タイ・自動車産業の「責任ある企業行動」 ILOが報告書
2024年05月02日
(バンコク発)ILOは3月、タイの自動車製造業についての報告書を発表しました。報告書でILOは「責任ある企業行動」が、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現に必要な労働条件の向上、格差是正につながると述べ、急速に変化するサプライチェーン(製品供給網)において産業全体にも資すると指摘しました。
この報告書 Decent work and responsible business practices in Thailand’s automotive manufacturing sector は日本政府の資金拠出を受けてILOが実施するプロジェクト「タイにおける強じんで包括的かつ持続可能なアジアのサプライチェーン(RISSC)」の一環で作成されました。
自動車製造業はタイの基幹産業でGDP(国内総生産)の10%を占め、製造工程だけで50万人以上の雇用を創出しています。ILOは賃金の保障や、失業保険などをはじめとする「社会的保護」の適用は進んでいるものの、労使などがさまざまな社会・経済的課題を協議する「社会対話」や研修、機会均等などの分野では改善の余地があると指摘。自社の企業活動やサプライチェーン上に人権を侵害するリスクがないかをチェックし、対応する「人権デューディリジェンス」が世界規模で求められる中、タイの自動車産業の理解がまだ追いついておらず、適用には道半ばであるとしました。
報告書ではまた、移民労働者や派遣労働者が、タイ人労働者や正社員よりも労働条件や賃金面で不平等を強いられているとし、労働者間の格差にも言及。自動車産業で働く労働者の半数以上が業務に関連する何らかの訓練(主に雇用主が主催する職業訓練コース)を受講していました。ただ、これらの受講資格の面で格差が見られることから、キャリアアップとその技能開発の重要性だとしました。そのほか、社会保障制度への加入率の高さが認められるものの、労災基金のような補償制度の認知度はまだ低く、出産手当の支給における格差についても指摘しました。
労働組合加入率については、労働者の約3分の1が組合に加入しており、過半数の労働者が「組合があれば加入したい」と考えていることも明らかになりました。組合のある職場では、労働者と使用者間の社会的対話や交渉の機会が充実しており、安全で生産的な職場環境を確保するには、労働者が代表を通じて意見を述べることの重要性が明らかになりました。
その上で報告書は、主要なILO条約の批准、社会対話の改善、質の高い雇用機会の拡大、差別への取り組み、責任ある企業行動となり得る要件を満たすこと、そして意識向上などが必要だと勧告しました。RISSCプロジェクトの責任者であるデイビッド・ウイリアムズは「関係者が協力して勧告に取り組むことが労働者の権利と事業生産性の保障につながる。競争が激化し、社会的意識が高まるグローバル市場で強じんなサプライチェーンを構築することは、産業全体が成長するチャンスでもある」と述べています。
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