世界の雇用及び社会の見通し2021年版
仕事の未来ポッドキャスト・シリーズ-仕事の世界の変革におけるデジタル労働プラットフォームの役割
2021年2月に発表されたILOの定期刊行物『世界の雇用及び社会の見通し』2021年版は、「変容する仕事の世界におけるデジタル労働プラットフォームの役割」を副題に掲げ、デジタル労働プラットフォームが世界中の労働者と事業体に機会と課題の両方を提示していることを示しています。「仕事の未来ポッドキャスト・シリーズ第3話」では、同書の見出した事項を中心的な著者であるILO調査研究局のウマ・ラニ上級経済専門官に聞くと共にプラットフォーム労働者複数名から仕事の実態を報告してもらいました。
2021年03月30日
2021年2月に発表されたILOの定期刊行物『World employment and social outlook(世界の雇用及び社会の見通し・英語)』2021年版は、「変容する仕事の世界におけるデジタル労働プラットフォームの役割」を副題に掲げ、デジタル労働プラットフォームが世界中の労働者と事業体に機会と課題の両方を提示していることを示しています。2021年3月30日に発表された「仕事の未来ポッドキャスト・シリーズ第3話」では、同書の見出した事項を中心的な著者であるILO調査研究局のウマ・ラニ上級経済専門官に聞くと共にプラットフォーム労働者複数名から仕事の実態を報告してもらいました。以下はこの抄訳です。
* * *
インターネットを介して仕事の受発注を行うデジタル労働プラットフォームは、ギグ経済など様々な名称で呼ばれています。タクシーなどの交通手段から料理の宅配、フリーランサーが利用するオンライン・プラットフォームなどの形態でニュースに度々登場し、至る所に存在するようになってきています。とりわけ、新型コロナウイルスの世界的な大流行によって地域封鎖や隔離措置が取られている2020年には一大事業に成長しています。
ILOの定期刊行物『World employment and social outlook(世界の雇用及び社会の見通し・英語)』2021年版によれば、デジタル労働プラットフォームは女性や障害者、若者、伝統的な労働市場で縁辺に追いやられてきた人々に新たな仕事の機会を提供しており、事業体には多様な技能を有する柔軟な労働力多数へのアクセスと共に顧客基盤の拡大をもたらしています。
デジタル労働プラットフォームとは
本書の中心的な著者であるILO調査研究局のウマ・ラニ上級経済専門官はILOがこのテーマを今取り上げた理由を次のように説明します。
デジタル労働プラットフォームはこの10年で5倍に成長し、プラットフォームやこれを介して仕事を得ている人々については話題に上ることが多いものの、この労働者の分類の仕方を巡っては一つの大きな問題があります。ILOがこの調査研究に乗り出した理由の一つは、19世紀後半から20世紀初頭にかけてとりわけ製造部門で見られた在宅形態労働とプラットフォーム労働が非常に似通っているという点です。このいわゆる家内労働では、多くの女性労働者が細分化されて与えられた特定の作業を行っていました。当時も今もこの仕事は暇な時間に行える柔軟な仕事と宣伝され、実際にそうすることができるようになっています。そこで、この仕事の工程や編成方法を理解したいと考えました。と言うのも、タクシーであろうと、配達業務であろうと、テープ起こしや翻訳であろうと、その多くが新しい仕事ではなく、新しいのは科学技術が顧客と労働者の間の業務を仲介している点だったからです。
このプラットフォームが仕事の世界にもたらしている変化は三つ挙げることができます。一つは、科学技術による仲介であるため、仕事の配分やモニタリング、評価、報酬決定といった作業工程と成績のアルゴリズムによる管理が導入されたという点です。きわめて根本的で非常に重要な2番目の変化は、仕事の組織方法の変化であり、投下資本費用と営業費の責任が企業から労働者へと転換された点です。つまり、オンライン労働者の場合、自前でコンピュータを保有し、インターネットの接続料や生活空間用費用その他の支出といった営業費も自分で負担しなくてはなりません。同様に、タクシー業務であれば、労働者、すなわち運転手が車を所有し、燃料費や維持費なども負担します。3番目のきわめて本質的な変化は、このモデルが企業に直接雇われ、あらゆる福利厚生を享受する非常に中核的な労働力と、典型的には自営業または独立請負人と分類され、福利厚生を一切得られない多くの仲介労働力という労働市場の大きな分断を形成しつつあるという点です。
これは労働者の仕事の未来にとって大きな意味をもっています。私たちは人工知能(AI)が魔法のようにクラウド上で作業を進め、大型コンピュータがビッグデータをどしどし処理して何でもひとりでやっていると考えがちですが、プログラムの背後には、ほとんど話題に上ることがないものの、こういったAIの訓練に関連する無数の作業を行う労働者が存在しています。例えば、ソーシャル・メディアのプラットフォームでポルノ画像や憎悪演説、戦争の画像が目に触れることはほとんどなく、アルゴリズムによってこれらの素材が排除されていると考えるかもしれませんが、実際にはコンテンツ・モデレーターと呼ばれる労働者が1日に何千枚ものポルノ画像をふるい分けし、社会に許容されないものを排除しているのです。同様に、インターネット上で服や書籍、家庭用品などを購入しようとすると、全てがきちんと分類されているのを見かけますが、これもまたアルゴリズムではなく人間が一つ一つをふるい分けし、カテゴリー分類している場合が多いのです。こういった作業の幾つかは将来的には自動化されるでしょうが、現時点ではこれは全てクラウド・ワーカーが手がけ、将来的な自動化に向けてアルゴリズムの訓練を行っているのです。
デジタル労働プラットフォームは労働者と事業体の両方に機会を提示しています。多くの国でとりわけ地元の労働市場における雇用機会が不足しているからです。一定の教育、一定の技能があっても労働市場で雇用機会を見つけられない人々の多くが経過措置として労働プラットフォームを利用して仕事探しをしています。得られる他の仕事よりプラットフォームの方が報酬が高い場合があるという理由もあります。また、とりわけ女性の場合は育児や介護といったケア責任が理由として挙げられます。移民、難民、障害者にとっても重要な収入源となっています。一方で、この仕事の否定的な面の基本的なものの一つは、このプラットフォームでは労働者がたとえ同じ顧客の下で長く働いていても、従業員ではなく、自営業あるいは独立請負人として識別される場合が多いことがあります。これは社会保障、仕事や収入の規則性、何らかの有給休暇や疾病休暇の取得、労働災害や職業上の健康危害に遭遇した場合にある種の支援を受ける機会といったものに影響します。プラットフォーム労働者の多くは、団結して権利を交渉することさえできません。プラットフォームが有償の就労機会の一つとなるには、こういった問題に対応する必要があります。
オンライン・プラットフォームは事業体には1年365日24時間労働者にアクセスできるという新たな業務外注方法を提供しました。地球規模の労働力集合によって仕事が簡単に遂行されるため、経費削減の助けになります。革新的な取り組みのための知識を得る助けにもなります。こういった企業の多くはまた、労働者の採用に競合プログラミング・プラットフォームも用いています。実際、企業側にはこういった労働者にアクセスする大きな需要が生まれています。コロナ禍の中で、経費節減を目指してオフラインの仕事の多くをオンライン労働市場に移した企業が多く目撃されています。コロナ禍以前よりもオンライン労働に向かう動きが将来的に増すと考えられます。
プラットフォーム労働者の労働実態
番組では、3人のプラットフォーム労働者に話を聞きました。フランスで暮らすポルトガル生まれのセルジオ・サントスさん(38歳)は、既に15年余りフリーランスのソフトウエア・エンジニアとして働いています。ケニアの首都ナイロビで暮らすマーシー・オソンゴさん(28歳)は4年前から独立オンライン労働者として翻訳及び資金調達業務を手がけています。コロンビアの首都ボゴタで暮らすラウラ・カルドナさんは生物学の学位を取得するまでのアルバイトとして、4年ほど前からフリーランスで仕事をしています。
プラットフォーム労働者の労働実態-セルジオ・サントスさんの場合
サントスさんは1995年に普通の会社勤めを目指して求職活動を始めましたが、地元で仕事が見つからなかったため、やむを得ず、今の働き方を始めました。サントスさんは自らの経験を次のように振り返っています。
働き始めた時は、今見られるような、例えばバリやタイの海辺で、楽しみながら働くデジタル遊民やフリーランサーとして何でも自分で決められるような働き方は存在せず、仕事はいわゆる「下向きの競争」として提示されました。つまり、質も何も関係なく、最低価格、最短納期の人が仕事を落札するのです。さらにまた、人々はフリーランサーであることのコストを見過ごしがちです。従業員を雇っていた人は、時給を支払えばいいと考えます。例えば、従業員の時給が10ドルであったとすれば、同額をフリーランサーに支払おうとし、フリーランサーが自分でハードウエアに投資し、電気代やインターネット接続料、自宅で働くために必要な人間工学的な空間のための費用に加え、税金や健康保険を支払い、休暇も自分持ちであることを忘れがちです。労働者が求める時給10ドルがそのまま手取りになるわけではなく、最大2割になることもあるプラットフォーム利用料のような手数料が存在して手取りは8ドルとなり、もしかするとその半分あるいは4割が他の経費に回されることを理解させるのは困難です。だから私のような多くのフリーランサーには休みがありません。ちょうど子育ての時には赤ん坊を寝かせつけた時に自分も寝るのと同じように、仕事があれば働き、なければ休みなのです。
サントスさんが直面している最大の課題は競争です。生計費が安く、したがってもっと低い時給でも暮らしていけるほかの国の人々との競争が激しく、時には時給1ドルといった驚くべき入札価格まで下がりますが、非難すべきは労働者側ではなく、それを許しているプラットフォーム側であると考えています。
顧客の国の最低賃金を下回る報酬の支払いを許さないたった一つの措置、一つの訴訟でもあれば大きな反響があると思います。これは買い手側、すなわち、顧客が地元の人材を探し、失業者を放置して、学んだことやその知識を下回る仕事を探すよう仕向けない行動を起こすことを奨励するからです。それでも海外の人材を雇うことを選択するならば、人並みの暮らしを許すことになり、その方が良いでしょう。その国の経済を好転させることになるので、顧客による他国経済への投資になりますから。
この仕事で最も気に入っているのは自宅で働ける点です。コロナ禍の時代には大きな恵みです。家を出ることも他の人のように仕事を失う心配をする必要もありませんから。工場で働いていたら、注文や売上の減少によって仕事を失っていたでしょう。レストランで働いていたら、たちどころに職を失っていたでしょう。そうなった人には本当に可哀想なことですが。別の仕事を探す心配なしに国を越えられたことも素晴らしい恵みです。
でも一点だけ、現状で気に入らない点があります。これは他の多くのフリーランサーの方々もそう感じるでしょうが、求職用の料金を支払うことを強いられ、あまりリスクを冒すことができないため、キャリアアップが望めない点です。他のフリーランサーも同じ問題を指摘していますが、私の場合は例えば、今はサーバーやウェブサイトの管理だけを行っています。プログラミングもそこそこでき、やってみたいと思うのですが、このような提案が来るたびに、それを引き受けて悪い点が付けられたとしたら、将来もっと多くのより良い仕事を得るチャンスを損なうだろうと考え、引き受けることができません。オンライン得点が非常に重要であるため、少なくとも職業的な成長のためにはしばしば必要なリスクを冒すことをためらわせているという点は非常に重要なことです。
プラットフォーム労働者の労働実態-マーシー・オソンゴさんの場合
元々広報・資金調達の経験があったオソンゴさんは、4年前に当時働いていた組織で精神状態を崩し、転職を考えていた時に相談した友人から様子見のためにフリーランスの兼職を勧められたことがこの仕事に入るきっかけでした。2カ月間フリーで働いていた間に非常に良い経験をしたので、仕事を辞めました。非常に早く顧客が見つかったため、今こそこれをフルタイムの仕事とするチャンスだと考え、全般的に気に入っていなかった当時の仕事を辞める決心をしました。この仕事を始めた時はほとんど期待しておらず、6カ月ぐらいの間に顧客1人に出会えばラッキー程度に考えていたものが、実際には期待をはるかに上回ったため、試みを続けて新たな顧客を獲得する元気も意欲も得ました。最初の仕事は助成研究の支援で、記憶が正しければスウェーデンでの開業にふさわしい助成金の種類を調べる仕事でした。その後、助成申請の仕事を引き受け、それが今の主な職業になっています。そこで今に続く2年間の長い顧客との付き合いが始まりました。最初は助成申請だけでしたが、今では広報活動の方が多くなり、資金依頼の電子メールを代筆したり、顧客や助成機関候補への返信も行うように関係が進化しました。これは人としての成長に役立ち、同時に非営利団体の資金調達活動を生で目撃する機会にもなっています。
この数年、プラットフォーム側は求職者に利用料を課すようになってきています。フリーランスの仕事を始めた時はまだその仕組みは導入されていませんでしたが、今はそれにも慣れてきました。1カ月60件の接続権までは無料ですが、仕事や顧客によっては、入札に最大6件支払う必要があります。入札しても仕事にありつけず、接続権も消えてしまう場合もありますが、プラットフォームで仕事を得るために費用を支払うという考えをとても興味深いと思います。この仕組みの利点は、例えば自分の場合は仕事を得られる確信が5割はないと応募しないといったように、応募する人が限られる点です。接続権が無料だった以前は、仕事を得られようが得られまいが自分の職業分野内のどんな仕事にも入札していましたから。逆にこの不利な点はもちろん、自分に資格のある仕事であっても接続権がないという場合です。当月の接続権を消費し尽くし、買い足す余裕がない時にはリラックスして入札できる接続権を得る時まで待つといういい加減さもあり得ます。
オンラインで働く際の最大の課題の一つはそれに伴う競争優位です。つまり、立地場所のせいで幾つかの仕事に入札できないことです。アップワークから提案される仕事のほとんどは、顧客が米国を拠点とする助成申請者を希望しているといったような理由で応募できません。自分の労働条件が改善されるであろう一つのこととして、全てのフリーランサーにこういった仕事に入札できる機会を与え、誰もが同じテーブル上で自分がどれだけのことができるか証明できるチャンスを与えてもらえれば、とオソンゴさんは願っています。
オソンゴさんは長くフリーランスを続けるつもりですが、将来は分からないと言っています。8時から5時の仕事に戻る機会が与えられたら、必ず引き受けるつもりと言います。一方でフリーランスの看板を下げるつもりはなく、いつでも幾らかの時間を作ってフリーランサーであり続けるつもりと語っています。
プラットフォーム労働者の労働実態-ラウラ・カルドナさんの場合
学生であるカルドナさんは、正規の仕事では時間がなくなるかもしれないと考え、一時的な資金稼ぎの手段としてフリーランスの仕事を始めました。仕事に対する応募者の数を誰かが規制するとの考えには賛同できず、仕事を得るために料金を支払わなくてはならないのは公平ではないと考えています。プラットフォームによっては利用するだけでも料金が発生するのでそういったところは選んでいません。仕事をしたいなら、これだけの料金を支払うべきと言いながら、仕事を確約せず、仕事を得る可能性に対して料金を請求する考えは公平ではないと感じています。
カルドナさんの収入は仕事を始めた頃より多くなっていますが、それは自分のプロフィールに大いに関係していると考えています。
プロフィールとはプラットフォーム上の履歴書のようなものです。顧客は当人を知らない場合には要求している金額を支払わないでしょうから、経験を築き、請求できるだけのものは遂行できると証明する必要があります。最初は本当に底辺から始めたので、それが少しは収入が上がった理由だと理解しています。今は収入に満足しています。最初は自分にできるかどうか分かりませんでした。例えば、最初に手がけた仕事は写真の入力で5,000枚を50ユーロで請け負いましたが、1週間以上かかり、実に疲労困憊しました。そこからアップワークが2割を天引きします。ええ、二度とそんな仕事はしたくありません。でも、少なくとも当時はそれをしなくてはと思ったのです。と、カルドナさんは振り返ります。
カルドナさんは当初、いつも顧客のことを考え、郵便や通信から目を離せず、メールを書き続けていました。休もうとしても電話が鳴ると顧客ではないかと思い、対応すべきか考えるといった精神的なストレスを抱え、ついには週末であろうと、休日であろうと、いつも電話に対応するようになりました。当時のもう一つの悩みは、いつも自宅で自室に閉じこもっていたため、誰にも会わないことでした。それはフリーランスというよりはコロナ禍の状況のようなものと感じています。健康には心身両面がありますが、身体的には一日中座っているために、一日の終わりになると時に足に血流の問題などを感じたことがあります。コロナ禍が始まった頃は一日中マウスをクリックしていたことによる腱鞘炎から手首にサポーターを巻く必要がありました。精神面では少し仕事を止め、例えば、身体に悪いと自分に言い聞かせ、リラックスが必要だから20分休憩を取って深呼吸するようになりました。このように何かしら問題を抱えています。この狂った状況下では誰もが浮き沈みを感じていると思いますが、何の保険も支払われず、企業が従業員に提供するような福利厚生は全くありません。
生物学は大好きで、これを一生の仕事にしたいと思っていますので、フリーランスを生涯続けようとは考えていません。修士号を取得し、次は博士号を取得し、大学でも教えたいですし、研究もやりたいというように自分のしたいことが分かっています。残念ながら、生きるためにはお金が必要ですから、これは一時的なものです。生涯フリーランサーをするとは思いませんが、今のところはこれが私の収入源です、とカルドナさんは語っています。
デジタル労働プラットフォームの課題と進むべき道
ILOの報告書は1万2,000人のオンライン・プラットフォーム労働者を対象とした調査をもとにまとめられていますが、3人の経験は調査結果を大いに実証するものになっているとラニ上級専門官は語っています。調査では回答者の8割以上が評点を、仕事を得る上でのカギを握る要素と回答しており、約6割が報酬の低い仕事でも引き受けたり、仕事を得るために入札価格を引き下げたことがあると回答しています。手数料についても光が当てられており、多くの労働者が仕事にアクセスするにはプラットフォームに料金を支払う必要があること、収入の約20~35%の手数料が課されることを報告しています。その上、支払った金額の返却を希望する場合には退会費を支払う必要があったり、為替手数料が請求される場合もあります。こういった様々な手数料は収入の半分程度に達する場合もしばしばです。したがって、最終的に10ドルで仕事を請け負って、長い時間を費やしても手取り額は5ドル程度になるかもしれません。ある企業は収入の約68%を労働者に請求する様々な手数料から、32%ほどを顧客に請求する収入から得ていると報告しています。
もう一つ強調すべき点は、労働者が実際に享受している柔軟性と自律性の度合いです。実際には必ずしもそのようになっておらず、例えば、フリーランス・プラットフォームでは回答者の約9割が特定の時間に連絡が付くようにしておく必要があること、85%が顧客が労働時間を監視していると回答しています。こういった制限を見ると、好きな時に働けるという宣伝文句は実際には直ちに崩れます。
プラットフォーム労働者の労働条件の問題に対しては、多様な規制対応が見られます。よく議論されている一つは雇用関係に関するもので、これらの労働者が従業員なのか、それとも自営業あるいは独立請負人であるかというものです。裁判所や幾つかの立法機関で多くの決定が出されていますが、この多くは労働者が実際に経験している管理の度合いや自律性の度合いによって一方あるいは他方に傾いています。回答は非常に多様で、何をすべきかに関して絶対確実な規制は存在しませんが、報告書では国際的な政策対話と調整、そして規制の不確実性が観測される傾向があることから非常に整合的な取り組みを呼びかけています。求めているのは、従業上の地位にかかわらず、全ての労働者に適用される普遍的な労働基準と人間らしく働きがいのある労働条件を確保すべきという点です。これについて、報告書は何をすべきかについて15の提案を示しています。それには労働者の従業上の地位を各国の分類制度に従って分類するよう確保すべきことや、仕事の評点や割当、評価のいずれに関しても労働者に対するアルゴリズムの透明性と説明責任を確保すること、自営業のプラットフォーム労働者が団体交渉の権利を享受できるよう確保することなどが含まれています。競争法と労働法の調和を確保することも大切です。そして、従業上の地位にかかわらず、全ての労働者に既存の政策や法的枠組みの拡大あるいは適応を通じて十分な社会的保護の給付を確保することも求めています。
最後に申し上げたいことは、ILOの民間職業仲介事業所条約に従い、プラットフォームは手数料その他の種類の料金の徴収を止めるべきという点です、とラニ上級専門官は強調します。
プラットフォーム・ビジネスモデルは労働者へのアクセスの点でも顧客基盤の拡大の点でも多くの事業体に明らかに機会を提供しています。同時に労働者にも地元の労働市場で雇用機会が縮小している中で仕事を見つける機会を提供しています。根本的にはこのビジネスモデルに見られる幾つかの課題に対処することが重要であり、国際的な政策対話に加え、プラットフォーム事業の運営者と労働者、そして政府の間の社会対話を通じて、この課題に取り組むために必要なことに関して合意に達する必要があります。
本書の発表記者会見でガイ・ライダーILO事務局長が強調したように、「オフライン労働市場で許容できないことはオンライン労働市場でも許容できない」のです。プラットフォームでディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が確保されるよう、プラットフォーム・ビジネスモデルに係わる労働条件その他の課題に取り組むことが基本だと思います、とラニ上級専門官は結んでいます。
Related content
新刊発表
ILO新刊:デジタル経済の急成長によって要請される整合性ある政策対応