国際障害者デー

国外避難にも障害にも妨げられなかったあるシリア難民の働きたいとの気持ち

 12月3日の国際障害者デーに発表されたこの広報記事は、ILOの支援を受けて聴覚障害などを克服し、ヨルダンの工場で人間らしく働きがいのある仕事を見つけたシリア難民のシャイカさんの体験を伝えています。

2019年12月03日

 シリアのダルアー市郊外にあるエルマ村の自宅が戦闘で破壊されて避難を余儀なくされたシャイカさん(55歳)は、2011年にヨルダンに移り住みました。その上、数年前から聴力が徐々に失われ、今ではヨルダンに移ってから手に入れた補聴器なしには何も分からない状態になっています。紛争、避難、障害によってシャイカさんの人生は台無しになってしまいました。

 ヨルダンのザータリ難民キャンプで暮らすようになった時、独立意識を得、年長の夫との生活費の足しになる収入を得るために仕事を見つけようと決意しました。補聴器用の高価な電池を買う必要もありました。

 仕事が見つかることを期待して国際非政府組織(NGO)が主催する6カ月間の縫製講習を修了しましたが、年齢や障害、難民の立場もあり、仕事はなかなか見つかりませんでした。キャンプ内の色々な仕事に応募しましたが、どこからも連絡はありませんでした。

 2018年11月になってようやく、ILOの職業安定所の手助けで衣料工場に仕事が見つかりました。ILOが欧州連合(EU)の資金協力を受け、ヨルダンの労働省との緊密なパートナーシップの下、2017年からザータリ難民キャンプ内やアルハッサン工業区、ザルカ、マフラク、サハーブなどヨルダン国内各地に設立した13の職業安定所は、シリア難民のみならずヨルダンの地元住民にも職業指導や訓練機会、職業斡旋サービスを提供しています。これはヨルダンの製造業における雇用を促進し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の前進を図る協同事業の一環です。EUとILOのパートナーシップ事業は、ヨルダン人とシリア難民双方の求職者を対象とした職業斡旋事業や雇用関連サービスを円滑化し、EUの原産地規則緩和措置が適用される企業におけるディーセント・ワーク諸原則の促進を図っています。

 シャイカさんも職業安定所に登録して1カ月で工場の仕事を紹介されました。

 難民キャンプから40キロ離れた工業区までの道のりを毎日往復するのは大変でしたが、ILOが雇い主のストレイト・ライン・フォー・アパレル社と提携し、キャンプ住民を対象に工場までの無料送迎バスを出すことになりました。同じ工場で働く他の21人の難民と共に利用できるこのサービスは、工場が運営する送迎バスで提供され、始業と終業の時間に合わせて毎日、キャンプの門のところと職場を往復して送迎してくれます。ILOは他の工場で働くキャンプ住民を支援する同じような送迎バスサービスや、キャンプ内を回って工場のバスが待つキャンプの門のところまで送ってくれる交通手段も導入しました。

 毎朝6時に家を出た後、長時間をミシンの前で過ごして衣料品を生産するシャイカさんですが、今は一番幸せです。「仕事が好きなので、1日でも休むと泣いちゃうわ」とシャイカさんは語っています。

 ILOのマハ・カッター強靱性・危機対応地域専門官は次のように語っています。「労働者が時間通りに職場に着くことを確実にし、追加出費やその他の複雑な状況を心配しないですむような、こういったサービスは必要不可欠です。仕事を通じた暮らしの向上を決意したシャイカさんを始めとした他の多くの方々が達成された進展は誇らしく、生活の質と労働条件の向上を促進するILOの施設を通じてそのような支援を受け続けられるよう確保したいと思います」。

 シャイカさんにとって、工場で働き、月給を受け取ることができる状況は力を得たように感じる助けになっています。「働き続けたいわ。もしかしたらいつか、シリアの家を建て直すことができるかもしれませんし」とシャイカさんは夢を描いています。

 以上は2019年12月3日付のヨルダン発英文広報記事の抄訳です。