ILOブログ-SCORE
中小企業の技能向上:中小企業研修制度の有効性に関して学んだ五つの事項
ILOのSCORE計画は中小企業の技能向上を成功させる方法を特定するために多くの国で官民訓練制度と協働しています。
2018年01月17日
| シュテファン・ウルリヒSCORE計画アジア地域マネジャー |
ほとんどの国で市民の5人中4人までが働いている中小企業ですが、なかなか従業員に公式の訓練を提供できていません。この結果、人口の多くの割合が年齢を重ねても生産的で就業能力を維持するために定期的に技能の更新を図ることができないでいます。そこで、多くの国が中小企業の訓練投資を刺激する事業計画を設けており、100カ国以上で全国的な訓練課徴金制度が運営されているものの、このような制度が訓練を後押ししているとの証拠はほとんど得られません。聞こえてくる話からは、企業に優しい形で需要主導型サービスを提供するのに成功している制度もあれば、官僚的で非効率との悪評を得るに至った制度も存在していると推測されます。
中小企業の生産性向上と従業員の労働条件改善を支援するILOの「競争力と責任ある企業を支える(SCORE)計画」は、多くの国で官民の中小企業訓練制度と連携して活動を展開しています。そこで、どうすれば良い訓練制度を設計できるかを探究するため、シンガポール、マレーシア、アイルランド、米国の中小企業訓練制度の組織、財源、機能を検討し、唯一正しい訓練制度の運営方法は存在しないとの結論に達しました。研究結果をまとめた新刊書『Upskilling SMEs: How governments fund training and consulting(中小企業の技能向上:政府による訓練に対する出資と相談対応・英語)』には、様々な設計選択肢の長短と、以下の五つの教訓が記されています。
- 財源モデル毎に存在する長短。中小企業の訓練に出資するほとんどの制度が一般税収か訓練課徴金を財源としています。前者の利点はより柔軟な資金配分です。一方、訓練課徴金制度は使用者から負担金を徴集する専用の手続きを必要としますが、一度設けられると、通常の公的予算編成プロセスで生じるような競合する需要から訓練資金を隔離できる利点があります。しかしながら、この手段は経済が弱い国や大規模な非公式部門を抱える国、行政能力が乏しい国にはあまり適しておらず、訓練制度が効果的でない国では使用者から人気を失い、その結果、放棄されたところもあります。
- 多数の中小企業への到達の困難。研究対象となった中小企業訓練財源制度の到達企業数は年に7,000~2万件に上るものの、これは各国の中小企業全体の2~10%程度に過ぎません。このような規模では、到達範囲を決めるのは財源の入手可能性と営業努力であり、相当の資金投資が求められるため、使用者団体のような仲介機関を通じた活動が到達を円滑化する可能性があります。
- 企業当たり投資額に見られる大きなばらつき。調査研究の対象となった四つの制度のうち、二つは市価でサービスを提供し、一つは少額の補助金を提供し、一つは全額補助金でサービスを提供していました。正しい戦略は制度の目的によって左右されますが、企業が料金の違いにどのように反応するかを確定する調査研究の実施が助けになる可能性があります。対象となった制度の企業当たり年間訓練費用は800ドル(訓練財源の提供)から2万4,000ドル(コンサルタント代を含む)の範囲でした。
- 長短がある仲介機関を通じた活動。調査研究の対象となった四つの制度のうち、二つは直接企業とやりとりを行い、残りの二つは仲介機関を通じて活動しています。前者には企業に手を差し伸べて、やりとりする専門の職員が必要で、これは官僚制度が苦手とする場合があります。仲介機関に出資する制度は、企業とのやりとりにもっと習熟している第三者にこの機能を外注するものですが、仲介機関の管理も必要で、それ自体、管理費を伴います。
- サービスの質の確保には様々な道が存在。調査研究の対象となった四つの制度は全て、専門の訓練及びコンサルタントサービス提供機関を通じて企業にサービスを提供しています。このうち二つは競争入札手続きを通じて業者を選定しており、これはサービス提供者が適格で費用効果が高いことを確保する助けになります。一つは企業自体に訓練提供者の選定を委ね、残りの一つは品質を確保するために訓練提供者の登録・認証制度を用いています。基準がうまく設計されており、認証手続きが信頼のおける透明なものであり、制度が企業に理解され、受け入れられているとすれば、後者の方がより効果的かも知れません。しかしながら、このような制度の構築には相当の開発・維持費が伴います。
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以上はこの調査研究の概念設計を行ったシュテファン・ウルリヒSCORE計画アジア地域マネジャーが、ILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」に、2018年1月17日付で投稿した英文記事の抄訳です。