労働安全衛生
バングラデシュ衣料産業の安全性向上
ILOがバングラデシュで実施している事業計画は、衣料品工場の安全性向上を図り、2013年に1,100人以上の命を奪ったような悲劇の再発リスクの最小化に向けて支援を行っています。
2018年01月17日
バングラデシュの衣料品工場は世界的なアパレルブランドの多くに製品を供給してきました。2013年4月、そのような工場のうちの五つが入居する8階建てのラナプラザビルが倒壊し、死者1,136人、負傷者多数という近代史上最悪の産業災害の一つが発生しました。首都ダッカの近郊にあるこのビルの倒壊はまた、バングラデシュの衣料品工場における安全性の改善に向けて国内外の活動が力を合わせるきっかけにもなりました。
災害直後の優先事項は3,600軒を超える輸出向け衣料品工場の構造及び電気の安全性、火災に対する安全性の評価に置かれました。ILOの支援を受けて検査を受けた工場は1,500社以上に上ります。その一つであるタオル・テックス社のアンワル・ホセイン総支配人は、事故前には工場・事業所監督局の名称など聞いたこともありませんでしたが、検査後には監督官の勧告に応え、染色小屋とボイラー室の間に壁を作り、工場床面の通路を広げ、非常灯を設置し、避難計画を立てるなど、工場に様々な変化を導入しました。
ラナプラザの災害後、ILOは労働監督署と密接に協力し、監督署の能力構築・実効性改善を図りました。この結果、監督署はより積極的な役割を担うようになり、タオル・テックス社にも今ではほぼ四半期に一度、予告なく定期的に臨検が行われます。ホセイン総支配人は、「法令等を遵守したいと思ってはいますが、検査なしには確信が持てません」として、これが工場の安全性向上の助けになっていると評価しています。
ILOはラナプラザの悲劇にただちに対応し、政府、労使団体と協力して建物の安全性と耐火性を高める国家行動計画を策定しました。計画の実行を支援するために、ILOはカナダ、オランダ、英国の支援を受けて2013年9月に「既製服部門の労働条件改善計画」を開始しました。この事業計画の中心的な目標は、この国が二度と再びラナプラザの倒壊のような悲劇を経験することのないよう、工場の安全性を高めることです。
事業計画の重要な構成要素の一つが労働安全衛生に関する研修です。ILOがバングラデシュ使用者連盟と協力して提供するマスター指導員研修の受講者の一人である大手衣料品生産者マスコ・グループのシャヒドゥル・イスラム・コンプライアンス次長は、研修の中で化学物質の安全性について多くのことを学んだと報告しています。工場の倉庫には生産工程で用いられる何百という様々な化学物質が保管されていることを考えると、これは非常に重要なことです。研修を終えたイスラム次長は、多くの変更を導入することに決めました。棚に並べられている瓶の単なる並べ替え以上の大変な作業でしたが、何とかやり遂げることができました。マスター指導員としてイスラム次長が同僚に教え、その同僚がさらに他の同僚に教えるといった形で研修が順次進められ、「今では工場の誰もが安全性や従うべきルールについて知っています」と次長は語っています。
「政府と使用者だけでなく、労働者団体も支援することによって、既製服部門には職場安全に向けた強固な基盤が築かれました」とムハンマド・ムジブル・ハック労働・雇用次官が語るように、政府もこの事業計画を賞賛しています。労働者教育全国調整委員会の事務局長を務めるチョードゥリー・アシクララム委員もこの事業計画の重要性を認めて次のように語っています。「ラナプラザの災害はバングラデシュの既製服部門の多くの労働者が直面している危険を痛感させました。工場の安全性と労働者の安全意識の向上に関しては、この数年、長足の進歩が達成されたものの、残されている課題はまだ多く、このイニシアチブの下で達成された進歩を消滅させないことが決定的に重要です。既製服部門の職場の安全性向上に際して学んだ教訓と得られた好事例を国内の他の産業部門にも広げる必要があります」。
「既製服部門の労働条件改善計画」は2017年で第1期を終えましたが、例えば、次のような成果が達成されました。
- 建物の安全性及び耐火性の向上。1,549軒の工場の構造及び電気の安全性、火災に対する安全性の検査が行われ、安全基準が調和され、是正措置のフォローアップに対する支援が提供されました。
- 労働監督制度の強化。労働監督制度改革のための行程表が描かれ、優先分野と優先産業を特定した労働監督戦略が立てられ、239人の監督官が40日間の研修プログラムを修了しました。
- 職場における安全文化の構築進展。これには法・政策環境の改善、政府及び労使団体の労働安全衛生問題管理能力の向上が含まれ、労働安全衛生の必須事項に関する研修が80万人以上の労働者に提供されました。
- ラナプラザ事故負傷者に支援を提供。約300人の生存者に生計スキルの訓練が提供され、3,000人以上がキャリア相談を受け、66人が心理社会的カウンセリングを受けました。
加えて、衣料品産業の労働条件改善と競争力促進を目指すILOと国際金融公社(IFC)の協同事業である「ベターワーク(より良い仕事)計画」が2014年からバングラデシュでも活動を始め、今では140以上の工場に導入され、30万人を超える労働者が関与しています。
バングラデシュの衣料品部門における職場の安全性向上に向けた歩みを止めないため、重要な成果が多数達成された第1期の事業計画を引き継ぐものとして、引き続きオランダと英国から支援を受けて、2023年まで続く第2期が始まりました。ILOバングラデシュ国別事務所のガガン・ラジバンダリ所長代行は、この事業計画の共通の目標は「すべての衣料品工場が安全になり、国際的なパートナーの支援がもはや不要になるように政府、使用者、労働者の能力が共に育まれること」と紹介しています。
以上は2018年1月17日付の英文広報記事の抄訳です。