント」塗に於て使用するを禁止することを約す。但し白鉛、鉛の硫酸塩又は此等の顔料を含有する製品を鉄道停車場又は工業的設備に使用することを権限ある機関が関係ある使用者団体及労働者団体と協議の上必要と認むるときは此の限に在らず。
2 尤も金属鉛として表示せられたる鉛最大限百分の二を含有する白色顔料の使用は、之を許容するものとする。
第 二 条
1 第一条の規定は、装飾的「ペーント」塗又は潤飾的線塗に之を適用せず。
2 政府は、此の種の「ペーント」塗の範囲を定むべく、且本条約第五条、第六条及第七条の規定に従ひ、白鉛、鉛の硫酸塩及此等の顔料を含有する一切の製品の右目的の為にする使用を取締るべし。
第 三 条
1 白鉛、鉛の硫酸塩又は此等の顔料を含有する他の製品の使用を包含する工業的「ペーント」塗作業に於ては、十八歳未満の男子及一切の女子の使用を禁ず。
2 権限ある機関は、「ペーント」塗師の徒弟を其の職業教習の為前項禁止の作業に使用することを関係ある使用者団体及労働者団体と協議の上、許可するの権能を有すべし。
第 四 条
第一条及第三条に規定する禁止は、国際労働総会第三回会議の閉会の日より六年後、其の効力を発生すべし。
第 五 条
本条約を批准する国際労働機関の各締盟国は、白鉛、鉛の硫酸塩及此等の顔料を含有する一切の製品を其の使用の禁止せられざる作業に於て使用することを左の原則に基き取締ることを約す。
Ⅰ(a) 白鉛、鉛の硫酸塩又は此等の顔料を含有する製品は、煉物又は其の儘使用せられ得る「ペーント」の形体に於てするを除くの外、「ペーント」塗作業に於て之を使用することを得ず。
(b) 吹付法を以てする「ペーント」の塗付より起る危険を防止する為の措置を執るべし。
(c) 乾燥削り落し又は乾燥磨り落しに因りて生ずる粉塵より起る危険を防止する為の措置を履行し得る限り執るべし。
Ⅱ(a) 「ペーント」塗労働者をして作業中及終業の際洗浄することを得しむる為相当なる設備を設くべし。
(b) 「ペーント」塗労働者は、全作業時間中作業服を着用すべし。
(c) 作業時間中脱棄ての衣類が「ペーント」塗材料により汚染せらるることを防止する為適当なる施設を為すべし。
Ⅲ(a) 鉛中毒症及擬似鉛中毒症は、之を届出でしむべく、次で権限ある機関の指定する医師をして之を検定せしむべし。
(b) 権限ある機関は、必要に応じ労働者の健康診断を命ずることを得。
Ⅳ 「ペーント」塗業に於て執らるべき特別な衛生上の予防に関する指示は、「ペーント」塗労働者に配付せらるべし。
第 六 条
権限ある機関は、前諸条に基き定めらるる規則の施行を確保する為其の必要と認むる措置を、関係ある使用者団体及労働者団体と協議の上、執るべし。
第 七 条
「ペーント」塗労働者の鉛中毒に関する統計は、
(a) 罹病に付ては、一切の鉛中毒症の届出及検定に依り、
(b) 死亡に付ては、各国に於ける統計官憲に依り承認せらるる方法に依り、之を作成すべし。
第 八 条
国際労働機関憲章に定むる条件に依る本条約の正式批准は、登録の為国際労働事務局長に之を通告すべし。
第 九 条
1 本条約は、事務局長が国際労働機関の締盟国中の二国の批准を登録したる日より効力を発生すべし。
2 本条約は、該事務局に其の批准を登録したる締盟国のみを拘束すべし。
3 爾後本条約は、他の何れの締盟国に付ても、右事務局に其の批准を登録したる日より効力を発生するものとする。
第 十 条
国際労働機関の締盟国中の二国が国際労働事務局に本条約の批准の登録を為したるときは、事務局長は、国際労働機関の一切の締盟国に右の旨を通告すべし。事務局長は、爾後該機関の他の締盟国の通告したる批准の登録を一切の締盟国に同様に通告すべし。
第 十 一 条
本条約を批准する各締盟国は、千九百二十四年一月一日迄に第一条、第二条、第三条、第四条、第五条、第六条及第七条の規定を実施し、且右規定を実施するに必要なるべき措置を執ることを約す。
第 十 二 条
本条約を批准する国際労働機関の各締盟国は、国際労働機関憲章第三十五条の規定に依り、其の殖民地、属地及保護国に之を適用することを約す。
第 十 三 条
本条約を批准したる締盟国は、本条約の最初の効力発生の日より十年の期間満了後に於て、国際労働事務局長宛登録の為にする通告に依り之を廃棄することを得。右の廃棄は、該事務局に登録ありたる日以後一年間は其の効力を生ぜず。
第 十 四 条
国際労働事務局の理事会は、少くとも十年に一回本条約の施行に関する報告を総会に提出すべく、且其の改正又は変更に関する問題を総会の会議事項に掲ぐべきや否やを審議すべし。
第 十 五 条
本条約は、仏蘭西語及英吉利語の本文を以て共に正文とす。