広報記事:労働力移動
正義に向かって少しずつ進むレバノンにおける移民家事労働者の旅
2014年08月15日
移民労働者にサービスを提供するレバノン最大の非政府組織(NGO)カリタス・レバノン移民センターとILOが今年6月に発表した共同刊行物『Accès à la justice des travailleurs domestiques mgrants au Liban(レバノンにおける移民家事労働者の正義への道・仏語)』は、正義を求める道程でレバノンの移民労働者が直面する主な障害を分析し、20万人と推計される移民家事労働者にとって正義の達成に向けた道のりが遠いことを示しています。報告書の共著者であるILOのアリックス・ナスリ研究員が説明するように、レバノンの法の下では、移民家事労働者にはレバノン市民同様、裁判所や警察に問題を申し立て、公正な裁判を受ける権利が保障されていますが、実際には司法制度を通じて解決に至った事件はほとんどありません。しかし、730件以上の事件に支援を提供してきたカリタスはこの10年の大きな進展を感じています。
例えば、フィリピン出身のジェニファーさんは、2006年7月のイスラエルによるレバノン侵攻を見て帰国を希望し、家事労働者契約の更新を拒否しましたが、雇い主の同意を得ることができませんでした。中東で用いられているカファーラ(保証人)制度の下では、移民労働者は雇い主に束縛され、移動の自由や雇用契約終了、雇い主変更の可能性は制限されています。ジェニファーさんの旅券も慣行に倣い雇い主が保管していましたが、ジェニファーさんは構わず雇い主の下を去って大使館に保護を求めました。フィリピンの斡旋業者は200ドルの月給を約束していましたが、実際には150ドルしか支払われず、それもほとんどが2年の雇用契約終了時に支払われる約束でした。大使館に2週間滞在した後、数カ月にわたって努力してみたものの未払い賃金の入手はかなわず、ジェニファーさんは給与を受け取ることなく帰国することを余儀なくされました。
報告書は、正義を求める移民労働者の道は長く複雑で、労働法の適用除外から虐待の立証の困難さ、司法を含む様々な利害関係者による移民家事労働者の疎外、移民労働者の法手続に関する知識の欠如に至る多くの障害がその過程に存在することを説明しています。
ジェニファーさんは帰国前に事件をカリタスのボランティア弁護士に託していきました。彼女がフィリピン大使館に問題を相談してからちょうど7年目になる今月、ついにカリタスはジェニファーさんを勝訴に導き、ようやく未払い賃金を手元に届けることに成功しました。
レバノンで移民家事労働者に有利な判決が初めて出されたのは2005年のことでした。雇い主から虐待及び搾取を受けたと認定された移民家事労働者に50万レバノンポンド(約3万5,000円)の支払いが命じられたのです。その後、多くの家事労働者が裁判に訴え、遅々とした困難な過程を経て結果が出されるようになり、画期的な判決結果は社会に徐々に浸透し、移民家事労働者とその権利についてのレバノン国民の意識をゆっくりと変えるに至っています。今では強制労働や虐待に対する賠償額は最高で2万ドル(約210万円)に達する可能性があります。
こういった画期的な判決はレバノンが移民家事労働者の司法アクセスを実現する正しい方向に進んでいることを示すものとILOでは見ています。こういった人々が労働法の下で労働者として認められ、司法アクセスのための法及び制度上の仕組みの改善に向けた行動が早急に取られたならばこの道のりはさらに強化されることでしょう。
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以上はベイルート発英文広報記事の抄訳です。