強制労働
タイの水産業における強制労働撲滅の助けになっているILOの議定書
タイによるILOの「1930年の強制労働条約の2014年の議定書」批准以来、同国の水産加工業における労働者の状況は改善されました。政府によるこの変化を支えたものとして、ILOの「船舶から陸上まで権利プロジェクト」を挙げることができます。
2020年01月06日
チス・ジェド・ポスさんがタイの漁業で働くためにわずか17歳でカンボジアからやって来た2007年当時、賃金未払いや旅券取り上げなどといった強制労働の可能性がある状況を示す古典的な兆候であるこの産業の深刻な不正行為は当局に無視されるか見過ごされていました。しかし、タイが強制労働問題に立ち向かう世界的な運動に加わる意思があることを労使や主要貿易相手国、近隣諸国に示すことを意図して2018年にILOの「1930年の強制労働条約の2014年の議定書」を批准する決定を行ったことによって状況は大きく変わりました。
| チス・ジェド・ポスさん © Nuttakarn Sumon |
アジアで初めてのこの議定書の批准プロセスを支援したものとして、欧州連合(EU)の任意資金協力を受けて2016年から開始されたILOの「船舶から陸上まで権利プロジェクト」の活動を挙げることができます。プロジェクトはILOの法律専門家と共に批准を検討する政労使に強制労働に関する法の不備を是正する方法について幅広い技術支援や分析を提供しました。数カ月に及ぶ政労使の議論を経てタイの反人身取引法は改正されました。政労使パートナーはたとえ決定が自分の思う通りにならなかったとしても、労働者団体と使用者が議論に加わることによって政策がより賢明でより効果的、そしてより包括的なものになることを一般的に認識しました。
ジェドさんの働く船でも状況は大いに改善されました。賃金が大幅に上がり、より定期的に支払われるようになったことを中心とした大きな改善があり、作業スケジュールの編成も改善されて休息時間も増えました。
議定書の批准によって推進された強制労働法制の新たな改正は、問題の緊急性やその特定方法、終止符を打つ方法を、使用者や労働者、労働監督官、検察官、裁判官に明確にした点で大きな進展をもたらしたかもしれませんが、課題が消滅したわけではありません。とりわけ、使用者による慣行の変更やタイ政府による規則の変更、新規則の実効的な執行の点を中心に課題はまだ残っています。しかし、ジェドさんは、以前は病気や怪我の時でも船長や船のオーナーの許しがないと病院に行けなかったものが、「今は使用者が健康や福祉をもっと気にかけてくれており、社会保険を使って病院に行くこともできます」と報告しています。
こういった改善が見られる港もあれば、見られない港もありますが、国際運輸労連(ITF)の支援を受けた漁業従事者権利ネットワーク(FRN)と呼ばれる労働組合組織化努力が希望の光になっています。ジェドさんを始めとした1,000人以上の移民漁業労働者の自らの権利に関する理解は深まり、産業に変化をもたらすために協力し合っています。しかしながら、タイはILOの中核的な条約である「1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)」と「1949年の団結権及び団体交渉権条約(第98号)」を批准しておらず、移民による組合の設立や役員就任を妨げる法の存在はこういった労働者が権利を全面的に行使することができない状態が続いており、いまだに強制労働根絶には至っていないことを意味するのです。
プロジェクトは昨年、外国人労働者からの聞き取り調査をもとに、政策や科学技術が漁業労働に与える影響を調査した結果をまとめた報告書を刊行しました。報告書は、人手不足対策としての科学技術活用不足や融資制度の不在、良質の情報不足などの問題点を指摘し、移民労働者にもっと情報を提供することや科学技術を用いた船舶改善、貸付支援などを通じた労働市場の機能不全対抗措置が労働者の搾取を減らす助けになる可能性を示しています。
以上は2020年1月6日付のバンコク発英文広報記事の抄訳です。
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