サッカーW杯カタール大会

カタール 移民労働の現在(下)

ニュース記事 | 2022/12/05
サッカー第22回ワールドカップ(W杯)カタール大会が開催中です。同国とILOは大規模な労働改革を支援するプログラムを実施し、何十万人もの労働者の労働・生活環境が改善されました。連載最終回ではILOの支援と今後の課題について紹介します。

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移民労働者に公正な人材募集・あっ旋を
低賃金の移民労働者が人材あっ旋の手数料を払うという慣行は、世界中で根強く残っています。移民労働者の出身国や移住先で、あっ旋料や関連費用をとることは禁止または一定額までとする法律があるにもかかわらずこの問題は存在し、カタールも例外ではありません。  カタール政府は2019年、6カ国14カ所にビザセンターを設置し、移民労働者に適切な情報を提供することで、法外な契約を未然に防止するよう努めています。政府は2022年、人材派遣会社45社を、コンプライアンス違反があるとして閉鎖しました。ILOの支援の下で、政府はまた、民間の人材派遣会社の許認可と監視のために既存の仕組みを査定しています。

人材募集・あっ旋の課題
カタールの法律では、労働者が人材あっ旋料を支払うことを禁止しています。しかし、カタールの社会経済調査研究所が最近実施した調査では、低賃金労働者の54%がカタールに来るために金を支払っていることが分かりました。 (このあっ旋料を支払えない場合には労働者は業者に「借金」をすることになり)借金のある労働者は多くの場合搾取や虐待を受けやすい、ぜい弱な状況に追い込まれます。 公正な人材募集における実務と知見を促進し、官民いずれにも浸透させる必要があります。

家事労働にめぐる意識改革
カタールには現在、16万人以上の移民家事労働者がいます。そのうち6割が女性で、家事労働者に関する2017年法律第15号の適用を受けています。 労働省は2021年に家事労働者の標準雇用契約書の改訂版を採択し、残業代、解雇、疾病休暇の権利について、他の民間企業の従業員と同等の権利としました。 カタールビザセンターを通じて、バングラデシュ、インド、パキスタン、スリランカからカタールに移住する家事労働者は、出発前に改訂標準契約に基づく雇用契約を締結することになっています。 家事労働におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進するためには、意識改革が重要な鍵を握ります。

家事労働の課題
法整備や意識向上の働きかけにもかかわらず、家事労働者は労働時間や最低週1日の休みなどの権利を十分に行使できていません。休日は、休息をとることだけでなく、関係当局に苦情を申し立てるためにも重要です。家事労働者や使用者、あっ旋会社に対して、今後もさらに多くの研修と意識向上が必要です。家事労働者は、賃金保護と(労働者が異なる企業や業種、職種、地域の間を移動する)労働移動における権利を享受する上で特有の課題に直面しており、この問題にさらに注意を向けることが必要です。

W杯は「ゴール」ではない
カタールの労働法改革が完全に適用・実施されるためには、まだ多くの問題を解決しなければなりません。ILOの最優先事項として、以下が挙げられます。

•    労働移動に関するカファーラ改革のメリットを全ての労働者と使用者が受けられるようにする
•    司法へのアクセスと不払い賃金の受け取りを簡便にする
•    家事労働者を保護する法律を完全に施行する

ILOはW杯後も政府、労働者、使用者と共に、カタールの法律と慣行が国際労働基準に沿うよう、支援を続けていきます。

※ジュネーブ発英文インフォストーリーの抄訳を3回に分けて掲載しました。