広報記事:キルギスタン

児童労働から脱して学校へ:キルギスタンのアリムジャン君の物語

2015年06月11日

 今年の児童労働反対世界デー(6月12日)のテーマは、「児童労働に反対、良質の教育に賛成」です。時には危険で有害な形態の児童労働に従事する子どもや働かざるを得ない子どもを含み、学校に通っていない子どもが約8万人に上るキルギスタンで、このような子どもの一人であったアリムジャン君は、学校から帰るかつての級友の姿を目にした時の気持ちを、「絶望」、「悲しい」、「希望がない」、「恥ずかしい」といった言葉を用いて表現しています。

児童労働から引き離された子どものためのキルギスタンの補習授業

 学校の成績が良かったアリムジャン君ですが、父親が家を出て、母親が病気に倒れた15歳の時、3人兄弟の長男として家計を支える必要が生じました。駅で見つけた荷物運びの仕事は時に午前2時までかかり、最初は学校を続けようと努力したものの、寝過ごして遅刻したり、教室で居眠りをすることが増え、ついに学校に通うのを止めてしまいました。

 キルギスタンでは、政府が労使団体と協力し、ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)の支援を受けて、2005年から児童労働と闘う一連のプロジェクトを実施してきました。その一つである、ドイツ政府の任意資金協力を受けて実施されている「公約を行動へと移す中央アジア児童労働撲滅プロジェクト」は、教育に特に力を入れています。しかし一度学校から離れた子どもを再び学校教育に組み込むのは年齢の問題などもあり、なかなか困難です。そこで、このプロジェクトには、教育・科学省の支援を受けてキルギスタン教育・科学労働者労働組合(TUESWK)の協力を得て実施されている、ノンフォーマル(公式外)教育の要素が組み込まれています。キルギスタンのIPECプロジェクト調整官を務めるアミナ・クルバノワは、「教育のプロとして、参加型訓練技術を容易に習得し、効果的に適用することができ、子どもを支え導き、子どもに社会の問題やリスクを伝え、そして重要なこととして、親に助言することができ、そしてもちろん最高の児童労働監視員となる」教員が、この活動で果たす重要な役割を指摘しています。

 プロジェクトが用いているIPECの「教育、アート、メディアを通じた子どもの権利の支援(SCREAM)方法論」は教師にとって貴重なツールであることが証明されています。SCREAMを用いた授業は子どもが生理的障壁を克服し、様々な芸術形態を通じて自己を表現することを支援しています。11のパイロット校で訓練を受けた教師がSCREAMを用いた課外活動を行い、他の学校職員と知識の交換を行っています。2013年に完成した、国の状況に適応させたSCREAM教育パッケージとノンフォーマル教育マニュアルは教育学会から承認され、教育・科学省もその使用を推薦しています。

SCREAMのモジュールでは、創造的な集団作業を刺激する目的でコラージュが用いられています

 駅で児童労働監視員に見つけられたアリムジャン君の生活はこのプロジェクトのおかげで劇的に変わりました。アリムジャン君の母親は息子が働いていることを悪いこととは見ておらず、逆に、お金を稼ぐ方法は早く覚えれば覚えるほど良いとの考えでした。ボランティアで児童労働監視員を務めるダミラ・カディルシャエワ校長は、「残念ながら我が国では特に貧しい家族の間でこういった考え方が極めて一般的」と認めた上で、「貧困の悪循環を再生産していることに親は気づいていない」と指摘しています。

 アリムジャン君を学校に戻すためにあらゆる手立てが用いられました。母親と共に学校に招いて危険で有害な児童労働についてのIPECのビデオを見せ、PTAに相談して教科書その他の学用品を購入してもらいました。IPECのプロジェクトによる食糧の配給も大いに家族の助けになりました。SCREAMの授業を受けたアリムジャン君は見違えるように社交的で、心を開いた子どもになりました。第9学年を修了して職業訓練機関に入ったアリムジャン君は溶接工になる訓練を受けることになっています。

 欧州、中央アジア、中東諸国を担当するIPECのスネジ・ベダリ上級担当官は、プロジェクト成功の第一の理由として、「あらゆるレベルにおける協調を図った全国的行動」を挙げています。また、教師と教育担当機関が重要な役割を演じていることを指摘し、やらなければいけないことはまだ多いと認めつつも、「プロジェクトの成果は私たちが正しい道をたどっていることを示している」と評価しています。

 今年の児童労働反対世界デーには世界約55カ国で100を超える記念行事が実施されます。第104回ILO総会が開かれているジュネーブでは同日、昨年のノーベル平和賞受賞者のカイラシュ・サティアルティ氏やパナマのロレナ・カスティージョ・デ・バレーラ大統領夫人なども参加してパネル討議が開かれます。

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 以上はビシケク発英文広報記事の抄訳です。