科学における女性と女児の国際デー
市場の露店からサイバー空間へ
ILOはフィリピン、インドネシア、タイで科学技術、工学、数学といった理系部門における良質の雇用が女性と少女に開かれるよう支援する事業計画を展開しています。このフィリピンからの広報記事では、新たな仕事の未来に向けたチャンスをいかに捉えたかを事業計画の奨学生が説明しています。
2019年02月07日
科学と男女平等はどちらも国際的に合意された持続可能な開発目標(SDGs)の達成にとって重要です。過去15年以上にわたり、国際社会は女性や少女を鼓舞し、理系の世界に入ることを大いに奨励してきました。しかし、残念ながら女性と少女がこの世界に全面的に参加できるには至っていません。
そこで、国連は2015年に、科学技術、工学、数学といった理系の学問や仕事が少女と女性にも平等かつ全面的に開かれ、平等かつ全面的な参加が達成されることを目指し、2月11日を「科学における女性と女児の国際デー」と宣言しました。
クラウド技術やロボットによる工程自動化が既に世界中で労働市場を変容させている中、フィリピンでは就業者の49%に当たる1,800万人以上の仕事が自動化のリスクに直面しています。女性の方が自動化の可能性が高い低技能職に就いている場合が多いため、仕事を失う可能性は男性よりも高いと言えます。
ILOはJ.P.モルガン・チェース財団から資金協力を受け、2017年からフィリピンなどアジア3カ国で「科学技術、工学、数学といった理系分野における女性人材の備えと育成促進計画」という事業を主導しています。フィリピンではJ.P.モルガン、技術教育・技能開発庁(TESDA)の協力を得て、2018年に175人に#WomenCanDoIT奨学金を提供し、情報技術(IT)部門における女性のキャリア開発を支援し、この部門に女性を結びつけ、力を付けさせてきました。2018年11月には25人以上の女性が新兵訓練を修了しましたが、この1人であるベロニカ・パンガニバンさん(39歳)は17年以上にわたりリサール州のタイタイ公設市場で露店を営んできました。この仕事から得られる収入は、女手一つで育てている2人の子どもと食べていくのがやっとのレベルでした。しかし、2018年に火災で露店を失い、無職になりました。
「それまでに私が知っていたのは店の経営ぐらいで、これが食料を購入し、各種の支払いを行い、2人の子どもの教育費を賄う収入源の全てでした。それを失った時はしばらくは茫然自失の状態でしたが、子どもの将来のことを考えて、まともな仕事を見つけるために新しい技能を学ぶ必要があると気づきました」とパンガニバンさんは振り返ります。そこで、ILOの事業計画の下でJ.P.モルガン・チェース財団が提供していた奨学金に応募しました。てっきり不合格だと思った試験と面接に通り、タイタイ市が情報通信技術省と提携して開いたデジタルコマース新兵訓練への参加資格を得ました。
「一生に一度のチャンスでしたが、簡単ではありませんでした。シングルマザーと奨学生の両立などといった困難に向けた備えを提供してくれる人などありませんでしたからね。重圧は大きく、何日も眠られない夜が続きました。でも私のような女性は諦めるべきではありません。努力する価値はあります」と語るパンガニバンさんは、新兵訓練前にはコンピュータの何たるかをさえ知りませんでしたが、訓練を終えた今ではソーシャルメディアによる販売促進、ウェブサイトの制作管理、グラフィックデザインの技能を習得しました。今では発表資料の作り方からロゴや画像のデザイン方法まで知っています。
ILOフィリピン国別事務所のカリド・ハッサン所長は次のように説明します。「女性の方が自動化による雇用喪失に弱いため、仕事の未来に向けて女性を訓練し、雇い、備えさせる必要があります。世界が高技能理系職に移行する中、女性も公平な分け前を得るべきです。今こそ少女を教育し、働く女性に力を付けさせてキャリア上昇を図り、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を得られるよう支援することによって男女格差を縮小すべきです」。
パンガニバンさんはコンピュータを使う能力を得たことによって将来に向けた全く新しいキャリアの道が開けました。ギグエコノミーで仕事を得てフリーランスとしてのキャリアに踏み出しました。新たな収入のおかげでタイタイ市場の露店を再建することができ、インターネットを通じて店の宣伝も行っています。今は一緒に修了した女性たちとフリーランスの協同組合を立ち上げ、資金を持ち寄ることによってより多くのより良い仕事を達成することを計画しています。
「理系分野における女性」ILO計画は、タイ、インドネシア、フィリピンの3カ国で実施されていますが、重点を置いている産業はそれぞれに異なります。タイは電気電子産業、インドネシアは自動車及び情報通信技術(ICT)産業、フィリピンは情報技術及びビジネスプロセス管理(IT-BPM)産業です。
科学における女性と女児の国際デーを記念して「理系分野における女性」ILO計画は、J.P.モルガンなどと協力し、2019年2月22日にマニラでフィリピン理系女性リーダー・フォーラムを開催し、IBM社などから女性理系リーダーの出席を得て、理系職場における女性リーダーの軌跡と課題について話し合いを行います。また、初の男性を宇宙に送る際に支援を提供したアメリカ航空宇宙局(NASA)の3人のアフリカ系女性数学者の実話を描いた映画「ドリーム」を上映した後、女子高校生による意見交換会を開きます。
以上はILOアジア太平洋総局による2019年2月7日付のリサール発英文広報記事の抄訳です。