中東の家事労働者
ロールプレイが光を当てる家事労働者の権利と窮状:レバノンからの報告
多くの人が家事労働は「本当の仕事」ではなく、標準的な労働条件が適用されないと考えています。ILOがレバノンで実施しているあるプロジェクトは、家事労働者の雇い主の態度を変えることに成功しています。
2018年02月22日
| FAIRWAYプロジェクトのエリザ・マークス技術専門官 |
家事労働者の雇い主は伝統的な意味での使用者とは異なり、典型的なこととして、自分を使用者と見たり自宅を職場と認識しておらず、残業代や労働安全衛生、結社の自由などといった典型的な問題を考慮していない場合があります。このような雇い主の利益を代表する組織も滅多に存在しません。こういった人々は加えて、法に基づく自らの権利や義務についての情報を積極的に求めず、代わりに必ずしも中立的ではなく自分たちの最善の利益を考慮していないかもしれない、人材募集・斡旋業者から得たまた聞きの情報に頼るところが多いことがILOの調査研究から判明しています。
ILOの公正移住中東地域(FAIRWAY)プロジェクトは、こういった問題に取り組むため、移民家事労働者とその雇い主にサービスを提供する中東初の社会的企業であるエキップ社と提携して「私の公正な家キャンペーン」を実施することとしました。ILOが家事労働者国際連合と共に展開するこのキャンペーンは、家事労働者の雇い主の態度や行動様式を変えてディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を確保することを目指しています。
キャンペーンでは、雇い主向けの説明会を開き、レバノン法の下での規制や人材募集・斡旋経費の透明性を評価する方法などの実用的な情報に加え、家事労働者とより良い関係を築くための戦略やコミュニケーションのヒントなどを提供します。週間勤務計画や賃金明細のような明確な職業的関係を確立するために必要な雇用関係ツールの使用方法に関する研修も行われます。
全体を通じて、雇い主の意識を呼び覚まし、態度を変えるためのメッセージが織り込まれています。これには、家事労働者をヘルパーや女の子と呼ぶのではなく、労働者と言わなくてはならない理由、雇い主が家族の世話と職業的キャリアを両立できるために雇い主の暮らしにおいて家事労働者が果たしている重要な役割を認めることの奨励などが含まれています。参加者は最後に、「私の公正な家誓約」に署名して、以下の六つの労働条件原則を自宅で実行することを公約するよう勧められます。
- 我が家の家事労働者が公正な賃金を受け取り、妥当な労働時間と休息時間が確保されるよう計らいます。
- 家事労働者との間で結んだ契約に定められている雇用条件を尊重します。
- 我が家の家事労働者がまともな保健医療を受けられる機会を確保します。
- 虐待や嫌がらせ、暴力のない労働環境を積極的に確保します。
- 我が家の家事労働者が人間らしい生活条件と安全で安心できる個室を享受できるよう確保します。
- 我が家の家事労働者が1日丸々休息し、自分の選んだ場所で自分の好きなように過ごせるよう確保します。
「彼女がここに来たのは働くためであって、友達を作るためじゃないのだから、1日も休みを与える必要があるかしら? 私でさえないのに」。ベイルート中部で開かれた説明会の冒頭で行われたある雇い主のこの発言は、一座の同意と笑いを集めました。これはレバノン、より幅広く中東で一般的に見られる見解であり、驚くべきことではありません。ここでは家事労働は「本物の」仕事ではなく、標準的な労働条件は関係がないのです。
説明会ではロールプレイの場面もあり、雇い主らは自分が雇っている家事労働者の身になって考え、その視点と経験を理解するよう奨励されます。先の女性は最後にこう感想を述べるに至っています。「家事労働者がこんなに高い斡旋手数料を払ってここに来ているなんて知らなかったわ。スリランカにご主人とお子さんがいらっしゃって大変でしょうに」。
レバノンその他の国々で家事労働者に対する需要が成長を続ける中、家事労働者とその雇い主が一緒になって全ての人に利する家事労働産業を作り上げる必要があります。この達成に向けてカギを握る一歩は、雇用関係をうまく管理できる手段と知識を備えさせることによって全ての関係者を会話に巻き込むことなのです。
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以上は、説明会に参加したFAIRWAYプロジェクトのエリザ・マークス技術専門官が、ILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」に、2018年2月22日付で投稿した英文記事の抄訳です。マークス技術専門官は、プロジェクトの活動を紹介すると共に先の女性が説明会の最後に示した態度の変化と「変わる」との約束を、驚くべきものと評し、レバノンとクウェートで試行されたこの活動は、中東全域、そして世界中に広められる潜在力を秘めていると記しています。