平和と強靱性のための仕事

水はスリランカの農民の財産

 紛争の後遺症と気候変動の組み合わせはスリランカ北部の農民に干ばつをもたらし、災害の危険が差し迫っていました。ILOのプロジェクトは水を取り戻し、人々をより豊かな暮らしに至る道に戻す手助けを行いました。

2019年11月05日

 元々乾燥地帯であるスリランカ北部キリノッチ県の地元の農民は、伝統的に「タンク」と呼ばれる村の人工貯水池から水を引いて作物に灌漑することによって雨不足に対処してきました。しかし、30年にわたる紛争によって県内400カ所の灌漑池の大半が荒廃してしまいました。気候も変動し、今では洪水が起こる地域もあれば、乾燥が進んで干ばつが起こっている地域もあります。

 同県アラサプラン村の唯一の水源もそのような貯水池でしたが、6カ月以上雨が降らず、貯水池に流れ込む川が涸れ、貯水池は1年のほとんどが干上がったままでした。

 村に住むムルゲス・ナグランビガイさん(60歳)も作物の灌漑や家族の食事には貯水池の水に頼っていました。数エーカーの土地を所有していますが、日照り続きで雨が十分でないために土地は焦土と化し、作物を植えてもしなびて無駄になるため、「自分たちも干上がっています」と語るナグランビガイさんは、この数年は非常にわずかな収入で何とか暮らし、レンズ豆と米という質素な食事で生き延びてきました。土地は肥沃なのですが、野菜も米も生産できず、干上がった土地から幸運にも芽ばえた庭の青物野菜などを一皿集めるだけでも苦労しており、息子たちのために幾らかの魚を見つけることができた時にはとても喜んでいます。

 このような地元の生計手段に対する課題に取り組むため、ILOは地元共同体が保有する資産の開発と気候変動の影響緩和用に取り置かれていた資金を動員し、地元の貯水池を改修し、地元の人々に有償の労働機会を提供するプロジェクトを企画しました。この「共同体管理灌漑制度改良パイロットプロジェクト」は、スリランカ農業省農業開発局の技術援助を受けて進められました。

 県当局は改良候補を3カ所指定しましたが、複数回にわたる地元共同体における協議を経てアラサプラン村の貯水池も復旧対象に選ばれました。ナグランビガイさんも村の改修工事に参加し、約60センチにわたって沈泥をさらい、その泥を用いて、周辺の杭と堤防を約45センチ強化しました。土地を固めるためのローラー引きのような重労働は男性が行い、女性は堤に再び芝生を植える手伝いをしました。同一価値の労働に対しては同一の賃金が支払われました。これは収入を補い、家計の助けになり、「もう唯一の稼ぎ手として無力に感じることはありません」とナグランビガイさんは喜んでいます。

 改修は貯水池の保水能力向上を目指して行われました。今は年中ポンプで水をくみ上げることができ、貯水池から1キロ以上離れたところまで送水できるようになったため、ナグランビガイさんや近隣の人々の田畑の灌漑も助けられています。信頼のおける給水源が確保できたため、ナグランビガイさんは落花生やココナッツ、ササゲや緑豆、バナナ、トウガラシなど、幅広い作物を栽培する明るい見通しを立てています。既に3年後に最初の収穫を迎えることを期待してココナッツの苗木を120本植えました。このように複数の作物を多角的に栽培することによって、毎年、複数回の収穫が行え、月の収入も増えることが見込まれます。「農業計画を立てることは希望をもたらしてくれます。土地は豊かな配当を恵んでくれます。ILOの給水設備投資は私たちに大きな資産をもたらしてくれました。貯水池はもはや村の中心地であるだけでなく、福利厚生の源でもあります。昔話に語られていたように貯水池と周辺の地域にはかつての栄光が戻りました」とナグランビガイさんは喜びの声を上げています。

 以上はILOアジア太平洋総局による2019年11月5日付のアラサプラン発英文広報記事の抄訳です。