女性のエンパワーメント
地元産業に波を起こすスリランカの女性たち
経済開発を通じて地元のエンパワーメントを促進するILOプロジェクトの支援を受け、決意と洗剤をもって、スリランカの女性世帯主グループは社会的力、経済力の獲得を進めています。
2018年11月05日
26年間にわたるスリランカの内戦は多くの女性世帯主を生み出しました。その1人であるクリシナクマル・ジェヤランジニさん(49歳)は紛争によって絶えず移転を強いられ、大切な人との別れや避難の苦しみを経験しました。2013年には3人の子供を残して夫にも先立たれました。薬局の店員から家庭菜園などでの野菜栽培、小規模企業の経営まで、生活のために数多くの仕事を手がけました。しかし、日々の生活費や子どもたちのニーズ、その教育費を満足する収入は得られませんでした。
紛争終結後の2012年にジェヤランジニさんは故郷の家に戻ってくることができました。暮らしの再建には資金が必要でしたが、融資をしてくれようとする人はいませんでした。そこで、他の14人の女性たちと共にグループを結成し、「ウタイスーリヤン(暁の太陽)」と名付けました。グループの参加者は1人100スリランカ・ルピー(約60円)を拠出し、毎月会合を持って、資金を必要とする参加者にこの基金を用いて財政支援を行いました。ILOは当初からこの女性グループと密接に協力し、80人の組合員を擁するまでに拡大するのを手助けし、市場や買い手、社会的企業と結びつけました。オーストラリア外務貿易省の任意資金拠出を得て実施されているILOの「経済開発を通じた地元エンパワーメント(LEED)プロジェクト」の支援を受けて、ウタイスーリヤンはその後協同組合として登録され、このスリランカ北東部の町、プトゥクジイルップ唯一の女性協同組合であるプトゥクジイルップ女性企業家協同組合(PTK協同組合)に成長しました。
ジェヤランジニさんはまた、スリランカ政府のビダタ・リソースセンターが開催した技能訓練教室に通い、粉末洗剤の作り方を学びました。PTK協同組合の補助金と地元の複数の非政府組織(NGO)から支援を得て、材料と粉砕機械を購入し、洗剤生産者として開業しました。
LEEDプロジェクトはその後、このILOの手法の育成に価値を見出したノルウェー外務省の資金協力を得て、「和解を通じた生計手段・雇用創出プロジェクト」へと発展しました。ILOは現在、世界食糧計画(WFP)とPTK協同組合と連携し、国連平和構築基金から任意資金協力を受けている「スリランカ北部の女性の経済的エンパワーメントを通じた平和構築(EMPOWER)プロジェクト」の下でこの活動を新たな高みへと引き上げ、当初受益者であったジェヤランジニさんは今、プトゥクジイルップの現役の動員担当者となっています。
紛争が生み出した女性世帯主は様々な困難に直面しています。事業アイデアを家族その他の人々に説明したときに経験した憂慮や居心地の悪さをジェヤランジニさんは次のように回想します。「事業環境は男性によって占められ、私が事業を始めたときは女性企業家はほとんどいませんでした。たくさんの批判を受け、多くの人々が私の失敗を確実にしようと試みました。でも、うれしいことに、物事は今や変わりつつあります」。
決意と他の女性世帯主からの支援のおかげで、ジェヤランジニさんは小規模の事業を徐々に拡大し、今では小規模ながら粉砕工場も保有しています。製品には洗剤に加え、手作りの漬物、乾燥チリパウダー、米粉も含まれています。また、自転車を用いて製品を近所に売り歩いてもいます。
「粉砕工場を大規模事業に化すことを計画しています。粉末洗剤についても同じことができればと思っています。良い市場に参入できれば良いのですが」と語るジェヤランジニさんの将来計画には、もっと多くの市場機会を見つけ、製品について有効な証明書を取得することが含まれています。
ILOスリランカ・モルジブ国別事務所のシムリン・シン所長は、「女性」や「洗剤」といった言葉は成功を収めている洗剤会社を保有し、経営している女性ではなく、自宅で衣服の洗濯を行っている女性という男女の典型的なイメージを想起させることを指摘した上で、「この国の他の多くの女性がエンパワーメントを阻む障害を打破するために用い得るのに必要不可欠なインスピレーションを提供するのは、ジェヤランジニさんのような女性に少しずつ力を付けていく私たちの活動の話」であると語っています。
ジェヤランジニさんは自らが創立したプトゥクジイルップ女性協同組合の会長以外にも住所を置くカイベリ村の他の女性グループの様々な役割を担っています。女性農村開発会や女性自営者協会(SEWA)、その他数多くの農村女性団体に参加しています。既に数多くのリーダーシップ研修やジェンダー研修を受けたジェヤランジニさんはこういった役割に加え、一人親世帯の3人の子供の母親として関連する責任を担っています。「私は母親として誇りを持っています。長女は結婚して民間会社で働いており、2人の息子はまだ学校に通っていますが、スポーツが得意な下の息子はサッカーや高跳びで多くの金メダルを受賞しています。子どもたちが功績を立て、自分の足で立てることを望んでいます」と語った上で、「協同組合の発展を目にするのは非常に喜ばしく、ILOの支援には心から感謝しています。訓練も金銭的な援助も私がビジネスの階段を上がるのを助けてくれました。今度いらっしゃった時には私の洗剤会社の所有する大きな工場をお目にかけましょうね」とジェヤランジニさんは取材に訪れたILO職員を送り出しました。
紛争の被災者であった女性たちが今や自分の地域社会や民族集団を越えて連携し、所得創出活動、協同組合、事業に従事しており、したがって、今後は地域社会でより大きな意思決定の役割を担い、和解及び紛争リスクの緩和活動に関与していくことが期待されます。
以上はILOスリランカ・モルジブ国別事務所による2018年11月5日付のプトゥクジイルップ(スリランカ)発英文広報記事の抄訳です。