論評:バングラデシュの衣料産業
業務災害保険をラナプラザの悲劇の遺産の一つとすべきと説くウングボILO副事務局長
2014年11月14日
| ウングボILO現地業務・パートナーシップ担当副事務局長 |
2013年4月24日にバングラデシュで発生したラナプラザビルの倒壊は1,100人を超える衣料工場労働者の命を奪い、負傷者は約2,500人に及びました。この悲劇を受けて、即時のニーズとより長期的な課題に取り組むため、バングラデシュの政府及び労使団体、国際的なブランド、小売業者、多国間機関、国際労働組合組織などが結集しました。補償金はなかなか集まらず、支払いは進まないといったように不満の種や遅れは確かに存在しますが、良い方向に向けた変化も見られます。バングラデシュでは労働法が改正されて基本的な権利が強化され、労働安全衛生や結社の自由、団体交渉といった分野での改善がもたらされ、2014年9月末現在、2,000以上の工場で安全点検が実施され、永久閉鎖が決まったところもありますが、多くの工場で安全状況の改善が見られます。既製服産業労働者の最低賃金は引き上げられ、労働監督制度は向上し、事故の被害者にはリハビリテーション、訓練、カウンセリングといった再雇用・自立回復のための支援が提供され、ほとんどの遺族と負傷者に補償金が支払われました。
しかし、ラナプラザの遺産が長く残るには、これまでの進歩の持続可能性が確保され、労働安全衛生や労働条件、労働者の権利の尊重といった側面でさらなる改善が達成されるよう、行わなくてはならないことがまだ多く残されていると、事故直後に現場に駆けつけ、その後の展開を見守り続けてきたジルベール・ウングボILO現地業務・パートナーシップ担当副事務局長は2014年11月14日付の論評記事に記し、前進するに当たり、労働者の安全と労働条件を中心に据え、あらゆる産業部門にわたって国際的なサプライチェーン(供給網)のより良い管理に重点を置く必要があると説いています。そして、鍵を握るのは予防であるものの、それと同じくらい重要なのが将来の災害に備えることとして、業務災害保険制度の整備を提唱しています。
世界中で幅広く受け入れられている業務災害保険は安価で信頼がおける無過失災害補償保険を労働者に提供しています。これまで営利企業の使用者責任保険に頼ってきたほとんどの国が今では全国的な業務災害保険制度を設立する方向に法を改正しています。これは長期的には、この方が使用者にとって安くつき、置き去りにされる労働者がいないからです。ほとんどの国において業務災害保険制度の費用は賃金合計額の3%程度に過ぎず、これは企業の評判が損なわれる可能性や労働者に与える影響と比較すると健全な投資であると言えます。
バングラデシュ政府はILOと協力して全国的な業務災害保険制度を設立することに強い関心を示しています。ILOの業務災害給付条約(第121号)は、国の業務災害保険給付と現地の現実に沿った提供の仕組みの設計において政府及び社会的パートナーを導く参考規範文書として国際的に認められています。今必要なのは、全国的な業務災害保険制度の発進を支援するという、国内のみならず国際的なパートナー、ブランド、小売業者の固い約束です。バングラデシュは職場保険制度を持たない他の新興輸出国に大いに必要とされている範を示すことができるでしょう。労働法と全国的な業務災害保険制度の効果的な実行は、ラナプラザが過去最悪の産業災害の一つとしてだけでなく、バングラデシュの労働者にとっての転換点として長く記憶に留められることを確実にすることでしょう。
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以上はジルベール・ウングボILO現地業務・パートナーシップ担当副事務局長による英文論評の抄訳です。なお、ラナプラザビルの倒壊から18カ月が経過した今、この間に達成された以上のような進歩を振り返り、いまだ残っている課題を示す英文概説資料がILOバングラデシュ国別事務所から出されています。