国際移住者デー

移民も労働市場でうまくやれているか

 12月18日は国際移住者デーです。世界中でますます移民が注目を集めてきている中、数百万人に上る国境を横断する移民労働者について判明していることを統計データから読み解きます。

2019年12月18日

アンドニリーナ・ラコトナリボ・データ解析官

 世界全体で推定1億6,400万人に上る移民労働者は、直接的にも間接的にも受入国の社会や経済に貢献していますが、就労権の制限、外国で得た資格や職務経験が認められないこと、差別や語学面での障壁などを理由として多くの国で労働市場における困難に直面しています。データがある96カ国の半分以上で生産年齢にある移民の就業率は移民以外の人々のものよりも低く、失業の可能性はほとんどの国でより高くなっています。とりわけ、エジプト、ギリシャ、スペイン、スウェーデンといった国では、移民の失業率が移民以外の人々よりも10ポイント以上高くなっています。

 一方で、ブルネイ、ボツワナ、ネパールといった一握りの国では、移民以外の人々の就業率が50%未満に過ぎないのに対し、移民は約70%と好成績を示しています。その理由としては、移民労働者の就労にほとんど制限がない開放的な労働市場政策や各種の協定に基づく労働力移動が相当規模に行われていることなどを挙げることができます。ボツワナにおける理由としては、様々な産業部門における技能不足を埋めることを目的として、2000年代初めまで数十年にわたり、有資格外国人専門職労働者を積極的に受け入れてきたことがあります。

移民と移民以外の失業率の違い(最新年)
国 名 移民 移民以外 国 名 移民 移民以外
ギリシャ(2018年) 18.5 9.6 スウェーデン(2018年) 16 3.5
スペイン(2018年) 15.6 8.1 エジプト(2011年) 14.8 5.8
マラウイ(2017年) 13.8 15.8 ルワンダ(2017年) 12.6 9
アルメニア(2017年) 11.2 10.8 フィンランド(2018年) 10.6 4.2
イタリア(2018年) 9.7 4.9 フランス(2018年) 9.1 4.7
スーダン(2011年) 8.8 8.7 ポルトガル(2018年) 8.4 4
デンマーク(2018年) 7.5 2.7 チリ(2018年) 7.4 4.3
クロアチア(2018年) 7.3 4.3 ナミビア(2018年) 7.1 11.9
セルビア(2018年) 7.1 6.9 北マケドニア(2018年) 6.9 11.6
ベルギー(2018年) 6.9 2.8 エスワティニ(2016年) 6.8 11.7
オーストリア(2018年) 6.8 2.3 ロシア(2018年) 6.4 3
スイス(2018年) 6.2 2.3 ノルウェー(2018年) 6.1 2
ボスニア・ヘルツェゴビナ(2017年) 6.1 8.7 ボツワナ(2009年) 6 10.3
コモロ(2014年) 5.8 3.6 エストニア(2018年) 5.7 3
トルコ(2018年) 5.7 5.8 スロベニア(2018年) 5.5 2.9
キプロス(2018年) 5.5 5.2 コスタリカ(2018年) 5.5 5.8
アイスランド(2018年) 5.3 2.1 ザンビア(2017年) 5.3 4.3
ラトビア(2018年) 5.3 4.4 ジョージア(2018年) 5.2 8.5
アイルランド(2018年) 5.2 3.3 ウルグアイ(2018年) 5.2 5.3
エクアドル(2018年) 5.1 2.3 セネガル(2015年) 5.1 3
東チモール(2013年) 4.9 3.3 アルゼンチン(2018年) 4.9 5.5
ブルンジ(2014年) 4.7 1.2 ドイツ(2018年) 4.7 1.7
オランダ(2018年) 4.7 2.3 マリ(2014年) 4.7 4.5
ルクセンブルク(2018年) 4.5 2.3 ナウル(2013年) 4.4 9.5
ガンビア(2012年) 4.4 5.7 ツバル(2016年) 4.4 4.9
インドネシア(2018年) 4.3 3 ポーランド(2018年) 4 2.2
マルタ(2018年) 3.9 1.9 モンテネグロ(2018年) 3.6 8.9
リベリア(2015年) 3.4 1.5 アンゴラ(2009年) 3.4 2.3
英国(2018年) 3.4 2.4 リトアニア(2018年) 3.4 3.8
ミクロネシア(2014年) 3.2 5.1 ドミニカ共和国(2017年) 3.2 3.7
ベニン(2011年) 2.9 1.9 ウガンダ(2012年) 2.8 2.5
ハンガリー(2018年) 2.6 2.1 コンゴ民主共和国(2012年) 2.6 3
米国(2018年) 2.6 2.4 キリバス(2015年) 2.4 4.1
コソボ(2012年) 2.3 10.4 ブルネイ(2017年) 2.3 7
イスラエル(2016年) 2.3 3.4 タジキスタン(2009年) 2.2 2.4
ボリビア(2018年) 2 2.5 メキシコ(2018年) 2 2
パラグアイ(2017年) 1.8 3.3 バヌアツ(2009年) 1.7 3.3
チェコ(2018年) 1.6 1.4 ガーナ(2017年) 1.3 2.4
セーシェル(2018年) 1 2.5 トリニダード・トバゴ(2016年) 0.8 1.8
タンザニア(2014年) 0.7 1.8 コートジボワール(2017年) 0.3 2.1

 移民労働者は就いている職に関する質の点でも困難に直面しています。どの地域でも移民は低技能職に就く傾向が高く、データがある86カ国では、初歩的な職業に就いている人の割合が移民以外では全体の12%であるのに対し、移民に占める割合では17%になります。この差が最も大きいのはブルネイとイタリアであり、移民もそれ以外も教育水準は同等であるにもかかわらず、初歩的な職業に就いている人の割合が移民以外では10人に1人であるのに対し、移民の場合は就業者の3分の1を占めるに至っています。これは多くの移民が有する資格と、その職業に求められている教育や技能との重要なミスマッチを推測させます。データが得られるほとんどの国で、個人事業主として自己勘定で働く人の割合は移民と移民以外であまり差はありませんが、こういった労働者は正式な労働取り決めが結ばれておらず、その労働条件は雇用者ほど人間らしく働きがいのあるものにならない傾向が高くなっています。

 もう一つの予期せぬ調査結果は、移民の収入が必ずしも移民以外の人々より低くないという点です。サウジアラビアやフィンランド、ルクセンブルクといった高所得国では、移民の収入は平均で移民以外の人の収入より低くなっていますが、それ以外では必ずしもこの傾向は見られません。データがある28の低・中所得国中17カ国で移民の収入は平均で移民以外の人の収入を上回っており、特定の高技能職に移民が高い割合で就いているザンビアやルワンダでは、移民の収入の方が大幅に高くなっています。


初歩的な職業に就く人が就業者に占める割合:移民と移民以外(最新年)

 全体として移民は、雇用の確保、自らの教育水準に合った職業に就く機会、適切な収入の確保の点で困難に直面しています。資格や経験が認められないこと、語学力、差別といった要素の全てがこの点で何らかの役割を演じていると見られます。しかしながら、特定の移住政策や労働市場における特定のニーズを抱える2、3の国では、移民は適切な雇用や賃金を得るのに成功できています。移民労働者については知らないことが多く、労働条件に関するより包括的なデータが必要です。これは翻って、移民であるか否かにかかわりなく、あらゆる労働者の権利を保護し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を確保することを目指した、対象を定めた政策を支えることができるでしょう。

* * *

 以上はILO統計局統計調整・特殊テーマ班のアンドニリーナ・ラコトナリボ・データ解析官によるILOの労働統計データベースILOSTATの2019年12月18日付英文ブログ記事の抄訳です。ILOSTATには、データそのものに加え、データ生成に携わる人々向けの資料やイベント案内、ニュースレター、解説資料、ブログ記事なども掲載されています。