児童労働

農業における児童労働

 児童労働が最も多く見られる農業はまた、危険な産業の一つでもあります。

2021年12月01日

 世界中で子どもが搾取を受けたり、学校に行くのを妨げられたり、健康と正常な発達が脅かされる仕事に追いやられたりしています。多くの地域で児童労働は主に農業環境で見られますが、ここでは死亡事故や深刻な事故、疾病が一般的です。

◎児童労働を詳しく見る

 児童労働とは世界的な現象です。世界中で数百万人の子どもがその福祉や安全、健康を害し、教育、発達、将来的な生計手段を妨げるような仕事を行っています。

児童労働 児童労働に該当しないもの
 児童労働とは、それぞれの国で定められている就労の最低年齢を下回る年齢(軽易な労働の場合はより低い年齢が定められています)で働いている子ども、そして最悪の形態の児童労働、つまり、危険有害労働や商業的性的搾取、強制労働、不正な活動に従事している子どものことを指します。  たとえ就労の最低年齢を下回っていても子どもが働くことを許される環境が存在します。多くの文化で軽易な労働は奨励され、非常にしばしば子どもが将来役に立つ重要な技能を育む助けになり得るものとみられています。
◇就労の最低年齢
国によって異なりますが、国際労働基準は15歳を下回らない年齢と定めています。ただし、途上国の場合は、差し当たり14歳とすることが認められています。
◇軽易労働
就労の最低年齢を2歳下回る年齢から軽易労働に従事することができますが、労働時間には一定の制限が課され、健康や発達を損なわない限り、または就学に影響を与えない限りにおいて認められます。
◇危険有害労働
子どもの安全、心身の健康、道徳的発達に悪影響を与えるような活動あるいは職業を指します。安全な活動であっても、作業量が過度であったり、物理的な労働条件、労働時間の長さによっては危険で有害なものとなる可能性があります。危険有害労働は最悪の形態の児童労働の一つとされています。
◇若年就業
就労の最低年齢に達した子どもであって、その健康や個人の発達、教育に影響しないディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に参加している子どもは若年就業者です。

これは児童労働でしょうか

<モシ君の場合> <アイリーンちゃんの場合> <アマラさんの場合>
 モシ君は12歳で、まだ義務教育を終えていません。お母さんの農場を時々手伝っていましたが、お母さんが病気になったので朝早くから夜遅くまで毎日働き始めました。学校に戻れることになるかどうか分かりません。  アイリーンちゃんは10歳で、森の端で暮らしています。時々両親を手伝って1~2時間、果物やベリー類を集めたり、薬草を採ったりしています。植物の見分け方や使用方法を学んでいます。村の学校に規則的に通っています。  アマラさんは16歳で、小規模なカカオ農園で季節労働者として賃作業に従事している母親と暮らしています。母親を手伝って斧を使ってカカオの実を収穫したり、実が入った大きな袋を運んだりしています。自分で農薬を散布することはありませんが、働いている場所の近くで農薬が散布されると目や肌がチクチクします。
→児童労働です。モシ君の国の法によっては、認められている軽易労働に当たるかもしれませんが、労働の結果として就学が妨げられるようなことがあってはなりません。 →児童労働ではありません。両親の農作業を手伝っているものの、作業によって教育が妨げられることも健康や発達に何らかのリスクがあるわけでもありません。 →児童労働です。健康を害する可能性がある化学物質にさらされながら危険な道具を用いて重労働に従事しています。これは危険有害労働であり、ILOで最悪の形態の児童労働の一つに分類されています。

◎児童労働の発生場所

 児童労働は世界中に存在しますが、欧州・北米のデータは不完全です。

子どもの人口 経済活動に従事している子ども
(子ども全体に占める割合)
児童労働に従事している子ども
(子ども全体に占める割合)
危険有害労働に従事している子ども
(子ども全体に占める割合)
世界全体 1,674,896.7 222,087.5(13.2%) 160,000(9.6%) 79,000(4.7%)
アフリカ 425,958.9 124,122(29%) 92,200(21.6%) 41,400(9.7%)
米州 195,162 14,672.5(7.5%) 8,300(4.3%) 5,700(2.9%)
アラブ諸国 42,488.8 3,447.1(8.1%) 2,400(1.5%) 1,900(4.5%)
アジア太平洋 866,644.4 67,959.9(7.8%) 48,700(5.6%) 22,200(2.6%)

◎児童労働の性格

 児童労働者全体の7割に当たる1億1,200万人(2020年データ)という驚くほどの数が農業に従事しています。通常は家族と共に働く無償労働です。

 農業はどんな年齢の人にとっても働くには最も危険な産業部門の一つですが、子どもにとっては一層危険です。規制されていない場合が多く、農業労働者の多くは労働組合や生産者団体として組織化されておらず、その結果、農業部門で働く人々は虐待に特に弱いと言えます。

世界の推計

 児童労働は2000年から大きく減ったものの、世界中で一般的に見られます。

世界全体の児童労働(5~17歳)の推移(2000年~2020年、単位:千人)

子どもの人口 児童労働 危険有害労働に従事している子ども
2004年 2020年 2000年 2020年 2000年 2020年
合計 1,566,300 1,674,897 245,500 160,000 170,500 79,000
少年 804,000 865,425.1 228,000 97,000 95,700 50,200
少女 762,300 809,471.6 188,100 62,900 74,800 28,800
5~14歳 1,206,500 1,305,068 186,300 124,900 111,300 44,000
15~17歳 359,800 369,829 59,200 35,000 59,200 35,000

ある児童労働者の1日の暮らし

タバコ畑における定例的な労働について子ども自身が説明します。

 児童労働者の1日の暮らしは朝早く始まります。午前5時にこのモルドバ中部のタバコ畑に労働者を運ぶトラックがやってきます。ユージニアさんは4時に起き、1日中畑で働いて過ごします。

問:仕事はたくさんあるの?

答:時々。親次第です。大きい家族には小さい家族より土地が多くありますから。

問:自分用のお小遣いももらえるんですよね?

答:まさか。お金は親が持っています。ご飯も食べさせてくれますし、服も買ってくれます。

 ユージニアさんは15歳ですが、この少年はわずか8歳です。

 姉弟は今日仕事に来られなかった両親の代わりにやって来ました。少年の手はタバコ葉のタールでネバネバしています。

問:何歳から働き始めたの?

答:分かんない。

問:家には何時に帰るの?

答:日が沈むまで帰れない。

問:朝4時に目を覚ますには、何時に寝ているの?

答:夕方7時くらい。

問:村では何か楽しみはありますか?

答:タバコ畑に行って夜は眠り、次の日も同じです。いつ遊ぶ時間があると思いますか。宗教上の休日には1日中眠って休み、遊んでなんていません。

◎膨らむ苦痛

 農業で働く子どもは、重機や鋭利な道具を用い、殺虫剤や害虫にさらされ、厳しい天候条件下で長時間働かなくてはならないかもしれません。タバコ畑で働く子どもがさらされる危険には次のようなものがあります。

  • 手足:子どもの手には大きすぎる重い鋭利な道具を使っています。これは働いている最中に打撲や切り傷を作る危険があることを意味します。傷口が開いていると感染や深刻な疾患につながる可能性があります。
  • 背中:1日の多くを、水桶やタバコ葉の束などの重い荷物を運んで過ごします。ほとんど常に背中が痛み、大人になっても恒常的な背中の問題を抱えることになる高い可能性があります。
  • :ニコチンは神経毒であり、タバコ葉に噴霧されたり、土中で用いられる化学薬品の一部もそうです。長期にわたって暴露すると、成長中の脳を害し、将来的に学習が困難になる可能性があります。
  • 目と口:化学物質や殺虫剤は目に刺激を与えむずがゆくし、口が赤く腫れる原因となります。
  • :裸足で働いているので、蛇にかまれたり、土中あるいは水中に住む寄生虫に寄生される可能性があります。
  • 手と首:はしごを上り下りしてタバコ葉を乾燥小屋の屋根から吊す作業に多くの時間を費やしています。基本的な保護措置がなく、足を滑らして落ちた場合には重傷を負ったり、命を失う危険さえあります。
  • 心臓:時々心臓の鼓動が非常に速くなりますが、原因が分からず、怖い気がします。これは実際には、タバコ葉を扱う際に皮膚を通して吸収されるニコチンによって引き起こされています。
  • :タバコ葉の乾燥や分別工程で吸い込む粉塵によって呼吸困難に陥ります
  • 皮膚:作業中、タバコ葉からのニコチンや多くの様々な化学物質に皮膚が接触します。これは皮膚が絶えず赤くなってむずがゆいことを意味し、いつも皮膚炎や傷が発生しています。
  • :皮膚を通じて吸収されたニコチンのせいで食欲が失われ、しばしば吐き気がします。あまりにも長くニコチンにさらされていると吐くこともあります。

◎恒常的な問題

 児童労働に従事する子どもの約56%が5~11歳の年齢層です(2020年)。この一部は学校に全く行っていません。仕事と学校を組み合わせている子どももいますが、これはしばしば出席率や学業成績に悪影響を及ぼしています。

 学校に通わなかった子どもは将来の選択肢を広げ、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を見つける可能性を失うことになります。その経験は自身の子どもも児童労働に陥る悪循環につながる可能性があります。

児童労働によって定められる進路

 デマング君は9歳の時に深海漁法のトロール漁船で働き始めました。様々な作業に従事しましたが、とりわけシャベルで魚に氷をかける作業と料理長の手伝いを担当しました。これはデマング君の将来に次のような影響を与えました。

  • 子ども時代:ほとんどの時間を海で過ごすデマング君はめったに学校に行きません。他の子どもと遊ぶ時間もないことは、認知力や社会的発達にさらなる影響を与えています。労働条件は非常に危険であり、常に怪我をしており、氷による凍傷もしょっちゅうです。
  • 青少年期:デマング君は数年にわたって重労働に従事したにもかかわらず、他で通用する本物の技能は全く育まれていません。教育不足であることは、識字力が低いことを意味します。友達作りが苦手で、多くの時間を独りぼっちで過ごしています。13歳になった今は1人前の大人と見なされ、甲板上で一層危険な作業をこなすよう求められています。
  • 壮年期:手指の関節炎は今、デマングさんができる仕事の種類を制限しています。トロール漁船で働けないため、今は時々肉体労働が見つかるだけです。生きていくために、漁業に従事する自分の子どもに頼っています。
  • 高齢期:もはや働けなくなったデマングさんですが、一生を通じて、高齢期に備えて蓄えることができませんでした。健康状態は悪く、拡大家族に食事を頼り、世話してもらっています。

◎子どもを農業労働に押しやる要因

 多くの農山漁村地域で子どもは生きるため、そして現金や食、住まい、衣類に対する家族の必要を満たすために働いています。しかし、子どもを児童労働に向かわせる要因は複数存在し、相互に絡み合っている可能性があります。

後押しする要因

  • 債務:家族は借金をするのが難しく、子どもを働かせて債務を返済する場合があります。最悪の場合、子どもは無償で働くよう強いられることもあります。
  • 教育:教育が過小評価されている場合、親は学業や訓練に対する長期的な投資を省いて、所得創出の短期的な解決策を求めるかもしれません。
  • 低所得:家族は食の安全保障のような基本的な必要を満足するために子どもに頼って世帯収入を補足する場合があります。
  • 僻地環境:農山漁村地域には学校が少ないために子どもは教育を得られない場合があります。学校がない場所では、とりわけ少女の場合、通学は時間がかかり危険なものになるかもしれません。学校機会が限られていることによって子どもは労働のような他の活動に追いやられる可能性があります。
  • ショック:収穫の失敗、自然災害、大黒柱の病気や死亡など、ショックに直面した家族は社会的支援がない場合、子どもがもたらす収入に頼るかもしれません。
  • 伝統:関連する危険に対する意識の低さを特徴とするものの、子どもの農業への参加は生き方の一つであり、技能と知識の伝承に必要なことと考えられている場合があります。

子どもを労働に引き寄せる要因

  • 従順:子どもの方が大人よりも従順で管理しやすいと考え、児童労働者の採用の方を選ぶ使用者もいます。
  • 住宅:子どもが働かないと家族と一緒に暮らすことを許さない農園もあります。
  • 費用:小規模農家や農山漁村の企業はあまり生産的でなく、低い利幅で経営されている場合が多く、経費を低く抑えるために、大人より賃金が低いか全く賃金が支払われない児童労働者の方を選ぶ使用者もいるかもしれません。
  • 労働供給:作物の植え替えや収穫などの農繁期には、成人労働者の供給が逼迫し、児童労働に対する季節的な需要が増す可能性があります。
  • 割当:目標値を達成するために子どもを生産に関与させる圧力が親や保護者にかかる場合があります。
  • 大きさ:切り花や漁網の補修などの繊細な作業には、子どもの敏捷な指が適しているとの認識が子どもの労働を望ましいと考えさせる場合もあります。

◎児童労働の撤廃

 農業に従事する児童労働者は2008年より1,700万人減っています。しかし、子どもを児童労働に従事させないように保つことは複雑な作業であり、政府だけでは悪循環を断ち切ることができません。

児童労働に終止符を打つために協働

  • 立法:児童労働から脱する法の実施を公約した国は186カ国に上りますが、この執行は課題が多い可能性があります。児童労働の根絶に成功した多くの農山漁村地域では、地域社会自体が児童労働の存在を監視し、子どもが学校に通っているか目を光らせています。
  • 連帯:農業労働者は労働組合や協同組合として結束したり、小口金融や信用組合を設けることによって、経済的ショックに対する強さが増し、収入を改善できる可能性さえあります。大人の経済的な安定性が増し、自らの権利について声を上げることができるようになると、子どもを働かせる可能性は低くなります。
  • 教育:国または地域の機関は子どもが安全に通える無償の学校教育を提供しなくてはなりません。学校が整備された農山漁村共同体は、家族や子ども自身が定期的に学校に通う重要性を理解するよう教育の大切さを訴える必要があります。
  • 科学技術:児童労働が一般的に見られるのは、多くの労働者が必要な労働集約的な仕事です。省力技術・科学技術の特定は、時間と資金の節減、そして子どもの手を追加的に借りる必要性が省かれることを意味する可能性があります。

マラウイにおける暮らしを変えるプロジェクト

 マラウイのSNAP計画は児童労働との戦いにおいて現地の指導者に力を付けるよう努めています。

 世界で最も貧しい国の一つであるマラウイでは150万人近い子どもが児童労働に従事しています。「タバコを摘んだ後では頭痛や腹痛がします」と語るエテルちゃん(8歳)はその1人であり、農場で働いています。

 2014年にノーベル平和賞を受賞した子どもの権利に関する活動家であるカイラシュ・サティアルティ氏は、「今日私が強調したいのは、どんな国家、社会、企業でも児童労働の脅威を無視できないということです。これは緊急意識をもって取り組むべき問題です」と説いています。

 ILOとマラウイのパートナーはSNAP計画と呼ばれる有効な介入モデルを開発して児童労働の非常事態に対応しました。地域社会を基盤とするSNAP手法を用いることによって地元の指導者らは結集して児童労働との戦いを擁護しています。

 ペトロ・コンドロ村長は、ILOとそのパートナーによる行動計画を通じた介入によって学校に行く子どもが増え、これによって児童労働が減ってきていると報告します。

 児童労働が特定されると、最も年少の子どもたちは公立学校に入る準備として非公式教育に登録されます。14~18歳の子どもは大工や洋服仕立て、理髪などの技能の職業訓練を受けます。

 大工になったメモリー・カジキ・バンダさん(16歳)は、「私の顔を見てお分かりのように、このプロジェクトは私をとても幸せにしました。これは本当に私や友人を助けてくれています。このプロジェクトのおかげで私たちは今自活できています」と語っています。

 マラウイの都市や町では、ほとんどの児童労働者が家事使用人として働いており、虐待や放置に弱い可能性があります。SNAP計画のおかげで、一部の家事労働者は、今は労働時間や労働条件を細かく規定した契約に基づいて働いています。家事労働者として働くグレイス・カイタノさん(16歳)は、自分にとって契約は非常に重要であり、契約が存在しなかった頃は夜明けから日没まで一日中働いていたものの、今は使用者が契約条件に拘束されているので半日しか働いていないと報告します。

 家事労働者はまた、毎日幾らかの時間、仕事から離れて職業技能を学ぶことが許されています。SNAPプロジェクトは暮らしを変えただけでなく、姿勢を変えることにもなりました。

 児童労働から引き離されたギフト・マンデラ君(17歳)は、自分自身の店を持って、「子どもは雇わないで大人だけを雇うつもり」と将来ビジョンを語っています。

 SNAPのおかげで、マラウイでは数千人の子どもと家族が自らの未来は児童労働のない独立したものになると信じるに足るあらゆる理由が存在します。

 マラウイを始め世界中で進展が見られます。しかし、児童労働者として働く子どもの数は世界全体でなおも1億6,800万人を数えます。これはほぼ10人に1人に相当します。

◎前途

 子どもが児童労働から離され、質の高い無償教育の機会を与えられるよう確保することは、自らの未来を決め、ディーセント・ワークを見つけ、住んでいる地域社会をより良い方向に変える様々な可能性が開かれることを意味します。

* * *

 以上は2015年10月に発表され、2016年5月に更新され、2020年の統計数値を盛り込んだ英文図解物語の簡易版です。

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