図解物語-労働組合
移行期にある労働組合:仕事の未来におけるその役割とは
世界的に労働組合の組織率は次第に低下してきており、それと共に団結し、労働者に奉仕するという労働組合の能力の低下も見られます。新型コロナウイルスの世界的大流行がかねてより存在していた労働市場の課題を深刻化させている中、この図解物語では、世界各地の労働組合の活動例や図表を用いて労働組合再活性化の未来を探っています。
2021年07月26日
仕事の未来同様、労働組合の未来も不確実です。グローバル化や人口動態、環境、科学技術の変化は今日の労働市場を変えつつあり、明日の労働市場を決定することにもなるでしょう。加えて、新型コロナウイルス危機は従来からあった課題を露呈し、深刻化させています。世界中で労働組合の組織率は次第に低下してきており、それと共に団結し、労働者に奉仕するという労働組合の能力の低下も見られます。
労働組合の現状
アフリカや中南米の一部諸国に組織率の上昇が見られるものの、労働組合の組織率は世界中で次第に低下してきています。この全体的な傾向には、製造業からサービス業へと向かう産業構造の変化、組織化されていた仕事の外注、経済の非公式(インフォーマル)化、雇用関係の変化、自動化など、様々な要因が作用していると見られます。実際、臨時労働者や個人事業主、インフォーマル経済やギグ経済で働く人々などの非標準的な就業形態または不安定な就業形態の人々の労働組合組織率はより低く、さらに、団結権や団体交渉権などの労働組合の権利の侵害や法による制限が広く見られます。これは団結し、労働者を代表し、労働者に奉仕する労働組合の能力に影響を与えています。労働組合の組織率は労働組合の権利が侵害されているところの方が当然に低くなっています。
新型コロナウイルスの世界的大流行の中での労働組合
新型コロナウイルスの世界的大流行は仕事の世界におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の欠如の数多くの側面を露呈させたものの、労働者はまた、仕事と所得の安全保障向上や、社会的保護の機会について労働組合に頼っています。
コロナ禍の中でのあらゆる制約にもかかわらず、労働組合は法律助言や緊急基金の設立、啓発キャンペーン、訓練プログラムの変更、新型コロナウイルスの業務災害認定を求める提言活動からソーシャル・メディアの活用まで、様々な形で労働者とその家族を支援してきました。
新型コロナウイルス危機対応の一環として、約8割の国で社会対話や政労使三者あるいは労使二者による対話が用いられています。交渉で最も頻繁に取り上げられているのは、社会的保護と雇用措置、そして労使関係や労働安全衛生、財政措置といった事項です。
労働組合はまた、新たな組合員に手を差し伸べ、社会対話を通じて危機対応に貢献する革新的な手段も発見しました。例えば、危機期間における一時解雇の回避と労働者の賃金保護に関する小売業の使用者との交渉に成功したスウェーデンの労働組合は、その後、新たな組合員を集めることができました。多くの組織化活動が停止されている中で、労働組合は電話やソーシャル・メディアを通じて新たな組合員へ手を差し伸べ続けました。
ジョージア労働組合総連合(GTUC)はコロナ禍の中でインフォーマル労働者が政府の危機支援を得るのに必要な基礎デジタル能力を高め、利用資格を満たすのを手助けするキャンペーンを展開しました。
| 世界の労働組合組織率:減少する労働組合員 |
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労働組合の未来
労働組合の将来のあり得る姿は四つあります。
- 疎外化:組合の高齢化と共に組織率の低下が続き、世界中で労働組合が次第に疎外されていく状況。
- 二分化:労働組合はより不安定な労働者や代表する労働者が少ない産業部門を犠牲にして、現在の立場を擁護し、公式(フォーマル)の雇用関係にある労働者や大企業、公的部門の労働者などの、最も身近な労働者や存在感が強い産業部門に奉仕するという未来像。
- 置き換え:労働組合が非政府組織(NGO)その他の仲介機関、労働弁護士といった他の組織、あるいは労働組合が関与しない経営陣主導の代替的な労働者参加形態を通じて使用者との競合に直面するという未来像。
- 再活性化:労働組合が全ての労働者の組織化及び擁護、そして包摂的で実効性のある社会対話の強化に向かう革新的な戦術あるいは連携方法を見出す未来像。
再活性化への道
このうち最も好ましい未来像は当然に再活性化です。多くの好例が存在しますが、典型的には以下の四つの要素が関与しています。
- 若年労働者やインフォーマル経済、ギグ経済で働く人々などの新たな組合員の組織化と新たな組合員への奉仕
- 一体となっての発言及び行動。つまり、産業部門を越えて、全国、地域、グローバルの各レベルで集団的に行動する力
- 労働組合の任務、運営、選挙、活動を司る透明な規則集合を通じたしっかりとした内部統治の確保
- 今日及び明日の問題に関する包摂的で実効性のある社会対話の強化
労働組合があまり代表してこなかった労働者のニーズ対応
労働組合は新たに登場してきたあるいは伝統的にあまり代表してこなかった労働者集団の組織化やこれらの人々への奉仕も行ってきました。例えば、インフォーマル経済で働く人々を組織化し、労働組合運動の公式構造の中に組み込むことによってインフォーマル経済で働く人々のニーズにも対処してきました。若年労働者についても同じことが言えます。
プラットフォーム経済で働く人々を組織化し、これらの人々に奉仕することを阻む多くの障害が存在するものの、ギグ労働者は既存の労働組合を通じて、あるいは新たな組織の結成といったように、伝統的な手段と革新的な手段の両方を通じて組織化を進めています。
インフォーマル経済で働く人々の組織化の例として、例えばヨルダンでは政府と労働組合の間で、シリア難民に就労許可を発行し、難民のフォーマル労働市場への参加を円滑化する規制を緩和する覚書が締結されました。この協定によってヨルダン労働組合総同盟(GFJTU)の事務所内に位置する特別センターを通じて就労許可を発行できるようになりました。セネガル労働者全国総連合(CNTS)は民間警備労働者の全国組合を設立し、インフォーマル経済で働く人々を正規化し、医療保険への加入を広げ、労働安全衛生の改善を図り、年金及び社会保障基金への拠出を確保するために部門別団体交渉を開始しました。ウズベキスタン労働組合連盟(FTUU)は綿花摘み労働者のような季節労働者の組織化を進めており、例えば、一時的な二重組合加入を認めるような、インフォーマル労働者のニーズに合わせて方針、構造、ルールを調整することを傘下組合に提案しています。
プラットフォーム経済で働く人々の組織化の例として、アルゼンチンのプラットフォーム経済スタッフ団体(APP)は、アルゼンチン中央労働組合(CTA)及びアルゼンチン労働総同盟(CGT)の支援を受けて、新たな組合を通じてギグ経済で働く人々の組織化を進めています。インドネシアではオートバイタクシーを含むタクシー運転手ほかの様々な労働組合がオンライン運輸行動委員会を設立し、企業のみならず、当該産業部門の規制向上に向けて運輸省や労働省との対話にも従事しています。2018年にデンマーク労働者統一連盟(3F)はデンマーク人が所有するデジタル労働プラットフォームであるヒルフルと労働協約を締結しました。この協約はフリーランスから雇用者の地位への移行、保険適用、紛争解決などの事項を扱っています。
若年労働者組織化の例として、オーストラリアの労働組合運動は若年労働者の組織化を進め、若年労働者に奉仕しています。就労に係わる自らの権利についてもっと多くを学ぶことを希望する若年労働者あるいは職場問題を解決する個別助言や支援(法的なものを含む)を必要としている労働者用に一箇所で全ての手続きが可能なワンストップ・ショップとして若年労働者センター(YWCs)が設立されています。オーストラリア労働組合評議会(ACTU)は、若年労働者を対象に定め、音声配信のポッドキャストやTikTokなどを活用するバーチャル組織化やソーシャル・メディアを通じた働きかけを行っています。
バーレーン労働組合総連盟(GFBTU)は、国内の若年失業者を動員し、参加を募るアプリを開発し、様々な市民団体との全国的な連携関係を樹立しました。2018年に誕生した南アフリカ労働組合会議(COSATU)の若年労働者全国フォーラムは若年労働者に提供されるサービスの向上に向けた実務戦略を策定しましたが、これには個別注文に合わせて特別設計される政治教育プログラムや若年労働者組織の構築などが含まれています。
民主的な内部統治は効果的な労働組合運営だけでなく、労働者と一般の人々の信頼感を確保するカギにもなります。労働組合の内部統治強化の例として、ベトナム労働総同盟(VGCL)は内部統治を政策課題の上位に掲げ、組合と組合指導者の実績や組織構造の刷新を優先事項としています。ガーナの労働組合会議(TUC)は労働組合の内部統治を前面中央に掲げ、知識、高潔さ、透明性、説明責任を備えた行動を代表者らの優先事項としています。
多くの国や地域が労働組合の増殖と分裂を特徴としています。しかしながら、労働組合が一体となって発言し、行動する労働組合の協力向上が意思決定に対する影響力と代表性を高めてきました。
一体となっての発言・行動の例として、ベナンでは中央労働組合組織が労働組合の統一性と共同行動を高めるために、共同宣言・憲章を策定しました。この憲章は新たな組合構造を設け、意思決定や運営、組合員資格、財源などの事項を網羅しています。リトアニアとウクライナでは組合が、ウクライナのトラック運転手の両国の組合への参加を募り、代表性を高めるために、共同キャンペーンや二国間協力協定を通じて国境を越えて協力しています。モーリシャスでは行動と構造の両方における労働組合の統一が組合運動の優先事項の一つとなり、結集して同国に中央労働組合連盟を作り上げる取り組みの結果としてモーリシャス労働組合評議会が設立されました。
労働組合の影響力を増す包摂的で実効性のある社会対話
労働組合はディーセント・ワークを高めるためだけでなく、世界中の労働者に影響を与えている、より幅広い社会経済及び持続可能な開発の問題に関しても包摂的で実効性のある社会対話に従事する必要があります。この社会対話を広げる一つの足場が「持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。
例えば、ジンバブエ労働組合会議(ZCTU)は持続可能な開発目標(SDGs)に関する国の開発戦略と進捗報告の作成を手助けしました。組合は、貧困層と労働者のためになる新型コロナウイルスからの回復プロセスと持続可能な開発戦略の策定におけるディーセント・ワークの役割を強調する情報を提供しました。ロシアでは全国的社会対話に労働組合が実効的に関与したことによってテレワークに関する新たな法律の制定が確保されました。コロンビアでILOは農山漁村の農業経済における様々な産業別及び全国的な労働組合と協力し、紛争後の環境におけるものを中心に農山漁村地域における労働組合の組織化と代表性の強化を図っています。これは労働組合が技能開発や土地計画などの問題に関する、例えば、市町村や県レベルの代替的な社会対話フォーラムにおける政策策定に貢献することを可能にしました。
モルドバでは労働組合が集団となって労働監督法の改正を提唱しました。ILOの条約勧告適用専門家委員会の見解もこの問題の啓発に寄与しましたが、モルドバ労働組合全国連盟(CNSM)の長年にわたるロビー活動が新たな法の誕生をもたらしました。
労働組合再活性化の未来
労働組合の将来を占う四つの未来像はどれもあり得るものであり、実際、今でも時には同じ国の中で様々な産業部門で、そして様々な組み合わせで起こりつつあります。例えば、疎外化に対する抵抗としての二重化、再活性化の源泉及び着想源としての置き換え、二重化の打開策としての再活性化などが見られます。この不確実性に対処し、変化を予測し、可能な未来を探り、変革的行動を可能にするために、将来洞察やシナリオ思考などの様々なツールが労働組合にとって有用である可能性があります。
しかしながら、労働組合がこれほど多大で深刻な課題に直面している複合的な移行の中で、組合は多大な強靱性、そして革新的な形で自らを再活性化できる注目すべき能力を示してきました。これはさい先の良さを予測させます。全ての人にディーセント・ワークを確保する持続可能な開発を基盤とした仕事の世界を築くため、今はかつてないほどに強い労働組合が求められているのです。
ILO労働者活動局は移行期にある労働組合の助けになるよう様々なツールや刊行物を発表し、情報・経験交流の場を設けています。
以上は2021年7月26日付の英文図解物語の簡易版です。
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