グリーン・ジョブ
環境に優しい生活がキノコのお陰でバラ色に
2019年9月23日にニューヨークで開かれる国連気候行動サミットでは、より持続可能な経済への移行が社会と経済にもたらす結果が検討されます。バングラデシュで実施されているILOのあるプロジェクトは、正しい政策が環境を守り、労働者の暮らしを向上させ、より環境に優しいグリーン経済を促進できることを示しています。
2019年09月01日
2019年9月23日にニューヨークで開かれる国連気候行動サミットでは、より持続可能な経済への移行が社会と経済にもたらす結果が検討されます。バングラデシュにおいて、政府がイニシアチブを取り、カナダの資金協力を受けてILOが実施しているあるプロジェクトは、正しい政策が環境を守り、労働者の暮らしを向上させ、より環境に優しいグリーン経済を促進できることを示しています。
地元のパートナーと組んで進められている「就労と生産性のための技能バングラデシュ・プロジェクト(B-SEP)」は、技能・起業訓練に事業の元手となる着手金及び販売促進支援を組み合わせることによって起業家が環境に優しいグリーン・ジョブを創出するのを手助けしています。障害者や貧困層といった不利な立場にある人々に特に重点が置かれています。
イエール大学とコロンビア大学が共同開発した、各国の政策の環境成績を評価するグローバル環境パフォーマンス指数で180カ国中173位に位置することからも明らかなように、土地が低いために気候・環境変動に最も弱い国の一つに数えられるバングラデシュにとってグリーン・ジョブは特に重要です。
B-SEPプロジェクトはグリーン・サプライチェーン(環境に優しい供給連鎖)を通じて様々なグリーン・ジョブ活動の間につながりを作ることに特に注意を払っています。例えば、不利な立場にある社会集団のゴミ収集活動強化に向けて、副産物としての有機肥料生産を手助けしていますが、この肥料は安全な食品と種を生産しているグループに販売されています。このようなつながりは製品やサービスの市場を開発し、企業活動の持続可能性を支える助けになっています。
プロジェクトはキノコ生産、環境に優しいエコツーリズム観光産業、有機食品・有機肥料生産、廃棄物の収集・分別、無機廃棄物取引の六つの職業について訓練を提供しています。さらに、キノコの需要を高めるために小売店とより良いつながりを形成するなど、協同組合やパートナーシップ関係の育成も推進しています。これまでにプロジェクトがグリーン・ジョブの創出を奨励してきた起業家は約580人に上りますが、この半数以上が女性です。
その1人であるファテマ・アクハテルさん(20歳)は、10歳の時に父親が家を出て、別の女性と所帯を持ったため、独りになった母親には経済的余裕がなく、学校をやめなくてはなりませんでした。母親はダッカ郊外の親戚のところに身を寄せましたが、そこにはファテマさんの居場所がなかったため、家族は離散してしまいました。脳性マヒのファテマさんはその後、叔母に引き取られました。
ファテマさんが15歳になった時、母親からミシンの使い方を習い、服作りを教わりました。しかし、歩くのも困難なファテマさんには長時間座ったり立っていることが難しく、1枚服を完成させるにも時間がかかりました。縫製内職の月収はわずか1,000~1,500バングラデシュタカ(約1,260~1,900円)程度にしかなりませんでした。
プロジェクトの地元パートナーの一つであるアクセス・バングラデシュ財団を通じて提供されているキノコ栽培の訓練の話を聞いた時、ファテマさんは興味をそそられました。ほとんど投資が不要で、肉体的にも何とかなりそうな仕事でした。
3カ月の講習でファテマさんはキノコ生産の経済的利益や栄養的長所、事業経営の方法を学びました。研修を修了すると、キノコ生産の基となる菌糸とキノコ小屋を建てるための資金として1万5,000バングラデシュタカ(約1万9,000円)を渡されました。アクセス・バングラデシュは、菌糸の栽培・流通、収穫されたキノコの収集、ダッカの市場における販売を手がける協同組合も運営しています。
ファテマさんは今でも縫製から収入を得ていますが、キノコ農場と組み合わせると平均月収は従来の4倍を超える7,000バングラデシュタカ(約8,850円)に達しています。
「子どもの頃から苦労してきましたが、B-SEPプロジェクトがキノコ栽培を奨励してくれたお陰で自立できました」と、ファテマさんは喜びの声を上げています。健康上の理由からまだ家族の世話になっていますが、技能を獲得し、自分自身の収入手段を得たファテマさんは生まれて初めて同等な家族の一員になれたように感じています。
ILOは10年以上前からバングラデシュ政府が技能制度を強化し、環境に優しいグリーンスキルやグリーン企業の機会を促進するのを支援してきました。ILOバングラデシュ国別事務所のトゥオモ・ポウティアイネン所長は「『グリーン・ジョブ』のより一層の促進はバングラデシュにとっては選択肢の一つではなく、必要なことであり、グリーン経済と気候変動への適応という政府の戦略的な公約を補うものです」と説明した上で、「ファテマさんの事例は様々な行動主体が結集すれば、普通の人々の福祉、国家の繁栄、この惑星の未来の間に持続可能なバランスを構築できることを示す好例です」と評しています。
以上は2019年9月1日付のダッカ発英文広報記事の抄訳です。