広報記事:賃金差別
ヨルダンの私立学校教師に発言力を与えて女性差別を打倒
2015年10月07日
ヨルダンはILOの同一報酬条約(第100号)を1966年、差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号)を1963年に批准していますが、この内容はまだ国内法に盛り込まれていません。教師の88%を女性が占める私立学校における賃金差別の問題に取り組むために、ILO、労働省、ヨルダン全国女性委員会(JNCW)の支援を受けて2011年に設けられた衡平賃金全国委員会(NCPE)が実施したヨルダンの私立教育部門における男女賃金格差に関する委託調査からは、北部のイルビド県を中心に私立学校で働く女性教師の多くが最低賃金を下回る報酬を得ている事実が判明しました。さらに、女性教師の平均月額報酬は男性の41.6%に過ぎないことも明らかになりました。
衡平賃金全国委員会はこの調査結果を受けて、女性教師が多いイルビド県で、今年4月からコミュニティー組織化キャンペーン「教員と共に立ち上がる」を開始しました。労働省の女性の経済的エンパワーメント課課長や労働監督官、ヨルダン教員連合、社会保障公社職員、市民団体代表などで構成されるコアチーム率いるキャンペーンは、権利侵害に直面し、それに抗して行動することを決めた教師たち自身によって運営されています。例えば、キャンペーン参加者の1人であるスハさん(仮名)がかつて教師として働いていたイルビドの私立学校から支払われていた給与は全国最低賃金の190ヨルダン・ディナール(約3万3,000円)をはるかに下回るわずか70ヨルダン・ディナール(約1万2,000円)でした。その上、学校側は2年間にわたり、社会保障積立金として彼女が納めたことになっていた給与の一部を着服していたとのことです。学校からは積立金は払い込まれており、給与もいずれ上がると聞かされていましたが、しばらくしてどちらも正しくないことが発覚し、だまされたと感じたスハさんは最終的に職を辞してから1カ月間、自宅で泣き続けました。やがて見つけた転職先では、最低賃金を上回る給与が支払われ、社会保障積立金の払い込み状況も随時通知されています。このような経験をバネとして、スハさんは同じような問題に直面している他の教育者を助けることを志してキャンペーンに参加しました。
キャンペーンは教師自らが公正な報酬と労働条件向上を求めて交渉できるよう、とりわけエンパワーメントに力を入れています。また、民間教育労働者組合と私立学校経営者協会との間で行われた団体交渉の成果物として2014年11月に合意された団体契約の活用を学校及び教師に呼びかけています。教育省、労働省、教員連合の長い交渉を経てまとめられ、現在はこれらの団体によってその実行が監視されている団体契約は個別契約に導入された場合、夏期休暇中の給与支払い、年次休暇や最低賃金額の保障などといった権利を教師が確保する助けになります。
問題を重く見た労働省は私立学校の監督を強化しました。この6週間で40の私立学校を監督官が臨検し、57件以上の違反が摘発されました。
30年以上教育界に身を置き、現在は主導者の1人としてキャンペーンを手伝っているファリダ・クフレスさんは、「賃金と権利の点で教師が不正義に直面していることはいつも分かっていたものの、事態がどれだけ深刻かは気づかなかった」と語っています。「問題に気づいても行動を起こすのを怖がる教師が多い」と指摘するクフレスさんがいつも教師に伝えているのは、「団結して、一緒に権利のために闘うことによって恐れを克服する必要がある」ということです。キャンペーンはコミュニティーの組織化とキャンペーン研修を専門とする国内団体の指導・支援を受けています。フェイスブック・ページのフォロワーは3,000人に達し、労働省の専門ヘルプラインが受けた教員からの相談件数は3倍に増え、無償で協力する弁護士も増えてきています。
衡平賃金全国委員会の公式なメンバーではないものの、私立学校経営者協会も学校側が直面している課題に関する情報やデータの提供などを通じて委員会の活動を支えており、教師の労働条件改善と民間教育部門の効率性向上に向けた包摂的な対話を歓迎しています。「私立学校経営者協会と衡平賃金全国委員会にはヨルダンの発展促進という共通の目標がある」と語るムンテル・ソウラニ協会会長は、「労使は共に国民経済前進の主柱」と見ています。
キャンペーンは来年4月まで1年間続きますが、この成功を基盤として国内の他の場所にもこれをモデルとしたキャンペーンが導入されることを主催者側は期待しています。キャンペーン創設者らの次の活動目標は、国営学校教師の給与水準と並ぶように最低賃金を300ディナール(約5万2,000円)まで引き上げる運動を展開することです。
「もう十分よ。この不正義は終わらせなくちゃ」と語るスハさんは、長年据え置かれた給与水準、何年も改善されてこなかった労働条件、働く母親としての権利の無視など、「変革を必要とする問題は数多い」と指摘した上で、「キャンペーンはその方向に向けた一歩」と評価しています。
ヨルダンの私立教育部門における衡平賃金に向けた戦い (アラビア語・英語字幕付)* * *