ILO統計局ブログ:ミスマッチ
就いている職業に見合わないほど学歴が高い労働者は世界全体で2億5,800万人
就いている職業と学歴がミスマッチを起こしている労働者の数は9億3,500万人を超えると見られます。この72%が就いている職業で求められているよりも学歴が低い人々であり、残りの28%は逆に、就いている職業に比して学歴が高過ぎる人々です。このILOの労働統計データベースILOSTATの新しいデータは世界114カ国から得られたものであるため、世界全体の実際の数字はもっと高い可能性があります。
2020年02月26日
| ロシーナ・ガンマラーノ経済専門官 |
労働者の教育水準は世界中で高くなる一方ですが、教育水準の高い労働者が自らの期待に合った仕事を見つけるのは必ずしも簡単ではありません。2020年1月に発表されたILO労働統計局の概説資料「労働統計スポットライト・シリーズ」の第10号は「教育は報われる、でも辛抱が必要」と題し、高等学位を取得することの労働市場における利益・不利益を分析しています。
世界114カ国のデータによれば、就いている職業と学歴がミスマッチを起こしている労働者の数は9億3,500万人を超えると見られます。低所得国を中心に、この72%(6億7,700万人)が就いている職業で求められているよりも学歴が低い人々であり、高所得国に多く見られる残りの28%(2億5,800万人)は逆に、就いている職業に比して学歴が高過ぎる人々です。職業と学歴のミスマッチが労働者の半分を超える国は46%に上ります。このデータは2018年時点で世界の就業者の56%を表すものでしかないため、世界全体の実際の数字はもっと高い可能性があります。これはミスマッチが大きな問題であり、幅広く見られることを意味します。
就いている職業と教育水準がミスマッチを起こしている労働者の割合が高い国上位10カ国
| 学歴が低過ぎるミスマッチ(%) | 学歴が高過ぎるミスマッチ(%) | 適正な教育水準(%) | |
|---|---|---|---|
| マリ (2016年) | 89 | 1 | 10 |
| タンザニア (2014年) | 89 | 1 | 10 |
| コモロ (2014年) | 87 | 3 | 10 |
| コートジボワール (2016年) | 87 | 2 | 11 |
| ウガンダ (2012年) | 85 | 2 | 13 |
| アンゴラ (2011年) | 84 | 4 | 12 |
| モザンビーク (2015年) | 83 | 2 | 15 |
| ガンビア (2012年) | 80 | 2 | 18 |
| リベリア (2010年) | 75 | 5 | 20 |
| セネガル (2015年) | 75 | 6 | 19 |
英語原文にはグラフで表示されており、データを入手することもできます。
教育水準が低過ぎるミスマッチは低所得国の方でより一般的であり、深刻です。ミスマッチ率が高い国上位10カ国の全てが低所得国か下位中所得国です。どの国でもミスマッチは教育水準が高過ぎる場合も低過ぎる場合もありますが、データのある国の大半(74%)で低過ぎる割合の方が多くなっています。低所得国は全てがこの74%に含まれるのに対し、高所得国では半分ほどが高過ぎる労働者の割合の方が多くなっています。
所得国家群別の学歴が高過ぎる労働者と低過ぎる労働者の割合
| 国名 | 学歴が高過ぎるミスマッチの割合(%) | 学歴が低過ぎるミスマッチの割合(%) |
|---|---|---|
| 低所得国 | ||
| マリ(2016年) | 1.0 | 88.7 |
| タンザニア(2014年) | 1.2 | 88.5 |
| コモロ(2014年) | 3.2 | 87.0 |
| ウガンダ( 2012年) | 2.5 | 84.5 |
| モザンビーク( 2015年) | 2.1 | 83.0 |
| ガンビア( 2012年) | 1.7 | 80.0 |
| リベリア( 2010年) | 4.8 | 75.4 |
| セネガル( 2015年) | 6.3 | 74.8 |
| エチオピア( 2013年) | 5.0 | 74.0 |
| アフガニスタン(2017年) | 6.3 | 73.1 |
| コンゴ民主共和国(2012年) | 8.1 | 58.7 |
| ネパール( 2017年) | 10.6 | 46.4 |
| マダガスカル(2015年) | 23.4 | 40.0 |
| トーゴ(2015年) | 12.7 | 38.8 |
| ジンバブエ(2011年) | 13.1 | 38.4 |
| シエラレオネ( 2014年) | 7.0 | 37.0 |
| ルワンダ(2017年) | 8.8 | 36.9 |
| 下位中所得国 | ||
| コートジボワール( 2016年) | 2.4 | 86.6 |
| アンゴラ( 2011年) | 4.0 | 83.8 |
| 東チモール( 2016年) | 7.9 | 62.4 |
| パキスタン( 2018年) | 7.0 | 62.1 |
| ケニア( 2006年) | 6.2 | 61.9 |
| カメルーン( 2014年) | 6.0 | 61.8 |
| ホンジュラス( 2018年) | 5.9 | 61.0 |
| グアテマラ( 2017年) | 6.9 | 59.9 |
| バングラデシュ( 2017年) | 5.6 | 58.8 |
| イエメン(2014年) | 5.2 | 57.0 |
| ソロモン諸島( 2013年) | 13.3 | 54.3 |
| ニカラグア( 2014年) | 11.0 | 53.5 |
| ラオス( 2017年) | 9.3 | 53.3 |
| エジプト( 2017年) | 7.8 | 49.1 |
| カンボジア( 2016年) | 8.2 | 49.0 |
| インド( 2018年) | 13.9 | 47.6 |
| ミャンマー( 2018年) | 12.3 | 47.2 |
| インドネシア( 2018年) | 5.6 | 46.8 |
| エルサルバドル( 2018年) | 10.4 | 45.1 |
| ボリビア( 2018年) | 13.3 | 41.2 |
| ザンビア( 2017年) | 14.1 | 39.1 |
| スリランカ( 2016年) | 11.9 | 38.4 |
| カーボベルデ( 2015年) | 18.3 | 36.8 |
| スワジランド( 2016年) | 18.9 | 31.1 |
| キリバス( 2015年) | 16.5 | 28.2 |
| ベトナム( 2018年) | 19.9 | 27.7 |
| ガーナ(2017年) | 6.8 | 25.4 |
| モルドバ( 2018年) | 11.5 | 25.0 |
| ミクロネシア( 2014年) | 25.2 | 22.0 |
| パレスチナ( 2018年) | 19.5 | 20.8 |
| タジキスタン( 2009年) | 21.6 | 10.2 |
| モンゴル( 2018年) | 23.0 | 10.2 |
| アルメニア( 2017年) | 15.6 | 8.1 |
| ジョージア( 2018年) | 24.4 | 7.2 |
| 上位中所得国 | ||
| モルディブ( 2016年) | 6.8 | 63.5 |
| イラク(2012年) | 9.5 | 62.5 |
| ボツワナ( 2009年) | 11.9 | 48.4 |
| タイ( 2018年) | 10.7 | 44.6 |
| パラグアイ( 2017年) | 13.5 | 40.8 |
| ナミビア( 2016年) | 17.0 | 40.1 |
| ベネズエラ( 2012年) | 14.4 | 40.1 |
| コスタリカ( 2018年) | 11.7 | 39.1 |
| クック諸島( 2016年) | 17.5 | 36.5 |
| エクアドル( 2018年) | 16.2 | 36.3 |
| ドミニカ共和国( 2017年) | 15.2 | 33.1 |
| モーリシャス( 2018年) | 15.3 | 30.4 |
| メキシコ( 2018年) | 16.2 | 29.5 |
| ブラジル( 2018年) | 15.7 | 29.2 |
| ガイアナ( 2017年) | 17.5 | 28.7 |
| ツバル( 2016年) | 15.3 | 27.5 |
| ボスニア・ヘルツェゴビナ( 2018年) | 10.7 | 24.3 |
| セルビア( 2018年) | 15.7 | 24.2 |
| ナウル( 2013年) | 20.9 | 24.1 |
| アルゼンチン( 2018年) | 17.7 | 24.0 |
| 南アフリカ( 2018年) | 29.6 | 20.7 |
| ロシア( 2018年) | 25.9 | 14.6 |
| クロアチア( 2017年) | 14.7 | 13.9 |
| ベリーズ( 2016年) | 25.7 | 13.6 |
| フィジー( 2016年) | 21.0 | 12.8 |
| アルバニア( 2013年) | 10.9 | 10.2 |
| ルーマニア( 2017年) | 13.9 | 9.2 |
| ブルガリア( 2017年) | 22.2 | 7.9 |
| 高所得国 | ||
| ウルグアイ( 2018年) | 5.5 | 48.5 |
| ポルトガル( 2017年) | 11.8 | 34.1 |
| ブルネイ( 2017年) | 16.8 | 31.0 |
| アラブ首長国連邦( 2018年) | 19.6 | 28.6 |
| イスラエル( 2016年) | 13.8 | 23.2 |
| スウェーデン( 2017年) | 15.3 | 22.2 |
| 英国(2017年) | 21.6 | 22.2 |
| マルタ( 2017年) | 15.3 | 21.8 |
| スイス( 2017年) | 18.9 | 21.3 |
| イタリア( 2017年) | 19.7 | 20.7 |
| フランス( 2017年) | 21.2 | 20.6 |
| オーストリア( 2017年) | 20.0 | 20.5 |
| オランダ( 2017年) | 19.4 | 20.5 |
| ノルウェー( 2017年) | 14.5 | 20.1 |
| ルクセンブルク( 2017年) | 10.9 | 19.6 |
| チリ( 2018年) | 22.8 | 19.4 |
| デンマーク( 2017年) | 17.8 | 19.2 |
| アイスランド(2017年) | 15.1 | 18.9 |
| チェコ( 2017年) | 13.8 | 16.9 |
| スロベニア( 2017年) | 16.3 | 16.6 |
| ギリシャ( 2017年) | 20.7 | 15.9 |
| パラオ( 2014年) | 44.7 | 15.6 |
| エストニア( 2017年) | 22.4 | 15.4 |
| フィンランド(2017年) | 21.8 | 15.4 |
| 米国( 2018年) | 26.9 | 15.3 |
| 韓国( 2018年) | 37.1 | 14.5 |
| アイルランド(2017年) | 26.2 | 14.2 |
| ベルギー( 2017年) | 25.5 | 13.6 |
| ラトビア( 2017年) | 26.0 | 13.2 |
| スロバキア( 2017年) | 20.2 | 13.0 |
| ハンガリー( 2017年) | 18.4 | 12.6 |
| ポーランド( 2017年) | 19.0 | 11.7 |
| キプロス( 2017年) | 32.0 | 11.6 |
| スペイン( 2017年) | 29.4 | 10.3 |
| リトアニア( 2017年) | 24.0 | 8.0 |
英語原文にはグラフで表示されており、データを入手することもできます。
教育水準に見合った仕事を見つけるのが困難なのは男性も女性も同じであり、世界的には性差による強い偏りはありませんが、低所得国ではミスマッチの問題は女性の方が大きくなっています。ルワンダを除き、データのある低所得国の全てでミスマッチ率は男性よりも女性の方が高くなっています。
就いている職業と教育水準がミスマッチを起こしている男女別就業者比率
要するに低所得国では就業者は求められる教育水準が低い低技能職に集中し、それでもなお労働者の学歴は求められるものよりも低くなる傾向があります。高所得国では逆に就業者は高技能水準の職業に集中し、それでもなお教育水準が低過ぎる労働者はあまり一般的ではありません。実際、高所得国では低技能職に就く労働者のほぼ全員が高過ぎる学歴を保有しています。
ミスマッチを判断するものとして、国際標準教育分類(ISCED)と国際標準職業分類(ISCO)を用いて各職業の要求水準に合った労働者の期待される教育水準を定め、それより低い場合には低過ぎるミスマッチ、高い場合には高過ぎるミスマッチに分類しました。
教育水準と職業分類の対応表
定義上、高等教育労働者の技能が要請される管理職と専門職には高過ぎるミスマッチは存在しないことを意味します。逆に単純作業の仕事に要請される技能水準は非常に基礎的なものであるため、初等教育を上回る学歴の保有者は誰でも高過ぎるミスマッチに分類されます。この方法はさらに、初等教育を修了していない労働者はどの仕事についても低過ぎるミスマッチに分類されることを意味します。
この記事で用いられているデータは教育水準によってミスマッチを規定する規範的な手法によって導かれたものです。すなわち、各職業に求められる標準的な教育水準を定め、そこから外れた労働者を全てミスマッチに分類するというものです。しかしながら、ILOの労働統計データベースILOSTATには統計手法という別の手法によるミスマッチのデータも含まれています。これは、基準ではなく、労働市場で実際に起こっていることに応じて各職業に期待される教育水準を定めるというものです。つまり、それぞれの職業に就いている労働者に最も一般的に見られる教育水準(最頻値)を特定し、その水準の労働者を適合労働者とし、それより高い教育水準の労働者を高過ぎるミスマッチ、それより低い教育水準の労働者を低過ぎるミスマッチに分類するというものです。
* * *
以上は標記概況資料の著者であるILO統計局データ生成・分析班のロシーナ・ガンマラーノ経済専門官によるILOの労働統計データベースILOSTATの2020年2月26日付英文ブログ記事の抄訳です。ILOSTATには、データそのものに加え、データ生成に携わる人々向けの資料やイベント案内、ニュースレター、解説資料、ブログ記事なども掲載されています。