児童労働

児童労働と家事労働

2021年03月01日

家事労働とは?

 「2011年の家事労働者条約(第189号)」は、家事労働を「一つもしくは複数の世帯においてまたは世帯のために遂行する業務」と定義し、雇用関係の枠内で家事労働に従事する者を家事労働者としています。

 「家事労働」の言葉には、国や当該労働者の年齢、性別、人種的背景、移民・非移民の別、そして労働が提供される文化的・経済的環境の違いによって異なる幅広い作業やサービスが含まれます。これは家事労働や家事労働者を遂行する作業だけに基いて定義すると、永久に不完全なものになることを意味します。そこで、第189号条約は、家事労働者について、雇われて他人の家庭でサービスを提供するという、はっきりと区別された共通の特徴を用いて定義しているのです。

子どもの家事労働とは?

 子どもの家事労働とは一般に、第三者あるいは雇い主の家庭で子どもが従事する家事労働を指します。この一般的な概念には許される状況と許されない状況の両方が含まれています。

家事労働における児童労働とは?

 家事労働における児童労働とは、一定の就業最低年齢(危険有害でない軽作業にフルタイムで従事する場合)を下回る子どもが遂行する家事労働、危険で有害な状況下であるいは奴隷のような状態で行う家事労働を指します。

自宅で子どもが行う家事は子どもの家事労働に当たるのでしょうか?

 子どもが妥当な状況下で近しい人の監督のもと、自宅で行う家事は家庭生活及び成長過程の一部であり、したがって何かしら肯定的なものと考えられています。しかしながら、労働量が学業に支障を来すようなものであったり、過度であるような懸念すべき状況の場合には、児童労働に等しいものとなるかもしれません。

 自宅で家事を行う子どもも他人の家庭に雇われて家事労働を行う子どもも、行う作業は同じようなものかもしれませんが、前者の場合には雇用の要素が欠けているため、これを家事労働と言うのは避けるべきです。

子どもの家事労働が隠された現象であって取り組みが困難な理由

 子どもの家事労働は目につかないことが多く、社会的・文化的パターンとつながりがあるために取り組みが困難です。多くの国で、子どもの家事労働は社会的・文化的に許容されているだけでなく、悪いレッテルが貼られていない守られた種類の仕事として肯定的な存在に捕らえられ、とりわけ少女の場合、他の就業形態よりも好まれています。家庭内外に永続的に存在する女性の伝統的な役割と責任、さらに家事は女性が大人及び結婚へ至るための見習い実習の一部であるとの認識もまた、児童労働の一形態としての子どもの家事労働の永続化に寄与しています。

この現象の根本原因

 子どもの家事労働には数多くの根本原因がありますが、大きく分けるとプッシュ要因とプル要因があります。前者には、貧困とその女性化、社会的排除、教育の欠如、男女差別や人種差別、子どもが自宅で受けている暴力、避難、農村から都市への移住、紛争や病気による親の喪失などが含まれます。後者としては、雇い主は単なる拡大家族の一員であり、したがって子どもに保護された環境を提供するとの認識に加えて、社会的・経済的格差の拡大、債務奴隷、ますます多くの女性が労働市場に進出できるために必要とする家庭内の代替要員のニーズの増大、家事は働く子どもに教育の機会を提供するとの幻想などを挙げることができます。

子どもの家事労働者が直面している危害

 子どもの家事労働に関連した危害は深刻な懸念事項です。ILOでは家事労働者が特に弱く、時に最悪の形態の児童労働と見なされる理由になるような数多くの危険有害要因を特定しています。家事に従事する子どもが出会う最も一般的な危険としては、長く疲弊する一日の労働、有毒化学物質の利用、重い荷物の運搬、刃物や斧、熱い鍋などの危険物の取り扱い、不十分あるいは不適切な食事と住まい、肉体的暴力や言葉による暴力、性的虐待などを含む屈辱的なあるいは品位をおとしめるような処遇などが挙げられます。住み込み家事労働者の場合、リスクは複合的なものになります。こういった危害はまた、例えば、教育や医療を受ける機会、休息や娯楽、遊び、レクリエーションの権利、親や仲間に気にかけてもらい、定期的に接触する権利などの子どもの基本的な権利の否定に関連して見る必要があります。こういった要因は子どもの発達、健康、福祉に取り戻せないほどの身体的、精神的、道徳的影響を与える可能性があります。

児童労働に関するILOの第138号及び第182号条約と家事労働者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に関する第189号条約

 第189号条約は、「1973年の最低年齢条約(第138号)」と「1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)」というILOの児童労働関連条約の規定を補足するものです。この条約は、ILO加盟国は国内法規で定められた労働者一般についての最低年齢を下回らない第138号条約及び第182号条約の規定に沿った、家事労働者のための最低就業年齢を設定するよう明確に記しています。第189号条約を補足する同名の勧告(第201号)は、子どもによる危険有害な家事労働の特定、禁止、撤廃、そして家事労働に従事する子どもの状況を監視する仕組みの実施を求めることによってこの規定を補強しています。

 非常に幼い頃から家事労働における児童労働に陥った子どもたちは教育を全くあるいは不十分にしか受けられない可能性が高く、法定最低就業年齢を上回る子どもの家事労働者も教育を継続する機会が減じられています。第189号条約は加盟国に対し、就業最低年齢以上18歳未満の家事労働者の行う仕事が義務教育の機会を奪わないよう、あるいは継続教育や職業訓練に参加する機会に干渉しないよう確保する措置を講じることを求めています。

子どもの家事労働及び家事労働における児童労働の規模

  • 他人あるいは雇い主の家庭で無償あるいは有償の家事労働に従事する子どもは1,720万人
  • このうち児童労働に当たるのが1,150万人、このうち危険有害労働に当たるのが370万人(子どもの家事労働者全体の21.4%)
  • ほとんどが10代後半の就労可能年齢にあるものの、虐待から守られ、ディーセント・ワークの機会が提供されるべきなのは570万人
  • 2012年にILOは強制労働に関する世界推計を出しましたが、2,090万人の強制労働者全体の26%に当たる550万人が17歳以下の子どもであると推定されます。強制労働や人身取引の結果として家事労働に従事している子どもの数は不明であるものの、債務奴隷や人身取引被害者、奴隷状態にある子どもが相当数存在することを示す証拠があります。
  • 子どもの家事労働者の67.1%が少女
  • 子どもの家事労働者全体の65.1%が14歳以下:5~11歳が740万人、12~14歳が380万人
  • 子どもの家事労働は世界中どの地域にも見られます。

 詳しくは「2012年の子どもの家事労働世界推計ファクトシート(英語)」をご覧ください。

子どもの家事労働に関する推計の出所

 隠された労働状況を完全に捕捉するには数多くの制約があるものの、ILOが2012年の児童労働世界推計で用いた複数の世帯調査が子どもの家事労働についての貴重な数量情報を提供しており、ここから子どもの家事労働者の世界推計が可能になりました。

家事労働における児童労働に終止符を打ち、法定就労年齢の若年労働者を守るための解決策

 魔法の処方などはなく、家事労働における児童労働が提示する問題に取り組み、法定就労年齢に達した若年労働者を守るには、以下を含む様々な領域と様々なレベルにおける補足的な取り組みが求められます。

  • 家事労働における児童労働と若者就業者をより良く捕捉するために子どもの家事労働に関する知識をさらに高め、統計の可視性を育むこと
  • 社会の姿勢を変え、家事労働における児童労働についての幅広い受容やこの状況が子ども、とりわけ少女にとって保護された健全な環境を表すとの親や雇い主の信念に取り組む啓発・広報提言活動
  • 児童労働に関する第138号条約と第182号条約、家事労働者のディーセント・ワークに関する第189号条約の批准と実施の促進
  • 家事労働における児童労働に終止符を打ち、若年労働者を保護する以下のような法律・政策活動
  • 労働者一般について定められたものを下回らない家事労働者についての明確な最低就労年齢の設定
    • 子どもにとって危険有害な家事労働の種類の特定
    • 若年家事労働者のニーズに特別の注意を払いつつ、家事労働者の労働・生活条件を規制すること。これには厳格な労働時間制限、夜間労働の禁止、要求度が過度に高い労働の制限、労働・生活条件監視の仕組みなどが含まれるべきです。
    • 適切な罰則の採用
    • 苦情申し立て機構の整備
    • 司法利用や法的救済の利用の円滑化
    • 家事労働に適用される規定を執行するために敷地内に立ち入ることを法によって許可された実効性ある労働監督
  • 子どもの移民は家事労働における虐待的な労働条件に弱いことに注意を払うこと
  • 契約文書やモデル雇用契約を通じた家事労働における雇用関係の公式化
  • 社会的パートナーである労使の役割を高め、法定就労年齢に達した若年家事労働者の組合加入・設立の権利を認めることなどを含む、家事労働における団体交渉権の実効的な認定、結社の自由の拡大
  • 家事労働者の雇い主の支援を取り付けること
  • 反児童労働、若者の人間らしく働きがいのある雇用に向けて子どもの家事労働者に支援を提供すること
  • 世界的な児童労働反対運動の支援
  • 変化を引き起こす者としての子どもの家事労働者との協調
  • 全ての人にディーセント・ワークを促進するために力を合わせること:一緒に取り組めばより良い結果が期待できます。

取り組みの輪

 家事労働における児童労働の撤廃、虐待的な労働・雇用条件からの若年労働者の保護、全ての家事労働者にディーセント・ワークを促進する効果的な行動のためには、協力が基本です。幅広い政府、労使団体、市民団体、国際機関はこれまでも家事労働者の問題の可視性を高める上で重要な役割を演じてきましたが、今後もそれは続くことでしょう。

* * *

 児童労働と家事労働についての詳しい情報や最新の動き、各種資料は、児童労働撤廃国際計画(IPEC)内の英語ページから入手できます。子どもの家事労働の実態を示す一例として、ILOの広報官が目撃したマダガスカルの児童労働に関する広報記事・動画をご覧ください。

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