障害者就労
機会を阻む障壁を打破:コロンビアからの報告
ILOとコロンビアの情報通信技術省が進めている協同事業は同国の学生8,000人以上の情報通信(IT)技能の強化を図っています。このイニシアチブは視覚障害を有するある若者にも新たな機会を開きました。
2018年10月29日
中南米・カリブでは若者の失業率が上昇し、今年は19.5%に達しています。これは15~24歳の若者1,000万人以上が仕事を見つけられないでいることを意味します。人口ボーナスとなるべきものが適正に活用されておらず、膨大な才能が空費されています。「この状況に対する一つの対応は、技術教育・訓練の機会、質、そしてその就労との関連性を高めることにあります」と、ILOアンデス諸国ディーセント・ワーク技術支援チーム(DWT)兼国別事務所のフィリップ・バンフイネゲン所長は指摘します。
2017年からILOがコロンビアで同国の情報通信技術省と協力して実施している「IT産業向け人材強化プロジェクト」は、低所得世帯の出身者や同国の武力紛争の被害者、女性、アフリカ出身者の子孫、障害者など、脆弱な状況にある若者に無料の理論研修・実務訓練を提供することによって、包摂性、品質、妥当性、革新性などの原則を尊重する就労機会を開くことを目指しています。研修生は情報技術(IT)職関連の労働市場需要評価に従って前もって選定されたプログラムの理論研修を教室で受けると共に企業でインターンシップを経験します。教育機関が指定する監督官と企業が指名する実務指導員が支援を提供します、とプロジェクトのメルバ・ディアス・ベターILO調整官は説明します。
既にコロンビア全土38の市町村から8,596人以上の研修生がプロジェクトに参加しています。その1人であるヘスース・ヒルさん(23歳)はステージIVの未熟児網膜症によって徐々に視力を失いました。しかし、困難にもかかわらず、システム技術者としての学位を取得したヒルさんは、特別なソフトのおかげでコンピュータを扱うことができ、新たな雇用展望が開けました。
「いつも自分の会社を興す夢を見ていました。複数の会社にたくさんの履歴書を送って仕事を探しましたが、返ってくる答えはいつも同じでした。『無理です。どうやってあなたと働けると言うんですか?』と」。こうヒルさんは振り返ります。その上で、「僕は障害を打破する専門家です。機会をくれればあらゆる障害を一度に突破して見せますよ」と語っています。
ヒルさんの指導に当たったハビエル・モントヤさんにとって視覚障害を有する生徒と接するのは特別の経験でした。「こんな難しい環境で彼のような人と働いた経験はほとんどありません」とコンピュータの画面に見入る学生でいっぱいの教室を指し示してモントヤさんは語ります。しかし、学年が終わるに当たり、ヒルさんの成績と積極性を見たモントヤさんは、自分が運営する電気通信協同組合のCOOPTELCOに彼をインターンとして採用することに決めました。「ヒルさんの仕事の成果は実に評価できるものです。事業機会を生み出すプロフェッショナルであり、明るく積極的で仕事に打ち込む人物です」と評価しています。その後、モントヤさんは訓練を終えたヒルさんを事業パートナーに迎えることにし、2人は今、一緒に多くの企業に技術支援を提供しています。
ヒルさんが考える次のステップは、自分のような人々に企業の門戸を開くことです。「私のような人間にはそれができないという考えから脱却してもらいたいです。障害者でも可能なのです。だからうちの会社に他の障害者も雇うよう提案しました」とヒルさんは語っています。
ILOと情報通信技術省のプロジェクトがITに焦点を当てたのはこれが急成長産業の一つであり、巨大な雇用創出潜在力を秘めているからです。プロジェクト参加者はグラフィックデザインやコンピュータの組立・保守、プログラミング、システム、電子工学、電気通信、コンピュータ用アプリなどの教科を学びます。「新たな雇用を作り出すであろう企業を自分で興すことも奨励しています。若者のより良いより多くの仕事が達成されるよう、プロジェクト参加者が複合的な効果をもたらすことを期待しています」と語るバンフイネゲン所長はこのプロジェクトをコロンビアで起業家精神を促進する一つの手段と見ています。
所長はまた、この事業に参加した企業の貴重な役割も強調しています。これまでIT部門は適正な技術力とソフトスキルを備えた、より多くのより良い人材を見つけるのが困難なために成長が制約されていると度々言われてきました。プロジェクトへの参加機会を募ると全国から2,200社以上の応募があり、各県の使用者団体の協力を得て適当な企業を選定することができました。「企業と公的部門とILOのような組織の戦略的パートナーシップは、職業訓練を大幅に改善し、脆弱な立場にある若者の労働市場への包摂を促進しつつ、企業のニーズに合わせた訓練の提供を可能にすることを、ヒルさんを始めとする何百人もの若者が示しています」と所長は結んでいます。
以上は2018年10月29日付のボゴタ発英文広報記事の抄訳です。