「あきこの部屋」第4回~グローバル経済のためのルール
2016年07月26日
2016年7月25日
7月は参議院議員選挙が初旬に行われ、都知事選挙が下旬に控えています。ILO事務局長選挙は2019年が100周年にあたるために1年前倒しで実施されることとなり、7月に立候補が締め切られました。11月理事会で立候補者のヒアリング・投票が行われることとなっています。
さて、吾郷眞一立命館大学法学部特別招聘教授の監修により、「グローバル経済のためのルール-国際労働基準の手引き」の第3版の翻訳が完成しました。原題は「ゲームのルール」ですが、初版のときから第1章の「グローバル経済のためのルール」を邦題にしています。今月は本書の内容と日本のILO条約の批准状況を紹介します。
本書第1章は、国際労働基準の意義、採択手続き、利用方法の紹介です。国際労働基準の意義として、「ILOの主唱するディーセント・ワークの目標達成」、「公正で安定したグローバリゼーションのための国際的な法の枠組み」、「公平な立場での競争」、「経済活動を向上させる手段」、「経済危機の際のセーフティーネット」、「貧困を削減するための戦略」、「国際的な経験と知識の合算」などがあげられています。
第2章は、国際労働基準の事項ごとの採択の背景、簡単な内容紹介、国別の適用事例について説明しています。
第3章は国際労働基準批准国の報告書提出義務とその独特の監視手続き、個別批准条約の実施上の問題点に関する申立てや苦情申立て手続き、結社の自由に関する特別手続き、条約未批准国への条約の適用、 技術協力及び訓練、基準に関連する2つのILO 宣言[1]を紹介し、第4章が資料編となっています。
国際労働基準は、ILO創設の1919年からこれまでに189条約、6議定書、204勧告が採択されていますが、全189条約が批准できる状況にあるわけではありません。まず、撤回条約5、棚上げ条約25で、これらは新たな批准はできず、批准国も報告義務はありません。なお、ILO憲章改正が発効し、総会の出席代表の3分の2以上の賛成により発効条約の廃止が可能となりました。
労働における基本的原則及び権利に関する中核的労働基準8条約及び国際労働基準全体のシステムが機能するために重要である4優先条約を含めて77条約が、現状に適合する最新のもので、優先的に批准を促進すべき条約に分類されています。中核的労働基準8条約については、当初掲げられていた2015年までに全加盟国の全条約批准という目標には達することはできませんでしたが、あと必要な批准は133になりました。ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ地域では大幅に批准が進みましたが、アジア太平洋地域では、未批准国がかなり存在します(その中には日本の105号条約と111号条約が含まれています。)4優先条約も、ある程度批准が進みました(日本は129号条約が未批准です)。
それ以外の82条約は改正に備えて情報提供などを求められている条約で、積極的な批准は求められていません。有名な「工業的企業に於ける労働時間を1日8時間かつ1週48時間に制限する条約」(第1号、1919年)はこちらに分類されています。
わが国の全批准数は49で、加盟国の平均批准条約数43を若干上回っていますが、OECD加盟国の中ではアメリカ合衆国、アイスランド、韓国、カナダなどについで少ない国です。
「グローバル経済のためのルール-国際労働基準の手引き」は、ILO駐日事務所のウェブに掲載するだけで、印刷物にはしませんが、ILO駐日事務所では、国際労働基準 ILO条約・勧告の手引きと題するパンフレットを作成しています。また、すべての国際労働基準に簡単な解説を付し、日本語訳をホームページに掲載しています。日本ではILO条約の知名度は決して高いとはいえず、残念ながら労働法の教科書にもごくわずかしかとりあげられていません。皆様がこれらの資料により、もっと関心を持っていただくことを期待しています。
[1] 仕事における基本的原則及び権利に関するILO 宣言とフォローアップ、2008 年の公正なグローバル化のための社会正義に関するILO 宣言