広報記事:アルゼンチンの移民家事労働者
新たな法が開く移民家事労働者の新しい暮らし:アルゼンチンからの報告
2014年12月16日
アルゼンチンの公式データによれば同国内では120万人近い家事労働者が働いていますが、このうち約10万人が同国最大の外国人コミュニティーを形成するパラグアイからの移民労働者です。その1人であるマリア・ペレスさん(24歳)は、家事労働者として初めてこの国にやってきた時、他の労働者にある権利がなぜ自分たちにはないのか周囲に聞いて回ったことを覚えています。数十年に及ぶ労働者組織化の努力とILOの支援を得て、アルゼンチンは今、彼女にその答えを示しています。新たな移住政策の策定、家事労働者新法の制定、そして自国民、移民を問わず、すべての家事労働者のフォーマル化・正規化に向けた強い公約の表明がその答えです。
今はきちんとした契約を結んで働き、社会的保護の給付を請求する権利も得たペレスさんは、「やっと娘に人並みの暮らしを送らせることができる」と喜んでいます。
アルゼンチンの移民受入政策はこの10年で大きな転換を示しました。このきっかけとなった2004年成立の新移住法は、移民労働者の人権推進活動を大幅に前進させ、多くのパラグアイ人家事労働者の正規化をもたらしました。平等、差別禁止、適正手続き確保の諸原則を掲げることによって、法はアルゼンチンの規範を移民の権利に関するILOの基準やアルゼンチンの憲法に沿ったものとしました。現行の移民受入法はパラグアイその他南米南部共同市場(メルコスール)諸国からの移民にアルゼンチン国民と同等の労働・社会権を与えています。
2013年3月に、政府は一般家庭で働く労働者の雇用関係を規制するもう一つの進歩的な法を成立させました。アルゼンチンは家事労働者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の確保を目指して2011年に採択されたILOの家事労働者条約(第189号)の批准国ですが、この法第26,844号は第189号条約の定める原則の枠組み内で家事労働者とその他の労働者の完全な平等を定めた点で飛躍的な前進を示しています。法は産前産後休業、有給休暇、特別家族休暇・個人休暇、年1回の賞与、解雇の際の補償の権利を認め、1日8時間週48時間の労働時間の上限を定めることによって家事労働者の権利を拡充し、時代に沿ったものとしています。さらに、最低就労年齢を16歳とし、16~18歳の若年者の労働時間を週36時間に制限し、18歳未満の家事労働者の住み込みを禁止しています。住み込み家事労働者については、8時間の夜間睡眠時間と2時間の日中休憩時間が定められています。
ILOは家事労働者が就労における基本的な権利だけでなく労働者の権利を完全に得られるよう積極的に支援してきました。2013年に国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women)、国際労働組合総連合(ITUC)、家事労働者国際連盟(IDWF)と提携して移民家事労働者の人権と労働者の権利を世界中で推進する活動に乗り出しました。欧州連合(EU)の任意資金協力を得て開始された「移民家事労働者グローバル・アクション・プロジェクト」は、家事労働者が直面する課題に関する知識の拡大、その権利の主張、政策・法制改革の奨励といった活動に加え、世界各地の五つの移住回廊におけるパイロット介入事業を通じて組織化と広報唱道活動を支援しています。パラグアイとアルゼンチンはこの回廊の一つに当たります。この地域における主な成果の一つとして、アルゼンチンで働くパラグアイ人家事労働者のディーセント・ワークの促進に向けた二国間協定の調印が挙げられます。ILOのグローバル・アクション・プロジェクトの支援の下、IDWF及び国際労働組合総連合米州地域組織(ITUC-TUCA)と調整を図って策定されたこの協定は、研修や二国間会議、好事例の交流を通じて家事労働者組織の強化、労働組合総連合との提携関係の緊密化を目指しています。プロジェクトはまた、家事労働者職業訓練プログラムの開発及び改訂も支援し、法の新たな規定、第189号条約に関する情報が新たに盛り込まれ、家事労働者のディーセント・ワークの促進に向けた広報唱道活動、労働者の組織化、動員の重要性に光が当てられました。
このような新たな法の成立と二国間協定の調印は法及び社会における誤りを正す重要な前進を意味しますが、移民家事労働者の多くは依然としてインフォーマル経済で働いているため、「長い間、家事労働のインフォーマルな性格と移民の身分に関連して耐え忍んできた不正義から自分たちの身を守ることができるよう、自分たちの権利と法について家事労働者の意識を高めることが決定的に重要」とILOのプロジェクト調整官も指摘しているように、規則の適用にはまだ課題があります。しかし、開かれた移民受入政策と移民家事労働者の権利の幅広い公認を基礎として双方に有益な状況を作り出し、これまでのところ労働市場の機能に対する悪影響が観測されていないアルゼンチンの経験は他の範となる好事例と言えるでしょう。今後の進展は政労使間の効果的な調整にかかっています。「私たちの未来、私たちの子どもたちの未来に係わることだから」と語るペレスさんは、「敬意を払ってくれるよう要求し続け、すべての家事労働者が契約を結ぶよう確保すること」の必要性を指摘しています。
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以上はブエノスアイレス発英文広報記事の抄訳です。
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2011年の家事労働者条約(第189号)